第296話
わたしは皇族の姫
ノーネームは、高笑いしながら漆黒のモヤと一緒に消えて行ったわ…。
伯爵家と皇族家の模擬戦は有耶無耶になり、そこにいた全ての者には恐怖や絶望を撒き散らしていった…
圧倒的なチカラと、従えているであろう竜神の降臨によって…
更には…別の星や銀河に知的生命体や魔力が存在すると…異世界までもあるって…
ノーネームは一体なにを知っているのかしら…
けど、だからこんな貴族間や国で争うのが愚かとも言っていたわ。
確かにわたしもそう思う…。
別の星が地球に攻めて来たりしたら、地球の人類は一丸にならないと…。
相手は未知。
ノーネームはそれをわざわざ教えに来てくれたのかしら?
また侍女を助けに来た風にも見えたし…
いえ、皇族家を助けに来たような…
お父様の仇なはずなのに、なぜわたし達を助けるの?
わたしが危険な目に合えばあなたはまた、わたしを助けに来てくれるのかしら…
そんなノーネームの真意は依然わからないままだけど…わたしは彼の行動には何かしら意味があるようでならないと思うようになっていたわ…
確かにお父様を殺したのはどんな理由があろうと許されないわ!!
許されないけど…わたしは理由が知りたい。
たしか
「なぜ?か…。我はモンスター、人間平等主義者だ。理由は無い。我にとってこのほうが都合がよかった。ただそれだけ。」
とノーネームはお父様を殺した理由をわたしに教えたわ…
都合がいい…か…
どんな都合だったのかしら…
わたしはノーネームに復讐心はあるけど…
疑問という気持ちも確かに芽生えてきた…。
そんなノーネームが立ち去ったあとも誰一人として動こうとしないギルド訓練場の観客席…
そこから
「さ!姫様!帰ろうか!」
と、何ともなさそうなブタオさんが侍女をおんぶしてわたしのほうに歩いてきたわ。
「ぶ、ブタオさん…わ、わたし…恥ずかしいんだけど…その…立てなくて…」
ノーネームのチカラを目の当たりにして、腰が抜けて足の震えが止まらないの…
「あちゃ〜!近くに担架かなにかあったっけ?」
「ぶ、ブタオさんさえ良かったら、その大きな背中でおんぶしてくれないかしら?侍女とわたし2人いても余裕でしょ?」
「…まあ…姫様が嫌じゃなきゃ…」
と、ブタオさんは片手で侍女をおんぶしたまま、わたしに背を向けてしゃがむ。
わたしと侍女はブタオさんの大きな背中に身体をあずけ気がついたら今日の模擬戦の疲れがあったからか、暖かさについ寝てしまっていたわ…
あとはノーネームへの恐怖もあったのだけれども…
いつの間にか震えも恐怖もなくなりそこには包み込まれるような安心感があったの…
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