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目が覚めたら目の前にドラゴンがいたのでとりあえず殴りました。  作者: 和田好弘
第4章:侵略を受けていますが概ね平和です
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05 きっとドラゴンも殺せる


 ドリュアドのお姉さんとお風呂に入った。


 そりゃもう薄汚れてたからさ。


 世界樹にほど近いところに新しく平屋の家を建てた。純和風。洋式だと解放感がなくて、彼女には合わないらしい。純和式建築だと、障子だの襖だの開け放つと、壁がなくなるようなものだからね。もっとも、居間とお風呂、トイレがあるだけの簡易な家だけれどね。畳敷きの居間は非常に気に入ってくれたみたいだ。


 で、お風呂の使い方を教えることも兼ねて、一緒に入ったよ。


 しかし、ドリュアドの肌の色は不思議だね。いや、色がさ。分かりやすくいうと、キュウリの中の色。あのほんのり緑色をした白色っていうの? そんな感じ。で、触り心地はどうかというと、人と変わらないね。体温はひんやりとしてたよ。


 ……いや、いかがわしいことはしていないよ。


 お風呂の使い方、シャワーの使い方だのなんだのとか、あとは石鹸、シャンプー、リンスとかの使い方を教えて来たよ。そのついでにガシガシ洗ってきたんだけれど、どんな道のりを歩いてきたんだか。見た目で分からなかっただけで真っ黒だったよ。


 泡が茶色くなるとか大概だよ。


 磨き上げて、新しいワンピと靴。それと野良着用として長袖シャツとジーンズ、それと軍手にゴム長、あと麦藁帽。それらを数セット置いてきたよ。それとタオルを沢山。


 食事は私のところで皆と食べている。人数が増えて来たので、台所の隣に食堂代わりの離れを建てて、通路でつないだよ。そうしないとみんな一緒に食事ができる場所がないからね。いずれリビングドールの残り55人もレプリカントになるだろうしね。


 なんか、高校の学食みたいな感じになったよ。


 さて、ドリュアドのお姉さん、とりあえず仮名としてコダマ(木霊)と呼ぶことにしたよ。名前的にはぴったりだと思うけれど、名付けの際には他にもいくつか提示して、そこから選んでもらう予定だ。


 そうそう、ドワーフさんたちだけれど、正式にダンジョンに属することになったよ。それに伴って拠点への立入も解禁したんだけれど、変わらずに別所で生活をしている。今後、人が増える場合にはそっち側に居住区を広げる予定だ。


 あ、そのドワーフさんたちの拠点にも、いろいろと施設を追加した。まず各種工房。工房に関しては相談しつつ造ることになったよ。さすがに現代の炉とかをいきなり出しても、扱いに困るだろうしね。そして図書室。これに関しては、いくつか日本の書籍を置いておいた。木工とか服飾とかの本。いわゆる技術書の類? ただ、それらの翻訳は私がしているから、数はまだ片手で数えるほどしかないけどね。


 そういえば、ドワーフの女性とかスカウトしてきた方がいいのかな? まぁ、それはおいおい話して行こう。


 心配事としては鉄打姫のことくらいかな。エルダードワーフって表舞台から姿を消して、どこぞで隠遁生活をしているんだそうな。で、上位種かと思っていたけれど、そうではなく、いわゆる王種ともいうべき種族だそうで、普通のドワーフからしたら神様扱いの種族なんだそうな。そんな種族の若い娘さんが姿を消したとなったら、いろいろと大問題になりそうだよ。


 ……早めに地上ダンジョンを作って、町を整備して、そこで表だって工房でも構えてもらった方が無難かもしれない。


 これも近いうちに話し合わねば。




 ドリュアドのお姉さんが来て、あれやこれや整備してから数日。私は自身の対人面を多少なりともまともにしようと頑張っているよ。


 いや、なんというか、通り一遍というか、にべもないというか、私の対応って塩対応すれすれみたいなものだと思うしね。


 会話していると“どうでもいい”と思ってんな、っていうのが透けて見えるレベルで酷いからね。


 いや、実際、どうでもいいと思っているからだけど。


 私にとって興味というか、大事な者といったら家族だけだったし。例外が親友の彩といったところだ。


 だからそれ以外の人間なんてどうでもいいというのが基本だ。かなり歪んでいるとは思うけれど、自分はこれで問題ないと思っているから、傍からしたらたまったもんじゃないかも知れないね。


 こんな人格形成になったのも、お姉ちゃんを取り巻く環境? いや、なんていえばいいんだ?

 簡単にいうと、私の姉は命を付け狙われてるなんていう、イカレタ状況だったんだよ。それもあってね、私は他人との距離をとるようになった感じなんだ。


 とはいえ、もう世界が違うわけだし。私も変わらなくちゃならないのも事実だ。


 そんなわけで、私は鬼っ子との会話を増やしている。彼女も自分にできることに関してあれこれ悩んでいるみたいでね。会話をするにはネタもあって丁度よかったんだよ。


 なので、罠関連のアドバイザー……いや、スーパーバイザー? どっちでもいいや。そんな感じで監修をして貰っている。


 あ、例の二酸化炭素充満通路に関して云ったところ、ドン引きされたよ。


「誰もそんな通路突破できないよ!?」

「魔法とかあるんじゃない?」

「通り抜けるまで魔力が足りないし、そもそも、その息をしても必要なものがない状態なんでしょ?」


 あぁ、二酸化炭素が充満しているから、中で散らしたところで意味ないね。


「なるほど。確かにどうにもならないね。まぁ、突破させない罠なんだから、これでいいんだけれど」

「これ、仕掛けるの?」

「いや、身内が掛かって死ぬとか嫌だから、実装予定はないよ」


 折角だから、例のゴブリンを殺し続けるタワーディフェンスゲームをふたりでやってみたよ。罠の見本みたいなものだからね。幾つかは効率が悪すぎるから実装する気はないけど。


 やたらとハマっていた。


「お姉ちゃん、これ面白い。でもいくつかの罠は現実的じゃないね」

「実装するにしても難しいのがあるしね」

「……洗脳キノコってあるの?」

「最高にハイになるキノコならあるかな?」

「それとあの丸太はなに?」

「丸太最強説というのがあってね」


 触れると死ぬ丸太はさすがに存在しないけどね。マジックマッシュルームっていう眩惑系のキノコはあるけど、どんな効果だっけ?


 いや、それはさておいてだ。


 機械的な殺傷能力のある罠は、実のところあまり現実的ではない。グラインダーなんかは、精々がふたりをミンチにできればいいほうだ。絶対に肉片が詰まって動かなくなる。


 対象の死体が不具合の原因と成り兼ねないため、複雑な機構の罠はあまり現実的ではない。かといって、槍の飛び出し壁、天井、床は、実質、1回発動したらそれで役割を終えるようなものだ。対象に突き刺さったら、多分抜けないから。


 そうなると、シンプルイズベストで、落とし穴とかローリングストーンが優秀な罠ってことになるんだよね。矢罠? 矢玉が尽きたら置物だよ。


 あーでもないこーでもないと、ふたりで頭を突き合わせてトラップをの組み合わせを考えていく。


 目指すはヒトコロスイッチだからね。


 バネ床とバネ壁、この移動を強制するふたつの罠はかなり有用だ。バネ床は罠のコンボの起点にしたり、中継ぎにもってこいだし、バネ壁は必殺の罠に対象を無理矢理押し込める。


 なかなかに使い方に奥の深さを感じる罠だ。


 そうだ、罠と云えば。


「毒なんかも罠だと定番だよね」

「え?」


 鬼っ子が目を瞬いた。


「毒、使うの?」

「使うかどうかはともかく、いい食材があるんだよ。実際、その食材が毒になるのかどうか確かめないといけないけどね」

「食材?」


 うん。最強の毒物食材があるんだよ。


 いや、毒といっておきながら食材ってなんだよ、と、思うかも知れないけど。


「ということで、確かめてみよう」

「確かめるって……」


 なぜかオロオロする鬼っ子を連れて、新しく作った訓練場に併設してある娯楽室から自宅へと戻る。


 新しい訓練場はマナリヤの広場の南側に作り上げた。広さは陸上競技場ふたつ分くらいだ。西側がドワーフさんたちの使っている居住エリアで、私の拠点が東側だ。


 前訓練場としていた元ラスボス部屋は私のリスポンポイントであるので、ボス部屋を別に作り上げた。

 この最奥部ではなく、最下層へと上がったところの場所をラスボス部屋として改築した。そのうち、ラスボスを置いておこうと思うよ。多分、ただのお飾りになるだろうから、置くのはゴーレムかな。


 で、併設してある娯楽室だけれど、いくつかゲームを置いてある。アクションRPGやFPSゲーが中心だけれど。なんか、戦闘の参考になるとかなんとか。


 ……大丈夫なのかな。あれって多少なりとも演出が加わっているからね。当たり前だけれどリアルとはまるっきり違うよ。


 まぁ、剣を振り回すのに技が云々とかほとんど意味ないんだけれどさ。正しい振り方と、フェイントのやり方さえ知ってればいいだけだし。あぁ、徹底的に突き詰めた場合の話ね。型は技を繰り出すための土台だし、技は酷い言い方をすればフェイントを兼ねた剣を振る動きだからね。


「お帰りなさいませ、マスター。こちらは初めてですね。いらっしゃいませ、アーシンのお嬢様」


 玄関を開けると、メイドちゃんが出迎えてくれた。どうやら戻ってくることが分かっていたみたいだ。


「なんで神様がもう1柱いるの!?」


 鬼っ子がメイドちゃんを見た途端に、驚いたように声を上げ――って、え?


「おや、ひと目で見抜きましたか」

「というか、『も』って!?」

「マスター、自身が神であると自己紹介しましたか?」

「いうわけないでしょ。『私が神だ』なんていったら、普通は頭の中に花畑が広がってると思われるよ」

「となると、彼女もコダマさん同様、巫女の資質があるのやもしれませんね。でなければマスターを見ただけで神と断ずることはできないでしょう」

「えぇ……いくらなんでも巫女、多過ぎない?」

「そういう巡り合わせということでしょう。教会に属していない野良の才能の持ち主が、ここに集まって来るやもしれませんね。それなりにはいますから」


 メイドちゃんの言葉に私は愕然とした。


「え、そういうものなの?」

「そういうものですよ」


 メイドちゃんは鬼っ子にスリッパを用意すると、こういった。


「少々訂正を。私は神ではなく準神です。神ではありませんよ。

 マスター、居間ではさん子とコダマがお茶をしていますよ」

「あぁ、畑仕事、もう終わったんだ」


 確かめるにはちょうどいいね。植物の専門家だし。


「ピーマンを山ほど収穫してきましたよ」


 ピーマンか。よし、夕飯はあれにしよう。


 今晩のメニューを決め、私は鬼っ子と居間へとむかった。


 今ではメイドちゃんが云っていたように、さん子とコダマがまったりと休憩していた。お茶菓子は大福。うちは緑茶が中心だからか、お茶請けはたいてい和菓子だ。


 私はふたりにお疲れと声を掛け、コダマの隣に座った。向かいにはさん子。その隣にいまだに戸惑ったような鬼っ子が腰を下ろした。


 確か、ごっ子も畑仕事の方の手伝いをしていたと思ったけれど――


「あの子はよっ子に連れていかれましたねぇ。整備の手伝いをしていますよぉ」

「あー……。地味にまだ人手がたりないからなぁ。手の空いているドールたちに来てもらおうか? いや、でも、進化が遅れるって嫌がるかな?」

「もう進化には十分な存在質量を得ている筈ですし、あとは気持ちの問題でしょうから、手伝いを指名するのは良いと思いますよぉ」


 さん子の言葉に私はすこし首を傾けた。


「気持ちの問題?」

「興味とか執着とか、そういったものですねぇ。私は……その、リンゴを齧っているお母様を見て果実に興味を持った結果、進化したんだと思いますからぁ」


 恥ずかし気に苦笑しつつ、さん子が答えた。


 なるほど。確かに。いっ子はやたらと几帳面だったし、よっ子はリビングアーマーたちの装備にやたらと興味を持っていたよね。いまだにいっ子の左手のガトリングガンに関しては羨ましがってるし。


 レプリカントに進化しても、腕の内装兵器はそのまんまだったんだよね。義手になっているんだろうけれど、見た目は完全に生身の人間だから、それが変形してガトリングガンが出てきたりするのは、ちょっとホラーじみた感じがしたよ。


 そんなことをさん子と話していると、メイドちゃんがお茶と茶請けを持ってきた。


「それでマスター、彼女をこちらに招待したのは?」

「あぁ、ちょっと罠のことでいろいろと相談していてね。で、あるものに関してコダマに確認してもらおうと思ったんだよ」


 そういって、私はそれを創造した。生前はたまーに使っていた食材だ。ただ、先にもいったけれど毒性のことも知っていたから、これまでは創らずにいたものだ。

 みんなに害があったら大変だ。


 ぽん、と、私の右手にそれが現れる。ずんぐりした涙滴型の果実だ。深緑色で、表面はごつごつした感じ。食べ頃ちょっと手前くらいかな?


 そう、森のバターなどという異名を持つアボカドだ!


 コダマは私の手に現れたアボカドを見ていたかと思うと、その表情を急に強張らせた。


「それは駄目です!」


 コダマが慌てたように、私の手にしがみついてきた。


「ちょ、なに!?」

「そんなのを食べたら死んじゃいます!」


 押し倒されたまま、私は目を瞬いた。


「おー、さすがドリュアド。見ただけで分かるんだ」

「なんですかその凶悪な実は。初めて見ましたよ!」

「凶悪な実といえば、こんなのもあるけどね」


 ちいさなリンゴをDPを消費して出した。出すと同時にちゃんと手袋もしている。かなり毒性が強いらしいからね。なにせ樹を伝った雨水が当たるだけで害が出るって話だし。


 このリンゴっぽい実はマンチニールの実だ。個人的には、おとぎ話に登場する毒リンゴの元ネタなんじゃないかと思っているよ。まぁ、これは食べると昏睡どころか死ぬと思うけど。


「なんでそんな危険物をだすんですかぁ! って、また見たことない果実ですよ!?」


 そりゃ地球産だからね。


 私はとっととアイテムボックスにマンチニールをしまった。そのうち処分しておこう。


 今回の主役はこっちだ。


 いまだに取り押さえられている右手に持った、緑色の実。


 そう、アボカド。


 人間以外には強烈な毒性を示し、大抵は死に至らしめるというとんでもない代物だ。


 なにせ、アボカドを焼いただけで、近くにいた鳥が死んだなんて話もあるくらいだ。


 尚、なぜ人間がこのアボカドの毒? であるペルシンに耐性があるのか不明だそうな。


 私の見解だと、きっとドラゴンも殺せる。爬虫類に食べさせると、心筋梗塞を引き起こすらしいからね。


「ここまでコダマが慌てるってことは、こっちの人間は食べると死ぬみたいだねぇ」

「そのようですね。……そう考えると、地球人はなんなんでしょうね?」

「医学者さんたちも、なんで食べて平気なのか、そのあたりのメカニズムを解明できていないらしいし、そういうものと思おうよ。

 ……となると、下手に調理できないな、これ。サラダにでもして食べるか。ひさしぶりに食べたくなったし」


 コダマが信じられないものを見るような目を私に向けた。


「た、食べるんですか?」

「食べるよ。というか、地球人にとっては健康食品みたいなものだよ。それも美味しいというね。ただ、コダマの反応から察するに、こっちで食べられるのは私とメイドちゃんくらいなのかな?」

「そうですね。私の肉体もマスターに準拠したものですから、地球人の特性を持っていますし。

 ところで、そのアボカドをどうするおつもりです?」


 メイドちゃんに問われ、私は最初の目的を思い出した。


「クアッドスライム、これをアケバロイの口ん中に放り込んできてくれる?」

「御意」


 肩に乗っていたクアッドスライムが配下を呼び出すと、アボカドを持たせて現場へと向かわせた。


「……なるほど、手軽な致命毒ですね」

「効くかな?」

「魔法生物でもないかぎり、絶対的な毒耐性を持っていることはありませんから、恐らく効くでしょう」


 リモコンを操作して、前線、アケバロイの侵略の対処をしている場所をモニターに映し出した。


「お茶の時間に見るようなものじゃないけれど、ちょっと我慢してね」

「うわ、なにこの化け物。初めてみたよ。気持ち悪っ!」


 アケバロイは日に1度か2度程度しかこちらに侵入してこない。今日はちょうど侵入してきたところのようだ。


 いつもはスライムたちが群がって消化してしまうところを、今回はグランドスライムたちが四肢に取りついて擬態。岩のようになって床に張り付き押さえこんだ。


 質量は変わらないだろうけど、硬質化することで関節を固定するなんてことをすれば、アケバロイでなくとも転倒させ、いま私たちが見ているようにあっという間に押さえこむことができるだろう。


 そこへアボカドを持ったステルススライムが現れ、やたらといい声で叫んでいるアケバロイの大きな口にアボカドを丸ごと放り込んだ。


 そういえば、こいつの体内構造はどうなっているんだろ? 胴体に顔がついているけれど、消化器官とかちゃんとあるのか? すごい簡易的になってそうなんだけれど。魔法生物なら、多分、アボカドは効かないんだけれど。




 結論から云おう。アボカドは効いた。でも、すぐにモニターは消した。


 多分、クアッドスライムの報告によると、心筋梗塞的な効果が致命的効果となったのだと思う。でも私たちはそこまで見ていない。


 ……いや、嘔吐しながら汚物を撒き散らすとかしだしたから、すぐにモニターを消したんだよ。グロ画像とは別の意味で食事中に観る物じゃないよ。


「使いどころを考えないといけませんね」

「そだね。というか、別の物を使うことにするよ」


《今の映像からの推測となりますが、レッサードラゴン程度でしたら、アボカドを5つも食べさせれば討伐可能であると思われます》


「……ドラゴン、殺せるんだ」


 鬼っ子が放心したようなまま、ぼそりと云った。


《マスター、報告です》


「なにかな?」


《遭難者が地上、外壁にまで到達しました。いかがいたしますか?》


「遭難者?」


《はい。砂エルフです。軽装であることから、なにかしらの事件に巻き込まれたものと思われます》


「地上の領域って、かなり広かったよね? どういう状況から遭難したか分かる?」


《暫しお待ちを。確認します》


 そういってコアは沈黙した。多分、廉価コアのほうのログを確認しているのだろう。砂蟲の管理の関係上、地表部分の大半を廉価コアに任せたみたいだから。


《砂走船より転落したようです》


 砂走船というのは、砂漠を走る船だ。普通はそんなこと無理なんだけれど、この砂漠の外周の一定範囲は恒常的に流砂が発生している。というか、発生させている。


 これもこのダンジョンへの侵入を困難にするためのものだ。


 そしてそこには砂蟲が結構な数潜んでいる。流砂を利用して移動し、侵入者を襲っている感じだ。まぁ、それが役目だからね、砂蟲は。


 でもその流砂を利用して、商船が砂漠外縁にある町々を行き来しているのだ。


 どうやら遭難者はその砂走船から落ちて、よりにもよって流砂の範囲の内側、すなわちダンジョンのあるこっち側に来てしまったらしい。


《塔を目指して歩いてきたようです》


 おぉう、塔も毎日積んで、大分高くなってきたからね。それが仇になった感じか。まぁ、このまま死なせるのも後味が悪そうだな。助けるとしよう。


 砂エルフっていうのも、ちょっと見てみたいしね。


感想、誤字報告ありがとうございます。

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