※ 世界のシステムについて
新規ダンジョンを作るにあたり、世界のシステムについて調べた。
凄まじくめんどいんだけれど、ダンジョンの設定をする上で、これを調べておかないと話にならなくなっちゃったんだよね。
正確には、仕込む宝物の関係で。
で、分かったことなんだけれど、この世界はある意味ゲームと一緒ということだ。……いや、箱庭ゲーみたいなもんだから、ゲームといっても過言じゃないのか。
世界の難易度によって、神が手を出せる頻度が変わるっていうのはいったよね。
この難易度の違いっていうのはなんぞやというと、世界に架せられている制限のこと。
難易度“簡単”だとすべてが制限解除されていて、“やめとけ”だとすべてが制限されている。
この制限っていうのが“名付け”とか“魔法”だ。他にも細々とたくさんあるようだけれど。
なるほど。これでは“やめとけ”の世界が地獄モードというのがよくわかるよ。
自身の手出しも世界もガチガチに制限されていて、どないせいっちゅうーんじゃ! ってなことだよ。
あ、この制限を外す方法というか、外させる条件というのもあるにはあるんだ。
それは他の惑星との関係を得た場合。それが友好であろうと敵対であろうと、相手方の存在がこっちの惑星に降り立った時点でロックが解除される。相手の難易度がその惑星より緩い場合に限るけど。
“やめとけ”の世界に“普通”の世界の者が入り込んだ時点で、難易度は“やめとけ”のままだけれども、各種制限が“普通”と同等になるんだよ。
神が手を出す頻度は変えられないけれど、名付けの加護だの魔法だのが一気に解放される。
実のところ、これはこれで大問題であるようだけれど。
“やめとけ”の世界では魔法の類は基本使えない。うん。基本はね。でも稀にその制限を突破して使える者がでてくるんだよ。いわゆる超能力者なんて呼ばれている人ね。
そういった人たちは制限が掛かっているにもかかわらず、魔法的力を行使しているんだけれど、これが制限が外れると一気に強力なものに化ける。その上、名付け効果がいきなり付与される。
人によっては膨大な力が暴発して果てるんだけれど、これを使いこなして悪事を働くようになったりすると、神が数少ない手数をつかわざるを得なくなるのだそうな。
まぁ、私がいるこの世界は“普通”の世界だから、そのあたりの心配は一切しなくていいんだけれどね。
さて、その制限関係周りの事だけれど、その調整は各惑星の難易度と、各惑星の管理神によって行われている(私もその管理神という位置づけとなっているらしい)。
ある程度、好き勝手に改変できたりするわけだ。そしてそれを分かりやすくいうと、ゲームでいうところのMOD。
MODというとチートを思い浮かべる人もいるかもしれないけれど、必ずしもそういうものじゃない。ゲームでいえば、装備品の追加とか、見た目の変更とか、ものによっては非公式でのバグ解消とかね。
まぁ、装備品の追加に関しては、その性能の設定によってはチートになるけれど。
世界の難易度は、このMODをどこまで認めるか、というような感じ。で、管理神はMODを追加して世界に影響を与えているわけだ。
宇宙全体での調整も行われていて、各世界が相互に影響を与えている。いや、与えているのかな? 惑星間での侵略戦争なんてものが勃発していれば、その辺の相互影響はでそうだけれど。
まぁ、それはいまは関係ないから考える必要はないね。
さて、難易度“普通”はかなり緩い制限の世界だ。制限解除をせず、また世界に多大な変更をもたらすことを行わない限り、私は手出しをすることができる。
そんなわけで、ダンジョンに色んな機能を持たせる関係上、そのMODを大量に創る羽目になったわけだ。……自業自得だけれど。
まず、新規で魔法を創る。これも宝物のひとつとして追加するからね。
そして技能を創る。こっちは下手に作るとかなりチートじみたことになるから、技能と云っても、パッシブ技能のみになるかな? というか、その方が無難みたいだ。結構制限があるんだよ。
そう、この世界にも技能ってあるんだ。でもこれは難易度“やめとけ”と一緒。自身で鍛えて身に着けるものだ。技能のレベルもあるけれど、これは武道やらなんやらでいうところの段位と一緒だ。
だからゲームみたいにスキルポイントを振って身に着ける、なんてことはできない。
いや、考えても見てごらんよ。例えば剣道の有段者。身体を鍛えて、竹刀なり木刀なりを振るのに十分な筋肉がついているわけだ。
それをひょろひょろの肉体の魔法使いがスキルポイントを使って、剣術の達人にまでなったとして、その途端に鍛え上げられた肉体を持った剣士になるのかって話。ははっ、ねーよ!
もしなったらびっくりだよ。というか、みんな真面目に身体を鍛えようとかしなくなるって。逆もまた然りだよね。魔法を真面目に勉強しなくなるだろうね。
なので、そういうところは“世界”によって、追加できないように制限されている。
現状、追加する予定の能力は【MP回復量増加】のみ。【敵意感知】とか【暗視】とかを検討中。いや、後者ふたつはちょっと弊害がでそうだからさ。【敵意感知】は便利だろうけど、スキル頼りになると素の危機感が低下しそうだし、【暗視】は夜空がつまらなくなりそうな気がするんだよ。
昼間と同じ明るさに見える状態で夜空を眺めるとか。風流はどこへ消えた! って感じになりそうでさ。いや、気にもされないかもしれないけど。
ON、OFFができるようにできればいいんだけれど、絶対身に着けた奴はOFFになんてしないだろし。
その辺りは要検討だ。……そもそも暗視能力のあるゴーグルでも宝物で出せばいいのか。うん。却下。
……付加能力はもうちょっと検討してから宝物にしよう。いろいろと問題になりそうだ。
さて、この世界のシステムは本当にゲームだ。
さっきは、神が手を加える=MOD追加、といったけれど、ほかにもある。
自然環境の調整やらなんやらは管理システムが行ってくれるから、神は特に手を加える必要はない。その世界の連中が環境破壊をやらかしまくって自滅に道を進んでいるとしても、よっぽどのことが無い限り、それを正常な方向へと修正することも無い。
いや、神の目的は神を生み出すことだからね。自身の面倒くらい、自分でどうにかしろというものだ。滅びたら滅びたで問題なし。5億年も経過すれば、また知的生命体が誕生するくらいに世界を調整できるというものだ。化石燃料だのなんだのもまた形成されるしね。
まぁ、そっちはダンジョンに直接かかわらないことだから、ひとまずは置いておこう。
次にモンスター。
こいつを追加する。生態系の問題もあるから、一代限りの生殖能力なしを前提に作ることにした。これなら生態系に与える影響はほとんどないからね。ダンジョンからでることも想定すると、そのあたりも考えないといけないんだ。
結果、生物という括りから外したモノにすることに決定。
それに合わせて、50種ほど創ったよ。いわゆる進化系なんてものも設定したからやたらと増えた。進化後のデザインを加えると、72+4かな。現状は。
間に合わせて無理矢理創ったのもいるけれど
生態系に影響を絶対に与えない、ということもあってか、このモンスター群に関してはほぼ無制限に追加できるみたいだ。
まぁ、さすがに大虐殺を行うようなことになるとダメだけれど、そんなことには先ずならないから問題なし。さすがに祖竜レベルのモンスターを追加したりしないからね。
創ったモンスターはみんなお気に入りだけれど、特に気に入っているのが“ヴォーパルバニー”と“ブンシャカ”
ヴォーパルバニーはいわゆる首刈り兎だけれど、外見を思いっきり変えた。兎耳幼女。両手には血塗れナイフ、もしくはショテルを装備している。
そしてブンシャカは長身の細マッチョ剣士。中国剣士っぽい服装の男性。でも頭は球体。地球儀みたいなのが乗っていると思うと分かりやすいかな。ただ表面は地図ではなく、錯視効果のある紋様が描かれていて、絶えずくるくると紋様が動いている。そのため、頭を見ていると目が回ると云うか、距離感が行方不明になる。
ブンシャカは厄介だぞー。視覚に頼った戦い方をするとあっという間に勘が狂って切り殺されるから。
ふふふ。私の最高傑作だよ。でも作ったモンスターの中だと、最強ではないんだけれどね。最強は竜。これは譲れない。だからダンジョンの最上階を徘徊しているのは竜だ。
これの他に、騎乗可能なモンスターも多数創ってある。
うん。テイムというか、ダンジョン内にいるモンスターは一種を除いて手に入れることが出来るようにしているんだよ。例外の一種は手癖の悪いヤツだから、さすがに人に渡す訳にはいかないからね。
こっちの世界にはモンスターテイマーはいないらしいから、ウチで初めて生まれるだろうね。一応、いっ子がディノトリスを持っているから、いっ子が初のモンスターテイマーになるのかな?
そういえば、じっ子にくっついてきた魔法師見習の子が、モンスターテイマーの資質が抜群らしい。うん。彼女にダンジョンのβテスターをやってもらうと共に、モンスターを拾ってきてもらおう。
あとでじっ子を呼んで、一緒に話すとしよう。
普通のなら2体でほぼ限界だけれど、彼女ならその10倍はいけそうだし。モンスター……幻獣の使い勝手を確かめてもらうとしよう。
あ、ちなみに、モンスター1体1体がそれぞれ個別のMODだ。基本はダンジョン・コアが生み出す使い捨てのモンスターと同じものだ。違うところもあって、身体的スペックは変化しないものの、経験を積むことで戦闘能力は上がるようになっている。うん。記憶が蓄積するようになっている。でもって、自我ももっているから、ある程度の自律行動もする優れものだ。
もの凄く優秀なペットロボ、と思っても差し支えないかな?
人の頭をダンジョン・コアに見立てて、モンスターのデータを詰め込んだMODを脳に導入。それを起動することで、自身の魔力でモンスターを具現化する。見た目的には召喚魔法にみえる。でもMOD導入方法がテイムという、妙なことをしているから、モンスターサモナーではなく、モンスターテイマーとしている。
幻獣と云い張って、死ぬことはないから、殺されても再度召喚できるよ! と嘯く予定だ。
いっ子からディノトリスの感想を聞いたところ、かなり優秀なようだ。疲れ知らずで、最高速度で延々と走っていられるらしい。追っ手のひとりを尻尾で足を払い、転倒したところを振った尻尾を戻す動作で引っ叩いて昏倒させたそうだ。
うん。ちゃんと手加減とか、指示に従って柔軟に動いているようだ。設定したロジックは間違っていないね。
しくじってバーサーカーとか創っちゃったら目も当てられないからね。
よし。あといくらか試験をしたら、一気に生産をすることにしよう。
まぁ、こんな感じに世界のルールに従って、拡張をはじめているよ。
あんまり広範にやりすぎると、取り返しのつかないことになるから、やるのはウチのダンジョン内だけだけどね。
幻獣は外に出すけれど、身に着けた人物の死と共に消えるから問題なし。生殖能力もないしね。なにせ魔力で疑似的な肉体を創っているだけの、まさに幻だもの。
折角、さした問題もなく動いている惑星に、あれこれ手を加えるつもりはないよ。他所の神様は積極的にやっているのかな? “簡単”の世界なんかは、自由度が高すぎて却ってやり難そうな気もするし。“難しい”の世界は、逆に頭を適度に押さえこまれている分、上手くできていそうな気がするよ。
まぁ、私は、看過できない大災害でも起こらない限り、手を出すことは控えるようにしよう。基本、自分の創った町だけ平和なら、それでいいや。
さてと、それじゃ、最初の試験を始めようか。
そして私はストレージに送られてきた6人をダンジョンへと放り込んだ。
※誤字報告ありがとうございます。




