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目が覚めたら目の前にドラゴンがいたのでとりあえず殴りました。  作者: 和田好弘
第1章:少女→神→ダンジョンマスター
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02 Bボタンはどこよ!?


《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルが――




 ……いつまで続くの、これ?


 私はげんなりとしていた。


 延々と続くメッセージ。そもそもレベルとはなんぞや。ゲームじゃないんだから。実際、レベルがあがったなどと云っているが、私のなにかが変わったようには思えないし感じもしない。


 いやいや、それ以前に、こんなメッセージが聴こえる時点でどうかしているし、変わっているといえば変わっているけれどさ。おまけに、ゲーム内チャットみたいな感じで、左下からメッセージが表示されて上へと流れているし。


 うーん……本格的に私の頭がイカレタかな? 飲んだ薬がおかしかったのかなぁ。普通の睡眠導入剤だと思ったんだけれど。


 あ、どうせなら手首を確認しておけばよかった。これが現実なら、切り付けた痕が残っているはずだ。躊躇い傷とかみっともない真似はすまいと、覚悟を決めてしっかりと一発でざっくりとやったんだ。思ったよりも血が噴き出してびっくりしたけど。これが現実なのならば、痕がしっかりと残っているはずだ。


 まぁ、いまはまた3Dモデルの立ち姿みたいな感じで固まってるんだけれど。


 本当、なんなんだろ、これ。




《成長限界に達しました》

《これ以上レベルをあげることはできません》




 お、変化があったよ。




《これ以上レベルをあげることはできません》

《これ以上レベルをあげることはできません》

《これ以上レベルをあげることはできません》

《これ以上レベルをあげることはできません》

《これ以上レベ――




 ぬがぁっ! またこれか。本当にいつまで続くのよ!


 叫びたい。叫びたいけど叫べない! あぁ、もどかしい。もどかしいっ!!

 誰かに体が乗っ取られてるみたいだ。


 気持ちだけ顔をしかめていると、今度はさっきほど待たずに変化が訪れた。




《限界を突破しました》

《これより種族進化を開始します》




 限界突破? ……種族進化ってなに? なんか不穏な感じがするんだけど。

 え、尻尾が生えたりとかするの? もしくは角とか?




《肉体再構築シークエンスが終了していません》

《種族進化は保留されます》




 進化できないのかい!

 いや、進化がなんだかわからない以上、しない方がいいけどさ。なんだろう、宇宙人のグレイみたいになりそうでいやだし。


 というかね? 肉体再構築ってなに? 聞き捨てならないんだけれど!?


 ん?




《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルがあがりました》

《レベルが――




 ぎゃーす! もういい加減にしてよ。




 その後また限界が来て、レベルがあがらないっていわれて、でもって限界を突破して進化が云々無理とあって、さらにレベルアップ――云々と同じ事が繰り返されて、更に進化ってところで、やっとこさメッセージが止まった。


 長かった。もの凄く長く感じたけれど、実際はそうでもないのかな。一時間は掛かっていないと思う。いいとこ30分くらい? いや、それでも長いか。


 で、どうなるんだ?




〈代替ギフト選定再開。同等の代替ギフト無し。システムより提案。……却下します。代替案を申請……申請認証〉

〈許可されました。再構築完了〉

〈これより、種族進化を開始します〉




 え、ちょっ!? え? Bボタン! Bボタンはどこよ!?


 待って、待って、待って、尻尾も角もいらな――


 慌てる私を他所に、私の周りを糸のような光が覆いつくした光景を最後に、私はぷっつりと意識を失った。


 あぁ……この可笑しな夢もこれが最後で、私はやっと死ぬのかなぁ……。



 ★ ☆ ★



 ズルッ! と滑り、微妙に弾力のある固いなにかに尻餅をついた上に、背後にあったらしい壁に頭をぶつけた。


 思わず「痛っ!」とか声をあげちゃったけれど、さして痛かったわけじゃない。


 ……というか、私、まだ生きてるね。あれ? ということは、あれは今際の際の幻とかじゃない?


 周りを見回す。なんだろう、なんかよくわからない材質の……カプセル? みたいなものの中にいるみたいだ。色は淡い金色と云うか、黄色に近いクリーム色? そんな感じのものの中にいる。目を凝らしてよく見ると、細い糸が幾重にも重なってできているようだ。

 この糸自体が微妙な光を発しているおかげで、周りの様子はよくわかる……といっても、狭い中にいるっていうのが分かるだけなんだけれどね。カプセルホテルって、こんな感じなのかな? いや、こんな卵の中みたいな楕円形ではないだろうけれど。


 えーっと……。


 うん。頭が働いてないね。情報が訳が分からなさ過ぎて、なにをどうすればいいのかわからないよ。これが呆然自失という状態なのかな?


 と、とりあえず、この卵? から出ることを試みようか。


「おはようございます、マスター。これより繭を解体します。暫しお待ちくださいませ」

「あ、はい」


 ……はい?


 マスター? え?


 女の子? の声に、私は増々訳がわからなくなった。


 一体、私の身になにが起こっているんだ?


 ぽっ! っと、卵の天辺に穴があいた。そこから穴が広がるように、殻を形成している糸が消えていく。


 これは、外で巻きとっているのかな?


 待つこと暫し。目の前の高さにまで糸が巻き取られ、先ほどの声の主の姿が露わになった。


 えーっとメイド?


 みたところ、どう見てもエプロンドレスに身を包んだ女の子がくるくると糸を巻き取っている。ミニスカじゃない、ちゃんとしたエプロンドレスだ。見た感じ、中学生? いや、小学生高学年といってもいいくらいか? 栗色の髪をローツインテールにした、12、3歳くらいの女の子だ。

 巻き取りにあわせて、卵のまわりをてくてくと歩いているのは、一個所に立って巻き取っていたら、私に糸が引っ掛かるからだろう。


 もう少し低くなったら、出た方がいいかな? 邪魔になるだろうし。


 大分、糸の壁が低くなったところで、彼女は巻き取るのを止め、私に向き直った。おもむろに足元に巻き取り途中の糸玉を置くと、どこからか衣服と思しきものを取り出し、私に差し出した。


「はじめまして、マスター。挨拶などもございますが、まずは御召し物をどうぞ」


 は?


 私はいまさらながらに自分を見下ろした。


「うわぁっ!?」


 私、全裸じゃないのさ! 服はどこにいったの? あのドラゴンを殴った時はちゃんと服を着てたよね? あれ? そういえばスタンガンがないよ!?


「マスター、落ち着いてください。まずは御召し物を。手伝いは必要ですか?」

「だだだ大丈夫、服くらいひとりで着れるよ」


 うぅ、顔が熱いよ。


 いそいそと服を着る。って、これ学校の制服じゃん。


 着慣れたブレザーに袖を通していく。


 ……なにこの絵面。


 私が服を着ている周りを、糸を巻きながらメイドちゃんが周ってるって。


 なんの儀式よ!?


 着替え終わったところで、大分高さの下がった卵をまたいで外に出る。それを確認したのか、メイドちゃんが私の隣で足を止めて糸を巻き取り始めた。


 うぅ~む。本当、この事態はなんなの? ここは相変わらず洞窟の中だし。


 ……あれ? 普通に明るく見えるね。進化とやらが始まる前は、夜光茸だか光苔だかの明かりくらいしか無かったように思えるんだけれど。なんか、普通に昼間みたいに見えるよ。んん? でも光源はどこだ? 


 足元を見てみる。


 影ができてない。あれれ?


「お待たせしました、マスター。どうぞこちらへ。このような殺風景な場所ではなんですし、きちんとした場所で事情説明を致します」

「あ、はい。お願いします」


 私の胸ほどの背丈のメイドちゃんの後について、私は歩き始めた。


 てくてくと歩き進み、ほどなくして岩壁に行き当たる。この洞窟……空洞はどれだけ広いのか。いまさらながらに天井を見上げるも、その高さがいかほどであるのかわからない。基準とできるものがない。あの出っ張った岩が拳大の大きさなのか、それとも一抱えほどもあるものなのかもわからない。そんな状態で高さを量ろうとしても分かるものではない。


 メイドちゃんが立ち止まった先には木製の扉。それこそ、板チョコを扉にしたんじゃないかと思えるような四角い意匠のあしらわれた、ちょっぴり豪華な扉だ。


 いかにも重そうな感じでメイドちゃんがその扉を開くと、私を招き入れた。


「マスター、どうぞお入りください」

「う、うん」


 戸惑いながらも私は扉をくぐる。


 明るい。これまでいた洞窟との明かりの差に、私は目をそばめた。


 細めた目から見えるものは……綺麗なフローリングの床、大きなテーブル。色々な料理が載ってる? そして――


「ようこそ、新たなる神よ。我々は君を歓迎しよう。盛大にな」


 スタイリッシュなポーズでお爺ちゃんが宣う言葉に、私はフリーズしたのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] これレベルアップの時ドラ〇エみたいに曲付きだったら頭おかしくなりそうw
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