武器屋巡り
戻ってきた皆んなで一緒に昼食を取っているとランゼ達が謁見を終えて戻ってきた。
何か頬に殴られた後が残っているので治そうとすると止められた。
「ありがたい申し出ではありますが、これは男としてのケジメ…なので。私はこの痛みを一生背負っていく所存です!」と遠くを見て呟くランゼが静かに闘志を燃やしている…何が有ったのやら気になるが、ご機嫌なフローラと不機嫌そうに頬を膨らましたメルティを見れば大体察しは付く。
「それじゃ、報告会でもしよっか。マルシェラ班から。」
「替えも含めて多めの衣服を安く購入したで。雑貨も消耗品を多めに喫緊で必要そうなのは粗方買えたわ。ドロシーが裁縫出来るらしいし、針と糸、布も買ったで!」
「ありがとうマルシェラちゃん。次はダリア班。」
「こっちはホームに着いた時点で既に荒らされてた後さね。その後片付けをしてる間に二回襲撃が有ったけど、追い返してやったさね!回収出来たのはそれぞれの所有物が少しだけ。予備のアイテムや武具なんかは持ち去られた後だったようだね。」
「そう…次は私かな?あ、ランゼも参加しとく?」
「そうですね、私は陛下と謁見しただけなので特には…午後からはフローラのギルドでの後処理を手伝うつもりです。戻りが遅くなる可能性がありますので何が有った場合はボストンをギルドに走らせて頂ければ良いかと。」
「おう、既に話は通ってるぜ!」
「了解。じゃあ私の報告かな。まず食料を一ヶ月分ほど購入してマジックバックに保管してある。味は班員全員で納得して買ったから大丈夫だと思う。露天の鍋ごと買ったからそのまま温めて食べれるよ。あとは時間が少し余ったから市場に行って数点アイテムを買った。南大陸産の亜人用装備アイテムと死天王テンカと接触出来るアイテム…というか手記。」
「え?え?死天王と接触出来るって、それ大丈夫なんか?」
「うん、まだ使って無いけどいきなり敵対することは無いと思うよ?」
テンカは忍びの極意を継承させる弟子を探している。いきなり攻撃される様な事は有り得ないだろう。
「午後からは武器屋を回って値打ち品を回収するつもり。出来れば同時並行して行きたいから何人かこっちに回って欲しいかな。あ、ボストンは連絡要員だっけ?そしたらファニとネルも残って欲しいな。ビビは私と行動ね。」
「分かりました。ネルちゃん、お部屋で手芸の練習しよう?」
「良いよー!どっちが上手く出来るか勝負だよ!」
「じゃあ班を再編せなあかんなー。リリィとビビ、ウチとシズとみぃちゃん、ダリアとレイア、ドロシーって感じでどうや?」
「んーシズさん、レイアさん、ドロシーは連携も有るし一緒の方がいいんじゃないかな?でも武器屋がどこにあるのか分からなくなるのか…シズさんその辺どう思う?」
「マルシェラ嬢の考えでいいんじゃないか?私としては三人が三人、前衛だからどう割り振られようと構わないと思っている。」
「じゃあそれで良いか!フローラさん、街の地図って持ってない?」
「ええ、必要と思い持ってきてありますよ。予備も三枚ほど。」
「ありがとう!えっと現在地がここでーー」
赤いインクで丸をして其々の担当区画の武器屋を決めていく。
広い町を三分割して私とビビが北西から北東、マルシェラ班が北東から南、ダリア班が南から北東と割り振った。
北には貧民街と鍛治工房が隣接しており、一番襲われる可能性があるのが北だ。だが、私なら結界で空中に逃げられるし、魔人か。数人束になって来ないかぎり、切り抜けられる自信がある。
「それじゃ解散。六時の鐘で一度帰還する様に!ランゼ達は手が空き次第手伝ってくれると助かるかな。」
「分かりました、なるべく早く引き継ぎ案件を終え、お嬢様のお力となりましょう。」
♢
「らっしゃい」
無愛想な店主がやる気なさそうに対応する武器店。此処で二十二店目だ。まだ当たりな部類だろうか、他は塩対応も塩対応。中には仕事の邪魔だと追い出されそうになったのでギルドカードと金貨の袋でビンタしたら対応を変える様な露骨な店主も居た。まぁ買うのは値打ち品でオーダーメイドじゃないと分かるとガッカリする人も居たけどさ。
「値打ち品が欲しいんだけど」
「うちにはそんな物ねえよ。納得がいかねえモンは溶かして別のモンにする。」
ほうほう…
「時に店主、貴方が作った物で一番だと自信を持って言える武器は有るかな?」
「あン?それならこれだな、竜の牙と骨を混ぜた合金で作った大剣だ!だがコレは売りモンじゃねぇーーっておい、話聞けや!」
立派な両刃の大剣だ。大剣は専門外だけど今の私はあらゆる武器を使ってでも強くならなければいけない。
あら、意外と重い?けど持てない程じゃ無いし何なら力が漲ってくる感じ。
「店主、言い値で買おう!」
フッ…武器屋で一度は言ってみたい台詞第一位を此処で使う事になるとはな…
「う、嘘だろ?!嬢ちゃんみたいなのが軽々振り回すなんて?!大人二人で運ぶのがやっとの重量だぞ?」
「返答は?」
「それだけ扱えりゃ譲っても良いか、金貨三枚だ!」
「買った!良い買い物をさせて貰ったよ、それでは失礼する。」
フッフッフ…中々良いお店見つけちゃったなぁ…さぁーて、次は…と。あ、次で最後か。
「ん?」
「少し無駄使いし過ぎじゃない?それ…本当に必要?」
店を出るとビビに袖を引っ張られる。大剣を指差して言われた言葉に私は少し焦りながらも返す。
「う…ひ、必要だよ!うん…多分きっとメイビー。」
冷静になれば扱えもしない大剣なんか買ってどうするつもりだ私。いや、これも強くなる為の布石、謂わば未来の自分への投資だ!これから先大剣使いと戦うことが有るかも知れない…し?
「そう、なら良い。《竜殺剣》、竜属性持ちの相手に多大なダメージを与える事ができる。だって。他に買った弓とか斧とか槍とか棍棒とか鞭も全部必要なんだね。」
「う…そうだよ?鑑定ありがとう。」
竜特効武器か…良いねぇ、ロマンだよ!
そう、私は値打ち品以外にも店主自慢の一品も買っていた。目当ての双剣は無かったけどクーロンでオーダーメイドしてもらおう。
♢
最後の店を出て宿に向かう途中…ここは貧民街から近い場所だ。ちょこちょこ感じていた追手が仕掛けて来るならこの辺りと予めルートを編集して誘っていたが未だに仕掛けては来ない。
「ビビ、先に戻ってて?」
「分かった。リリィ頑張って?」
ビビに先程購入した外套を羽織らせ貧民街の奥へ奥へと足を進める。
ほーら、どうしたー?私は無防備だぞー?
お、来た来た!
人数はひーふーみー……十八人か、そこそこ多いな。
全員纏め捻りつぶしてくれよう!!
フハハハハー、雑魚どもがァー!剣は死んじゃうから…棍棒で。
何も考えず上から下に右から左に無尽を棍棒を振り回した。
悪滅棍棒…性能の割には使い易くて威力も出る。
準備しておいた縄を首と腕に掛けてっとおぉー、凄いな気分は奴隷商人だ。
捕虜を北の衛兵詰め所に置いてきて私は宿へ帰還した。




