祖父との因縁
屋敷へと戻ったジョセフを見送りアルトリオに裏口から回って貰うと結界魔法を発動し屋根へ飛び移った。
キャサリーヌは私の屋敷に避難してもらう。彼女の調べたリストは既に受け取っている。
ここで遅れていた近衛騎士が到着し周囲を囲み始める。
段取りは整った、一気に仕掛けてしまおう。
屋根に魔法で穴を開け内部に潜入。
どうやらここは物置部屋の様だ。
扉の鍵穴から外を窺い人が居ないことを確認すると物置から飛び出し内部を探索する。
二階で物音はしないから一階に集まってるのかも知れない。
「あー!ねーねだ!」
「ーー!」
声に振り返ると私の双子の妹の下の方のフィリアが私を指差している。
気配はしなかった。いや、多分大人の方へ意識を向けて居たから幼い子供には注意していなかったのだ、完全に油断した。
「ごめんね、起きたときには全部終わらせるから。」
私は素早く近付き【スリープ】の魔法を掛けると妹はすやすや眠りについた。
近くの部屋に寝かせると私は先へ進み出す。
階段を降り一階へ。
無駄に広い廊下を進みながら擦れ違う兵士を気絶させていく。
じいちゃんも警戒してたってことか。
これで完全にクロだ、仕方ない。さっさと終わらせよう。
一番広い部屋に辿り着くと私は扉を足蹴にして飛び込む。
大体五十人くらいか…範囲を拡大して【スリープ】を発動する。
ばあちゃんと双子の姉シャリア、私の両親も居て殆どが眠ったが六人の兵士とじいちゃんはレジストしたのかピンピンしてた。
見覚えがない者ばかりだ。
大方北のバルッセから借り受けた階級持ちの将兵だろう。
「リリアナ…?!何故お前がここに居る!」
「お祖父様、残念です。私は貴方の計画に気付いてしまった、大人しく降参してください。」
窓へ向けて空気の球を射出して外を取り囲んでいるジョセフやアルトリオに知らせると私は【泥男】を発動する。
時期に音を聞き付けたジョセフやアルトリオ達がやって来るはずだ。
【泥男】は回復効果を無くして対象を捕獲する事に特化した改良型だ。
戦闘力も高く私の領地のジョセフやホセに鍛えられた騎士団くらいには戦闘能力がある。
だが、スリープをレジストしただけあって動きが良い。
残りはじいちゃんを含めて六人だ。
私は腰につがえた剣の鞘を紐で縛り安全を確認するとじいちゃんに向けてゆっくり歩き出す。
「ええい!来るな!貴様らさっさと止めろ!多少の怪我は構わん、但し殺すなよ!?」
「無理ですよ、お祖父様。彼らは私より弱い。勝ち目はありません。」
戸惑いながらもジリジリと寄ってくる兵士達の動きを隙無く確認すると私はそれまでじいちゃんを向いていた体を反転し後ろの兵士に正対して鞘付きの剣で一撃で気絶させる。
丁度このタイミングで報告から戻ってきたジョセフとアルトリオ、近衛騎士団が屋敷に雪崩れ込みこの部屋へと到着した。
「さぁ、お祖父様。降参してください。国家転覆に準ずる罪で貴方を捕らえます。」
「ぐっ…やむを得んか。【神よ、我が願いを聞き給え。我が前に立ちはだかる強敵を打ち倒さんばかりの神力を、矮小なる割れに与え給え。原初なる炎、生命の水、恵みを与える土、神の吹息たる風よ。ーー】」
んなっ?!じいちゃんが急に詠唱を始める。家族や兵士は気を失っており彼らを巻き込む事も覚悟しているのだろう。
じいちゃんの最終奥義である【究極奥義アルテマ・エレメンツ】。二十年以上前に起きた戦場で帝国軍を打ち倒した魔法だ。その威力を知る近衛騎士のベテランは汗を噴き出しながらジリジリ後退し、若い者はバタバタと音を立て気絶していった。
目が血走り、鼻や耳、口から血を流しながらも詠唱する姿に予想外だった私はじいちゃんの目の前まで飛び結界魔法で包み込む。
じいちゃんを閉じ込めた結界の一部に穴を開け手を入れ、魔力を吸収していく。
【魔力吸収】、私が最近手に入れた能力だ。マリアンヌの指導をしていた際偶然に手に入れたもの。
「グハッ…!リリ…ア…ナ!見事だ。」
じいちゃんは気を失いその場で倒れそうになるも結界で受け止め膝から崩れ落ちる。
結界を解除して治癒魔法を掛けた。
これで命に別状はないだろう。
「お見事でさあ。いつもながら鮮やかなお手前で。」
ジョセフとアルトリオが駆け寄ってきたのでじいちゃんを任せて両親と双子の姉の元へ。
どうやら外傷はないようだ。
妹を背負うとジョセフと着いてきて二階の部屋に寝かせたフィリアも抱き抱える。
二人を屋敷へ連れて行く様にジョセフに頼むと私は指示を終えたアルトリオと合流して次の大臣の屋敷へ向かった。
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それから関与した貴族を捕らえていくと気付けば丸一日経っていた。
私とジョセフ、アルトリオは飲まず食わずで行動していたが一般近衛騎士はそうではない。
人員を入れ替え関与した三十八の貴族のうち六家は家族と逃げたのか、もぬけの殻だった。
捕らえた三十二家のうち十家の当主は挙兵し抵抗したが、私とジョセフ、アルトリオによって討ち取られた。
一通り落ち着いたところで私は一度アルトリオに断りを入れて屋敷へ戻る。
「「「「「リリー(さん)(様)(ちゃん)!!」」」」」
玄関を開けるとレイン達が出迎えてくれた。
私は皆に声を掛け少し休むと伝えると、モガに二~三時間仮眠を取ると告げる。
少し疲れた…おやすみなさい。
ベッドに潜り込むと直ぐに眠りに着いた。
起きると夕暮れ近くでモガが用意してくれたのか夕食前に白パンを焼いてくれてたのでそれを食べると委員会メンバーを集めて報告する。
捕らえた三十二家の中に親しい人や親族も居たらしく皆は驚愕していた。
一件が落ち着いたことを話す頃には表情が戻っていたので良かった。
皆を一度実家まで送る事を提案するとレインとルル、マリアンヌ以外の全員が望んだ。
レインとルルは分かるが、ゲース卿(今は教皇か)が心配して訪ねてくるのがないとは思えないのでマリアンヌを【スリープ】で寝かせるとパルメラに送らせた。
レオパルドと数名の兵士を護衛に付けアンちゃん達を家に返す。
彼女達からこの騒動の事が話されるだろう。
夕食の時、ジョセフ、レオパルド、パルメラといったうちの幹部やレイン、ルル、モガ、そしてマシューやポロ、ジョーズといった子供も含め全員が集まり私は告げる。
「私は明日ユグドラちゃんを助けにバルッセ公国のあるメルゼ大陸に向かう。人選は私がするつもりだけど残る人ももしもの時に備えて?誰一人欠けることなくまたここで会おう。」
「うん!」「はい」「ええ」「おうよ!」
それぞれの返事をして夕食を終えると私は一人打ち合わせの為に王城へ向かうのだった。




