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スタンピード1


ランゼと共にマルバラの町の西側城門を抜けると多くの冒険者らしき人達が殺気立って前方を警戒していた。


魔物が現れたのはここから西に二十キロほど進んだダンジョンらしいと斥候から報告を受けている。


あ、さっき私がボコボコにしたおじさんも居る。


ちょっとバツの悪そうな表情を浮かべてそそくさと人混みに隠れていった。


手加減したから怪我の心配も無さそうだし大丈夫だよね?


名前は…えっと、なんだっけ?まぁいいか。


ダリアを見つけた!

指揮してるのかな?

あれこれ冒険者に指示をしている。


ギルドマスターと私が現れて皆、此方に注目し始める。


フフッ、何だか偉くなった気分だな!

まぁ、実際偉いんだけどね。


ランゼが失礼します、と私の脇を抜け、前に立つと胸一杯に息を吸い込み声を張り上げようとする。


折角だし声が聞こえやすくなるように色々と補助してあげよう。私って優しい。


「諸く…?!うぉ、なんだ?あ、お嬢様の仕業か…じゃなくて、お気遣い有り難う御座います。ーーオッホン…諸君!現在魔物の大群が此処、マルバラの地に侵攻している!我々はっ!ここで奴等を潰す!報酬や緊急事態手当てなども諸君らの活躍で思いのままだッ!戦え!そして、勝ち取るのだ!勝利と、我々の日常をッ!進めー!」


後の世に歴史家がこう記述した。


突如、薄暗くなった辺りからは想像も出来ないくらい眩しく光るギルドマスターランゼは威風堂々と発言した。


ギルドマスターランゼの立つ地面が隆起し、五メートルほど競り上がる。

と、共にギルドマスターランゼの演説は進むにつれ冒険者達を滾らせた。


その声は遠く離れた村々まで響いたとされている。


なんてことは私は知る由もないのだが…


というか、これって町の防衛戦だよね?


こっちから出る必要ってなくない?


その辺をランゼに訪ねると…


「はっ!?確かにお嬢様の言う通りですね…ですが、此方の指揮は高く、ギルドマスターとして命令してしまった為撤回は出来ません。ですが、あまり町の近くで戦うのは万が一の可能性を考えて避けた方が良いと愚考します。」



まぁ、確かにその通りだとは思うけどさ。


あまり離れても別動隊が居た場合町の守りが薄くなるのではないだろうか?


「いざという時には町に詰めてる衛兵隊が何とかするでしょう。幾ら頭の固い連中でも町の危機となれば動かざるを得ないでしょうし。」



そういうもんかな。


まぁ、いいや。


ということで、歩くこと数十分。


五キロほど離れた場所で私たちはスタンピードを待ち構えた。



んー、暇だなぁ。


暗くて辺りも良く見えないし、灯りを確保しようか。



「【光柱ライトピラー】!」


ランゼが籠る天幕から数メートルの所に光の柱を出現させる。


これで冒険者達も困らないだろ…ん?


「おい、なんだこれ!?いつの間にこんなもん生えてきたんだ?」


「これ…光柱…なの?」


「に、しては明るすぎじゃね?こんなの帝国の魔導士でも有り得ねえよ!」


「だよなぁ…じゃあこれは何なんだろ?」


「これ…もしかしたらスタンピード側からしたら格好の的なんじゃ?」




冒険者達がわらわら集まりそんな事を言い始めた。


あー、最後の人の意見は一理あるな。


じゃあ少し弱めて、っと。


「嬢ちゃん何してるんだ?って、うぉ!急に暗くなったぞ?」


「この子供が発動した魔法…ってこと?魔力がどれだけ高くてもこんなこと出来るのはギルマスの主だって言うリリアナ様くらいじゃ…金髪に翡翠眼ってもしかして?!」


「いやいや、有り得ないだろ!五年前の話だぜ?聞くにその当時で十一歳だったはずだ!今頃十六歳の成人だぜ?」


「確かにその通りだよな?んー、でもこのお嬢ちゃんとんでもない魔力じゃねえか?これが才能ってやつ…なのか…」


「万年Dランクのお前さんと違って才能に溢れてるな!ハッハッハ!」


「んだと?テメェ、喧嘩売ってんのか?」


「お?やるか?良いぜ、相手してやんよ!」


あれ?なんか喧嘩しはじめちゃったよ。


んー、仲裁に入るのも違うしなー。


どうしよっか。


「静まれ!お前達は喧嘩してる場合か!罰として周辺の警戒をしてこい!」


「うへー…そりゃ無いぜ、ギルマスさんよぉ…」


「そうだぜ!俺達ゃ、あんたの家来じゃねえんだ!」


「ほう?言って聞かなければその身に分からせるしかないのだが…覚悟は良いか?」


「オイオイ!勘弁してくれよお!」


「ちょっとした冗談だよ!あんたの指示に従うさ…」


「分かれば良い。さっさと行ってこい。」


ランゼはうんうん、と一人納得したのか頷きだし、周辺の警戒に行った冒険者を眺めていた。



「さて、お嬢様。あまりお戯れはしないようお願いします。先程から眩しいほど光るこの光柱…お嬢様の仕業でしょう?あまり、冒険者の事を刺激をするのはどうかと存じます。」


「んー、暇だったし。明るい方が警戒しやすく、なーい?」


「それも一理あるのですが、冒険者達も条件は同じですし、暇を持て余しています。何か変わった事があればこれ幸いと他の冒険者を煽りストレスを発散するため喧嘩をしようとするのです。彼らは冒険者、言い方は悪いですが、首輪を付けられた飼い犬(騎士団)ではないのです。ご理解下さい!」


それはもう懇切丁寧に説明されては流石の私も頭を下げ返した。ごめんよ、ランゼ。



それから夜の闇が深くなる深夜帯まで待機は続いた。


そして、空が薄らみ始めた早朝…


「スタンピードが来たぞぉー!全員、武器を持てー!」


斥候役の冒険者がそう口にした。



土煙を上げ、此方に向かってくる大群の姿が私の目に移ったのだった。

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