90.配信者、説明を受ける ※一部凡人視点
俺が先生に対して怪しんだ表情を向けていると、大きな声で笑っていた。
「ははは、冗談よ。単刀直入に言うとお祖父様は認知症ではない可能性が高いわ。むしろ治ったと言っても良いのかしら」
先生が何を言っているのか俺にはわからなかった。
以前のようにトイレを間違えることは無くなったし、家に誰かがいるため全裸で駆け回ることもしなくなった。
ただ、認知症は治るものなんだろうか。
「あたしがやっていたのは、簡単な認知検査なんだけどね。これが前の病院でやっていた結果よ」
そこにはいくつも点数が記載してある。
そのどれもが一桁の結果で、それが良いかどうかもわからない。
「この検査で認知症の疑いになるのは20点以下よ。だから、この結果を見た時に違う人のデータかと思ったぐらいよ」
検査した認知症検査は日付や場所を把握するものから、短期記憶などの様々な記憶力、野菜を答えた時のような言語の流暢性をみているらしい。
最後にピーマンを二回も言っていたが、基本的なことができていれば問題ない。
「本当に祖父の結果ですか?」
「ええ、あたしもまさか満点を取るとは思ってもいなかったわ」
何が原因で祖父の認知症が良くなったのかはわからない。
それは先生も不思議に思っており、いくら俺やドリと触れ合って刺激が多い環境でもここまで良くなることはありえないと言っていた。
「可能性としては魔力が含まれた野菜かドリちゃん達のような魔物が影響しているわね」
祖父は基本的にポテトと遊んでいる。
ただ、症状が治ってきたのは野菜を食べるようになってからのような気がする。
認知症が魔力を含んだ野菜や魔物で改善されると分かったら、結構重大なニュースになるだろう。
症例が祖父しかいないため、他にも試してみても良いかもしれないと先生は言っていた。
「えりゃい?」
「えらいよー!」
近くでカラアゲと遊んでいたドリは、大きなカラアゲを抱きかかえて近づいてきた。
カラアゲはまだ成長期なのか、最近は俺の膝丈ぐらいの大きさになってきた。
そんなドリの頭を優しく撫でる。
『クウェ!』
カラアゲも撫でて欲しいのか俺の方をみてアピールしてくる。
「きっとお祖父様は自分が認知症ではないことに気づいている可能性が高いわ。ただ、何か理由があると思うのでそのままにしておきましょう」
自ら認知症だと言うことが増えたということは、本人の中で隠したいことがあるのだろう。
俺と祖母が認知症ではないことを知っていれば特に問題ないし、認知症だからといって祖父に対して何か変わるわけではない。
祖父は祖父らしく生きてもらえれば良い。
「さぁ、お祖父様のことはこの辺にして次は――」
「あっ、俺はこの辺で失礼します」
先生は何か言おうとしていたところを急いで部屋を出た。
何か捕まったらいけない気がした。
♢
俺はある光景を見て驚いている。
パパさんのお祖父さんにマッサージ機の使い方を教えた後トイレに行っていた。
部屋に戻ろうとしたら、マッサージ機のある部屋から声が聞こえてきた。
部屋にはたしかお祖父さんとミツメウルフのポテトしかいないはず。
「ポテトこれどうだ?」
『あー、腰に良いな』
お祖父さんはポテトと一緒にマッサージ機をしていた。
それは問題はないが、ポテトが普通に流暢な言葉で話していた。
前からミツメウルフぽくない行動をよく見かけたが、誰も気にしないためそういう魔物もいるのだと思っていた。
だが、会話ができるミツメウルフは長いこと凡人探索者をしていても見たことがない。
改めて考えたら、二足歩行で走るのも、鍬を持って畑作業するのもおかしい。
俺はそのまま静かに会話を聞くことにした。
『そろそろ認知症が治ったことは伝えなくてもいいんか?』
「ああ、ワシが治ったって言ったら直樹とドリが目立つだろ」
『たしかにそうだな。直樹の病気もドリのおかげで症状が出ていないんだろ?』
「たぶんそうだろうね。春樹が発作が出たって言った時はドリはお留守番をしていたし、ドリは何かを感じたのか大泣きしていたからな」
『病気を治せる野菜と魔物が存在しているって広まったら大変だな』
「ワシ達はみんなで楽しく過ごせたらいい。もう誰も失いたくないからな」
パパさんは何か持病でもあるのだろうか。
あまり盗み聞きするのも良くないと思い、俺は何事もなく部屋に入った。
『はぁ!?』
ポテトは驚いてマッサージ機から飛び上がっていた。
「犬でも痛くなければやってても大丈夫だぞ」
俺の言葉を聞いてポテトは再びマッサージ機に戻って行く。
気持ちよさそうにしているポテトの顔を見ると、ミツメウルフって中におじさんが入っているのかもしれないと思った。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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