143 チョコレート革命
「マリー?」
呼ばれて目が覚めた。どうやら陽がどっぷりと落ちて、親父たちが晩酌を始めるぐらいの時間らしい。外ではそれらしい声が聞こえる。
「母さん」
「ご飯食べましょ」
「うん」
目を擦りながらリビングに行くと既にみんなが待っていた。
「お待たせしました」
「大丈夫だ。今日はあちこち飛んだから疲れたのだろう?」
「あれ?もう知ってるんだ」
「水の精達が張り切ってたからな」
「ああ、それで外の盛り上がり?」
「まあ、そういうことだ。今までと違う飲み方だし、水の精はあの弾ける感じが受けてるみたいだぞ」
「え、でもビールでも少しはあったよね」
「あれは自然に出来たものだから、優しいかんじだった」
「なるほど。刺激が面白いんだね」
「あれ、僕がそのまま飲んでも面白かった」
「あれ、普通の果実のジュースに入れても美味しいよ。源水から汲んで来たものあるから飲んでみる?」
「飲む!」
その日の食事は味噌汁、狂牛の野菜炒め、ご飯、デザートのポム、ナスの漬物。これに炭酸水、不思議な感じだけど飲みたいというのなら飲んでみればいいかな。
「源水ってどこにあったんだ?」
「ドラゴンがいる山。みんなの水飲み場だったみたい」
「はあぁぁっ。そんなところまで行ったのか」
「あそこしかなかったんだよ。シエロに乗っていったし、グンミと妖精村の代表水の精が行くんだっていうし。その為にお酒を手土産に持って行ったし!」
「ドラゴンに囲まれて普通でいられるお前が凄いよ」
「まあ、物圧的なものはあったけど、あたしを害せないのは知ってるし、バカなのいたら弾き飛ばされて終わりだしね」
本当に怖いのは人間の強欲だということは知っている。欲があるからこそ、発展もしていくんだけどね。しかもこの村はあたしの欲の塊だ。だーははは。
今日の報告を兼ねての食事を楽しんだ後は、チョコレートの話になる。
母さんからとエディからもらったクッキーを2つに分けてリュックに入れた。手元に残ったクッキーの横にチョコレートを出す。
精霊達のお陰で全ての魔法が使える。だから簡単なことなら全て自分で出来るのがいい。さて、まず作り出したるはボール。そこにお水入れてお湯にする。指が突っ込めるぐらいの温度にして、もう一つそれより小さめのボールに取り出したるはビターチョコ。
ヘラで溶けていくのを確認しながら、混ぜる混ぜる。横であああああああ!と叫んでいる二人は無視をする。
ダマがなくしっかりと解けているのを確認し、ハケでクッキーにチョコレートを塗った。試しに母さんが作った物とエディが作った2種類に。乾くのに時間がかかるので、そのまま放置。残ったチョコに少しばかりのブランデーを垂らす。そして混ぜて混ぜて一口だいのハート形の型に流し込んだ。
ブランデーの芳醇な香り。絶対これ、美味しい奴だ。しっかり混ぜたからアルコールは少し飛んでいる、はず。ボールの底に残っているの、舐めてみてもいいよね?
小指を入れてスッと。パクッと口に入れてみれば、スイスが見えた。友人に貰った新婚旅行のお土産の香りだ。要するに前世と比べても謙遜ない美味しさということだ。いや、時間のかけ方から言えば、これは反則だと言われそうだ。
見守っていた三人があたしをジィ―――――と見ている。サムズアップしておいた。
「じゃあ、みんなで試食してみよう」
まずはチョコクッキーの食べ比べ。どちらも美味しいけど、ビターチョコにあうのは、母さんが作った方だ。子供たちが作ったのは日持ちがするバタークッキーなので、作る過程で入れるチョコチップか、生地に混ぜ込むのが合うかもしれない。
それでもこういう食べ方は初めてな三人は、大絶賛だ。
「こういう食べ方なら、皆が食べられると思うの」
「もう一つのは・・・・・・・・」
お酒入れた時点で覚悟しておくんだった。バーゲンセールのぬいぐるみみたいに水の精が集まっていた。
冷やして固めないという言い訳は通用しない。待ちきれないとばかりに自主的に冷え固めてるし。それでも家族四人分4個は確保し、他はグンミに渡した。そちらで決めてくださいな。
香りづけ程度しか入れていないというのに、何てまろやかで、香り高い。舐めるたびに鼻にぬける独特の香りは、高級品そのものだ。お貴族様にはバカ売れしそう。いやその前に水の精を攻略しないとね。
悶絶している母さんは放っておいて、父さんを見る。ゆっくりと味わうように食べたみたいで、最後の香りが無くなったのを確認して、少し残念そうに、だけど満面の笑みで、旨いと零すように言った。
エディは少しばかり酔ったのか、ポカポカすると笑っていた。
あたし?酒好きだったのがそのまま今世でも体に活かされているのか、問題ない。これぐらいならどんとこいだ。もしかしたらお酒も勝手に浄化されているだけ、・・・かもしれないという事実には目を向けないことにした。大人になってから対策する。(酔わないのは寂しい)
「こんな感じで色々出来るよ」
まあ、あたしにはやっぱり甘さが欲しいから、スイートチョコに入った方が好きかも。
先ほどより少ないチョコを湯煎して、クッキーに塗る。これらも4人で味見したが、父さんだけは先ほどのチョコの方がいいと言った。エディはあたしと同じ。この辺りは好みだよね。ちなみに母さんはどちらも好きだそうだ。
ブラック、ビター、ホワイト、スイート、ミルクどれも2個ずつ渡して、その日のチョコ騒動はお開きにした。水の精達には自分たちでやってみるといいよと、自分が持っているチョコの半分を渡した。明日には色んなお酒が入ったチョコが出来てそうだ。
「やり過ぎないでね」
聞いてないね。
水の精がひしめいていた部屋に、今は4人の人間だけがいた。
読んで頂きありがとうございました。
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