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108.精霊村あらたな一歩、こっそりガチャ

これから交渉が始まるのかと見守っていたが、残念ながらもう陽が欠けてきた。

それにここまで長旅をしてきた人たちが、お風呂にも入ってお腹いっぱいご飯を食べ酒を飲んだら、必然的に眠たくなる。

詳しいことは明日ということで、解散となった。


まだ飲みたいという人たちにはこれをということで、お酒を1本進呈したらしい。

その方が村の人もゆっくり休める。


父さんもやり切ったと言わんばかりの顔で、母さんと帰ってきた。

もちろんあたしは転移で先に家に戻っている。


あたしたちも早速食べようと、夕食の準備を始めた。

「なんでみんないるの?」


精霊達は最近は態々食事に来ない。この村にいるだけで食べなくてもいいのだから、それで問題なかった。

ただ宴会などの楽しいことには絶対に参加。

魔素のたっぷりな食事や目新しい物が出たら食べに来る。

そんな感じだっただから、準備する予定ではなかったのだけど。

あ、勿論シャンスや長は常に数に入っている。


「長とシャンスがいい物狩ってきた」

「え、いつの間に?」

「我らは暇だったからな。それにあの匂いを嗅いだら、食べたくなるではないか」


「確かになぁ。あの場に居るだけで、腹が減った」

「確かにね。お腹空いたわね」

「空いた、空いた」


エディはあたしと同じように、樹に潜んでいただけじゃない。

お腹空いたことは、間違いではないけど。

でも態々?暴れ牛なら持ってるじゃない。


「え、まさか狂牛狩ってきたの?!」

「「狂牛?」」

「その通りだ。ワンパンで倒すのは簡単だったが、あやつは逃げ足が速いからな。探すのに苦労した」

「フェンリルが追いかけてくるとか、狂牛にしたら悪夢だな。そりゃ全力で逃げるな」


「だからね!食べるでしょ?」

テーレ。可愛く言ってもね。

「暴れ牛ですら大きいのに、更に大きいんだよね?今から捌くとなると時間かかるよ」


「そうだな。今からだと時間かかるし、長達がいることはまだ、知られない方がいい。商隊の人たちが帰ったら、皆で食べるのはどうだろうか」


皆が長を見つめる。

決定権は獲ってきた長にあるのだから、どうするか決めてもらうしかない。


そんなこんなで、結局狂牛は次に回されることになったのはいいけれど、期待した食欲を抑えるために何かを作るべし的な?


あたしは仕方なく、暴れ牛を薄切りにしてもらってタレを絡ませ、煮込んだ中に卵を落として軽く混ぜた。

みんなに渡るようにご飯を盛り、その上にかけることにした。


給食のおばさんになった気分だよ。

みんなに配給して、頂きますだ。



次の日にはマーティンさんとマルクさんとの話し合いも無事終わり、お互い笑顔で握手していた。

基本的肉は鹿とイノシシの干し肉を中心にして、貴族用に暴れ牛の干し肉を用立てることになった。

保存状態がものすごく良いと言うことで、マーティンさんもマルクさんもホクホクだ。

シンが蔵に時間停止かけてるからね。傷まないのだから、保存状態は最高に違いない。


次に喜ばれたのはやっぱり酒。原材料がないのだから、酒も作れない。

わざと水で嵩増ししたものでも、かなり上等だと言ってた。

お酒の好きな水の精が、普通のお酒を造るはずもなく、凄く納得だ。


馬車3台に干し肉とお酒を詰めるだけ詰めて、日持ちがしない為に自分たちが食するだけの野菜も買い込み、マーティンさん一行は三日目の朝に帰ることとなった。


その一行にカランキ村のもう一つ先、ボルテモンテ町まで、今回15歳になる男女3名が研修生として同行する。内訳は商人希望1名と、冒険者希望2名。

その研修費用として、商隊に今回二日間で請求する予定だった食事代や宿代を無料にした。


これはお互いメリットがあったので、問題なく受け入れられた。

こちら側としてはある程度皆能力は高いが、他を知らな過ぎて世間知らずな為、騙されたりしないようにするために、視野を広げること。(お金の使い方を知る)

そして、圧倒的に経験不足を補うことだ。


商人側としてはこれから精霊村との付き合いが密になることや、三人の能力の高さで道中不安がないこと、騎獣のコッコひこちゃんの存在だ。


攻撃力は申し分なく、荷馬車も引けるとなれば、全く損はない。逆に居るだけで雑魚の魔物は寄って来ないのだから、有難い存在だ。ちなみにランクで言えばBランクほどの強さになる。初めて外に出る村人の護衛も兼ねている。


「では、お願い致します。マーティンさん」

「こちらこそ、良い取引をさせて頂きました。ヨハン君の露店も補佐させて頂きます」


そう、商人希望の男子ヨハンは実際にボルテモンテの町で一日露店を出し、売り買いを行う。その補佐をマーティンさんの商会がしてくれるという。

その為ひこちゃんが引く荷馬車には、干し肉とお酒、反物が詰め込まれてれた。


「頑張っておいで」

「はい!」

ヨハンの両親が肩を叩いで、激励している。


そして荷馬車の両端に冒険者希望の男子ビアスと女子カーヤが緊張した趣で立っている。

こちらの二人にもそれぞれが、頑張れと口数少なく激励していた。

少し涙ぐんだ様子にもらい泣きをしそうになるが、グッと我慢する。


この世界たかが1週間と言えども、連絡が取れないというだけで、何があったのか知る術がない。

その為、安全に戻ってくるということが、とても大事なことなのだ。


これを見て、両親に本当に心配かけてたのだと実感したが、ひっそりと謝る。

何かあれば、飛んでいく気満々でいるからだ。


今回こっそりと卵ガチャをして、ハルファスという偵察に向いている鳥が二羽生まれ、名をグランとグレイトと名付けた。

攻撃力も申し分なく、隠匿というスキルを持っている、忍者みたいな鳥だ。


7番目 グラン 魔法生物

 『偵察』『隠匿』『風魔法』『伝達魔法』

    グレイト 魔法生物

 『偵察』『隠匿』『声真似』『伝達魔法』


違いがあるとすれば、グランが風魔法で攻撃に向き、グレイトは声真似という特殊技能を持つことだ。

今回はグランがこの荷馬車に付いていき、グレイトはグランの見たものを伝える受信機の役目をする。

何か不測のことがあれば、あたしにすぐに伝わることになっているという布陣で動く。


「出発する!」

マーティンさんの声で、馬も動く。


「頑張ってね!」

子供たちの熱い視線を受けて、三人は手を振りながら新たなる一歩を踏み出した。



読んで頂き、ありがとうございました。

少しだけ物語が進みました。


これからもよろしくお願いします。

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