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「森の匂いと狩人の足跡」

朝は驚くほど静かだった。


あまりに静かで、

セレアは逆に不安を覚えるほどだった。


不死の騎士との死闘のあと、

皆に必要なのは休息。

森もそれを許したかのように、穏やかだった。


ダエルは全身筋肉痛で目を覚まし、

ルミは彼の足にくっついて丸くなり、

マイアとリンカは抱き合って眠り、

コマは自分の枕を玉座のようにして座り込み、

ウラはねじれた姿勢で、

サヤは豪快にいびきをかき、

カイレンは本を開いたまま寝落ちし、

ノアは床の上でぐっすりだった。


腕を組んだエイデンが部屋に入ってきた。


エイデン

「よし、生きてるな。」


半分寝ていたダエルが目を細める。


ダエル

「……それ、冗談?」


エイデン

「そうだ。」


ダエルはむせかけた。


◆ 風呂・ボロ服・全員まとめて赤面事件


セレアは全員を外に集めた。


セレア

「今日は訓練の前にまず……お風呂と着替え。

 あなたたちの服はもうボロボロ。

 ダエル、あんたのも……魔物に吐かれたみたいよ?」


少女たちは俯いた。


ルミ

「……下着が、ボロボロで……」


サヤ

「やぶれてるし……」


マイア

「しかも全然かわいくないの……!」


ウラ

「私は元アイドルよ!? こんなの耐えられない!!」


ダエルは真っ赤になった。

皆が破れた・継ぎはぎだらけの下着を見せるからだ。


ダエル

「な、何でもいいからとりあえず隠せぇぇ!!」


コマ

「どうして?」


ダエル

「俺は男なんだぞ!!」


セレアは大笑いした。


セレア

「大丈夫よ、ダエル。

 あんたは井戸に水汲みに行ってきなさい。

 その間に私が洗わせるから。」


ダエル

「は、はい……」


ダエルが走り去り、少女たちは浴場へ。


少女たち

「つめたっ!!」

「熱っ!!」

「髪ひっぱらないで!!」

「コマが沈めてくる!!」

「ノアが石鹸取ったぁ!!」


セレアは忙しそうだったが、笑っていた。


その笑い声は、宝物のように響いた。


――

こういう温かい日常の回の後には、

決まって“危険”が来る。


◆ 森に現れた“未知の気配”


水を汲んで戻ったダエルは、

足を止めた。


そこに――巨大な足跡があった。


人間のもの。


深く、重く、荒々しい。


エイデンではない。

仲間でもない。


ダエルの心臓が跳ねた。


ダエル

「……エイデン。」


エイデンがすぐに現れ、

地面を触って表情を変えた。


エイデン

「……狩人だ。

 しかも腕利き。」


ダエル

「俺たちを……探してるのか?」


エイデンはゆっくり首を振る。


エイデン

「いや……

 “ある人物”を探している。」


そしてエイデンは、

静かに、確実に――


セレアのいる避難所

を見つめた。


ダエルの背筋を冷たさが走った。


ダエル

「……セレアを?」


エイデンは答えず、

ただ強く歯を食いしばった。


◆ 避難所にて


セレアはマイアとサヤの髪を梳いていた。


セレア

「ダエル、水は――」


振り返ると、

そこにいたのはダエルではない。


エイデン。


その顔を見ただけで、

セレアは胸が強く締め付けられた。


――危険が来た。


エイデン

「セレア。

 荷物をまとめろ。今すぐだ。」


少女たちは息を呑んだ。


セレアの手が震える。


セレア

「エイデン……誰が来たの……?」


エイデンは重く息を吐いた。


エイデン

「狩人だ。

 魔物じゃない。

 “人間の狩人”。

 ……そして、ここに来たのは初めてじゃない。」


セレアの顔色が一瞬で変わった。


ダエルが飛び込んでくる。


ダエル

「どうするんだ!? 逃げるのか!? 戦うのか!?」


少女たちは怯えた瞳でセレアを見る。


リンカ

「ま、魔物……なの……?」


エイデンは静かに首を振った。


エイデン

「違う。

 ……もっと最悪だ。」


セレアはゆっくり立ち上がり、

拳を握りしめ、

唇を噛む。


そして――震えながら言った。


セレア

「あの狩人は……

 私の母を殺した男よ。」


少女たちは凍りついた。


ダエルは胸の奥が冷え、怒りが湧き上がる。


エイデンがさらに告げる。


エイデン

「そしてそいつは……

 ずっとお前を探していた、セレア。」


少女たちは一斉にセレアを抱きしめた。


ノア

「セレアを……守る……!」


コマ

「来るなら来い。私たちは逃げない。」


ダエルが前に出た。


ダエル

「そいつが来るなら……

 俺たちが止める。」


エイデンは彼の肩をつかんだ。


その声は鋼のように鋭かった。


エイデン

「いいか、ダエル。

 お前たち、全員聞け。」


エイデン

「これはもう訓練じゃない。

 相手は怪物ではない。

 ……“人間”だ。」


彼の視線が全員を貫く。


エイデン

「そして人間こそ――

 世界で最も恐ろしい怪物だ。」

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