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リリアナお嬢様の命令よ!~転生伯爵令嬢は自分に素直に生きると誓いました~  作者: 如月 燐夜
二部一章 伯爵家当主学生準備編
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久々の王都にて


5月15日、私は王都へ向かう馬車の中に居た。


同行者はモガ、ルル、ユグドラである。


あれからリビーに合同誕生会の提案を書いた手紙を送り即日で返事が来たのでその準備の為に私は王都にある別宅へと向かう途中である。開催は一週間後の22日、リビーも服やプレゼント、招待客などの調整があるため日にちを少しずらした。


流石に10才ともなれば貴族の一員として認められ、更に私は伯爵家の当主だ。


選り好みばかりはしていられないのである。


懸念材料としてゲース親子がいるのだが…そこは覚悟を決めておいて当日の私に丸投げだ。


「フフッ…同志とこうして馬車に乗る日が来るとは思わなかったわ。あの頃はただ、その場に同席させて貰っていたようなだけだもの。」


ルルが初めて会ったときの事を突然話し出す。普段の暗い印象とは違いとても楽しそうだ。


「私もルルとこんなに仲良くなれるとは思ってなかったよ!けど、今は大切な親友だと思ってる。もちろんユグドラちゃんもね?」


「ふ、ふんっ!まぁ、親友になった覚えはないが、どうしてもって言うならなってやらなくもない。わたしは優しいからな!」


ユグドラはまだ警戒を見せているのか、それとも照れ隠しにそんな事を言っているのかは分からないが案の定楽しそうだ。


「良かった、親友だと思ってたのは私だけじゃないんだね?ユグドラちゃんもルルもだーい好き!」


むぎゅっと二人を抱き締めるとユグドラの慌てる声が聞こえたが今は無視。むむっ…ルルの柔らかいものが…!少しイラついた時の事を思い出したので揉みしだく。クソー…私だって、私だって成長すればこのくらい…!



モガはそんな私達を見て遠目で微笑んでいた。少し寂しそうな様子だったので頭を撫でてやると満面の笑みを見せてくれた。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


王都の屋敷に着くとユグドラとルルは王都の実家へと帰っていった。


自宅があるなら帰るのは分かるし二人の両親も心配なのは分かるからしばしの別れである。



屋敷に入ると懐かしい面々が出迎えてくれる。


幼い頃、まだアルデンの屋敷にいた執事オースティンやメイドが数名、それと騎士が数名だ。


ちょうど実家から手紙が来たので近いうちに王都に帰ると手紙を送るとオースティン達を派遣してくれたのだ。


「お嬢様お久しゅうございます!いえ、伯爵様とお呼びした方が宜しいですかな?」


「オースティン、久しぶり!面倒なのは嫌いだからお嬢様で良いよ!私にとってオースティンはもう一人のおじいちゃんみたいなものなんだから!」


「これはこれは…私めになんと勿体なきお言葉…!よもやこの老骨を祖父と呼んでくれるとは…!私の長い人生でこんなに嬉しい時は孫のチャールズが産まれた時以来です!誠心誠意お務め果たさせていただきます!」


おいおいと泣き始めたオースティンを宥めたあと、私は荷物を置き風呂に入った。


旅の疲れが抜け出てさっぱりした後執務室に向かうとノックが聞こえる。



「リリアナ様、お久しぶりにございます。王都に着いたとの連絡を受け馳せ参じました!」


「久しぶり、マルーカ。商会の方は順調みたいだね!マルーカに任せて正解だよ!」


リモーネ商会の番頭であるマルーカが訪れてきた。


商会の方を任せっぱなしだったので忙しくしばらく会えてなかったのだ。


元は普通の針子だった女性が今ではバリバリの若手女社長といった出で立ちになっている。 


「積る話もあるとは思うけどまずは座って紅茶でも飲もう?モガ、お願い!」


「はい、リリ姉様!」


「それでリリアナ様、例の魔道具ですが…」


「あはは、慌てなくてもちゃんと見せるから安心して?」


実は新しい魔道具が完成したと手紙を送ると見たいと言い出したマルーカが堪えきれずに私の元を訪れたのである。


私は先程入れておいた執務机の引き出しを開け、紙束と両手大の木箱を取り出す。


それだけでマルーカのテンションは鰻登りである。


「あぁ、待ちきれなくてこうして参った次第です。是非リモーネ商会で卸しましょう!これはきっと大ヒット間違いなしですよ!」


「まぁ待ってよ。まだ試作品の段階だし色々と足りない部分が有るんだから。それをこれから我がリモーネ商会の力を借りて仕上げる為に今日来てもらったんでしょ?焦らない焦らない。一緒に良いもの作ろう?」


「はいっ!リリアナ様、一生着いていきます!」


忠義の高いことで…まぁ、扱いやすいから良いんだけどさ。


私は内心舌を出した。


資料を一ページ捲る。



「ス、スゴいです!話には聞いて居ましたが…これほどとは…!」


簡単な図形と機能の説明書きを読んだだけでマルーカは大興奮である。


未知のものに触れるとそれだけで興奮するよね。気持ちは分かる。



「まだ構想の段階だったけど梟の塔に優秀な錬金術士や魔導士が集まってくれて良かったよ。型さえできれば後は量産出来るし、回路の方も印刷で何とか出来るからね。」


そう、私はこの二年で木版印刷を公開した。


これによりセンティス領発信の新聞社、アムスティア新聞社が発足された。


現在は大手商会にも版権を許可して各地にて様々な情報が庶民から貴族の各家庭に届けられている。


昔からやりたいとは思っていたがとても私一人では拡大することが出来なかった分野である。梟の塔様々である。


更に銅や青銅などの安価な鉱物を鋳造し魔道具回路の簡易化などにも成功している。


「カメラ…ですか。また時代が変わりますね…!」



そう、今回開発したのは念願のカメラである。


魔法で開発しようとしたのだが途中で膨大な執務量に押され断念…。梟の塔に草案を提出するとものの三ヶ月でこうして魔道具として試作品が出来上がった。


所謂ポラロイドカメラという奴で四角い形に下部が顎の様に出っ張ってる形だ。


ここからシャッターを押した後にその瞬間が写し出された写真が出てくるのである。


試しにマルーカを一枚撮ると腰を抜かしかけたのかソファーからズレ落ちた。


「あははは…本当にスゴいです!リリアナ様の想像力と言いますか…やはりリリアナ様は神に愛されているのですね!」


出た…最近会う人皆に言われるのだが私が非公式聖女認定されてから良く言われる台詞である。


もう聞き慣れたけどね…


「とりあえずもう少し改良したら商会に販売を委託するからそのつもりで。こっちの資料と試作品は手土産に持って帰っていいよ?」


「良いんですか?!ありがとうございます!」


跳び跳ね全身で喜びを表したマルーカは何度もお礼を言っては屋敷を飛び出した。


試作品ごときであれだけ喜べるなら大したものだ。まだまだ十基ほど残ってるし一つくらいマルーカに託しても構わない。


さて、これからアポイントメントを取っているので早速出掛ける準備をしなければ。


相手はそう…レオンハルト陛下である。

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