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リリアナお嬢様の命令よ!~転生伯爵令嬢は自分に素直に生きると誓いました~  作者: 如月 燐夜
一部四章 少女子爵領地経営編
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少女子爵、誕生会を催す

連続投稿ラストー!

マリアンヌが来てから五日、動きはなくもうすぐ三月も終わりに差し掛かる。


ゲース卿が帰ってから三日目の夕方には大聖堂の献金として金貨五千枚が届けられた。


これで大聖堂を作れってことか…過去の私は頭を悩ませながらも、貰えるものは貰っておく主義であり素直に受け入れるという性格だったが今はそんな自分に苛立つ。


これも領主となった運命さだめだろうか、迷惑事にあまり首を突っ込みたくないという相反する二面性を持っていた。


4月17日、この日は私の誕生日で家族や他家の貴族から手紙や進物、贈呈品が沢山運ばれてきた。


冬に生まれた双子の妹とも会う事が出来た。名前はマナとリラ、すっごい可愛い!


更に招待状を送った全ての令嬢からお茶会に参加するという連絡が入った。


前回参加出来なかった王女やパーシアス家の令嬢からもだ。


まずい方向に話が進んでいる…


ゲース卿の思惑通りになりそうだ…!


私はそう直感していた。


きたる4月20日、令嬢達を迎え私の領都マルセムは盛大に盛り上がっていた。


前々から告知していただけあって領民は招待客が馬車で来る度に歓迎ムードで花道を作った。



やりすぎだ…と私は嘆息するもその勢いを押し留めることなど出来ようがない。


セバスから教えることは何もない、と言われたと春の初めとと共に伝えられたランゼ辺りが私の誕生日だからと何か吹き込んだのかも知れない。


今日から町も三日三晩祭りをするというし確定的だろう。



私は領民達の活気にさっさと諦め、次々とやって来る令嬢達を屋敷で迎え、挨拶を述べることだけに集中した。


尚、リビーも一度領の門外に出してから馬車で中に入って貰うという面倒臭い要求を快諾してくれた。




マリアンヌがしばらく滞在する以上、警戒を怠る訳にはいかない。


馬車の前にはホセを含め有力な騎士ばかり。


マリアンヌが滞在していた冬の終わり頃からリビーとは深夜に待ち合わせし、軽く話す程度になっていた。


これもリビーの為だと説明すると分かってくれたようだ。


しばらくジョーズ達と遊べないけどごめんね…?


私はリビーにそう謝った。




さて、招待客もほぼ集まり、残りは王女ナナリアちゃんだけだ。


でも彼女が遅れてくる理由も感付いている。


あまり予想はしたくなかったけど、今年であのイベント直後か…


それとも既に拗らせたか…


会ってみなきゃ予想も付かないな。


同情するも彼女ならば仕方ないと思い直し、私は先に茶会を始めた。


既に手紙で知らせていた既定の時間を一時間ほど過ぎてしまっている。


これ以上は待てないと私は開催を宣言した。


席に座る令嬢達。


タニアちゃんやクライシス(虚飾の呪い)公家のリサーナ嬢が手を振ってくれたのを軽く手を上げ答える。


リビーは既にドーナツをもきゅもきゅしている。


協調性という言葉を教えてあげたいがリビー聞かないだろうな。


さっさと始めればリビーが白い目で見られることはない、か。


私は言葉を紡ぐ。


「本日は遠路遥々御越しくださりありがとうございます!まだ到着されてない方もいらっしゃいますが、これよりお茶会を開催します。予定より遅くなり申し訳ございません、付きましては当家最大のおもてなしをさせて戴きますのでどうぞお楽しみ下さい!」



「「「「わぁーー!!!」」」」


「……」


「ふん!」



皆楽しそうにしているが、約二名違う反応を見せた。


リビーとパーシアス家令嬢、ユグドラだ。


リビーはドーナツに夢中で、ユグドラ嬢は不服そうな顔をし、料理や菓子には手を付けようとせず、手元にある紅茶を持ち、連れてきたメイドと中庭の端へと移動してしまった。


あー、やっぱりユグドラたん可愛いなぁ。


三番目に好きなキャラだったから思い入れも深い。


満期のプニプニ姿も好きだけど、餓期のユグドラたんは特に!これは是非お話しなくちゃ!


此方が話したそうな雰囲気を感じ取り、隅の隅へ移動するユグドラ。


パーティ慣れしてないんだろうな。


人付き合いが苦手でクールな性格だし、同年代ではあるが私より一つ上。


今は餓期か。少し痩せぎすでそろそろ呪いが発動するのも近いのかもしれない。


大食の呪い…自分の意思と関係無く飢餓状態になり、周りにある食べ物が無くなるまでひたすら食べてしまう呪いだ。


私はユグドラ嬢に近付こうとするも、レインやタニアちゃん、アンちゃんに阻まれてしまう。



「リリー、会いたかったですわ!待ち遠しくて待ち遠しくて昨晩も寝れずに領から飛び出そうとして父上に怒られたくらいですわ。元気そうで良かった…少し、背も伸びましたか?」


「あ、うん。レイン久し振り。私も会いたかったよ。あと夜はちゃんと寝なきゃダメだよ?身長伸びないし、お肌が荒れちゃうから。」


「分かりました、これからは興奮を抑える様努力しますわ!」


「リリーちゃーん!むぎゅ~!」


「おわっ!!?タニアちゃん、息、できな、い!」


「にゃっはっはー、ごめんごめん!」



「リリー、プリン。私所望する」


「はいはい、後でバケツプリン届けさせるからちょっと待っててね!」


「バケツ…プリン……だと…?!」


「三人とも後で時間作るから少しだけ待っててくれる?他の子達とも挨拶しておいてね!」



「「「はーい」」」


うん、返事だけは合うんだな、この三人は。


皆自由過ぎる…とりあえず、ユグドラ嬢に私は近付こう!


…としたら今度は当代剣聖の娘メルトリア家のサレナ嬢と当代宮廷魔術師の娘パルコシア家のイシス嬢が私の前に立ちはだかった。



「本日は某まで誘っていただき光栄だ!リリアナ殿、早速手合わせを願いたい!」


「あらあら、サレナさん。お茶会が始まって五分で手合わせは少し性急じゃないかしら?うふふ」


「ごめんね、サレナちゃん!後で相手してあげるから待ってて!イシスちゃんもまた後で!」


二人の答えなど聞かずに私は走り出した。とにかく今はユグドラの元へ!それだけしか考えられない。貴族の流儀?そんなもんゴミ箱に捨てて焼却処分だ!



あと十メートルの位置まで来ると今度はクライシス(虚飾)家のリサーナちゃんとエンディミオン(知欲)公家のルルイアちゃんが立ち塞がる。


「やっほー☆リリちゃん、おひさー!」


「同士よ。呪われろ…!」


「リサーナちゃん、ルルイアちゃん!後で事情は話すから今は向こうで待ってて!本当にごめんなさい!」


「えー?リリちゃんのいけずぅ…!」


「同士、試練ある。邪魔するは野暮。」


流石ルルイアちゃん!私の事分かってる!


後で一緒に魔導書えほん呪文詠唱おんどくしようね!


私は親指、人差し指、小指を立てた独特のポーズをルルイアちゃんにする向こうからも返ってくる。


それに頷くと足を動かした。




「ユグドラ…ちゃん!」


「センティス卿か、わたしに何か用か?」


少し低めのハスキーボイスが私の耳を擽る。


やっぱり声も優先されるのかな?確かユグドラちゃんはバトル物の少年主人公とかやってた有名な声優さんだったよね。


そんな場違いな事を考えているとユグドラちゃんは私に背を向け歩きだそうとする。


「用がないなら向こうへ行ってくれないか?」


「待って!」


「呼び止めるなら用件を言ってくれ。わたしはこうゆう場は好かない…いや、慣れないんだ。」


やっぱり好きな声だ。尖った針の様な言葉だけど、丸みを帯びた温かい声。


聞くだけで癒される。

私は意をけっして目的を伝える。


ここで逃げちゃ一生仲良くなることなんて出来ないんだから!


「私とお友達になって下さい!」


「あんっ?お前変わり者だな。このわたしと友達になりたいだって?ふん、良いだろう。興味が湧いた。なってやんよ、親友マブにな!」


あぁ、このチンピラ口調すごく可愛い!ダメだ、悶え死ぬぅ~!


本心は多分、こうだな。

(私なんかとお友達になってくれるなんて凄い良い人…!何が何でも仲良くならなきゃ!)


って考えてるんだろうな。


私はユグドラの手を引き会場の方へ向かう。


こうしないと着いてきてくれないからだ。


「じゃあ、行こ!私もお料理手伝ったんだよ!嫌いなものとかある?」



「ピー…マン」


下を向きボソッと呟く。


そういえば、野菜全般が餓期は苦手なんだっけ。


うーん、これは早めに矯正しないと後々の呪いに響くな。


後でニンジンケーキとか用意しなくちゃ。


「分かった。料理長に言っておくね。好きなものも教えてよ!」


「肉と魚だ。」


知っているが敢えて聞いた。


少しでも会話のきっかけが今は欲しい。


「じゃあ唐揚げとか白身フライが良いかな…?後は…ヒレカツも出そうかな。」


私は頭の中でメニューを導き一人で呟いた。


場内を歩いているメイドがそれを聞きシェフに伝えるという画期的なシステムになっている。


「カラアゲ…シロミフライ…トンカツ?聞いたこともない名だ。」



「私が作ったからね!食べてからのお楽しみだよ!」


「ふむ、わたしを満足させられるかな?クックックッ…」


まぁ、先人の知恵を丸パク…オマージュしてこっち風に作ったものなんだけどね。


食材が丸々一緒ってことはないし、調味料の類いは全くと言っていいほどにない。


醤油や味噌がないから元日本人としては恋しくなる一方だ。



それから強がっているけど、ユグドラちゃん、今すぐに詳細を知りたくてウズウズしてるんだろうな。


多分…

(カラアゲ?何かしら…想像も付かないわ?人名…ってことはないわよね?あぁ、リリアナさんがどの様にもてなしてくれるか楽しみですぅ…ジュルッ…いけない、涎が)


的な事を考えてるんだろうなぁ。


近場の席に辿り着くとリビーとアンちゃんが座っていた。珍しい、二大ヒロインの共演だ!


「どーなちゅ、おいし」


「プリンの方が美味しいよ?」


「こーかん、する?」


「そこまで言うなら。はむッ…こ、これは!?」


「ぷりん、おいし。どーなちゅ、どう?」


「正直見くびっていた。このからりと上がったふわふわとした絶妙な食感、回りに付いた砂糖がそれにアクセントを醸し出し、より高みへとーー」



「ほ、他のテーブルに行こっか。」


「あぁ。」


私は見てはいけないものを見てしまったのかも知れない。普段あれだけ言葉少ないアンちゃんが食レポするが如く弁舌を奮うなんて…?!


やはり女子にとって甘味とは恐ろしいものだ、私も気を付けないと。



次のテーブルにはルルイアちゃんとマリアンヌが居た。


ヤバイ匂いがプンプンするぜッ!


二人とも信じる神、あるいは邪神について語っているのだろう。


宗教戦争一歩手前かな?


君子、危うきに近寄らずってね。


次行こう。



リサーナちゃん、レインちゃん、イシスちゃんの席は…比較的安全かな?


でもイシスちゃんの場合、突然爆弾を投下するから近付かんとこ…!


残るはタニアちゃん、サレナちゃんの組だけど、比較的大人しそうにしていた。


というか、タニアちゃんの天然が発動し、血気盛んなサレナちゃんを圧倒していた。


タニアちゃんすげぇ!



私は一番奥のテーブルまで向かうと片手で椅子を引き、先にユグドラちゃんを座らせる。


「センティス卿、いつまでわたしの手を繋いでいるんだ?これじゃ座れないんだが…」


あ、忘れてた。


夢中になりすぎて離すのを忘れていた。


名残惜しくも手を離し、腰掛ける様子を見届け私も隣に座った。


ユグドラちゃんのメイドは静かに側に控えている。


私は座るように勧めたけど、断られた。



「お待たせ致しました、塩唐揚げの甘酢餡掛け、川魚の白身フライとトンカツ~トマトクリームソースを添えて~でございます」


「ありがと、さっ!食べよう!」


本当はお米と食べたいけど、見つからないんだよなぁ…もしかしたら王国には無いのかもしれない。


ふわっふわの白パンを割り間に唐揚げを挟みかぶりつく。


う~ん!美味しぃ~!

全身で美味しさを表現しているとユグドラちゃんも私の真似をして食べ始める。


「こ、これは…!」


ユグドラちゃんのエメラルドの瞳がクワッと見開かれる。驚いてるんだろうな!



「お、お…」


「お?」


「お、おいひぃ~!もっと、もっと欲しいのぉ!熱くて大きいのッ!!あひぃ~!!」


注意、彼女は食事しているだけです。決して卑猥な想像はしないで下さい。


多分餓期も限界だったのだろう。


ドレスや手指が汚れることなど形振り構わずひたすらに食事をこなす姿を私は眺めていた。


無理せず栄養を接取することが肥満にならない最大の秘訣だ。


バランスよく野菜も取らないと太ってしまう。


「あっ…わたしはまた…やってしまったのか…」



とりあえず今日はこんなものだな。


私はユグドラの手を掴み瞳を見る。


「気にしないで。呪いの事は知ってるの。ジェネシス公から聞かされてね。でも我慢は良くないよ?きちんと一日三食、バランス良く食べれば急激に太ることはない。ユグドラちゃんの食べ方は逆に体に悪いし、太る原因なんだよ?」


私は細心の注意を払いジェネシス公との繋がりが周囲に聞こえない様、話した。


警戒しているマリアンヌは…

まだルルイアちゃんと宗教論争中だ。


皆のお付きのメイドも紅茶を片手にそれぞれ気の合う相手と話していた。


「あぁ…センティス卿…我は…そういうことか…知っていても尚、我に声を…」


「リリアナでいいよ?私もユグドラって呼ぶから」


「そう…か。ならばリリアナよ、こんな醜い我でも…その、友となって…くれるだろうか…?」


ユグドラは不安そうな顔をしている。


顔中食べ滓だらけだ、勿体ないな。


綺麗な顔してるのに。呪いを解くのを急がないと!


私は頷き微笑んだ。



「もちろんだよ!というか、私から先に友達になろうって言ったんだから!一緒に頑張ろう?」


「友…達…うん!」


その時、泣き顔のユグドラが溢した笑顔は私の心に深く印象的に残った。


「じゃあまずはその服と汚れた顔を綺麗にしなきゃね!ジェシカ、お風呂に案内してあげて?それと私の着替えをユグドラに。」


私の後ろに控えたジェシカに伝えると恭しく頷き口を開いた。


「畏まりました。さ、ユグドラ様、お付きの方もご一緒に此方へどうぞ。館内へ案内します。」


さて、ユグドラの心も氷解したし、まずは第一段階はクリアかな?


ナナリアちゃんはまだかな?流石に遅い…

と、その時不意に甲高い声が響く。


「あら、わたくしが居ないのに盛り上がっているのね。センティス卿とは何方どなたかしら?一番にわたくしに会いに来るべきじゃないの?わたくしはナナリア・アムスティア、第三王女よ!」


噂をすれば何とやら、沢山の執事服を着たイケメンを引き連れ、我が王国の第三王女ナナリアが姿を現した。


呼んだのは私だが厄介な人だ。


まぁ、サクッと攻略しますかね。

かなり難産でした…

投稿十五分前に完成して何とか間に合った…!


拙い作者で申し訳有りません…


お詫びに新キャラ(ユグドラ)をアへらせたので許してください。


次回ユグドラのキャラ紹介を挟みます。


これで書き溜め全て排出した事になります…


なので


一週間ほどお休みを下さい…

本業が大分落ち着いたとはいえ未だ忙しく執筆時間があまり取れません…


申し訳ない……!

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