コラボ作品SS 民泊の風呂に驚く
「ふぁー、少し寝たら体が……あっ、おかえりなさい」
「ただいま帰りました」
畑で走り回っていたから、いつのまにかソファーの上で寝ていたようだ。
いつのまにか幸治さんも帰ってきており、椅子に座って休憩していた。
さすがに祖父ちゃんとポテトに付き合って散歩していたら、体力的に疲れるのは仕方ない。
俺でも付いていけないぐらいだからな。
「シルの面倒を見てもらってありがとうございます」
幸治さんは優しく微笑みながら頭を下げた。
「こちらこそ助かりました。あのうさぎ……幸治さんよく生きてますね」
助かったのは俺の方だからな。
ドリとシルちゃんがいなければ、俺は畑の上で死んでいただろう。
世の中のうさぎって思ったよりも凶暴なのを知った。
我が家にいるクマの方がよっぽど優しいだろう。
庭に犬小屋を作ってくれるしな。
「あぁ……俺もよく死にかけてますよ」
幸治さんは遠い顔をしていた。
どうやら幸治さんも命懸けで逃げ回っているのだろう。
表情だけでどんな生活をしているのか理解できた。
お互い色々と大変なようだ。
「お風呂の準備ができているので入ってきてください」
「ありがとうございます」
俺は幸治さんの提案で一足先に汗を流すことにした。
二階にいる祖父とポテトを呼びにいく。
まさか一緒にポテトとお風呂に入って良いとはね。
普通は犬とお風呂に入るのは嫌がりそうだけど、さすが電話で確認した時に快く受け入れてくれただけのことはある。
俺が浴室で服を脱いでいると、ドタバタと駆ける音とともに祖父とポテトが通っていく。
『ワアアアアア! フロガソトニアル!』
ポテトの雄叫びのような声が聞こえてきた。
一瞬、話しているように聞こえたが気のせいだろう。
俺もチラッと浴室を見た瞬間に驚いたからな。
「これが……民泊のお風呂か……」
浴槽は大人二人入っても余裕で隙間があるほど大きく、しかもお風呂が二つも置いてある。
それにチラッと外を見れば、そのまま露天風呂にまで行けるようになっていた。
「はぁー、露天風呂は最高だな……」
『ジイチャンセマイヨ……』
露天風呂はそこまで大きくないのか、祖父とポテトでキツキツな状態になっていた。
ただ、露天風呂に入る機会は中々ないからな。
喜んでくれるなら嬉しい限りだ。
「ふぁー、疲れが取れるな……」
俺は湯船にゆっくりと浸かる。
家のお風呂ではこんなに足を伸ばして入ったことがないからな。
お湯も普通のお湯とは少し違うのか、肌がスベスベになっているような気がする。
まぁ、環境が変われば普通のお風呂でもスベスベに感じるのかもしれない。
「祖父ちゃん、ポテト……そろそろ体を洗って……っておいおい!」
静かだなーって思ったら、祖父とポテトは全裸のまま庭を歩いていた。
さすがに我が家みたいに町がなければ問題はないかもしれない。
ただ、ここの民泊は山の上方にあるため、生憎ここから町は見える。
最悪双眼鏡で覗かれたら、向こうからこっちも見れるだろう。
俺は急いで祖父ちゃんとポテトを引き戻そうと外に出る。
「はぁー、山風が気持ちいいな」
『ソウダナー』
涼しい風が体を包み込む。
祖父ちゃんとポテトを呼びにきたはずなのに、気づいたら俺も全裸のままで外に出ていた。
「はぁー、何かどうでも良くなりそう……」
あまりにも心地良い風に考えていたのがバカらしくなってきた。
せっかくの旅行ぐらい全裸で……いやいや、影響されすぎだろう。
チラッとベランダから家の中を見ると、みんな夕飯を作るのに一生懸命だから、まだバレてはいない。
さすがに他人の家の庭先を裸で出歩いていたら、いくら何でも怒られてしまう。
俺は急いで腰にタオルを巻いて外に出る。
「祖父ちゃん、ポテト! 早くこっちに戻ってきて!」
「ワシはもう少しここにいるぞ」
『オイラモ』
本当に今どんな状況なのかわかって言っているのだろうか。
ここは田舎に見えて田舎じゃない。
俺たちの住む田舎に比べたら、町が見えるからな。
「警察きたら捕まるぞ!」
「そんなこと――」
「みんなはだかでなにしてるの?」
声がする方に目を向けると、ジトッとした表情を向けるシルちゃんがいた。
ああ、ついにバレてしまった。
さすがに自分の庭で裸の祖父ちゃんと男が出歩いていたら嫌だよね……。
「あー、ちょっと祖父ちゃんが……」
「わたしもあそびたいのに!」
シルちゃんは腰に手を当てて怒っていた。
どうやら俺たちが遊んでいるように見えたのだろう。
「遊びじゃないです!」
思わず即答していた。
ここは勘違いさせたらいけないからな。
「祖父ちゃん! ここ民泊だよね……?」
「そうだな?」
「近所の人が見たらどうするの?」
祖父ちゃんが一瞬だけ目を逸らした。
『ジイチャン、タイホ?』
「その可能性は高いな」
お互いに顔を見合わせていた。
祖父ちゃんとポテトが急いで浴室に戻っていく。
これで一安心だな。
「直樹さん、そんなところで何してるんですか?」
「あっ……」
声がする方に目を向けると、幸治さんが立っていた。
ひょっとしたらシルちゃんが呼びに行ったのかもしれない。
今はほとんど裸の状態だしな……。
とりあえず謝った方がいいだろう。
「すみま――」
「その姿でずっと外にいると風邪引きますよ? ちゃんと温まってから出てきてくださいね」
俺は幸治さんの心の広さに涙を流しそうになった。
風呂場に戻ると何食わぬ顔で湯船に浸かっている祖父ちゃんとポテトに大量のお湯をかけてから、浴室を後にした。
旅行先での恥は、汗と一緒に流すしかないからね。
これでSSは終わりです!
あとは向こうの主人公視点のみとなります!
ここまでお付き合いありがとうございました!




