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120.為政者

「上納金寄こせって?先にここを荒らした馬鹿な奴らを捕まえるのが、お前らの仕事だっつーの!ってか、ぐるでしょ?」

「マリー、女の子なんだから言葉遣い」

「どこもかしこも、腐ってるし。腹が立つ。いいよ。あげれば?あれだけしかないけど」

「マリー・・・流石というべきか?」

「でしょ!」


横暴な態度の兵士がやって来た。

「検分する分を渡してもらおうか?」

「渡すのはいいですが、殆ど地面に転がってますけど?」


マリーが指を指した場所には、踏みつぶされた泥だらけの肉の破片たちと割れた瓶に転がる空瓶。

残るは子供たちの足元に残る袋1つに中身が入っている瓶が2つ。


「残っているのはこれだけか?荷物はもっとあっただろう!」

「空の箱ともう一つは端切れです。ほら」

箱の中身がないことを知り、兵士は茫然としている。ここでせしめたものでこの後一杯やるつもりだったのだろう。残念でした!あんたたちの経歴が真っ黒過ぎて笑えてくる。スラム街に隠れ住んでいる盗賊と繋がってるとか、ホント小物くさい。

あたしの鑑定さん、色々と進化しすぎ。知りたいと思ったけど、ここまでとは思わなかった。敵か味方かだけで良かったんだけどな。でも活用はする!




「まさか、村からはるばるやって来たあたしたちに対して、唯一残っているこれらを取り上げる、なんていいませんよね?検分するなら、ここに散らばっている物をかき集めて確認してください。悪いのは暴れた人たちであって、手順に則って露店を出したあたし達ではないですよね?この人たちに賠償金を要求したいので、手続きを踏んでください」


お肉は一山、小銀貨1だから掛けることの10で10小銀貨。お酒が1瓶小銀貨8だから5瓶分で40小銀貨。合計で被害総額50小銀貨。そこに迷惑料を入れて、全部で60小銀貨かな。


「村人の思いをあたしたちは運んできた。これぐらいで済めば、安い物ですよね?さあ、払ってください。これは正当な要求金額です!あ、逃げてもダメですよ。当事者拘束」



までを脳内でシミュレーション終了。

やるつもりなら、戦っちゃうよ?

シエロのジャッジの劣化版があたしでも出来るようになったから、使ってみたいわけじゃないよ?


「何事だ」

大ボス登場?って思ってたら、なんとここの町長が出てきたよ。フムフム、マーティンさんが本店を構えている街の領主の弟。意外に大物だった。

先ほどまでニヤニヤであたしたちを見ていた小物兵士が、言い淀んでいる。

ざまあみろ!

「マリー・・・悪い顔になってるぞ」

父さんがコッソリと耳元で教えてくれたけど、勝手に動く表情筋に文句は言って欲しい。


町長がマーティンさんを見つけて、事情を聴き始めた。

早く終わってくれないかな。ここに散らばったお肉も、このままにしておきたくない。このお肉だって洗って洗浄したら、使い道があるかもしれない。猫や犬がいるかどうかわからないけど、動物に上げることだってできる。このままにしておいて、ネズミの餌だけにはしたくない。やつらは疫病を振りまくからね。


「父さん、現場確認まだかかる?ここ片づけたい。このままにしてお肉腐って、ネズミの餌とかシャレにならないし」

「奴らが魔物化すると面倒だからな」

「しかもこんな隠れる場所満載のところなんて、危険だよ。川の周りとか、土の下とか、微妙に魔力感じるし」

「いるなぁ」

「でしょ?スラム街なんて、今すぐ浄化したい。その場合、母さんにも来てもらうけど」


「親子で話している途中で申し訳ない」

先ほどの町長が話しかけてきたが、何故庶民であるあたしたちに丁寧な言葉?

あ、これ、目を合わせたら駄目な奴だった、ぽい。

「あなたが精霊村の聖女マリー様ですね。私はボルテモンテの町長 アシル・ブレイロットと申します。この度は大変申し訳ございませんでした」

跪いて挨拶とお詫びをされたあたしは、逃げ場がなかった。

はあ、失敗した。


父さんは固まっている。いや他の人全員固まってた。

「聖女?」

「あんな小さな子が?」

そんな声が聞こえてくるが、一切無視だ。

「アシル様、面を上げてお立ち下さい。あたしに謝罪は不要です。それよりもそこの兵士のように、真っ黒な人間を全部牢屋に入れて欲しいですね。盗賊の手引きをする人が兵士かとか、ありえませんから」

「ありがとうございます。では、そのように」


連れてきた精鋭部隊が的確に犯罪者を捕まえていった。

どうやら彼はあたしが持っているようなスキルを持っているようだ。だったら何故、こんなになるまで放置していたのだろう。

気になるけど今はそうじゃない。


「ヨハン、ビアス、カーヤ。取りあえずここに散らばっているお肉拾って。既に結構な数がいるから、このままにしてると更にネズミが湧いて危ない」

「「はい」」

え、なんでそんないい返事?

ああ、先ほどのを見たからか。もう!アシル様のせいだよね。なんで村の子に気を使われなきゃいけないわけ?

プリプリとしながらお肉を拾い始めたが、何故か近くにいた女性に声を掛けられた。

「あ、あの・・・手伝いましょうか?」

殺伐とした中にも、優しい人もいるんだな。

「お願いできますか?」


集めた干し肉はそれなりにあったようで、これだけあったら炊き出し100人分はあったのにと思うとやっぱり悔しさが出てくる。食料不足だと争うぐらいなら、分け合って食べたほうが確実なのに。


汚れたお肉を見て、溜息が出てしまう。浄化で綺麗にしてもこれを流石に使うのは気が引ける。

さて、どうしようか。みんなの視線がお肉に集中している。どうするのか気になるのかな?

何かいい案があるなら、聞いてみようかと思い始めたころ、一番初めに片づけをと声を掛けてきた女性が、恐る恐る話しかけてきた。


「これ、どうされるのですか?」

その瞬間、幾つもの視線を更に感じた。

ああ、えーと・・・。踏みつぶされようと食べ物は食べ物ということでいいのかな?

周りにいる人たちの顔色を見てみるが、正直健康そのものとは言えない気がする。食べ物がやっぱり十分じゃないんだ。

これをあげるのはいいんだけど、ただで配って逆に揉め事を増やしたくない。それなら野菜を入れてスープ作って、安い値段で売ってしまおう。その売り上げは孤児たちを面倒見てくれる施設とかに寄付できればいい。

ニッコリと笑いかけた。


「こうします。浄化!」

「「おおおおおお!!」」

「捨てるのは勿体ないということですよね?だったら、食べられるようにします」

「そ、それを売って頂くことは出来ますか」

「出来れば多くの人に食べてもらいたいので、調理して小銀貨1で販売します」

「え、小銀貨1?」


鍋をこの場で作るのは久々だ。精霊もいないし、上手く固まるかな。

「錬金」

なんとか合格?

流石にリュックから鍋や野菜やあれこれ出せない。これがマジックバッグだとバレるから。となると困るのが、材料が足りない。

「カーヤ、このお肉切り刻んでもらってもいい?」

「ヨハン、ビアス。火を起こして」

「父さん、マーティンさんのところまであたし抱えて戻ってくれる?他の材料取りに行きたいの」

それだけであたしの意図が伝わったようで、二つ返事だった。

「わかった」

その上護衛をしてくれていた冒険者の人に、引き続き三人の警護をお願いするのも忘れない。

流石、あたしの父さん!


未だあちこちで逮捕劇が行われているが、なんのその。あたしには関係ない。今は三人が頑張って運んできたお肉を、無駄なく皆に食べてもらう食事が大事だ。

父さん号に乗って、一気に戻ってもらった。荷馬車に乗って隠れたら、そこから一気にいろんな野菜を出した。先ほど仕舞った干し肉も一袋追加。

「足りるかな?」

「足りないな」

「だよね。一度戻って母さんとエディも連れてくる。米も追加で持ってくる。待ってて」


家に戻ればリビングに、全員集合状態だった。

「ああぁ――――――——、シエロとシャンスはお留守番で」

「何言ってるの。僕は当然行くよ。聖女が活動するのに、僕がいないとかおかしいし」

「いやー…シエロは待機で。あなたが来たら目立ちすぎて動きづらい。何かあったら呼ぶから。シャンスもね」

「母さん、エディ。食べ物が足りてないの。スラム街も結構広くあるみたい。干し肉もだけど、野菜と米持って行きたい」

「じゃあ、荷車に詰め込んで、それ事運ぶ?」

「そうする」


母さんたちに蔵に食料を取りに行って貰っている間、精霊さんたちにもお願いして、果物を取って来てもらう。この際だから沢山詰め込んでしまえ。

後は塩も。

荷車一杯に詰め込まれた野菜が、次々にリビングに運ばれてきたのを見ていると、ふと頭に何かが過った。あれ?今なにか・・・?





ああ、そうか。そうだよね。

あれだけ的確に指示出せる人が、今まで何故放置していたのか。あの時過った疑問を放置したから、気づくのが遅くなった。

あの町長にしてやられたね。

まあ、ある意味すぐれた為政者なのかもしれないけど。

村にも一人そう言う人が居るのだから、大きい街に居ないはずがないのに、頭からその事がすっぽりと抜けていた。

何で忘れてたんだろう。最近は戦闘もモードだったから、こっち方面は油断し過ぎてたかも。

ああ、面倒だなぁ。

その時は腹を括って対峙するしかない。

神託を受け取れる教会側の人間と。



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