翡翠剣
リリィ は のうきん!
「それで…ジェノスのルッカさん?だっけ。私に何か御用かな?」
「いやいや、今日はちょっとご挨拶に来ただけだよ?名前と顔さえ覚えてくれるだけで良いのさ!」
「そう。けど私の事ずっと付け回してたよね?目的が挨拶なのに私を付け回す意味が分からないかな。」
「それじゃ…警告だよ。裏通りのボロ屋に居る亜人達には近付かないでくれ。あれは私の獲物だよ。横からいきなり現れて掻っ攫おうなんて酷いじゃないか!」
裏通りのボロ屋に住んでる亜人達って十中八九ファニちゃん達の事だよね。それに獲物?もう少し詳しく聞きたいが…というか朝から付けられてホームでの会話を聞かれてたかもな。んー…しくじったかも…
「獲物ってどういう事?貴方と亜人達の繋がりは?それに私は喧嘩なら幾らでも買うよ?というか捕まえて吐かせた方が早いか…よっし!!」
思考を纏めてから即行動。
ルッカの周りに居る男達を手刀で気絶させ【鉄棘檻】で個人毎に捕獲。
残りルッカと二人。
一人はひたすらナイフを舐めて黄ばんだ目をしながら何かをブツブツ呟いてるキチガイ。
もう一人はマッチョの禿頭。
よしまずはキチ男から!
「ひゃっはー!メスガキの生き血ぃ、吸わせろやぁ!!」
「おっと…危ない…なァ!!」
このキチ男、投げナイフが上手い。
一投目は私の視認出来ない速度で頬を掠めた。
二、三投目と私の心臓を正確に狙ってくる辺り中々の手練れだ。
地面に落ちてた石を蹴り飛ばしナイフに当てると軌道をずらしてその間に接近。
腕を取りそのまま背負い投げをかますと男は気絶した。
「次ィ!」
「舐めんじゃねえ!」
ハゲマッチョがタックルをしながら私に突っ込んでくる。
ひょいと上に飛び、ハゲマッチョの頭を踏み台に避けると【青炎玉弾】を発動。ハゲマッチョの顔面に着弾し、全身の毛を全て焼き尽くす。
おっさんの裸には興味ないので【土葬棺】という魔法で顔以外を土の棺桶で密閉する。
「ルッカ、後は貴方だけ。降参するなら今のうちだよ?」
「ふん、Sランクの奴らってのは大概化け物だね…」
「私より強い化け物級なんて掃いて捨てる程居るよ。」
ジョセフとか、死天王とか、マオとかね。あ、マシューも覚醒してジョセフを倒せるくらいには強いんだっけ…
「それじゃ、行くよ?一応手加減するから頑張って耐えて…ね!」
蹴りで腹を撃ち抜く、面白い様に跳ねたルッカは、蹌踉めきながらも立ち上がる。
腰に履いた細剣を抜くと、スッと正眼に構え、一瞬の内に距離を縮め鋒が私の肩を掠める。
痺れる様な痛みに耐えながら顎に蹴りを入れると、ルッカは崩れ落ちた。
あれ、まだ平気なの?気絶させるくらいには強めに蹴ったのに。
「ゲホゲホッ…本当おかしいよ…私、これでもAランク相当はあるのにね…だが私には【あのお方】から頂いたこれがある。……【強制魔人化薬】が、ね。」
ムッ?!
【あのお方】?
【強制魔人化薬】?
後者は知らないけど、前者はマルシェラちゃんが居た城のスライム男が言っていたような…
確かにルッカは強い。手加減したとは言え、八割強の威力で攻撃に耐えたのだから。
頑丈さは少なくても五年前のマシュー並み、速さはランゼと同等かそれ以上と言ったところだろうか。
突然魔力爆発が起き、咄嗟に結界を張るも余波で吹き飛ばされ壁に背中を打ち付けてしまう。
全身に回復魔法を掛け立ち上がり、ルッカの方を見て私は驚愕した。
口から煙を噴き出しながら頭に一本の角を生やし、全身がドス黒く濁りひび割れたルッカが煙の中から姿を表す。
『Guoooooooaaaa!!』
雄叫びを上げたルッカだったモノは尋常じゃない速度で私に拳を振るう。
腕を掴み背負い投げるも常人には出来ない動きで態勢を立て直し私の腹に蹴りを入れた。
「グフッ…!!」
何とか致命傷は避けたけど動きが人から獣の様になっている。
このまま戦っても街に被害が出るし、街の外に移動しなきゃ!
ていうか手加減してる余裕はない!全力で戦うしかない!
「舐めないで…よッ!!」
全力の右ストレートを顔面に当てた。
硬った…!拳がジンジン疼く。
けど、もう一回!殴ると共に拳を回復して何度も何度も殴り続ける。
ノックバックした隙を突き、闇系統の上級魔法【混沌より出でし魔手】を発動。
地面から突如現れた数十の白い手が一斉にルッカを掴み動きを束縛する。
それから大樹海にて数本ドロップした【短転移】の【簡易魔法巻物】を広げて破る。
一連の動作によって【簡易魔法巻物】が灰となり、封じ込められていた魔法が発動。
対象はルッカと私。
座標を【豊穣の大樹海】の方角にセットした。
視界が暗転し、瞬きくらいの時間でつい先日までいた見覚えのあるダンジョンの入り口を数十メートル先に確認し終え、簡易魔法巻物がしっかりと発動したのを確認すると腰に履いた愛剣を手に取る。
『Gluuuuu...Gaaaaar!!』
まるで開放しろとばかりに騒ぎ立てるルッカに私は近付き、その心臓を一心不乱に突き抜いた。
が、防御力が上がっているのか、ガキィンという硬質な音を上げ、愛剣が弾かれる。
あ、少し欠けたっぽい…手入れする前だったからな…
この前のマオとの戦闘で少し罅が入っていたのを直しに行く予定だったのに、どうして私は武器の修復を優先しなかったのだろうか…
軈て捥がくルッカに魔法の拘束が破れ再び膠着状態となる。
んー、ちょっと不味いかも。
一番得意な手札を封じられてしまったも同じ。魔法も拘束系は若干効くがそれでも効果は薄い。
【石牢】【炎壁】【雷柵】…考え付く限りの拘束、もとい足止めを行う。
このままじゃ剣が折れちゃうし、それは避けたい。
ぶっつけ本番だけど、試してみようかな。
本当は鍛冶屋さんで試すつもりだったけど背に腹は変えられない。
お化け大樹の落とした宝珠【緑樹宝珠】。
三割の成功率で武器と融合させ、魔法剣にする事が出来るが失敗した場合武器も宝珠も砕け散る、との事。
ジョセフに貰った大事な剣だけどこのままじゃ折れちゃうし、やるなら今のうちだよね。
よし、やろう!
宝珠を手に持つ。
魔力が吸われる感覚と共に宝珠の放つ翡翠色の光が段々と強くなっていく。
愛剣の刃に当てるとスゥッと宝珠が溶け出してコーティングする様に包み込んだ。
おっ…成功?
愛剣を見てみると刃部分が淡く翡翠に輝いている。
罅や欠けも修復されてるみたいだ、良かった!
向こうさんも一切傷なく姿を見せる。
剣を宙空に一振り…
おっし、重さの違和感はないし、なんか地面から木の根っこみたいなのがウネウネと這い出てきてルッカを吹き飛ばした…
あー、そういう事か。
さぁ、第二ラウンドだ!
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