表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強化日本異世界戦記  作者: 関東国軍
92/102

第86話 天空からの襲来

第86話 天空からの襲来


     バリアン大陸 都市リバーテ

        連合軍司令部

 

大陸東部に位置するこの都市リバーテに幾つか点在する連合軍中枢施設のうちの1つで2人の男が歩いていた。


ジュニバール帝王国陸軍のスロイス大佐とその親友のデリック中佐だった。


彼等はこの遠征軍の軍事情報を一手に取り扱う情報機関がある区域を目指して大通りを歩いていた。


本来ならば馬車が走っていたであろう車道は、この遠征に参加する各国の軍事車両がひっきりなしに走行する様子を横目に2人は目的の場所のまで到着した。


目的の情報機関の正門で警備をする衛兵の1人に将校証を提示して中へと入る。


今回の遠征軍は空前絶後の大規模なものだ。その為にこの情報機関には種類問わず膨大な量の情報が常に入り乱れている。


例え深夜であろうともこの敷地内の建物の灯火が絶える事は決して無く、昼間である現在はこの敷地内にある複数の建物の1棟から出て同じ敷地内のまた別の建物へと出入りする職員の姿が絶えなかった。その多くが手に書類の束を持って早歩きで移動をしていた。


そのうちの1人を見つけたデリック中佐は、彼に声をかけた。


「仕事中に申し訳ないんだが、諜報部はどこの建物にあるか教えてくれないか?」


「諜報部ですか?…………」


聞かれた男は訝しげに2人に視線を向けた。諜報部はこの情報機関でも重要な情報を取り扱う部署だ。おいそれと聞かれて正直に答えれる質問ではない。


男よりも若い2人組に対してそんな視線を向けていたが、2人の将校帽と階級章を目にした男は少し慌てた様子で敬礼をして応えた。


「失礼しました! 諜報部はあちらの建物です! 大佐殿、中佐殿。」


男が指差した建物を確認したデリック中佐等は彼に感謝を述べた。


「成る程、あそこか…………忙しい中、ありがとうな。」


それに男は再び敬礼して応えると、足早に2人から離れて別の建物へと入っていった。


そんな彼の後ろ姿を見てデリック中佐は苦笑いした。


「……連中も大変だな。どこぞの空軍は遊び呆けているってのに。」


周囲を見渡せば彼のような職員が何人も見えた。


そういった職員や巡回する衛兵等とすれ違うのを繰り返していく中でスロイス大佐は隣を歩くデリック中佐に件の男について聞く。


「お前が言っていた男はどんな奴だ?」


そのスロイス大佐の質問にデリック中佐は暫く考えてから口を開いた。


「うーん……俺が知ってる事は少ないぜ? 名前はウェイド・バルソンスール情報大尉だったかな? そんで確か…………陸軍情報士官試験を上位の成績で卒業した後に陸軍情報本部で数年勤務してから日本の大使館に派遣された……ぐらいだな。」


「そうか…………」


やがて目的の建物の中へと入って、守衛達の間を通り抜けていき、そこの受付の女性職員に更なる詳細を聞く。


「ちょっと聞きたいんだけと別嬪さん、諜報部は何階かな? そこのウェイド・バルソンスール大尉に用があるんだけど。」


受付机に肘をかけてにこやかな表情で聞くデリック中佐を相手に女性職員はそんな彼の質問に僅かに頬を赤くして応えた。ここで彼の甘いマスクが役に立ちそうだ。


「諜報部のバルソンスール大尉ですか? 諜報部でしたら3階にあります。」


「そうかい。ご親切にどうも…………それでだけど、今夜予定はあるかい? 良ければ俺と食事でも……」


「早く行くぞ。」


ナンパをしようとする親友の肩を掴んで強引に階段へと向かうスロイス大佐。


「あぁそんな!」


それに不満そうに呟くデリック中佐。よく見ると受付の女性も残念そうに溜め息を吐いているのがスロイス大佐の目に映った。


「ちぇ……せっかく可愛い子ちゃんと仲良く出来ると思ったのにな……」


ブツブツと文句を言いながら階段を上るデリック中佐を無視してスロイス大佐は上っていく。


そして遂に目的の部屋の前にまで到着した2人だがその表情は困惑していた。


「ここで合っているんだよな?」


「まぁ……1番奥の部屋だもんな…………」


スロイス大佐もデリック大佐もそうお互いに確認するように会話した後、再び部屋の扉に視線を戻す。


扉の前にはジュニバール文字で『用件の無い奴は入るな!さもないと殺す!』という貼り紙がデカデカと貼られていた。


「…………物騒な奴だな。」


「あぁ……しかも諜報部と完全に隔離されてねぇか? 明らかにさっき通った部屋が諜報部の部署だよな? あそこの連中もここを避けていく感じだったし……」


この階で目にした多くの職員が詰めていた部屋で大尉の所在を聞いたがそこで驚ろかれ、行く道中でも奥の部屋へと向かう2人を驚いたような表情をして擦れ違う職員等を思い返す2人。


「中々の問題児か? 経歴を聞く限りは情報職員でも重要階級の奴だと思っていたが……」


「まぁ……総司令部に直訴するくらいだから煙たがられても仕方ないな。」


そうして困惑した様子で会話する2人だが、やがて意を決したスロイス大佐が扉を軽く数回ノックした。


コンコン…………


しかし応答が無いのでもう一度ノックをするスロイス大佐。


コンコン…………ドンッ!ドスンッ!


2回目でようやく部屋から物音がした。重く響いた物音に軽く驚いた2人を他所に、ゆっくりと扉が開いて男が出てきた。


「貼り紙が見えなかったか? 失せろ。」


重々しく物騒な事を発言する男に2人は顔を見合わせる。


「…………貴官がウェイド・バルソンスール大尉か?」


困惑気味にスロイス大佐が男に問う。男の姿を見る限りはどうにも諜報部の人間には見えなかった。


服装こそは情報士官が着用する軍服だが、髪はボサボサで何日も洗ってないのが見て分かる。目の下も隈で黒く染まっており、顔の下半分は無精髭で覆われていた。


とても情報機関の人間とは思えない姿に困惑した2人に、問われた男は失笑する。


「はん……受付の女から聞いたならわかるだろうが……それで? 用件は何だ? 名前を聞いたなら用件があるんだろ?」


どうやら2人が探していた人物に間違いなさそうだ。


「おい……俺達の身分ってわかってるよな? すんげぇため口じゃん。」


デリック中佐の言葉にバルソンスール大尉は嘲笑した。


「けけけっ……例え大佐様と中佐様だろうがお坊ちゃん方に使う敬語はねぇぞ。」


「…………帰るか?」


「馬鹿、俺達の目的を忘れるな。」


既に疲れきったような表情で言うデリック中佐を咎めて、スロイス大佐は本題に入った。


「我々は日本について貴官から詳細を聞くために来たんだ。 それとガーハンス軍の動向についても聞きに来たんだ。 部屋に入れてくれるか?」


この言葉にバルソンスール大尉は初めてスロイス大佐の瞳を見た。彼の表情は驚愕している様子だ。


(この様子を見ると相当に煙たがられていたようだな…………)


先ほどの態度も完全に諦めきっていた故のものだろう。


そう捉えたスロイス大佐を他所にバルソンスール大尉は扉を全開にして2人に声をかける。


「信じられん! ぜ、是非とも入ってくれ!」


「お、おい!?」

「さっきまでの態度は何なの!?」


バルソンスール大尉はそう言うと2人の返事を聞かずに腕を引っ張って部屋に入れた。




半強制的に部屋に招かれた2人は乱れた服装を整えながら室内を観察する。


彼のいる部屋は狭くは無いものの、至る所に積み重ねられた書類の山や何かが入った大小様々な木箱が乱雑に置かれており閉鎖感を感じた。


しかも厚手のカーテンを仕切っているのもあるが建物の構造上、陽の光が届きにくいよで全体的に薄暗かった。


そしてこの部屋の主であるバルソンスール大尉は埃まみれの木箱を乱雑に払って2人の前に置いた。


「ささ、座ってくれ!」


「木箱かよ…………」


不満そうに呟くデリック中佐を他所に2人は木箱の上に座り、バルソンスール大尉は近くの椅子を引っ張ってそこに座った。


「「……………………」」


「どうした?」


1人だけ椅子に座っていたバルソンスール大尉は沈黙してジッと見つめる2人を不思議そうに聞いた。


「いや、何でもない…………」 


「……? そうか…………それで! お前達の話だが!」


何かを言いたげなデリック中佐を抑えるスロイス大佐を前にバルソンスール大尉は隣の棚から手を伸ばして書類を手にとる。


「それは?」


バルソンスール大尉が持つ書類に興味を抱いたスロイス大佐。


「こいつは俺が日本に駐在武官として勤務してた時に書いた報告書だ。」


その返答にスロイス大佐は目を丸くした。


「なぜそんな重要書類がここに?」


それは本国かこの区域の中でも警備の厳重な場所で保管されるべき物だ。しかしそんなスロイス大佐の反応にバルソンスール大尉はぶっきらぼうに応えた。


「報告用と個人用で二重にして書いてたんだ。」


「それ大丈夫か? 機密違反じゃね?」


「お前達が黙ってれば問題ない。そんな事よりも…………ここだ!ここを読んでみろ!」


自然な流れで何かとんでもないことに加担された気がしたが、目の前に広げられた書類に視線を向ける。


その書類な内容を読んだ2人は思わずその書類を手に取って読み直した。


「これは…………」

「おいおい…………これはガセネタだろ? こんなの信じてられる訳がないだろ。」


鋭い視線で書類を何度も読む2人の様子をバルソンスール大尉は満足したように頷いた。


「おう。その様子だと本当に俺から話を聞きたいようだな。」


普通ならば既に呆れられた反応をして部屋から出ていくものだが、彼等はまじまじとその内容を理解しようとする姿勢にバルソンスール大尉は信頼し始めた。


試されていたか、そう考えたスロイス大佐は手に持っていた書類を持ち上げて目の前の男に問いだたす。


「この内容だが…………これが事実だといえる証拠はあるのか?」


「信じられんか?」


獰猛な笑みを浮かべて聞き返してきたバルソンスール大尉にデリック中佐が口を開いた。


「当たり前だろ! こんなのよりも下手なお伽噺の方が信憑性があるぞ。」


デリック中佐の言葉を横耳に、スロイス大佐はこの書類の中身を整理した。


(…………どの列強諸国よりも高度な技術を確立させており、日本で民間に行き渡っている技術は例え最上位列強国であるチェーニブル法国の最先端の技術でも霞む。最低でも超大国クラスの技術力を保有している。

…………数百km離れた距離から攻撃できる手段を持ち、1つ1つの兵器はどの国よりも高い性能を持っている。

自国の誇る最先端技術は日本の子供が扱う玩具よりも劣るだろう…………)


これだけじゃなく他にも多くあるが、そのどれもが日本の圧倒的な技術力を述べており、逆に自国を卑下しているような書き方だ。


成る程これなら煙たがられても不思議じゃない。


実際にスロイス大佐も期待を込めていたが、失望している自分がいるのを認めていた。これでは話にならない。


「証拠か? ちょっと待ってろ……」


書類を投げ捨てて部屋を後にしようかと考えていた彼に、バルソンスール大尉は立ち上がって部屋の中にあったひときわ大型木箱の前に立つ。


大型の木箱の蓋を外し、中身を慎重に取り出したバルソンスール大尉は疑いの目を向けている2人の前にそれを見せた。


「これは何だ?」


スロイス大佐の質問にバルソンスール大尉は面白そうに応えた。

    

「これか? 日本の裏の業者から密かに仕入れてきた物だ。いわゆる密輸品って奴だな。」


「そういう事じゃない。 これは何なのかと聞いているんだ!」


荒々しくなるスロイス大佐だが、彼はそれをより面白そうな表情をした。それにスロイス大佐は苛立ちを篭らせるが、それを他所に彼はゆっくりと床に置いた。


床に置かれたそれをスロイス大佐は視線を向ける。


それは、何の変哲もない車の模型だ。恐らくは日本で流通している車なのだろう。


「……模型を床に置いてどうするつもりだ?」


「まぁ、見てろ。」


バルソンスール大尉はそう言うと、再び大型の木箱から今度はL字型の棒を取り出してその棒の端から更に細い銀色の棒を伸ばした。


意味の分からない行動に2人は首を傾げるが、その直後にバルソンスール大尉はそのL字型の棒を弄ったと同時に車の模型が突然動き出した。


「うぉ!?」

「っ! 動いた!?」


自分達の足元へと寄ってくる車の模型を目にした2人が慌てて両足を上げる様子をバルソンスール大尉は腹を抱えて笑った。


「こ、これは一体なんだ!?」


開いた口が塞がらないスロイス大佐の質問に、車の模型を足元にまで移動させて2人に見えるように持ち上げた。


「こいつは無線を使用して特定の物を遠隔操作することが出来る日本の玩具だ…………奴等はこれをラジコンっと呼んでいたな。」


「こ、これが玩具だと!?」


スロイス大佐は驚愕する。魔法を一切使用せずにあのように自由自在に動かせれる玩具なんぞ聞いたことが無かった。


確かに我が国のような魔法文明の列強国ともなれば、ゴーレムのように遠距離から操作して運用する兵器は存在する。


しかし、そんなゴーレムでも目の前のラジコンのような小型の物は存在しない。制御魔法を受信したり細かな動作を行う為には、どうしても大型になってしまう。そして大型であるならばそれ相応の魔力を貯蓄するための容量も必要となるのだ。


だが今、彼が持っているラジコンは列強諸国が持つどのゴーレムよりも遥かに小型であった。あんな大きさでどうやってあれ程の細かな動きを実現させたと言うのか…………


そして何よりもこれが日本では子供の玩具だと言う!……全く、信じられない話だ!


「本当にこれが日本では玩具だと言うのか?」


スロイス大佐の言葉に、バルソンスール大尉は肩を竦めて答える。


「信じられんだろ? だが実際に日本では子供が貯金して買える位の低価格で販売されているんだ。」


「おいおいマジかよ……」


(それが事実ならば軍ではどれだけ高度な技術をもっているんだ?)


「これを総司令部には見せたのか?」


スロイス大佐の言葉に大尉は怒りを露にして答える。


「無論、見せたさ! だが奴等は『こんなのは大した物ではない!』と突っ張ねやがったのさ! こんなのだと!? これがどれだけ凄まじい技術が使われているのかを理解できてねぇんだよ!あの馬鹿共はな!」


当時の司令部達の反応を思い出したのだろう、ワナワナと全身を震わせた。


再び車の模型を床に下ろして自分達の周囲を颯爽と走り回るの姿を目で追いかける2人。


「…………これ以外にもあるのか?」


スロイス大佐の更なる質問に大尉は当然と言わんばかりに頷いて答えた。


「もちろん! 他にもあるぞ、っと言いたいところだが…………生憎とここには無い。 隠し倉庫に置いてある。」


「隠し倉庫なんて持っているのか?」


「まぁ、ここの町の連中が使ってない建物を使わせて貰ってる訳だ。 現地人とは友好的に接する。そうしてタダで使える訳だ。 この大陸での伝も出来るし、な…………。」


「ガーハンスの一件はその現地人から入手したのか?」


スロイス大佐の考えに大尉はチッチッと口を鳴らした。


「少し違うな。 ガーハンスの動向は偶然にも連中の魔信を傍受して知った。」


「おいおい勝手に向こうの魔信を傍受したのか?」


デリック中佐は引いた様子で反応した。仮にも相手は同盟国だ。その魔信を傍受したと気付かれれば大事だ。


「けっ、向こうだって俺達の監視をしているだぞ? お互い様だろうが。」


暴論だ。そんな言葉をぐっと堪えて話の続きを促す。


「そんで奴等の魔信内容を整理したところ、センゲル平野に程近い都市国家……ウィーパという名の都市に配置された師団規模のガーハンス軍は壊滅状態になったようだ。それも師団長以下主だった指揮官等の殆どが殺されている。」 


「師団規模の部隊が壊滅だと!」


2人は今日一番の驚愕をする。上位列強国の軍がそれも師団規模という大部隊にそれ程の損害が出た事例は2人が知る限りでは前例のない事だ。



到底信じられる話ではない。デリックの言う自国の将校達が一笑するのも無理はない。普通ならば根拠のないデマだと一蹴する内容だが、2人は既にこの男にある程度の信用を置いていた。


「その情報はどこまで信用すればいい?」


だがスロイス大佐はバルソンスール大尉に確認をとる。


「向こう側の最高指揮官のボーン中将がここから西にある平野に2個師団相当の部隊を展開している。すぐにお前達の耳に入るだろうな。」


「それも傍受した内容か?」


「これは違う。ガーハンスの連中にもある程度の人脈はあるからな。」


大尉の言葉に2人は顔を見合わせる。どうやらこの男は自分達が思っていた以上に顔が利くらしい。


そんな2人を他所に彼は「あぁそう言えば……」と思い出したように呟いた。


「こっち側のあの坊っちゃん司令官様もセンゲル平野の前線部隊の援護と偵察の為に航空部隊を送り込んだらしいな?」


大尉の言葉にスロイス大佐はデリック中佐の方を振り返った。それに彼は静かに頷く。


その情報はまだ軍全体には伝わっていない筈の情報だ。しかし彼は既にそれを把握している。デリックもこの情報はまだ将校や自分達にしか伝えられていないと答えた。


幾ら諜報部の人間とは言えども将校等と同じ速さで情報を入手するのはいささか異常だ。


「至る所に友人がいるんだな? それとも、それも盗み聞きでもしてたのか?」


スロイス大佐の質問に大尉は肩を竦める。口では言わないがその態度が物語っていた。


「センゲル平野の司令官は確か……バイート少将だったな。」


デリック中佐の言葉に大尉は嫌そうな表情をした。


「そうだ。中央帝王参謀大学を出た軍人だが、金の力で無理やり卒業した能無し野郎だ。」


大尉の言葉に2人は声には出さないが同意した。将校になる為には軍大学関連の軍育成機関を卒業するのが必要だがそれには多大な努力と才能が必要となる。


常人ならば非常に困難な道だが、それを金や権力で卒業する裏道がいる。。そして残念な事にそれを利用する者達は卒業者比率に対してとても多いのは現実だ。


バイート少将もそのうちの1人で、実際に会話もしたことがある2人にとってあまり良い印象はなかった。


「名目上は偵察が主な理由だが、実際には違うと踏んでいる。 ガーハンスの連中がやられたとなれば、その先にいたあいつ等も同じように撃破されたと考えるのが妥当だ。」


「2つの部隊がこの短期間で負けたと?」


言葉に出したがスロイス大佐はにわかには信じられなかった。どうしても自分達の常識がそれを阻害する。


「まぁそれは時が経てば分かるだろう…………だが、その時には手遅れって可能性もあり得るがな。」


「どうする? スロイス。」


デリックは親友に判断を任せると、スロイスは一連の会話を思い返しながらも重々しく口を開いた。


「…………一先ずはこちら側でも情報を集めてみよう。 ウェイド・バルソンスール大尉……我々と手を組んでくれないか?」


スロイス大佐は立ち上がり片手を大尉に向けた。これに大尉は大きく笑みをこぼして同じように片手を上げ返して熱い握手をした。


「今まで色んなお偉方に話を通してきたが、アンタ等が一番俺の話を聞いてくれたぜ。」


「勘違いするな。まだ完全に信じてる訳ではない…………だが、今回の件については我々も思うところがあった。 出来る限りの情報を共有していこう。」


「それでも良いぜ。」


大尉はそう言うと気持ちの良い笑い声をあげた。ここに来て彼にも人間らしい一面があったと軽く感心する2人だが問題はまだ解決していない。





バルソンスール大尉と別れを告げた2人は、そのまま建物を出て情報機関のある区域からも離れて最初にいた参謀部の建物へと戻る道中だった。


「しっかし、スロイスよ。あの野郎の話ってどこまで信じてる?」


デリックは羽織っていた軍用コートのポケットに両手を突っ込んで隣のスロイスへと視線を向ける。


「彼の話を全てが真実とは言わんが、日本の技術については一考する価値はある……なぁ、デリック。」


「何だ?」


「あのラジコンについてどう思う? あれが民間に出回っているとするなら、軍用に改造された物もあると思うか?」


「俺は技術士官ではないけど…………俺なら活用するよなぁ。 だけど本当に総司令部はあれを見て何にも思わなかったのかね?」


デリックの言葉にスロイスも同じような感想を抱いた。幾ら頭の固い司令部でもあれを見て何の対応を取らないなんて可笑しい。


「……あえて何もしなかったのか?」


「ん? と、言うと?」


スロイスが思わず出した呟きににデリックは立ち止まった。


「大尉は総司令部に見せたと言ったが、ジルヒリン司令官や高級幹部達には会えなかった筈だ。 となると他の下級幹部や参謀達に見せたが、これまでの大尉の行動に不信感を持っていた彼等が追い出したってのはどうだ?」


「成る程な……まぁせっかく盛大に盛り上がってるこの遠征に水を差すような奴は煙たがられるだろうな。」


この遠征が成功すれば今作戦に従事した全ての参謀や将校達の将来は安泰だ。その遠征を中止とまではいかないが、進行に悪影響をもたらす存在がいればその火消しに働きかける者もいるだろう。


「ま、それは確認してみないと分からんな。それよりも急ぐぞ。 次会う時までにこっちも情報を仕入れとかないと不味い。」


再び歩き出したデリックにスロイスも足を動かした。確かにこれからやるべき仕事は多い。


従来の仕事もそうだが、それと平行して日本の動向や前線部隊の確認も必要だ。


取り敢えずは信頼出来る者を使って前線に人を送るのと、空軍への知り合いから秘密裏に偵察結果を聞くとしよう。それと現地人による情報収集も1つの手だ。


そうやって手段を模索していく内に2人は作戦本部へと到着したが、スロイスは様子がおかしい事に気付いた。


「何だ? 何が起こったんだ?」


少し遅れてデリックも違和感に気付いたようで、辺りを見渡した。


5階建のこの都市では大型の建造物である作戦本部には大勢の参謀や高級士官達が詰めているが、その多くが焦りの表情を見せて建物内を足早に動き回っていた。


今までも忙しそうに動いていたのは確かだが、現在2人が目にしている彼等は普段、見ていた時とは比べ物にならない程に殺気だっていた。


明らかに異常だ。何があったんだ?


すぐにただ事ではないと察した2人は一先ずはスロイスの部屋へと行くことにした。自分達の部下がこの状況を知らせようと部屋で待機していると判断してだ。


廊下を荒々しく駆け回る彼等を通り抜けて、スロイスの部屋へと到着した2人は扉を開けて中へと入る。


するとそこにはやはり部下が尋常ではない様子で待機しており、2人を見るや否や敬礼をそこそこにあわだたしく話し掛けた。


「大佐殿! 今までどちらにいらしてたのですか!?」


「すまない。何があったんだ? 今朝出ていった時とは明らかに様子が可笑しいぞ。」


「センゲル平野に偵察に向かわせた航空隊が戻ってきたのです…………1機だけですが……」


その言葉に2人は一筋の汗を流した。


「1機だと? 残りはどうした?」


「全滅です。偵察に向かった第91飛行大隊は1機を残して全滅したのです!」


「全滅だと…………っ!」


その瞬間、2人はバルソンスール大尉との会話がフラッシュバックした。その2人を知らずか部下は更なる報告をする。


「その生き残りからの報告ですが………センゲル平野で我が軍の前線基地が徹底的に破壊されているのを確認、ガーハンス側にもおびただしい数の死体を確認したようです!

大陸西部に展開した前線部隊は事実上…………壊滅しました!」


全身を鈍器で殴られた様な衝撃が2人を襲った。


「スロイス!」


隣のデリックがいつもの気楽な表情とは違い深刻な表情を見せた。これにスロイスは頷き部下の方を見た。


「それで、総司令部の判断は?」


「ここから西にある都市カバーラに展開していた師団に進軍命令を、また同様に我々にも進軍準備の通達がきました!」


「アイツの言っていた内容と同じだ…………」


デリックの呟きを部下は訝しげな表情で見つめた。それに慌ててスロイスが口を開く。


「分かった。お前はすぐに部隊に戻って準備させろ。」 


スロイスの命令に部下は退出する。これを見送ったデリックはすかさず話し掛けた。


「まさか本当に負けたのか…………しかも空軍もやられたなんて……」


信じられないと言った表情で頭を抱えるデリック。


「お前も自分の部隊に戻れ。事態は一刻も争う。」


スロイスの言葉にデリックは頷いた。


「あ、あぁ。分かった……」


動揺を隠せない親友は足早に部屋から出ていくのを確認したスロイスは椅子に腰掛けて思考を巡らせる。


事はかなり深刻だ。すぐにでもこの大陸中の部隊にも出動命令が出るだろう。


あの大尉の言葉が事実ならば既にガーハンスも動いているだろう。だが、陸軍だけじゃなく空軍も大敗したならば日本軍は単独で戦うべきではない。


共同戦線という単語がスロイスの頭に過った。だがこれを互いに戦功争いをする各司令部がそれを承諾するだろうか?


仮にも同盟を結んだとは言え、それはほぼ表面上だけの話…………現実的じゃない。


「違う。やらなくては成らないんだ。」


何としてでもガーハンス軍と共同で日本軍と対峙する。


そこまで考えてスロイスは立ち上がった。何にしても最初にするべきは部隊の出動準備なのだから。


スロイスがそう意を決した。そして少し時間を巻き戻す。まだ第91飛行大隊が壊滅する前の話になる。




数時間前…………


      バリアン大陸 上空


ジュニバール帝王国空軍のアプターⅡ主力戦闘機が編隊を組んで飛行する。


それを操作するのは第91飛行大隊所属のパイロット達であった。


このジュニバール帝王国の戦闘機はセンゲル平野の方角へ向けて飛行していた。彼等の目標は通信の途絶えた一部の部隊の安否確認、そして敵部隊の捕捉、可能ならばそれの掃討任務だ。


『ベボ小隊長、こちらカトラ。お前とこの編列が乱れているぞ。すぐに直せ。』


機体に取り付けられた魔信機から小隊長を務めるベボ少尉の耳にカトラ少尉からの忠告が聞こえる。


『こちらベボ了解…………キアル、聞いたか? お前の事だぜ。』


魔信機を取り出してそう後方を飛行するベボ小隊の新たな隊員キアルは、慌ただし様子で応えた。


『こ、こちらキアル、了解であります!』 


そう言って他機よりも遅れて飛行してきたキアルの機体は速度を合わせた。これにカトラ少尉が声をかける。


『キアル、俺の小隊から離れたからって訓練を怠った訳ではないな? 言っとくがベボの言葉をイチイチ真に受けていたら腕が鈍るぞ。』


『がはっはっは! 安心しろよカトラ! お前とこの坊主はちゃんと俺が面倒見るよ。』


そう高笑いをしながら代わりに応えるベボ少尉に、カトラ少尉は溜め息を吐きながらもそれ以上の言葉は発っさず、地上の風景に視線を向けた。


なだらかな地形が眼下一杯に広がっていた。何かしらの集団が居ればすぐに見つけれるぐらいには視界が晴れていた。


そこから見る限りは、怪しい物は何も見つからない。カトラ少尉はそう判断して今度は周囲の編隊に視線を移す。


雲1つ無い青空を背景に優雅に飛行するのは自分達のみ。そこにはそれ以外の飛行物なぞ何も無い。


間違いなくこの大陸の空を支配するのは自分達だけ。陸も地上も脅威は無いと判断したカトラ少尉は今も続く魔信での会話に耳を傾ける。


『しっかし、本当に何もねぇな…………まさか、このままセンゲル平野に到着しても何も無いって訳じゃねぇよな?』


『有り得ますな。 陸軍の連中がとっくのとうに日本軍を全滅させてるかも知れませんよ?』


『かあぁぁ!…………ってことは今頃は日本軍の死体を背景に酒盛りでもしてるのか!?』


ベボ少尉は山の様に積み重ねられた日本兵の死体を背景に日本軍から略奪した酒とツマミで宴会をしている陸軍の姿を想像した。


これに他の小隊長達が反応した。


『お前は酒しか脳に無いのか? お前から酒を取ったら何も残らないな。』


『言えてる。少なくともこの大隊の中では一番の酒豪だからな。こいつとの飲み比べで勝てた奴なんて見た事ないぞ。』


『だははっ!それは当たり前よ!…………だぁ~しかし、陸軍の連中は日本の酒を珍味してるんだろう? 噂の異世界産の酒を飲めるなんて羨ましいぜ。』


『俺は酒よりも日本の空軍とやりあいたかったな。腕の見せ所だろ?』


『はっ連中にマトモな空軍なんて持ってないのは分かりきった事だろ? 俺達がせっかく挑発したのに向こうの空軍は姿を見せなかったんたぞ? 空中戦はずっと先の話だろうな。』


『そういうもんか…………』


同僚である各小隊長達の会話を聞いていたカトラ少尉は任務に関係のない内容に溜め息を漏らす。


この場の指揮官であり先頭を飛行する大隊長機へと視線を前方に向けるが、その大隊長は咎めるつもりは無いようで無言を貫いたままだ。


しかし部下達の手前、小隊長ともあろう者達が雑談をするというのは問題なのでカトラ少尉は意を決して魔信機に手を伸ばした。


「こちらカトラ…………お喋りはその辺にしとけ。部下達の前だぞ。」


これで少しは真剣になってくれるかと思ったが、やはりベボ少尉が突っ掛かってきた。


『おいおいカトラ小隊長さんよぉ………言いたい事は分かるが、常に緊張感を持ってたら身が持たねぇだろ? だっから俺達が緊張を解すために無邪気に会話してるんだぜ?…………なぁキアル、お前も解れたろ?』


突然の名指しにキアルは慌てながらも魔信に応えた。


『は、はい!お陰様で落ち着きました! いつでもあの時のように日本軍に一撃を与えれます!』


『だとよ?』


そのすぐ後にガハハハッと機内を響かせるだけの声音で笑い声を上げるベボ少尉に眉を潜めるカトラ少尉。


…………不味いな。予想よりもずっと気が抜けている。


そうカトラ少尉は今の第91飛行大隊が支配する空気に危機感を抱いた。


本来ならば大隊長がそう判断するべきだが、当の大隊長は我、関せずと言った様子でずっと沈黙を貫いていた…………どうやらあの男は戦後の昇進が確信して上の空な様子だ。


何でも整備班からの話では、あの時の日本の地上車輌における航空攻撃は空軍の上層部の間では大層盛り上がった様で、この飛行大隊の功績を大々的に本土で発表したらしい。


お陰でジュニバール本土では連日お祭り騒ぎだ。空軍本部の前では多くの報道社が押し寄せて件の飛行隊について報道しまくっている。


カトラ少尉は数日前に、大隊長が嬉々とした表情で持ってきた新聞には『ジュニバールの天空の英雄達』という見出しと共にあの攻撃後に撮影した集合写真が一面に載っていた事を思い出す。それと同時にあの時の大隊長の満面の笑みも忘れられなかった。


確かに気持ちは分かるが、任務中くらいは指揮官らしく隊の規律を統率して欲しいものだ、とカトラ少尉は不満を抱く。


こうして先頭を飛行する大隊長は今も笑みを溢していると思うとカトラ少尉は自然と溜め息を漏らした。


……実際に大隊長は魔信機から伝わる会話内容を横耳に、近い将来行われるであろう本土での盛大な戦勝会の風景を想像して表情を崩していた。





バリアン大陸西部に入ってから数刻の時が経っていたが、この飛行大隊の指揮官である大隊長は浮かれていた。


……そう。彼は浮かれていたのだ。


多くの勲章を胸に付けて、ジュニバール帝王国 帝都シンバハールの中央通りで行進する儀杖兵を引き連れてオープンカーの後部座席で街を埋め尽くす民衆に手を振る姿。


軍の高官達はおろか、政治家を筆頭とした各業界の大物達に祝いの視線を送られる最中で感動的なスピーチを民衆や世界中の報道機関達の前で披露し、帝都中を響かせる拍手喝采を一身に受ける光景。


そして名だたる名将達にしか許されていない己の金像が帝王会議場の正門に設置される映像を脳内で作り上げていく自身を咎めることなく永遠にそれを繰り返し流し続けた。


「――良いぞ。私の人生は明るいぞ。」


思わずそう口走ってしまった所で漸く今が任務中であることを思い出した大隊長は慌てて操舵梶から片手を離して口を覆った。


幸いにも魔信機の送信ボタンは押していなかったので部下達に聞かれていなかったと気付くと安堵の息と一筋の冷や汗を流した。これには流石の彼も浮かれ過ぎたと反省する。


ふぅ…………いかん、いかん。私とした事が、こんな新人みたいなミスを犯すとは!


そう大隊長は自身を戒め、ふと今ここはどの辺りに位置するのかと疑問に思う。


余りにも長い間、別の事を考えていた為に現在地が分からなくなった大隊長はすぐに機内の壁に貼っていた地図を剥がして現在地を探す。


バリアン大陸の描かれた地図の上にコンパスを置き、速度計に視線を送り、飛行時間等を考慮した結果、もうすぐ目的のセンゲル平野に到着することが判明した大隊長は獰猛な笑みを溢した。


これはチャンスだ!報告にある敵部隊を発見して撃破すれば、私は更なる栄光を手にする事が出来る! 


ここで更なる功績を上げる事が出来れば間違いなく自分の立場は高まる。そう思案した大隊長は意気揚々とした表情で魔信機に手を伸ばした。




『大隊長機から各機に告ぐ。間もなくセンゲル平野に到着する。各機は地上の異常を見逃さぬように策敵を厳とせよ。』


不満そうに大隊長機に視線を送っていたカトラ少尉の元にその大隊長から通信が送られた事に驚きつつもそれを表に出すことなく魔信機に手を伸ばした。


「こちらカトラ。了解。」


『こちらベボ、了解!』


それに続いて他の小隊長からも返信をしていく。


やがて全ての小隊長が返信を終えるとベボ少尉の機体は編隊を崩して降下し始める。


カトラ少尉が目を丸くしている最中、そのベボ少尉から嬉々とした声で魔信が入った。


『こちらベボ! 俺の隊は付いてこい!真っ先に敵を見つけた奴には特別に俺の酒を奢ってやる! 40年物のガミャル産物だぜ!』


ベボ少尉はそう言い終えると魔信を切った。それに遅れて彼の小隊は編隊から離れて降下していった……最後尾にいるのは恐らくキアルだろう。


(……あいつめっ! 編隊行動を何だと思ってるんだ!?)


この身勝手な行為に流石の大隊長も静止の声を上げるかと思えば、カトラ少尉が変わりに聞いたのは真逆の結果だった。


『こちら大隊長。良いぞベボよ! 他の小隊も各小隊長の判断で散会せよ! 真っ先に見つけた小隊には俺の方から昇給の話を付けてやる!』


この大隊長の太鼓判に大隊は大盛り上がりだ。次々へと編隊から離れていく仲間達を尻目にカトラ少尉は困惑する。


確かに捜索という任務なのだから散会するのは当然と言える。


だが日本側の航空戦力が完全にいないという確証が無い上に、本来優先すべき事は策敵では無くて通信の取れない友軍の捜索なのだ。しかし大隊長達は味方よりも敵を探す事にしか頭に無い。


いや、カトラ少尉も分かってはいる。どうせ連絡の取れなくなった味方は、魔力嵐等の理由で一時的に孤立しただけで恐らくは既に本隊と合流してる頃だろう。


捜索はただの名目上で総司令部は自分達に手柄を立てさせようとしてるのであろう。そうカトラ少尉は思っていたのだ。当初の不信感は既に脳内から消え去っていた。


(そうだ……日本軍を相手に陸軍が敗北や被害を被るなんてのは有り得ない。我々は上位列強国だぞ?)


ジュニバールが列強国になってから数十年が経過していた。その歴史の中で自国が局地戦であろうとも敗北した事は一度たりとも無かった。寧ろそれ以前からも敗北の経験など圧倒的に少なかったのだ。


この世界で上位列強国が超大国以外の相手で負けることなど不可能。その価値観がカトラ少尉はおろか、全ての生物達の常識だった。


だからこそカトラ少尉は大隊長の采配に多少の思うところはあるものの、それを口に出すような事はしない。


そう判断したカトラ少尉は握っていた操舵梶を傾けて、自身の後ろの小隊に視線を向ける。


「カトラ小隊、私に続け。」


こうなったら自分達が真っ先に見つけて本来の捜索任務に切り替えさせようと、カトラ少尉は決心した。





…………25機の戦闘機の1つの集団から複数に分裂した時、そんな彼等の策敵の範囲外からそれを監視していた者達がいた。




『こちらアタッカー01、目標αの散会を確認。

1200を持って作戦を開始する。送レ』


「こちらアタッカー02、了解。送レ」


隊長機からの通信に彼は時間を確認する。


確認するとは言ってもいま自分が被っているヘルメットのHUD画面の端に表示された数字を一瞬だけ見ただけだ。


航空自衛官となってからの数年間の訓練や日頃の生活の賜物か、彼の体内時計は驚異的なまでの正確さを誇っていた。


まぁ最も、それは日本の国防隊員であるならば戦闘員だろうが非戦闘員関係なく全員が一般人とは隔絶した体内時計の正確さを手に入れている。


そして判明した時間から作戦開始まで既に1分を切っており、彼は親指に操舵梶にあるボタンを触れさせる。


AAMー5近距離空対空誘導弾…………日本の04式対空ミサイルの発射ボタンであるそれに親指をかけた彼は指定の時間になるまで無言で待った。


『開始まで5、4、3、2…………開始。』


隊長機からの通信を合図に、彼等が乗り操作していた8機のF-15Jから300cm程度の細い槍が僅かに蒼い光を出して発射された。


あっという間に小さくなっていくそれを彼は見送り息を吐く。


前述にもある通りに04式ミサイルは近距離用のミサイルだ。その有効射程距離はたったの35kmしか無い。


しかし目標αである敵航空機との距離は50km離れた場所にいる。本来ならば途中で燃料は途切れるだろう。


向こう側も距離を積めてはくれているが、それよりも先にミサイルが有効射程距に到着するだろう。


しかし今回の04式対空ミサイルは異世界仕様に改良された物だった。


この異世界で産出される固有資源を試行錯誤して開発された推進剤を燃料にしており、書類上の性能はでは射程距離は50kmを越える。


実に1.5倍の向上に成功した事になる。ただ問題は、速度の低下とこれの実用性だ。試験発射はしたものの一直線に飛行する物体には有効だが、変形自在に飛ぶ物への命中率には疑問が残り問題視されていた。


特に速度の低下は問題だ。未だに謎の多い魔法資源を活用したのもあるが、魔法反応によって生じる衝撃波が進路方向への調整に難儀したのだ。


これは不本意ながら速度を抑えることである程度の安定には成功したものの、最大で24%の速度低下が確認されており、これが実戦においてどこまでの影響が出るのかが課題となった。


更にはこの世界の資源を使用した為に魔力がミサイルに籠められ、敵側の魔力レーダーに引っ掛かるという大きな欠点も露見した。


ならば大人しく地球産のみを使えば良いでは無いかと思うが、誠に残念ながら魔力を発しない地球産の資源には限りがある。


貯蓄はあるものの、転移初期からあらゆる用途に使ったりしたりした為に、この世界では極めて稀少資源である魔力の発しない地球産の資源の枯渇はもはや時間の問題でなのだ。


この枯渇までの時間を少しでも延長させるために、今回のミサイルの様な異世界仕様の兵器が開発されたのだ。これの実戦使用の結果次第で、今後の地球産の節約に大きな進歩を得られるだろうと期待した。


それ故にいま彼等が受けた任務は敵航空戦力の排除もあるが、この異世界仕様の火器性能の調査も同時に担っていたのだ。


まずは敵の半数をこれで撃破して、その後の機関砲による攻撃までが今回の作戦の流れだ。この機関砲にも魔法資源が使われており、これが敵に対しての影響を調べるのだ。


ムー共和国側からの情報でアトランティス帝国やガーハンス鬼神国のような航空機や竜には魔力で全体を覆って強力な結界を張る存在が確認されているようだ。


地球産のみの魔力の無いミサイル等であればそれを無視すると思われるが、僅かでも異世界の資源を使えば結界は反応するというのが技術者達の見解だ。


ならば結界のないジュニバール側の航空機には影響が無いのかを日本政府は知りたい。万が一に備えて…………


そんな裏事情もあり、彼等はミサイルを発射後も進路を変えずに真っ直ぐにと敵航空機の方角へ進む。


調査の為にも、そして殺された同胞達の為にも彼等は間近で目視しなくては成らない。


そうしている間にもHUD画面の右上に表示されたレーダーがミサイルと敵航空機との距離が縮まっていくのが見える。


その数秒後にレーダーに映っていた敵影の幾つかが音もなく消え、更にその後にもまた複数の機影か同様に反応を消失した。


『こちらアタッカー01…………14機の消滅を確認。』


つい先ほど発射したミサイルは1機につき2発ずつの計16初なので2発が目標から外れたことになる。


単純計算ならば命中率は87.5%になる…………これが距離1000km以上の長距離誘導弾ならば、まだ許容範囲内なのだが、今回は50kmという至近距離だ。それで90%以下なのは話にならない。


日本国防省が定めた規定ならば近距離空対空誘導弾の命中率は少なくとも95%以上でないと採用されない。


しかも今回の相手は時速500km程度の鈍足なのだ。これが仮に中露が相手であれば全て避けられて反撃されていただろう。


結果だけ言えば、今回の相手には充分な性能だが合格では無い。そう判断するのが妥当だろう。


『アタッカー01より各機へ、これより格闘戦になる。だが無用な深入りはするな。 危険と判断すれば戦線離脱を厳とせよ。』


隊長機からの通信だ。これを聞いた彼は、自身では初となるジェット戦闘機による格闘戦に覚悟を決めた。


その瞬間、8機のF-15Jはアフターバーナーを点火して音速の領域に入った。


旧世界において極東の大国が異世界の列強国へと牙を尖らせ空を舞う。








第91飛行大隊に所属するカトラ小隊の1人は地上に鋭い視線を送っていた。


大隊から離れた後はカトラ少尉の指示の元、各自が見えるギリギリの距離を保ちながら草原が広がる平野を見下ろす。


しかし視界に映るのは動物の群れや風に靡く木々ばかりで退屈な時が流れる。


音もなく時が経過する最中、彼は機体の先に蒼く小さな光が視界に映るのが見えた。


「っ!?」


反射で機体を傾けようと操舵梶に力を込めるがその寸前にF-15Jが放った04式対空ミサイルが機体に着弾して青空に一輪の黒い花火が咲いた。


そしてその黒い花火を何発もの04式対空ミサイルが通り過ぎていった。




先に異常を察知したのはカトラ少尉であった。突如として右前方で飛行していた自身の部下の機体が爆発したかと思えばその爆発時に発生した黒煙から何発もの謎の飛行物体が突っ込んできたのを確認する。


「っ! 攻撃だ!避けろ!」


これが攻撃だと判断し、口に出すよりも先に機体を思い切り傾けて、更なる降下をした。


それが幸いしてか、謎の飛行物体は右翼の真下をスレスレで通過していったのだ。


だが安堵する暇は無い。すぐに周囲を見渡すがカトラ少尉は絶句した。


カトラ少尉の周囲には先ほどとは別の飛行物体が彼の部下の機体に突っ込んでいく瞬間を目撃してしまった。


「イェール! ミュルガ! サットン!?」


苦楽を共にした部下達の名を口にするが、彼等は魔信機で叫ぶ間すらも与えられずに、数瞬にして爆発離散した。


機体の窓からそれを目撃してしまったカトラ少尉は、部下達の生存は絶望的だと理解して操縦席を力強く叩いた。


だが嘆いている暇は無いのだ。すぐにでも他の小隊にもこれを知らせなくてはならない。荒々しく魔信機に手を伸ばして送信ボタンを押した。


「こちらカトラ! 敵からの攻撃を受けた!

俺の小隊は俺以外全滅した!」


すぐに応答があった。それは呆れた様子のベボ少尉からだった。


『はぁ? お前……何をいってんだ? それでボケのつもりか?』


平時ならばそう捉えられても無理はないだろう。だかカトラ少尉は今までにない怒号で応える。


「これが冗談だと思うか!?西側から来る飛行時間物体に警戒しろ! いいか!?敵は…………」


いつもの彼とは思えない程に殺気迫るカトラ少尉は後方から迫り来る脅威に気付くのが遅れた。


「なっ!?」


彼が最期に目にした光景、それは先ほど彼がギリギリの所で避けた04式対空ミサイルが大きく旋回して、再び彼の機体へと突撃していく光景だった。


「…………あぁ、糞。」


最期を察したカトラ少尉が自然と口に漏らしたのは己への悪態だった。


再び大空に一輪の黒い花火が咲いた。






「カトラ?…………おいっ!カトラ!? 返事をしやがれ!!」


いつも以上に大声を出して同僚の応答を待つが、それが来ることは無い。


「チクショウッ! 何がどうなってんだ!?」


魔信機を握り締めながら、日焼けした太い腕を機体の窓に叩き付けた。すると他の小隊長が落ち着きのない様子で魔信機が入る。


『おいベボ!? カトラはどうしたんだ!? 一体向こうで何があったんだ!?』


「うるせぇ! 俺が知るかよ!?」


苛立ちを隠さない様子で応えたベボ少尉の元へ部下から更に慌てた様子で知らせてきた。


『ベボ隊長! 左方向に何か飛んできます!』


何か、とは何だ?そう問いだたそうとしたベボ少尉を無視して、視界の端で爆発するのが見え、1つの何かが此方に突っ込んで来た。


「ぐおぉ!?」


ベボ少尉は瞬時に察した。あれがカトラの言っていた攻撃なのだろう。すぐに機体をカトラ同様に傾けて急降下をする。


だがカトラと違ったのは、部下達へ回避命令を出さずに自分だけが避けたという事だ。


一気に高度1000m程降下したベボ少尉はそこで機首を上げて再び上昇し終えると後方へ顔を向けて顔を強張らせた。


「おい…………あいつらは?…………」


後方には雲1つない綺麗な青空をバックに3輪の黒い花火が咲いていた。撃墜されたとベボ少尉は悟った。


「く、糞っ! 何がどうなってやがる!?」


震える腕をどうにか落ち着かせてアクセルペダルを思い切り踏み込み速度を上げる。


「敵は!? 敵はどこにいやがる!?」


卑怯者が!絶対にぶっ殺してやる!


そう戦意を燻らせるベボ少尉の元にキアルの声が魔信機越しで聞こえた。


『ベボ隊長殿!?』


「キアルか!? お前無事だったのか!?」


ふと思い返して見ればあの時見た黒煙は3つ。部下は4人なので1人生き残っているのは道理だ。


だが1番未熟な筈の青年が生き残っていた事実に驚くベボ少尉をよそにキアルは言う。


『カ、カトラ隊長殿から、危険を感じたら何も考えずに機体を傾けろ、と教えられました!

自分でも信じられません…………!』


早口で説明するキアルに、ベボ少尉は心の中で散った戦友に思いを寄せる。


(あの野郎…………部下の教育はしっかりとやっていた訳だな…………)


カトラの元で訓練を受けたからこそ、後方の青年は生き残れたのだ。かくいうベボ少尉も今のを回避出来たのは運が良かった。


比較的距離がある所で察知出来たから。直前で進路を変えようと機体を僅かに傾けていたから。


そういった理由で生き残れたという事実に気付き、ベボ少尉は肝を冷やす。そんな彼だったがふと地上に視線を下ろしてその肝を更に冷やす事となった。


「何だ…………あれは…………嘘だろ?」

「嘘だ…………そんな酷い…………っ!」


次の攻撃が来るかも知れないのにベボ少尉とキアルは地上から目が離せなかった。


2人が見下ろす先にあった地上には、この平野を埋め尽くす程のおびただしい数のかつては戦車だった物が黒い錆となり、その残骸からは黒煙を天高くまで煙らせていた光景が広がっていたのだ。


舗装のされていない道路と思われる場所には積み重なるようにして放置された死体が視線の先まで地に伏していた


地上に覇を唱えていた筈の戦闘車輌…………それらはまるでこの広大な平原に突き刺された墓標のように無惨な姿を2人に見せつける。


これらが日本軍の車輌であれば2人は状況も忘れて歓声を上げていたであろうが、大地に幾つも転げ落ちている残骸の形状と死体や国旗を見てそれは違うと解ってしまった。


彼等空を飛ぶ下で無惨にも煙を上げて二度と動くことのない鉄の死骸や遺体は全てがジュニバール帝王国陸軍のものであると。


「前線部隊は壊滅したのか?」


『そんな!…………っ!? 隊長!後ろからあれが追ってきます!!』


キアルの叫びとも捉えれる知らせにベボ少尉は慌てて後ろを振り返った。


そこには確かに僅かに蒼い弾道を描きながら大きく旋回し終えたあれがこっちに向かってくるのが見えた。


「っ!? ちっくしょうが!!」


2人は振り払おうと必死に速度を上げるが、どう見ても向こうの方が速度は上だ。


そんな最中、ベボ少尉は鬼の形相で魔信機に口を近づけて応援を要請した。


「こちらベボ! 敵の攻撃を受けている! すぐに助けに来てくれぇ!」


その直後、彼の視線の遥か先で見たことのある黒い花火が咲いたのを確認した。


「っ!? まさか、アイツ等も…!」


その予感は当たっていた。カトラ少尉からの魔信を受けた他の小隊が向かってきた所を、対空ミサイルが対面するように突撃して当たったのだ。


一瞬にして6機のアブターⅡ戦闘機は跡形もなく破壊された。仮にカトラ小隊が全滅したのならばこれで大隊の半数近くが被害を受けた事になる。ものの数分でだ!


だが今はそんな事よりも自分達の事を考えなくてはならない。何故ならもうすぐ真後ろにまで魔の手が伸びているのだから。


「があぁぁ!!」


ベボ少尉は操舵梶を何度も左右へと強く傾けてメチャクチャな飛行をした。しかし後方のミサイルは執拗に追いかけ回す。


『うわあぁぁ!!来るなぁ!!』


もう駄目だと思ったタイミングで、同じような動作で逃げ回っていたキアルの機体とベボ少尉の機体が交差するように擦れ違った。


『うわぁ!?』

「うぉ!?」


2人からしたら突然、目の前に機体が現れたと感じて叫んだが、これが彼等において最大の幸運が重なることとなった。


なんとベボ少尉達をしつこく追い掛けていた2つの対空ミサイルがお互いに激突して爆発したのだ。


「はぁ、はぁ! 助かった…………のか?」

『た、隊長!』


2人は互いに安否確認をして、助かったと実感すると安堵の息を洩らした。


2人は運が良かったのだ。2度も直前でミサイルの存在に気付いたこと。


異世界仕様の04式空対空ミサイルであって、速度が大幅に低下し、両機を追いかけ続けて何度も軌道変更をした結果、ミサイル内にある燃料の材料から思わぬ魔力反応を起こしてお互いのミサイルが磁石のように牽かれ合って接触したのだ。


そんな多くの要因が重なった結果、2人は幸運にも無傷ですんだ。





どれだけの時が経過したであろうか、既にベボ少尉は落ち着きを取り戻しており、唯一の生き残りであるキアルを引き連れて大隊長の元まで戻る。


「こちらベボ、応答せよ。繰り返す。こちらベボ、応答せよ…………」


無茶な飛行をしたせいか、魔信機の調子が悪い。それでも何度か魔信を試みると念願の応答が入った。


『ベボか!? 一体何があった!? 他の小隊はどうしたんだ!?』


大隊長の声だ。だが2人はこれに喜ぶ暇もなくすぐに報告をした。


「カトラ小隊は全滅しました! 自分の小隊も1人を残して殺られました! 他のパケット小隊も同様に…………」


『そんな……………有り得ん! いっ、一体どうして…………!』


大隊長は狼狽えているようだ。無理もない。何の前触れもなく突如として謎の攻撃を受けたのだ。


だがいつまでも狼狽えている訳にはいかない。いつあの攻撃が再開するかも分からないのだ。ベボ少尉は大隊長へ意見する。


「大隊長! 敵は見たこともない攻撃をして来ました! 姿ですらも見えなかったのです!

すぐにでも部隊を纏めて…………」





ベボ少尉とキアルが大隊長の率いる小隊と合流しようする最中、そんな彼等とは反対側の空域で索敵をしていた別の小隊がカトラ小隊が全滅した場所にまで来ていた。


機内にはベボ少尉と大隊長との会話が魔信機から聞こえていたが、その内容に口が出せずにいた。


「信じられん! まさかアイツ等が殺られるなんて…………!」


カトラ少尉は大隊の中でも特に腕の立つパイロットだ。そんな彼と小隊が成す術なく殺られるなど到底信じられなかった。


目撃のあった空域にまで到着した彼等は敵を探そうと周囲に目を配る。


「待ってろよカトラ! 何がなんでもお前の無念は晴らす!」


そう仇を取ると誓う彼等。そしてその機会はすぐに訪れた。


『隊長! 西方向より何かが来ます!』


「!?」


部下からの報告に彼はすぐに西の方向へ顔を向けた。そこには確かにいた。真っ直ぐに飛行してくる飛行物体。ワイバーン等ではなく間違いなく固定翼機だ。


(数は…………8! 奴等がカトラ達を!)


目視で距離を測ると、まだ距離はあると判断した彼は絶好の位置を取ろうと旋回を始める。部下達も同様に旋回をしていく。


旋回しながら上昇していき、敵の頭を抑えようと思案する彼等だったがその数瞬後にその計画は破綻した。


「近いっ!? 速すぎる!!」


まだ距離はあると思っていた彼等だが、目を離した一瞬で距離を詰められていたのだ。


すると敵は機関銃と思われる攻撃を繰り出してきた。


それは旋回しながら上昇していた彼等にとっては致命的な行為だった。


「か、回避ぃ!!」


部下に回避命令を出した彼だったがそう言い終えると同時に、20mm機関砲が彼等の機体をぶち抜いた。


時速1500kmの速さで敵の1個小隊を機関砲で殲滅した8機のF-15Jはそのままの勢いでベボ少尉達の元へと飛ぶ。


『アタッカー01より各機へ、進路そのまま距離30の場所で最後だ。』





なんとか大隊長の隊と合流することに成功したキアル達だが空気は最悪だ。


『撤退はならん! 1機も敵を撃墜はおろか、本来の任務すらも遂行できてないのだぞ!?』


『ですから何度も言っているでしょう!? 前線にいた陸軍は壊滅したんです! 敵のあの攻撃といい、大量の戦車の残骸といい、ここは既に敵側の占領地なのてすよ!?』


『ふざけるな! お前の報告など信用出来るか!! 日本ごときに陸軍が負けるなどありえん!』


『だから負けたんですよ!? そうじゃなくちゃ既に友軍は見つけてる頃でしょう!?』


さっきからベボ隊長と大隊長が言い争っている。


これらをキアル達は黙って聞いている事しか出来なかった。


普段は温厚な筈の大隊長は今までに見たことがない程の怒号でベボ少尉と論争している最中で口を開ける勇気のある者はいなかった。


大隊長の隊は困惑している様子を見せるがキアルはいつあの攻撃がくるのかを恐れて落ち着く事が出来ず、ずっと周囲を見渡していた。


休むことなく周囲をキョロキョロと見渡していたキアルだが、とある方向で何かを見つけたキアルはそこで動きを止めた。


「…………あ、あぁ!!」


キアルは見つけてしまった。視界の遥か先で、とんでもない速度でこちらに近付いてくる8機の航空機を見て、彼はあれがあの攻撃を仕掛けてきたのだと悟った。


その瞬間キアルはあまりの恐怖で急降下をした。


「うわあぁぁぁぁ!!!」


いきなり隊列から離れて急降下をしたキアルに周囲は目を丸くした。


だがベボ少尉だけはその意図を察して周囲に視線をやりキアルと同様、それを見つけたベボ少尉は小さく呟いた。


「あぁ…………糞ったれ。」


ベボ少尉はすでに至近距離にまで近付いてきたF-15Jのパイロットと目があった気がした。


『攻撃開始。』


ベボ少尉の周囲にいた周囲の機体が大きく抉られたように吹き飛び爆発した。


なんか木花達の視点に移すタイミングを失ってしまった…………


結局、どの視点が面白いのかが分からない…………



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
書き損じた事がありました。 木花パートですが、バリアン大陸での戦闘終結後が自然ではないでしょうか? 結果がどうであれ、双方の政府上層部で今後の方針を決める会議が行われ、事の経緯が経緯ですので彼の名前…
ようやく追いついた() どの視点も面白いけど客観視点も面白そうではある。(hoi4実況的な感じの大局視点) 異世界産の鉱石がレーダーに反応するんだったら日本の場所何も写ってなさそうで面白い。 た…
ガーハンスとジュニバール、いつになったら気付くのでしょう。日本には、自分たちの常識が通用しないことに。 いや、『この世界そのものの常識』が、通用しないことに。 『自分たちにとって当たり前のことを疑わ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ