01 神殿の建築だ
第9章の投稿を開始します。
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全7話+閑話となっています。
よろしくお願いします。
さぁ、お姉ちゃんの復活だー!
と、張り切っていたんだけれど、延期と相なった。
理由は大神様のスケジュール。なんのかんので惑星管理をしている神様方の親分だからね。いろいろと忙しいようだ。
「まったく、肝心な時に役に立ちませんね」
と、ブツブツ文句を云っていたのはメイドちゃん。
メイドちゃんと大神様との関係性がどんなものであるのか、好奇心がくすぐられはしたけれど、聞かないことにしている。
……なんかさ、以前のダンジョン・コアの愚痴並に、延々と面倒臭い話を聞く羽目になりそうだからさ。それこそ聞いちゃダメな話まで。
そんなわけで、大神様の手が空くまで待つことになったのだ。
メイドちゃんが「ちょっと尻を蹴飛ばしてきます」とかいってまた出張しちゃったけれど。
あれ、お仕事の手伝いに行ったんだろうなぁ。
あ、メイドちゃんが出張する前に、最優先で確認しなくちゃいけないことは聞いておいたよ。
私の“神化完了”に関して。
なんというかね、いままでは、本当に最低限の存在質量で無理矢理に“神”となっていたらしいんだ。
「分かりやすくいうと、仮組みのプラモデルみたいなものです」
と、メイドちゃんは云っていたけれど、私はプラモデルとかちっとも詳しくないから分かんないよ。
えーっと、車の免許でいうと、仮免みたいなもの? 違う?
前はスカスカのいまにも崩れそうなジェンガで、いまはみっちり詰まってピースを抜くことが不可能なジェンガ? それはジェンガなの?
というか、その例えはどうなのよ? なんとなく分かるけど。
まぁ、いまは神として安定したことで、多少の無茶をしても問題ないそうだ。
さて、お姉ちゃんの復活が延期となったわけだけれども、他にもやることはたくさんあるから、手持無沙汰になるわけじゃない。
明日の朝には、みんな帰って来るし。
只今の時刻は午後の4時といったところか。早朝からはじめた森林、孤島ダンジョンの攻略は、思いのほか早く片がついた。
孤島ダンジョンが浅かったことと、森林ダンジョンが簡単に降伏したことが大きい。
それじゃ、私は私のできることをやろう。ということで、塔の1階にまできましたよ。
ここの2階では黄竜のお姉さんが滞在している。【黒教】の面々は大神殿に戻り、お引っ越しの準備中だ。【黒教】は国家に属さないと決めているため、南海の孤島にその本拠地を構えているのだそうだ。
で、私はなにをやるのかというと、神殿の建築だ。本当は要望を聞いてから建てようと思ったけれど、こっちで勝手に作ってしまっても問題ないだろう。
地上部に作った町の敷地は、直径約5.7キロの円状になっている。外周を分厚い街壁(高さ10メートル)に囲まれた町だ。意外に、私の生まれ育った町よりも広いんだよね。
故郷が狭いと思うべきか、ここが広いと思うべきか。数値的に約25平方キロって、大して広く感じないんだけれどなぁ。
んで、その外壁には12本の塔が設置されている。時計を想像してもらえば分かりやすいだろう。ダンジョン塔は南側。6時の方向に建っている。位置的には、外壁の塔とダンジョンの塔の距離は200メートルほど離れている。
神殿だけれど、この外壁の塔を中心に建築する予定だ。建築場所は次の通り、1時、3時、5時、7時、9時、11時の6ヵ所。
祖竜が興している5教と黄竜のお姉さんとで6ヵ所ということだ。
個人的には【白教】は排除したいんだけれどね。一応、“来る者は拒まず”の精神でいくつもりではある。やらかしたら放り出すけど。ついでに徹底的に潰すけど。
神殿を作るわけだけれど……どういった造りにしよう?
お任せにされたから、好き勝手に作っていいんだけれど、神殿の造りなんてしらないよ。
建前であっても、私が座するところだからってことで、設計からなにから任されたんだよ。
ほんと、どうしようね? 神殿というと、ギリシアとかローマのあれが思い浮かぶんだけれど。なんか、柱しかないイメージしかないよ。かといって、日本の神社みたいな木造建築ってわけにもいかない。さすがに石や煉瓦で家屋を作っている文化のところに、木造建築をぶちこむのも問題だろう。
暫し悩んだ末、神殿っぽい建物と云うことで、ホワイトハウスをモチーフに作ることにしたよ。見たことのある写真だと、あの正面の柱なんかは神殿っぽいし、いいんじゃないだろうか。
ちょっと調べてみよう。……あぁ、複数の棟からできてるんだね。そりゃ国家の中枢だしね。えーっと、複数建物を建てる必要も……あぁ、いや、神官さんたちの宿舎みたいなものもいるのか。それは集合住宅というか、学生寮みたいなのでいいから、神殿本体は、よく写真で見るホワイトハウスの建物でいいよね。まったく同じじゃなくて、こっちの建築様式っぽく変えてと。
あ、高さが20メートルとかあるのか。ふむ。それじゃ街壁の塔も同程度まで高くしておこう。
それじゃ、そーれ、建築! っと。
ででん、とあっという間に神殿ができあがる。
うん。いい感じ、これで問題ないだろう。タージマハールみたいな感じでもよかったかな? いや、でもパルテノン神殿なんかを考えると、こっちのほうがらしく思えるんだよねぇ。
うん。十分、十分。
中央部分が拝殿。その奥に進むと街壁の塔へと繋がっている。
で、北翼と南翼には会議室とか広間とか食堂に厨房とを設置。2階と3階に広めの部屋を配置した。あとは、要望があれば改築すればいいや。
神殿のデザインは基本、みんな一緒にする予定だ。細かな装飾だので各宗教ごとに変化をだしてもらおう。
とりあえず、5時の場所には建てた。あとは7時と3時の場所に建てておこう。
コアに指示をして、神殿を追加でふたつ建てる。
こんなとこかなぁ。
あ、そういや明日、赤竜さんが来るんだよね。一応、黒竜のお姉さんにも連絡をしておこう。
黒竜さんたちは引っ越し準備のために戻っているわけだけれど、そのお手伝いでゲートを開いて送ったんだよ。黒竜のお姉さんが顔を引き攣らせて、黄竜のお姉さんが苦笑していたけれど。
ここまで飛んできた苦労は!? とか思ったんだろうなぁ。
尚、ゲートを潜って戻る時も、神託の巫女と神楽の巫女のふたりは気を失ったままだった。……夢でも見てたんだと思われてそうだ。
ゲートを開いて通り抜け、開いた先にいたベッドに寝そべってお菓子を食べている黒竜のお姉さんに、明日早朝に赤竜が町に来ることを報せる。ついでに神殿ができていることも。
黒竜のお姉さんは慌てて立ち上がろうとし、ベッドから転げ落ちた。
私は騒がしいお姉さんを無視して、ベッドと執務机ぐらいしかない殺風景な教皇の執務室を見回し、タペストリーが張られているだけの壁に目を付けた。
そこに床から天井までとどくサイズの窓枠を設置し、それに合わせてゲートを設置。ひとまずダンジョンの塔の前に繋ぐ。
「神殿は3つ建てましたので、どれにするか選んでくださいね」
そういって私はいましがた開いたゲートを潜り抜けた。
私がゲートを潜り抜けると、黒竜のお姉さんも転びそうな勢いでゲートを通り抜けてきた。
「め、女神様! 神殿ができたというのは!?」
「あそことあそことあそこね。とりあえず、ダンジョンに近いところに必要数建てたよ。お姉さんと黄竜と赤竜の分ね。どこがいいかな? それにあわせて、このゲートを移動して維持しておくから。少なくとも引っ越しが終わるまでは」
黒竜のお姉さんは私の指差す先を順に見て、目をパチパチと瞬いていた。
「姉上、いつのまにここ……に……」
あ、黄竜のお姉さんも来たね。黒竜のお姉さんの気配を感じたんだろう。
む? なんで私を凝視してるんだろ?
「女神様。つかぬことをお伺いしますが、なにか変わられましたか?」
「あ、わかるんだ」
神気の類は漏れないように、ちゃんと隠蔽しているんだけれど、やっぱり神(仮)から神(真)となったことで、微妙に雰囲気が変わっているようだ。
「これまでの不調が解消したんだよ。特には変わっていないよ。強いていえば――」
これまで意識していたことを止めて、ちょっと気を抜く。
たちまち私の身体が光り出した。
「気を抜くと光るようになっちゃったくらいかな? まぁ、たいした違いじゃないよ」
なんか、光るように決められているらしいんだよ。管理システムに聞いてみたんだ。そしたら《神は光るものです》と大真面目に答えられたからね。断言された以上、こっちも「あ、はい」としか答えらんないし。仕方ないから、そう云うものだと諦めたよ。
まぁ、意識すれば消せるし。その内、気にせずとも消していられる様にもなるだろう。
「私のことはどうでもいいよ。それで、どこにする? 別の場所がよければ、そっちに移転するよ。【青教】と【緑教】が来るかもわかんないのに、建てるのもなんだしね」
私は目を丸くしているふたりに問うた。
「女神様! 【黒教】はそこで! そこでお願いします!」
黒竜のお姉さんが5時の位置の神殿を指差した。
「はいよー。それじゃこのゲートは神殿入り口脇の壁のところに移動しておくね。引っ越しが終わったら撤去するからね」
そう云って、私は黄竜のお姉さんに視線を移す。
「私は向かいの神殿を。ですが、私にはまったく不要なのですが」
「そうだろうけど、一応、持っておいてよ。これまで通り、こっちの塔に住んでていいから。単純に竜の姿をしているときの離発着場と思ってよ。
一応、入り口は閉鎖しておくね。私に云わずに中に入る時には、上からか……街壁内を通って入ってね」
「使うことはほぼないと思いますが……お気遣い、ありがとうございます」
「あんたも宗教を興せばいいのよ」
黒竜のお姉さんが胸元でパチンと手を合わせた。
「姉上、なんでそんな面倒なことをせねばならんのだ」
「暇つぶしにはなるわよ」
あっはははは。凄いな。宗教を暇つぶしって云ったよ、【黒教】の教皇様。まぁ、祖竜としてはそんな認識なのかな? そもそも黒竜のお姉さんは自身で宗教をはじめたわけじゃなく、集まって来た人が黒竜を崇めだしたのがはじまりらしいから。
この性格からさっするに、暇つぶし半分、面白半分でそれに乗ったんだろうなぁ。もっとも、乗ったはいいけど、降りられなくなっていまに至っているみたいだけれど。
それを考えると、このお姉さんも大概お人好しだよねぇ。
「そもそも、私が教祖となったところで、なにを“教え”としろと?」
「あんた武闘派なんだから、戦いを教えにすればいいじゃない。『日々を生きるのは戦いである。故に心身を鍛え、清く正しく生きるのだ』とでもいって。
そして独りよがりではた迷惑な【白】をのめして頂戴」
「それをやらせたいだけだろう!? 私だってあの馬鹿の相手はご免こうむる」
……どれだけ白竜は嫌われてんのよ。姉妹にここまで云わせるって、大概だよ。
明日、赤竜さんが到着したら聞いてみよう。……あ、そういやドーベルクとベルシュって、小競り合いが続いているんだっけ? となると、悪口雑言しか聞けないかも。
まぁ、私自身、【白教】の考えは大嫌いだから聞くこともないか。聞いた話だと、ベレシュ神聖国ってダメな方向に突っ走った共産主義みたいになってるらしいし。完全にディストピアなんだそうな。「市民、幸福は義務です」を冗談じゃなしにやってるっぽい。いや、違うな。思考することを害悪とした施政をしてるって云った方が的確か。うん。最低な国だ。日本の近所にもそんな国があったけど。
「それじゃ、あっちの3時位置の神殿を【赤教】のものとするよ。と、神殿の脇に宿舎を建てておくね」
【黒教】の神殿とした建物の脇に、いかにも学生寮っぽい建物を建てる。3階建ての現代的コンクリ建築だ。ちょっと学校の校舎っぽくも見えるな。もちろん、1階部分に厨房と食堂、そして浴場施設を設置してある。これで生活面は問題ないだろう。
あと不足しているのは食糧くらいだけれど、そっちは暫くはこっちから提供すればいいや。
なにせ黒竜のお姉さんが滞在していれば、それだけで結構なDPが入るから、食糧の交換は問題ない。多分、1日の滞在で、100……いや、200人分くらいの食糧は賄えるはずだ。
多少不在であったとしても、黄竜のお姉さんがほぼ常駐しているから、DPはいい感じで溜まっていくしね。それに、大牙砂蟻も復活させて、ダンジョンの一画で飼う? ようなことになったし。
DPの収支は赤字状況から脱しつつあるよ。
とはいえ、DPだよりも問題な気がするから、ダンジョンの地下1階部分の一画を整備して、農場にしてもいいかな。あぁ、もちろんダンジョンのオブジェクト扱いじゃなくて、普通の農場ね。
さて、それじゃ最後に。
「お二方。なにか神殿のほうの要望はある? いまならある程度は変更はするよ。外観とか。あぁ。シンボルとかも必要だよね。それも教えてもらえれば、くっつけるよ」
私がそういうと、黒竜のお姉さんが食いついた。黄竜のお姉さんは苦笑いしているけど。
ということで、【黒教】神殿の正面上部の壁に大きくシンボルを刻んだ。うん。レリーフにした。
【黒教】のシンボルは、いわゆるアンクみたいな感じのやつだった。十字架の頭をハートマークにした感じのものだ。それを下部分が長い六角形で囲っている。
棺桶? いや、確かに【黒教】は生死を教えの中心にしている宗教ってきいているけどさ。
ついでに黄竜のお姉さんの神殿にもシンボルを刻んだ。なにもないのも問題になると黒竜のお姉さんがが騒いだため、黄竜のお姉さんが折れた感じだ。
こちらのシンボルは剣。鍔の中央に宝珠が嵌っているようなデザインの剣だ。鍔が横に長いから、これまた十字架にみえる。ついでにいうと、この剣をやや丸みを帯びた菱形で囲っているため、盾のようにも見える。
さっき戦い云々と話していたから、そこから来ているのだろう。
よしよし、出来栄えに満足だよ。
後は、明日来る赤竜さんの応対をお願いして、創り忘れていた必須の施設を建てるとしよう。
※感想ありがとうございます。
リビングアーマーやリビングドールが完全魔法由来ではなく、科学に傾いているのは、主人公が魔法をそこまで(当時は)信用していないからです。
実際、オートマタの頭脳部を、理解不能で現状の科学では創れんと云っていますし。




