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目が覚めたら目の前にドラゴンがいたのでとりあえず殴りました。  作者: 和田好弘
第6章:新規ダンジョンの整備をしよう
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03 半壊したバベルの塔


 さぁ、今日は地上の整備だ。


 なにせ整地して、壁と塔の側を作っただけだからね。


 ……いや、塔のつもりで作ったんだけれど、これ、塔といっていいのかな。


 直径が500メートルで、高さが300メートルってところ。


 ……塔というか、なんだろ、天辺を切り落としたピラミッド? 先細りにしているから、そう見えなくもない。ただ、ピラミッドほど先を絞ってはいないけれど。


 モデルにした半壊したバベルの塔みたいではあるけれど。ほら、有名な絵画があるじゃない。あれをモデルにしたんだよ。まぁ、螺旋状の塔ではないけれど。


 ただ、この塔は1階と2階だけ作って、そこより上層階は張りぼてのまんまにする予定だ。気が向いたら作るけれど、作ったところで中に入るものがなんにもないからね。


 ん? ダンジョンにするんじゃないのかって? あー、ダンジョンにはするっちゃー、するんだけど、ちょっと違うんだよ。実際の所、この塔はフェイクなんだ。まぁ、詳細はお楽しみと云うことで。


 塔の1階部分は後回しにするとして、先に町の方を作ってしまおう。


 全部一気に造らずとも、ある程度の建物は建てておきたいからね。特に公共施設をいくつか。


 さて、レイアウトはどうしようかな。


 外へと出て、まっさらな土地を眺める。なんにも建っていないと、本当にだだっ広くみえるな。


「どういった街並みにするか決めているのですか?」

「いーえ、まったく。とりあえず、住宅街、商業区、工業区、歓楽街と分けようとは思っているよ。あとは公共施設だね。集合住宅とか公園とか。医療機関と学校、それに図書館は塔の施設に組みこもう。地下鉄への入り口もつくらないと。これは塔の脇でいいかな。それと忘れちゃいけない公衆浴場! これは町の中央に広場をつくって、そこに面する場所につくろう」

「お風呂を町の真ん中につくるんですか?」

「そう。町のどの端っこからでも等距離にしておけば、文句も出ないでしょ」

「……なんでそんな変なことを気にするんですか」

「文句をいうやつを黙らせる理由が欲しいんだよ」


 絶対に遠いだのなんだの難癖付けて、近くに造れっていう阿呆がでるに違いないんだ。


「……思い込み過ぎでは」

「メイドちゃんや。そういうのをフラグっていうんだよ」


 私は云った。メイドちゃんはため息をついた。


「それで、町中に建てる公共施設は他になにを?」

「衛兵の詰め所かな。交番的なやつ」

「衛兵はドールたちに任せるのですか?」

「ん? いや、オートマタを作って配置するよ。オートマタなら絶対に賄賂なんて効かないからね」


 私は答えながら大雑把に町を区分けして、上下水を敷設。そして適当に建物を創っていく。


 うーん。なんというか、砂漠の町らしい感じで創っているから、まるで中東の町並みみたいになったよ。黄色っぽくくすんだ白で統一された町並みっていうのは、なんか微妙に味気ないね。


 せめて緑が、樹が欲しいな。ここもダンジョンの一部だから、オブジェクト化してしまえば枯れることはないんだけれど、とはいえこの気候でも大丈夫な樹じゃないとおかしいよね。


 なんとなくイメージだとヤシの木だっただけれど、ヤシの木ってこんな砂漠地帯に生えてるもんだっけ?


 ちょっと調べてみよう。


 ……。

 ……。

 ……。


 間違いじゃなかった。データヤシなるヤシの樹があるみたいだ。


 それじゃ、とりあえずそのデータヤシと竜血樹を何本かを植えておこう。それと垣根代わりに、適当に橙みたいな実をつけるトゲトゲした葉っぱの低木樹。葉っぱは刺さったりしないよ。トゲトゲしているけれど柔らかい葉っぱだ。そうじゃないと事故が起きる。これは私が勝手に想像して創った樹だ。これに関しては完全にオブジェ化しておくから、生態系に影響を与えることもないだろう。


 とりあえず、住宅を10棟。集合住宅を2棟。小売店的な店舗を5軒。大きめの店舗を2軒。工房を3軒ほど建てた。


 ……ものの見事にまばらに建物が建ってる状態になったな。まぁ、区画分けした結果だから仕方ないか。あ、区画分けは碁盤目に道路を作っただけだよ。


 あ、あと宿屋と娼館も作っておこう。娼館って微妙に変な作りの建物だからね。飾り窓とかつくんないといけないから。

 あ、飾り窓っていうのは、いうなれば娼婦のショーウィンドウみたいなものだよ。映画とかでみたことない? 面格子のはいった縁側みたいな窓の所で、扇子を仰いでいる娼婦のお姉さんの映像。あの窓が飾り窓だよ。


 性風俗関連のお店はある程度充実させておかないと、犯罪が増えるからね。揉め事なんて酒場での喧嘩くらいでいいんだよ。悪くても骨折程度で人死にさえ出なければ。


「マスター、娼館用の建物を創るのはいいですが、運営の方は?」

「ん? 町として動き出せば、どっからか移って来るんじゃない?」

「娼婦はそうでしょうけれど、彼女たちの元締めとなる者がいないと」

「なんとかなると思うんだけれど……誰かに女主人をやってもらう? でなければ、オートマタあたりを創ろうか」

「……マスター、さすがになんでもかんでもオートマタ頼りにするのはいかがなものかと。衛兵もオートマタにするのでしょう?」


 まぁ、確かにそうなんだけれどさ。でもリビングドールとかだと、しっかりとした自我を持っているしねぇ。さすがに私の家族が現状で100人超えになっちゃってるから、これ以上増やそうとは思わないんだよ。……名前を考えるのが大変だから。現状でもキャパオーバーしてるんだし。本当、名前、どうしよう。被らないように考えるのも大変だよ。まぁ、名付けはまだ先のことだから、若干の猶予はあるんだけどさ。


「あ、あの、マスター? なにもそんな盛大にため息をつかなくとも」

「いや、まぁ、そうだね。うん。ドーベルクにあぶれた娼婦のグループとかないかしらね。裏家業の一家の抗争とかで、色町から出て行かなくてはならなくなった、なんて境遇の娼館主とか」

「いや、娼婦だったら、そのまま取り込まれるのでは? にも拘らず、放逐されるとなると、なにかしら問題のある人物であると知れますが」

「まぁ、そうだよねぇ。でも立君とかを集めてもロクなことにならなそうだしね。とりあえず、いっ子たちにスカウトの指示も出しておこう。妥協だけはするなといっておけば大丈夫でしょう」


 とりあえずは先送りだ。町として動き出してから考えても遅くはないだろう。


 だいたい百軒あまりを創り、ひとまず終了とする。まだ空き地のほうが多い有様だけれど、ここから先は集まった人に合わせて町づくりをしていけばいいだろう。


 あ、一応、農地としての場所も確保しておこう。気候的に使うこともなさそうだけれど。


「それじゃ、今度は塔の内部を整備していくよ」

「外壁に門は付けないのですか?」

「あー。創ろうかと思ってたけれど、ここへの出入りは地下鉄のみにするからいらないでしょ。どうしても外へと出入りする必要ができたらつくるよ」


 回れ右をして塔へと戻る。


 塔の中は本当に側だけだから、上をみると天辺まで見通せる。さすがに問題だな、これ。


 まずは一階の天井をつくる。少しばかり高めに。イメージ的にはお役所とか病院のような雰囲気にするつもりだ。そんな感じで床や壁の装飾をする。そして中央辺りに壁をつくる。これで塔の入り口から、手前と奥とで分断された。


 基本的な施設は手前側につくることにする。


 250メートルの半円だから、十分にスペースはあるというものだ。


「なぜ前後で区分けしたのですか?」

「壁の向こう側はあることの為にとってあるんだ。それと、向こう側からダンジョンに入る、という体にするからね」


 メイドちゃんが首を傾げた。


「マスター、いったいどういうダンジョンをつくるつもりなのです?」

「それはお楽しみというものだよ。配置モンスターが全部出来上がったら、みんなに発表するよ。色々とやることがでてくるしね」

「わかりました。では、いまは訊かずにおきます」


 この初心者ダンジョンはかなり特殊にするからね。ダンジョン・コアといろいろと相談しているんだ。ダンジョン・コアも、その特殊さゆえにかなり乗り気だしね。


「まずは真ん中に島をつくるよ。そこが受付だね」

「そういえば、冒険者ギルドはどうするのですか?」

「あー。でも冒険者ギルドって、冒険者支援というよりは、お仕事斡旋所、いわゆるハロワ、昔の云い方なら職安ってことでしょ。ここは完全にダンジョン探索支援になるから、正直いらないよ。だから独自の組織をつくるよ」

「確実にケチをつけられると思いますが」

「連中には町の方に事務所を構えて貰えばいいでしょ。別に冒険者ギルドの支部を置くことを拒否したりはしないよ」


 ほぼ中央に受付の島をつくる。やや大きめ。受付部分よりも、その後ろ側に資料室的な部屋を拵えたから、それなりに大きくみえる。


 ついで左側に、図書館、教育施設、病院とつくる。教育施設は寺子屋程度のものだし、病院も診療所的なもので、入院施設なんてものはない。ポーションなんて代物があるからね。傷だけでなく、病気に効くものもあるから、基本的に医療施設って云うのは、ポーションを使うほどでもない怪我などの手当程度なんだよ。実際、この世界の医療は酷い有様らしいからね。いや、迷信に則った物とかいうわけでなく、単に、まるっきり発展していないんだよ。魔法とポーションのせいで。


 これ、思いっきりダンジョンの弊害だよねぇ。とはいえ、お手軽な方向に進むのは人間の性だしねぇ。ま、それに合わせた医療施設だから、規模は小さくて十分だろう。


 で、右側。こっちは各種ダンジョン支援施設。お宝買取り所とか、装備他諸々の販売所とか。あ、そうそう、ガチャも設置しよう。あとは、訓練施設を各種だね。


 そんな感じで部屋をつくっていく。


 と、食堂もつくって置かないとね。それとトイレを作ってと。


 こんなものかな? スペースはまだ余りまくってるけれど、そこは必要になったら、なにかしらの施設を追加しよう。


「マスター。ガチャなんて設置するんですか?」

「うん。まぁ、形式的には福引みたいな感じになるけれどね。ガチャポンの機械を置いといたら、絶対に壊して中身を持ってく輩がいるだろうし」

「……犯罪行為が行われることが前提なんですね」

「そだよ。人間なんてそんなもんだよ」


 だからメイドちゃんや、その哀れむような目はやめて。地味に心に来るから。


「それで、ガチャに利用する道具はなにを?」

「ガラポンにしようかと思ってるんだけれど。それだとレア物の確率がちょっと高くなりすぎそうなんだよねぇ」

「えーっと……スマホゲーのように、確率が1%以下にしなくとも良いのでは?」

「それもそうか。考えたら1%でも大概だよね。一応、レア度を考えてね。それぞれに合わせた景品を用意するつもりなんだよ」

「ちなみに、レア度の種類は?」

「【一般(コモン)】、【優良(アンコモン)】、【希少(レア)】、【完美(フローレス)】、【史詩(エピック)】、【伝説(レジェンダリ)】、【特異(ユニーク)】、【特異(イレギュラー)】の8つ。でも景品用に使うのは5つくらいにするよ」

「また多いですね。最後のイレギュラーはどういうモノなんです?」

「基本はユニークと一緒。神器級の一品物。だけれど凄まじく癖が強くて、普通に使ったんじゃ使い物にならないって代物。いわゆるネタ枠」

「罰ゲームじゃないですか」

「遊び心があったっていいじゃない。だからレアリティをユニークと一緒にしてあるんだよ。モノとしての強度も一緒だから、使い手次第では化ける代物になる……ハズ」


 だ、だからメイドちゃんや、そんな目で見ないでおくれ。胸が痛いから。


《マスター、緊急です。大型のモンスターが侵入しました》


 突然のダンジョン・コアからの連絡に、私は目を瞬いた。メイドちゃんも驚いたように、私に視線を向けている。


「例のダンジョンからの侵略?」


《いえ、南南東上空より飛来。こちらに向かっています。塔への到着時間はおよそ2時間後です》


 300キロちょいを2時間か。結構速いね。


「モンスターの種類は?」


《黄竜。6体の祖竜の内の1体です》


 私とメイドちゃんは顔を見合わせた。


「思ってたよりも遅かったね」

「親であった祖竜の消滅を知覚していなかったのでしょう。ここを出てより、まったくの没交渉であったようですから」

「まぁ、生み出された途端に、出てけ! って追い出されたら、そうもなるよね」

「どうされますか?」

「とりあえず、待とうか。何をしに来たのか不明だし。話ぐらいは訊こうよ」

「ご随意のままに」


 さて、たしか5000年振りの里帰りってことになるのかな? いったいなんの用で来たんだろうね。

 とりあえず、到着するまでの約2時間、メイドちゃんとお茶でもしながら待つとしよう。



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