スタンピード3
「それじゃあ、ちょっくら暴れて来るかねぇ…!」
ダリアは一言呟くと一歩前に進み出た。
魔物の群れとの距離は約二十メートルーーダリアは大きく左腕を引き、魔力を込めると硬質化した魔力が左腕に纏わりつき黒く変色した。それを前に突き出すと衝撃波が起こり、魔物の群れが一瞬で塵になっていく。
あれだ、見た目は完全に腕武装甲ってヤツだ!
でもぉ、アレぇ?
既視感がある…これ、原作で見たことあるぞ?
けど、あのキャラはダリアって名前じゃないし、男でしかも両腕だった。
「えっと、ダリア?その魔法って誰に教わったの?」
「これか?死んだ親父さ。酷い男でねぇ…私と母さんを捨てて自分の夢を叶えるって出てっちまったのさ。名前はーー」
「ーー拳王。ガーファンクル・ドラクリオン、でしょ?」
「何故リリーが親父を知ってるんだい?」
「フッ…昔、ちょっとした仲でね。」
「昔ってあんた十歳其処らじゃないかい!」
「何度も戦った仲だよ。懐かしいなぁ…!」
嘘ではない。原作では何度も敵同士として戦った。
【拳王】ガーファンクル・ドラクリオン。
死天王の一角だ。
人族だけど、魔王に忠誠を誓っていて好戦的な性格。
原作では物語の中盤で出てくる中ボスである。
能力上昇要員のオリヴィエと能力下降要員のリサーナちゃんが最大級の補助をしても硬すぎて硬すぎて、倒すのに一時間以上は掛かる相手だ。
更に強制出撃の原作リリアナ(ヒロインの中で、中の下の火力)と、勇者の力を封じられたマシュー(全能力五割ダウン)という足手まとい二人を引き連れての死闘に次ぐ死闘…!
六人編成で四枠は確定だから残り二枠を如何に高火力を出すかで命運を分かつのだ。
正直、
ふふ…一番最初にプレイした時は、倒すまで三ヶ月掛かったっけ…懐かしいや。
「むぅ…上手くはぐらかされたか。まぁ、英雄には英雄なりに色々有るんだろうねぇ…チッ…もう集まって来やがった!」
「任せて。【百式火弾幕】」
私の周囲に百の小さい魔方陣が浮かび、その一つ一つから火弾が容赦なく連写される。
ムッ!?
左舷弾幕薄いよ、何やってんの!
とか言っても射って(発動して)るの私なんだけどね。
だが決してそんなことは無い、ちょっと言ってみたかっただけだ。
私の人生で一度は言ってみたいセリフ第五位なのである。
「んなっ……!!」
ダリアは口を開けて固まっている。
んー、やっぱり改善点は幾つかあるかな。
威力が弱いのと同じタイミングでしか発動しないから、殲滅力に欠ける。
これ、派手な見た目だけど一発一発は並みの魔法使いが放つ火弾と威力変わらないんだよね。
所詮はバルカンだからビームライフルやメガ粒子砲とはいかないのだ。
こんなんじゃ一年戦争は終わらないよ…!嘘だと行ってバーn…ry
《塵積も》ってヤツ?
「あいつ…早い!三倍か?!」
一匹の毛並みの赤いワーウルフが弾幕をひょいひょい避けて此方へと近付いてくる。
狙いは私の様だ。
「おいッ!そこの魔法使いッ!このうざってぇ魔法を止めろ!俺様の部下がどんどん丸焦げになってくじゃねえか!」
「おぉっ!ジャア様だ!早い、早すぎるぞ!この弾幕の中、完全に見切っているぞ!」
「ヒャッハー!ジャア様が出られたからにはあの人間、終わったな!」
マジか…このワーウルフ、ジャアって名前なんだ。
ちょっと機動する戦士なアレの敵役に似てるなぁ…って思ったら名前が著作権侵害レベルでした。
「ハッハッハー!このジャア様からは決して逃れられんッ!死ね、小娘ッ!ッ?!」
「うるさいなぁ、バカ犬。」
「グエッ…ーーんなッ…!あの魔法使い…化け物かッ?!……」
身軽に私の目の前までのこのこやって来たので、鞘から抜いた愛剣で首を跳ねてやった。
ふぅ…静かになった。
「あんた、剣も並みじゃないのかい?規格外の化け物さね!」
ダリアも乗ってきた…
もう、いい加減にしなさい!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁ…はぁ…ダリア、まだ戦える?」
「あぁ…正直限界さね。これじゃ埒が明かないよ!」
茶番あと、魔力を温存することにした私はダリアと共に何百という魔物を倒したのだが、一向に敵が減らない。
どうにかしたいが打つ手がないのだ、完全に詰んだ状態である。
私は思考を続けていたがひとつの可能性を思い付いた。
「ねぇ、魔物が来てる方向にダンジョンとかあったりしない?」
「ムッ?あぁ、確かにあるさね。《狂乱の古城》ってのが、大体十キロくらい先にあるねぇ。」
「んー…よし!そこに行ってくるね。ランゼに報告よろしく!」
「ちょっと、一人で行く気かい?!正気の沙汰じゃないさね!」
「だいじょぶだいじょぶ~!あ、ランゼに会ったら頑張れって言っといて!んじゃ!」
「はえッ?!なっ、まさか!うわぁー!?」
私は《泥沼男》最終決戦仕様を召喚するとダリアをひょいと掴んで本陣の方へ力一杯投げた。
序でに掴んだとき回復魔法も使っといたからAランク冒険者のダリアなら無事であると思う。
「さてッ…行きますか!」
私は奮闘する泥沼男を横目で見やりながら結界で空中をいどうするのだった。




