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07 大砂海の周囲の情報

誤字報告ありがとございます。



 想像と違った。


 想像と違ったんだよ!


 なんの話かって? うん。人頭蜘蛛のことだよ。


 いや、モンスターだからさ、蜘蛛の頭部の部分がそのまんま人の頭になってるんだろうなと思ったんだよ。

 どこぞのゲームに登場した蜘蛛マンみたいに。


 全然違った。なにあれ。怖っ!


 でっかい蜘蛛でね。体長は3メートルくらい。全幅は……足先まで含めると4メートルくらい。全高は1.5メートルくらいかな。とにかくでっかい。


 で、頭部が人に似ている。似ているだけ。


 全体の色がパールホワイトでね。頭部も真っ白なのよ。長い剛毛が生えていて、それが髪に見えるんだよ。そのせいで女性と誤認するんだよ。

 で、赤黒い模様が顔のやや中央にあって、なんていうの、アメコミの方の蜘蛛男みたいな目の形の模様でさ。そこがちゃんと目になってて、その模様の中を横に複数並んでるのね。あと眉毛みたいな感じの目。側頭部にも目。全部で12個。で、口の所が顎になってるんだけれど。ここも見た目が人間を模していてね。分かりやすくいうとピエロ口。口の端がつり上がった感じのやつなのさ。


 でもって、顎が口のあたりまで縦に割れて、左右に開くんだよ。


 ……まぁ、蜘蛛だからね。蜘蛛にしちゃ、蜂みたいな顎の開き方だけどさ。これがまぁ、見た目がグロいんだよ。


 数自体はそんなにいなかったんだけれど、かなり広範囲にひろがって巣を作っていたから、こいつらだけで6パーセントもダンジョンを支配していたよ。主な餌は大牙砂蟻。


 あ、ひとつ疑問に思っていたことがあったんだよ。大牙砂蟻。あんな馬鹿げた数がいて、餌はどうしていたのかと。


 答え:でっかいミミズ。


 もうね、ファンタジーのお約束の如く、地上のホルスロー大砂海には大砂蟲(ワーム)がいるんだって。その大砂蟲がアリンコたちの餌になっていたんだそうな。直径が3メートル、全長が300メートルもの大砂蟲。このサイズが標準で、ホルスロー大砂海にはいっぱいいるらしい。


 モンゴリアンデスワームかな? いや、あれはこんなにデカくなかったか。某SF小説の砂の星にでてくるあれかな? さすがに不老成分を含んだなにかを生成したりはしないそうだけれど。へ? 宝石を作る? ターコイズとかクリソベリルを生成するって、どんな生き物なの? あ、でも作れるのは大型のやつだけで、出来るのはほんの少しなのね。ふーん……。


 え、食用? 食べるの!? あれを? 育った大型はともかく、小さな個体は狩られてると。……あ、あぁ、そうなんだ。いや、砂エルフが作る干砂蟲は高級品で美味しいとかいう情報はいいから。干しアワビじゃあるまいし。


 つか、砂エルフ、砂蟲を食ってんのか……いや、貴重なタンパク源なのかもしれないけどさ。


 ……んで、そんなでっかいのがいるのは分かったけれど、そうするとその砂蟲はいったいなにを食べてるのさ。


 あ、例の廉価ダンジョン・コアが生み出した魔物なのね。基本、魔素を糧に生きていると。……いや、魔素不足に向かっているこの星で、そんな大食いそうな生物はどうなんだ? まぁ、私がどうにかするけどさ。

 その砂蟲の起源はというと、世界を彷徨ってる黄の竜が知的生物避けとして設定して、ウチの真上に置いていったそうな。ちなみにダンジョンマスターは空席のまま。なんか、ウチの誰かをマスターにしておこうという話になったけれど、誰に頼もうかしらね。現状、レプリカントの5人から選ばないといけないんだけれど……。

 あぁ、うん。さらにふたり進化してレプリカントになったんだよ。体格が小さくなって幼女になった4人目がわけがわからないけど。




 さて、ダンジョンをほぼ完全に奪還してから半月が経過した。


 いまは各通路の見直しをしている。それと、余計に開いているダンジョンの入り口を閉鎖。総計で18ヵ所あった出入り口は、いまでは5ヵ所にまで減らしている。いや、正確には減らしている途中だ。


 東西南北と、ここの真上を残す。


 この真上はホルスロー大砂海の真ん中。砂漠と云っても、中央部は岩だらけの荒野みたいになっている場所だ。そんなところにぽっかりと開いた縦穴。それがこの【はじまりのダンジョン】の正しい出入り口だ。


 他四か所は裏口みたいなもの。潰した出入り口は、もともと獣穴だったところに繋いだという場所もあったみたいだ。これだけ出入り口を作った背景には、一刻も早くガーディアン代わりの生物を招き入れようと必死だったダンジョン・コアの心境が垣間見えるよ。


 そんな裏口周辺に巣食っていた蛇人を排除して、囚われていたドワーフさんたちを救出したわけなんだけれど……。


 白雪姫と7人の小人!?


 とか思っちゃったよ。いや、ひとり多かったけれどさ。中学の時、小人=ドワーフと知った時の衝撃はいまも覚えているよ。おそらくは、一番メジャーとなっているあのアニメのせいだ。あの小人がドワーフだなんで誰も思わないよ。


 だって髭が無いんだよ! 誰があれをドワーフって思うのさ!


 いや、それはどうでもいいんだ。


 彼らを救出したのは情報収集のためだ。彼らを選んだのは、たまたまそこにいたからってだけの理由だけれど。


 私が知りたかったのは、この周辺の情勢。周辺と云っても、かなりの広範囲だから、ここらの大陸の情勢と云ったほうがいいね。


 おかげで、このダンジョンのあるホルスロー大砂海の周囲の情報を得られたよ。


 まぁ、私が直接聞いたわけじゃないけど。メイドちゃんにも止められたからだけれど。まぁ、止められる以前に直接会う気はなかったけれどね。


 あははは……どうも人間不信が増してるみたいでね。いや、最後に会ったのがあのゴミふたりだったし。その前は保護者になってやろうとしつこい金目当ての親戚ばっかりだったし。もとより姉の関係で基本的に人嫌いだったこともあって、それがさらに酷くなってたみたいだ。


 ……お姉ちゃんも大概、不幸だったからね。


 なので、ドワーフさんたちから情報を仕入れて来たのはメイドちゃんだ。


 さて、情報だけれど、ダンジョン・コアは周辺のモンスターとかに関しての情報は持っていても、国だのなんだのについての情報は持っていない。西方に砂エルフの集落があるくらいかな? 知っていたのは。それもダンジョンの出入り口の側(閉鎖済)だったからだ。だからドワーフさんたちから基礎知識的なものが得られたのはありがたかったよ。


 まず、ホルスロー大砂海は何処の国家にも属せず、ほぼ孤立、独立している。あれだ、アラビア半島みたいな感じになっていて、周囲は海だ。そしてその全域が砂漠化している。北部が大陸と繋がっていて、東西を繋ぐ回廊のようになっている。その辺りから北部に向けて森林帯が広がっている。


 あぁ、もちろん、砂漠からいきなり森林帯になっているわけじゃないよ。


 だから北部の回廊っぽくなっている地域には町や村が点在している。東西を結ぶ導線にある宿場町みたいな感じなのかな?


 で、その北部を含めた北西部に、宗教国家であるベレシュ神聖皇国。白教とかいう宗教の本拠地だそうだ。白教とはなんぞやと聞いたところ『正義は我にあり!』という連中だそうだ。


 うん。ダメだそれ。


 絶対にお近づきになりたくないね。某ゲームに登場した、我こそは正義だといって、人を殺しまくった自称正義の味方を思い出すよ。なにが始末に悪いって、自分は正義だから間違いを犯すハズなどないと信じ切ってるってことだよ。


 そんなのが近くにいるのか……。


 そして東側。こっちにはドーベルク王国。えーっと、工業国家? 良質な鉱物が多く産出しているようで、製鉄が盛んだそうな。また、ダンジョンが幾つもあって、貴重な資源を得られる場所として管理されているとか。お姫様はここの出身とのこと。結構な腕前の鍛冶師らしい。


 なるほど。白雪姫じゃなくて鉄打姫ってことか。


 鉄打姫と7人のドワーフ。


 なんかすごいしっくりくるんだけど。


 あ。ドーベルク王国は赤教とかいうのを国教としているそうだ。炎を信仰している宗教だそうだ。


 そういや、宗教観がすこしばかり独特みたいだね、この星のひとたちは。いや、神様がいなかったじゃない。だからなのか、管理システムが神様の真似事をして神託みたいなことをしているんだそうな。というか、“やめとけ”以外の世界は神託があるのが普通らしいんだけれど。


 そのせいもあってか、管理システムをシステム神と呼んで信仰しているらしい。どの宗教も。全能神扱いなのかな? その上で、各宗教がなにかしらに特化したような形で、それに則したものを崇めているというか、大切にしているみたいだ。


 だからドーベルク王国で云えば、モノづくりに欠かせない炎をシステム神に見立てて崇めている、って感じかな?


 次いで西の大陸。砂漠の端っこからなら、頑張れば肉眼でも見える程度にしか離れていない大陸。そこにハイラテイラ王国がある。大陸全土を支配しているわけではないらしいから、その向こうにも国があるのかもしれないね。


 国教は青教。なんか、オカルト方面から科学をしている連中らしい。学者集団みたいなんだけれど……なんというか、とんでも科学を実現しようとしているみたいだ。


 ……無茶じゃね?


 まぁ、頑張るのは自由だしね。そうか……なまじ魔法なんてものがあるから、おかしな方向から答えを求めて突き進むのか。大人しく虫眼鏡をつかったり凧を揚げていればいいのに。……いや、それじゃ気が付かないのか。深刻な好奇心不足?


 最後に、海を越えた南方にも大陸があって国があるらしいけれど、さすがに聞いたことがあるだけで不明だそうだ。


 うん。それは知ってる。エルフたちがバカやったところだね。


 こういった情報を教えてくれたドワーフさんたちだけれど、まだこのダンジョンにいる。


 例のお姫様が足を痛めていてね。それが完治するまではいることになったみたいだ。


 メイドちゃん曰く――


「このまま当ダンジョンに就職することになるやもしれませんね」


 と云っていたけれど。


 そうか、就職になるのか。ダンジョンって企業なのか?


 まぁ、そろそろそんな感じのことをやろうとは思っているけど。ただ、最初の広報だけどうしようかと悩んでるんだよねぇ。


 私はマナリヤの広場に来ている。


 ここ、気持ちがいいんだよね。多分、マナリヤが魔素をがんがん放出しているからだと思うけれど。


 いまだに私は衰弱状態みたいで、とにかくエネルギー不足なんだよ。食事で多少は補えているけれど、これはもうたかが知れてるレベルなんだよね。普段の活動で、普通の食事量だとそれだけで消費しちゃうし。かといって、延々と食べ続けるのもあれだしねぇ。


 どうやら魔素もエネルギーとして吸収できるみたいだから、こうして日に1度は来るようにしている。まぁ、私が吸収し過ぎちゃうと、当初の目的を達せなくなるから、ほどほどにしているけれど。


 近いうちにもう1、2本創らないとなぁ。地上に植える予定だけれど、荒れ地でも育つように魔改造するのは難しそう。あるていど土地の改善をしてからかなぁ。

 いや、地上にダンジョンを新たに作る予定だし、そっちにつくればいいか。


 30分ほど森林浴(マナリヤ1本でも森林浴って云っていいのか?)し、私は自宅へと戻った。


 女子寮の前では、メイドちゃんが新たにレプリカントとなったふたりに、いろいろと注意をしているようだ。


 リビングドールの時と違い、生物的になった結果、生体活動を行うようになったからね。食事と排泄に関してはきちんと云っておかないと。あの娘たち、これまでそんなものとは無縁だったからね。あとお風呂の事も。


 先の3人の時には予想だにしないトラブルもあったけれど、2度目であればメイドちゃんも要領を得ただろう。


 メイドちゃんに手を振りつつ、私は自宅に入った。


 さてと、ダンジョン・コアにダンジョンの改善の進捗状況を聞かないと。


 居間に入り、いつもの席に着くと紅茶とブラウニーを出す。


 ここのところ緑茶と和菓子だったからね。うん。久しぶりのチョコは美味しい。


 それじゃ、現在の状況を確認しようか。まぁ、私はあんまりやることないんだけれどね。いまじゃ殆ど食っちゃ寝してるだけだし。


「ダンジョンの掌握は終わった?」


《いえ、まだ完全には掌握できていません》


 ありゃ? あの蜘蛛で終わったかと思ってたのに。蜘蛛の巣も撤去も終わったよね? スライムたちが総動員で処理してたし。


「それじゃ、まだ敵性勢力が残ってるんだ。でもそれだけのほほんとしているところを見ると、とくに危険視するほどでもないんでしょう?」


《はい。喫緊の問題ではありません》


 ん? なんか前にも聞いた答えだな。なんだかすごい嫌な予感がするんだけれど?


「ちゃんと云って」


《当ダンジョンは侵略を受けています》


 ……は?


 私はダンジョン・コアの言葉に、思わず間の抜けた声を上げた。


第3章はこれにて終了です。

明日、閑話をひとつ投稿します。


第4章は今しばらくお待ちください。

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