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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#2 鬼哭啾々
27/41

その1

 ふと目が覚めて、自分がどこの誰かわからず、どんな状況かもわからず、ものっすごい不安になることがたまにある。

 そういうときはたいてい夜勤明けで寝て、19時くらいに目が覚めたときである。

 真っ暗な部屋のなかで、オレは猛スピードでいろんなことを思い出してゆく。自分が誰なのか、そしていまの状況を。

 オレの名前は蛍田桂樹(ほとだ けいき)。ニックネームは……あ、これ以前にやったね。


 ちがうんスよ、問題は黒塚さんたちのことですよ。そしてあのPC爆発事件である。

 オレはベッドから起き上がり部屋の明かりを点ける。すると、粉々になったはずのマイ・ノートPCがすっかり元の姿でそこにあった。

 じゃあ夢だったのか……しかし、どこから?

 そのときスマホが不意に鳴り、オレは跳び上がりそうになるくらい驚いた。急いで発信者を確認する。友人のオガからだった。


 黒塚さんの言葉を信じればオガは架空の人物で、この世には存在しないんじゃなかったっけか。

 まあ、ふつうに考えれば黒塚さんのほうが戯言だ。ってゆうか、さっきのはぜんぶ夢だったのだ。

 しかし、どこから? ……延々とこの疑問を繰り返す。

 ウダウダしているうちに着信音が止まってしまった。オガにかけ直さなければ……と、スマホの待ち受け画面を見て心臓が跳ね上がった。


 4月19日、19時4分、と表示されていた。

 オレにとって2回目の4月19日だった。オレはすでにこの日を経験している。そう、この日オレはオガと「ひじ」で飲んだのだ。

 つまり、いまの電話はオガからのお誘いで……。


 ヘンな汗が出てきた。これまで相当おかしな目に遭ってきたけれど、ぜんぶ夢だったと考えれば、まあ納得できる。

 しかし、こればかりは現実だ。オレはおなじ歴史を繰り返している。あるいは予知夢、既視感デジャヴというやつか……。

 いずれにしても、かなりヤバいぞこの状況。ダメだ、独りじゃ抱えきれない。誰かに相談しよう。そうだオガにしよう!

 ひとつ深呼吸して、オレは友人に電話した。



 20時まえにはもうオガと「ひじ」で落ち合っていた。

 この小料理屋までオレは徒歩で行ける。オガは電車で2駅だ。

 なぜオレの最寄りの店を使うかといえば、オレのほうが都会の駅に住んでいるし、それにオレは彼よりふたつ年上だからね。

 だが、いまはそんなことは、どうでもいい。

「やあ蛍ちゃん、ひさしぶりだね」

 オガは前回とまったくおなじセリフを吐いた。そりゃそうだ、彼にとっては1回目だ。


「そうか? 毎月ここで飲んでいる気がするけど」

「ふた月ぶりだよ」

「そうか……とりあえず、おつかれ」

 瓶のラガーで乾杯した。ん、うまい。2回目だけど、うまい!

「それよかオガ、聞いてくれよ」

 オレが切り出すと、彼は眠そうなタレ目を(しばた)かせた。毎回思うがこいつはガチ○ピンに似ている。


 前回同様、まずはオフ会のことをオガに話した。彼は聞きながら、厚揚げを箸でくずして口に運んでいた。

「厚揚げはしょうが醤油にかぎるな」

 言ってオレも料理を口にした。正直、緊張してまったく味がわからなかった。

 できるかぎり前回とおなじ話に持って行くのだ。オガの反応、その微妙な差異を見極める必要がある。


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