「日々の修行と…小さな嘘」
九人の子どもたちは、よろよろと森から帰ってきた。
まるで酔っぱらった子猫の群れだった。
脚はぷるぷる。
腕はぐにゃぐにゃ。
汗は滝のよう。
セレアは避難所の入り口で眉をひそめた。
セレア
「なんでそんなに……?
……べたべたなの?」
ダエルはごくりと唾を飲む。
ルミは固まる。
マイアは息すら止まる。
嘘をつく時間だ。
ダエル
「えっと……遊んでて……」
ノア
「たくさん。」
コマ
「す、すっごく……たくさん……」
セレアは母親の勘を剥き出しにして見つめる。
セレア
「なんで“湿った石と腐ったキノコ”の匂いがするの?」
ダエルは全力で即興した。
ダエル
「えー……
“アストラル泥探検家”っていう遊びを……」
セレア
「なにそれ?」
コマ
「とても……教育的な……遊びです……」
マイア
「はい……土の素材とか……学びました……」
セレアはため息をつく。
セレア
「もういいわ。全員お風呂!」
子どもたちは命拾いしたかのように逃げた。
◆ 2日目 — マナ筋肉痛
翌朝。
食堂へ歩く九人は、ピクピクした奇妙な動きで進んでいた。
エイデン
「……なんで“魂が筋肉痛”みたいな歩き方なんだ?」
ダエル
「……昨日……遊びすぎて……」
エイデン
「魂が痛むような遊びってなんだ?」
カイレンは魂が抜けそうになる。
カイレン
「せ、成長期……です……に、にんげんは痛む……です……」
コマ
「とても……よくあること……」
エイデンは疑いの目を向けた。
エイデン
「避難所から離れすぎたんじゃないだろうな?」
九人
「「「「「「「「「ノーノーノーノー!!」」」」」」」」」
エイデン
「……ほどほどにしろよ。吐くなよ。」
ダエル(小声)
「もう吐きかけてる……」
カイレンが小突く。
カイレン
「余計なこと言うな!」
◆ 3日目 — 昼食の悲劇
洞窟修行の帰り。
全員ボロボロ。
セレアがスープを出した。
ダエルは震える手でスプーンを持ち上げ……
……スープ全部を落とした。
ぽちゃん。
ノアは水を飲もうとして……
胸に全部こぼした。
コマはパンを取ろうとして……
握力が足りず、ぺちゃんこにした。
セレアは沈黙した。
そして叫んだ。
セレア
「なんで今日は全員ポンコツなの!?」
ダエル
「えーっと……
集団的な……病気です……」
ノア
「すごく珍しい……“ぐにゃ骨症候群”が……」
コマ
「重大……です……」
セレア
「騙せてると思ってるの?」
ルミ
「思ってない……」
◆ 4日目 — 朝食中の魔法事故
疲労が限界でも、こっそり練習したかった。
ダエルが小さな光を指先に出そうとし――
ぽんっ。
光の粒が机で跳ねて……
エイデンのコップに落ちた。
エイデンはそれをじっと見て……飲んだ。
エイデン
「……太陽の味がするんだが?」
ダエル(パニック)
「え!? そ、それは!
朝のエネルギー! 栄養満点です!」
カイレン
「……もうやだ……」
◆ 5日目 — 初めての本気の叱責
エイデンはついに踏み込んだ。
エイデン
「お前ら……最近おかしい。」
九人、一斉に喉を鳴らす。
ダエル
「な、何も……ないです……」
エイデン
「単刀直入に聞く。
何か隠してるな?」
九人
「「「「「「「「「隠してませーーーん!!!」」」」」」」」」
エイデン
「……息ぴったりすぎる。」
エイデン
「それに……服に“魔法植物”が付いてるが?」
見ると――
光るキノコ。
不思議な枝。
紫に光る結晶。
完璧に怪しい。
マイア
「えっと……珍しい葉っぱを……拾って……」
セレアが入ってくる。
セレア
「その顔のすすは何?」
ダエル
(すすついてる)
コマ
(こっちもついてる)
ルミ
(髪に…燃えかす…ある)
サヤ
(煙の匂い…)
エイデンは重く息を吐いた。
エイデン
「言いたくないなら言わなくていい。
ただ……危険なことだけはするな。」
子どもたちは胸が痛くなった。
ダエル
「危険なこと……しない……」
コマ
「でも……訓練は……やめない……」
全員
「……」
コマ
「あっ、やば……口に出ちゃった……」
◆ 夜5 — ダエルとノアの本音
寝床で。
ノア
「ねぇダエル。
本当に……隠し続けるべき?」
ダエル
「……うん。
エイデンもセレアも大事だ。
でも……僕らが“古代魔法使いの力”を持ってるって知ったら……どう思うか分からない。」
ノア
「それに……まだ危険すぎるし。」
ダエル
「基礎を覚えるまでは……
誰も巻き込めない。」
ノアは小さく笑った。
ノア
「じゃあ……明日も。」
ダエル
「明日も。いつも通り。」
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