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役者は集う

投稿予約が一週間ずれてました…ごめんなさい…

友人から連絡があり発覚し、慌てて更新しました!

ご迷惑をお掛けして申し訳ありません!


連携の特訓を始めて四日、聖教騎士団がここゴディラムの街に到着した。


予定より三日遅れてのことだった。



この四日間で急拵えとはいえそれなりの形にはなったがまだまだ見直すべき点は幾つもある。


男子女子の間で連携が上手く行かないのだ。


最初はそれなりに上手く行っていたのだが、サレナちゃんとマシュー、ロイとレイン、ジョーズとルル、ポロとモガ…と言った具合に理由は違うが些細な言い合いになってしまう。


サレナちゃんとマシューは、以前マシューとまともな稽古にはならず逃亡して負けてしまったサレナちゃんがマシューをライバル視し始めサレナちゃんが食いぎみにマシューへ因縁を付けた。指令をどちらが出すのかと揉め始めたり、小さい事でマシューに追い討ちを掛け始めたのだ。


ロイとレインは行軍中に報告に来たロイをレインが睨み高圧的な態度を取ったのがきっかけとなり些細な言い争いが目立つようになっている。初めはロイもさらりと流していたのだが、私が少し目を話した隙にロイも言い返すようになってヒートアップし始める。


ジョーズとルルはマイペースなジョーズ相手に歯に衣着せぬ物言いでルルが毒を吐き、ジョーズが落ち込み訓練に参加出来ないほど傷心するまでに至る。


ポロとモガは兄妹喧嘩を始めてしまう始末。昔からあまり仲の良い兄妹ではなかったがモガが私に仕え始めた頃から兄妹仲に亀裂が走った様に思える。


流石に見過ごせないと私が間に入り、この隊の隊長をロイに任命し、協力するようにと厳命した。


真面目で視野の広いロイならば上手く纏めてくれるだろう。副隊長にルルを付け後衛視点からロイに助言をする事を期待した。


それが三日目の昼頃でその後思わぬ出来事が起きる。


マシュー達の連携を遠目に見ていたセンティス兵が滞在期間で仲良くなったのかセンティス兵、近衛騎士、奴隷が集まり戦闘連携の訓練をし始めたのである。


それが輪を広げ皆十人ほどで集まって各々の動きを確かめる様に模擬戦を始めたのだ。


城壁の上から見守る私に後ろから声が掛かる。


「こんな所に居たのですね、リリアナ様。士気が高い…!この軍なら公国軍にも勝てるかもしれません!」


「そうだね、パルメラ。でも油断してはいけない。私達の目的はあくまで公国軍をこの大陸に寄せ付けないこと。…でも私には目的がある。」


私はゆっくり振り向き、声の主パルメラに振り返る。


少し溜めを作り口を開くとパルメラは知っているとばかりに頷く。


「ユグドラ様の事ですね、心得て居ります。大切な…ご友人ですものね。きっと助けてあげませんとね!」


私はパルメラの言葉に頷きかけて止まり、首を横に降る。


「きっと…じゃなくて必ずだよ。この軍を残してでも私はユグドラちゃんを助けに行く。まずは援軍を揃えてジョセフ達が戻ってからだけど直ぐに行動することになるよ?ーー心の準備は出来てる?」


「…ええ。リリアナ様に抜擢され騎士として生きると決めた時からこの身を赤く染める覚悟は出来ております…!私はどんなことが有ろうともリリアナ様に一生お仕えさせて頂きます!」


パルメラには欠点がある。


それは血が苦手なこと。


十年ほど前に酒を飲み暴れた父親をたまたま握っていたパルメラが刺し殺してしまった。


病気がちな母と幼い弟を守るためとはいえまだ十三才の少女には心的負担が重すぎた。


ジョセフの兄に預けられ村から離れたパルメラは幼い頃からの夢である騎士になるという一心で店で働きながら、空いた時間にジョセフの兄に細剣を習うと瞬く間に成長を遂げた。


鍛練と給仕の仕事に打ち込み段々と父の死を心の片隅に追いやり普通の少女らしさを取り戻し五年、私の呼び掛けにジョセフの兄からの推薦でパルメラは晴れて騎士見習いとなる。


剣聖ジョージの血族は何かしらの武器の才能をその身に秘めており誰も彼も一般兵とは比べ物にならないがジョセフ、ホセ、パルメラなどは境地に足を踏み入れている類いの強さである。


私はそんな彼らを雇った事を誇りに思うし、彼ら彼女らの望みならば叶えてやりたいと思っている。


パルメラの決意は固いらしく表情も真剣そのもの。私は腰の両手剣を抜きパルメラの両肩に当てない程度に置き騎士の誓いを立てる。


「我が騎士パルメラ、これからも私の背中を預けよう。共に武の高みを目指そうぞ。」


「ははっ!」


少し古めかしい口調になる誓いだが、何百年も前に行われていた物が現在でも行われているのだ。歴史の重みを感じる。


私が剣を腰に戻すとパルメラと私はどちらからともなく笑い合った。




さて、話は戻るが聖教騎士団が到着したのは四日目の昼頃。聖騎士二千、十六家の諸侯軍八千の一万だ。


代表としてやってきたのは豪華な鎧に身を包んだ騎士風の者だ、面頬を付けフェイスガードまでしっかり下ろし顔を見ることは叶わない。


私の前で止まると片膝を着け一礼する。


「聖教騎士団、並びに諸侯軍一万只今到着しました。」 


「ご苦労様です。えっと…大変失礼ですがどちらの方でしょうか?」


私が声を掛けると佇まいを直し、面頬に手を掛ける。

その中から飛び出したのは輝く金髪に澄んだグリーンの瞳、整った顔の女性だった。


「はっ、聖教騎士団隊長セリーヌ・ジュスカと申します!聖女様にお会い出来て恐悦至極にございます!ところで巫女様…マリアンヌ様は何処いずこに…?!」


あー…予想はしてたのだが、やはりマリアンヌの身内か。


危険の匂いがプンプンする…


「あれ?あっー!セリーヌ!どうしてここに居ますの?遠征に行ってたんじゃありませんの?」


「あぁ、巫女様!はぁはぁ…わたくしセリーヌ、巫女様が北に出兵すると聞き急いで此方に来ましたわ!ジュル…失礼。あぁ、おいたわしや…いつも引き込もってばかりでの数日に渡る行軍はお疲れでしたでしょう。さぁ、向こうの天幕に巫女様の好きなものを沢山ご用意しております。グフフ…あ、教皇倪下と母君からのお手紙もございますよ!」


「本当に?!マカロンはあるの?あ、お父様とお母様の手紙も見せて!リリアナ様、失礼しますね。」


「う、うん、楽しんできてねー。」


まずマカロンに食い付くところがマリアンヌらしい。本当に到着の挨拶だけだったのか、マリアンヌの手を引き聖教騎士セリーヌはその場を後にする。


先程まで凛とした表情だったがマリアンヌが現れてからその表情はだらしない程に緩みきっている。


少し危険な雰囲気を感じつつもマリアンヌがよっぽど懐いている様なので特に何も言わず見送った。


あり得ない話だがマリアンヌ会いたさにゲース卿自ら来なくて一安心である。


奴ならばやりかねんからな…




セリーヌとマリアンヌが去った後純白の鎧に身を包んだ偉丈夫が私の前に現れる。


額から左頬に掛けて古い刀傷を顔に持つその人物は私もよく知る人だった。


「リリアナ殿、王命により参上致した。我が娘サレナは貴殿らに迷惑を掛けて居ないだろうか?」


私に声を掛けてきたのはサレナちゃんのお父さん、当代【剣聖】バルムンク・メルトリアその人だった。


「メルトリア卿、ご無沙汰しております。ですが卿が何故此処に?」


確かに出発前に会ったときは王都防衛の要として留守を預かる手筈だったが何故此処にバルムンク卿が居るのか?


私はそれが気になって仕方なかった。


「国の有事である。陛下は吾輩を遊ばせるには勿体ないとこうして送り出してくれたのよ!全く出来たお方だ、吾輩の性分を理解してくれておる。」


「なるほど、陛下の采配ですか。此方としても助かります。今夜には我が騎士ジョセフ、王のつるぎアルトリオも偵察より戻りますので軍議は明日行いましょう。先ずは旅の疲れを癒して下さい!」


かたじけない。お言葉に甘えさせて貰うとしよう。」


「後でそちらにサレナ嬢を案内させます。誰かメルトリア卿を宿へご案内して。」


「畏まりました、此方にございます。」


たまたま通り掛かった兵士がバルムンク卿を案内し始め、私はサレナちゃんを迎えに東の訓練所へと足を向けた。


そっか、王国最強の三人が今この場にいるんだなぁ。


二十年ほど前、王国に三人の天才が同時期に騎士学校に現れた。


一人は代々王家に仕える少年、もう一人は武の頂点【剣聖】の生まれの悪童、最後の一人は姓も持たぬ平民だった。


三人が出会ったのは偶然か運命か。

天才は天才を呼ぶのか、彼らはすぐに意気投合し鎬を削り合い切磋琢磨したという。


やがて大人になった彼らはそれぞれ兵を引き連れ劣性だった十五年前の大戦で奮闘し帝国に大打撃を与え勝利に貢献したという。私の生まれる四年前の話だ。



何だか感慨深い話だが、私は王国の最高戦力を自由に使う事が出来るのか…


はは、少し怖くなって震えが止まらない…!


もし、条件が整えば公国どころか北大陸全てを手中に収める事も可能である。


少し気分が悪くなったので私はそのまま宿の自室にもどり、サレナちゃんの事をパルメラに任せた。


隣で話を聞いていた彼女ならしっかり動いてくれるだろう。


これからの動きも少し考えなければ…!


私が行動を考えているとジョセフ達が戻ったと言う報が届いたのは深夜になってからだった。

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