第83話 進撃
1ヶ月も空いてしまい申し訳ありません!
第83話 進撃
バリアン大陸 ハマ山岳
25mm機関砲を搭載した3両の87偵察警戒車はその機関砲を常に動かして周辺の脅威をくまなく捜索しているのを横目に横林小隊長は、自身の足元に横たわる多数の死体に視線を落とした。
彼の足元に伏している死体はどれも若かった。恐らくはまだ20代は出ていないであろう、若者達はその顔に生気を一切宿すこと無く、大地を真っ赤な血で汚して横たわっていた。
足元だけでなく視線を少し上げて周囲を見渡せば、そんな死体は至る所にあった。そして、そのどれもが先ほどまで交戦していたジュニバール帝王国の兵士達だ。
いや、あれは交戦などでは無かった。交戦と言うには余りにも一方的な戦いであったのだ。
彼等は何処から攻撃されたのか分からず、反撃もする暇もないまま、命を落としたのだ。現にここに散らばる死体の全てがジュニバールの者であり、日本国防軍側の死体は1つも無かった。
「小隊長、飯岡小隊から敵残党が先ほど交戦区域から完全に撤収したのを確認したとの事です。」
血の気を無くした死体を見ていた横林小隊長の背後から、ジュニバールの残党を監視していた小隊への報告を伝えてきた部下からの報告に、彼は気持ちを切り替えて指示を出した。
「分かった。 貴戸団長に報告だ。敵の先見隊は予定通りに撃破とな。」
横林はそう言うと死体の散乱する場所から離れて、設営した陣地へと戻った。
ハマ山岳 第3戦闘団 本部
ハマ山岳の奥地に、周辺の地形と溶け込むようにして天幕を設営した第3戦闘団本部の指揮天幕の中で、偵察隊からの報告を聞いた貴戸は机の下に置かれた地図に視線を落とす。
「敵の半数は撃破したか・・・」
偵察隊からの報告曰く、ハマ山岳に侵入した大隊規模の内、少なく見ても半分の敵を撃破したらしい。
結果としては上々と言えるだろう。最初の交戦報告が来てから、たったの20分後には撃破報告が来たのだから。
僅か30分以内で200以上の敵戦力を削る事に成功したのだ。これから更なる大軍が来る事を考えればこの出だしは良い。
貴戸団長はこの為に、自身が指揮する第3戦闘団の部隊にハマ山岳の地形の把握を徹底させていたが、それが功を制した事に安堵する。
現地人の案内を元に、地理情報隊による正確な地図を作成させ、現場の隊員達には兎に角、持ち場の地形を覚えさせた。
それのお蔭もあり第3戦闘団…特に最前線の隊員達は自分の庭のように、このハマ山岳を歩き回れるまでにこの地形に馴染めた。
地形を完璧に把握した隊員達によって、ハマ山岳の要所要所には陣地を造り、瞬時に臨戦態勢を整えれる防衛線が完成した。
既に貴戸団長が指揮する第3戦闘団が守るこのハマ山岳は堅牢な要塞同然となっていた。
不馴れな地形をものともしない現場の隊員達はもとより、そんな彼等を指揮する貴戸大佐も有能と評価を下しても良いだろう。
「直に敵の本隊が来る。 中央部の部隊を偵察隊と合流させて迎撃態勢をとらせろ。 次の攻撃は全面的に押してくるぞ。」
「やはり敵はすぐに来ますか?」
指揮天幕につめていた幕僚からの質問に貴戸は答える。
「あの男と少し会話したが、あの性格から考えて、怒り任せに全軍を動かすだろうな。」
貴戸はバイート少将が顔を真っ赤にさせて部下達に大声で前進命令を下す姿を想像した。
「・・・問題は第2戦闘団の動きだな。 上手くタイミングを合わせないと混乱が生じる。」
(あの破天荒な性格を持つ男が指揮するんだ、此方側で調整しないと不味い・・・しかも、攻撃のタイミングは鬼導院師団長が完全に一任すると言ったんだ。 此方側の要請を言っても聞き入れてくれないだろう。)
そこで貴戸は初めて表情を歪ませる。正直に言って、あの池田という男は好きではない。まぁあの男のことを少しでも知る者ならばそう思うのが当然だろう。
北海道の基地で会う度に、下世話な話や愚痴話に、終いには自分の目の前で女性隊員へセクハラ発言をしたりと、良い印象がまるで無いのだ。
それでも国防軍でも最年長クラスの男への最低限の礼節は守って接して来たが、目の前で女性隊員の胸を触った時は流石にあの男を叱責した時があった。下手をすれば…いや、普通に懲戒処分ものだ。
それが切っ掛けで池田を軽蔑していたが、第10師団内での指揮演習時に彼が見せた卓越した指揮能力は、貴戸が抱いていた池田のイメージを大きく変えさせた過去があった。
貴戸だけではない。当時の演習を見ていたすべての国防隊員達が、池田の能力に度肝を抜かされたのだ。
僅かな情報を元に相手の動向を精確に予想し、抜群のタイミングによる攻勢。見事と言わざるをえない指揮によって相手側は敗北を喫した。
あれは池田自身の才能はもとより、長年の軍隊活動で積み重ねた経験によってあの領域にまで達したのだ。
間違いなく池田は指揮官として優秀な男であろう。下手をしたら日本国防軍内でも彼に匹敵する者はいない。貴戸がそう思わせる位には実力がある。
隔絶した能力があるものの、モラルがまるで無い男、それが貴戸が彼に対しての評価だった。
そんな男が指揮する第2戦闘団の動向に少しの不安を抱くのは必然である。
そう貴戸が心配していると、天幕内に設置した通信設備から報告が入り、通信科の隊員が貴戸に告げる。
「偵察隊より入電、ハマ山岳に対面している敵本隊が動いたとの事です。」
それを聞いた貴戸は指揮に専念する事を決めて雑念を消した。
センゲル平野
ジュニバール帝王国陸軍 前衛部隊指揮所
ハマ山岳のすぐ東に位置するセンゲル平野には立て籠る日本軍への攻勢を仕掛ける為に8000人以上のジュニバール兵士が展開していた。
そんな前線部隊の指揮を執る司令部はセンゲル平野のとある村を占領して仮設の司令部を設置していた。
「先見隊が引き返したぁ? どういう事だ!」
接収した村の中でも一番立派な建物で、先ほどハマ山岳に向かった先見隊からの報告を耳にしたバイート少将は座っていた椅子から乱暴に立ち上がる。
荒々しく立ち上がるバイート少将を前にした伝令将校は、額に冷や汗を浮かべながらも詳細を告げた。
「はっ・・・ハマ山岳に向かった第421大隊が山岳に入ったと同時に待ち受けていた日本軍からの奇襲にあい、やむ無く退却したと・・・」
その詳細を聞いたバイート少将は、顔を真っ赤にさせて側に控えていた参謀将校等に振り返った。
「なんと無様なっ!・・・すぐにその部隊の指揮官等を罰せよ! 我が部隊に臆病者はいらん!」
せっかくの列強間との初戦をまさかの敗北で濡らせた事にバイート少将はそう命じる。
その命令に正面の伝令将校は気まずそうに口を開いた。
「お、お言葉ですが・・・大隊長以下、先任指揮官等の多くが既に・・・その・・・」
口ごもる伝令将校にバイート少将は苛立ち気味に言う。
「何だ! さっさと言わぬか!」
その言葉に意を決した伝令将校はすぐに発言した。
「は、はっ! 大隊長以下の先任指揮官の多くが先の戦闘により殉職しました! 現在の先任指揮官は中隊を指揮されていた少尉です。」
その報告にバイート少将とその周りにいた参謀達も驚く。まさか佐官の全員が戦死し、尉官も一番階級が下の少尉以外が殺られたのだから。
「生き残りの指揮官が少尉だけだと!? 他の者達は殺られたのか!」
「その通りです。 その少尉自身も頭部を負傷しており、現在は治療を受けているとの事です。 日本軍は的確に指揮官を狙い撃ちした様です。」
その言葉にバイート少将は更に顔を赤くした。負けただけでなくあろうことか、指揮官達を軒並み殺られたという醜態に怒りを露にする。
「鍛え抜かれた精鋭たるジュニバール帝王国陸軍がなんたる様だ!」
このような無様な結果で都市リバーテで戦勝報告をいまかいまかと待っているジルヒリン議員閣下に何と報告するといのか!
そう考えたバイート少将はすぐに先ほどとは別の命令を下した。
「何をしている! 今すぐ全部隊にハマ山岳へ攻撃せよ! 隠れ潜んでいる日本人を皆殺しにするのだ!」
先の敗北を有耶無耶にするには、すぐにでも全部隊を使ってハマ山岳に潜む敵を殲滅する。そうバイート少将は考えた。
今度こそ勝利すれば帳消しになる。一刻も速くハマ山岳を制圧してジルヒリン議員が敗戦の報せを受け取る前に大勝利という勲章を持ち帰れば挽回は充分に出来る。
そうやって皮算用をするバイート少将の命令を受けた参謀将校達は配下の部下達に指令を下した。
それによりセンゲル平野で待機していた8000のジュニバール兵が動き出した。
彼等の目指す場所は堅牢な要塞と化したハマ山岳、そしてそこで待ち受ける日本軍を殲滅する為に一斉に動き出した。
幾らか落ち着きを取り戻したバイート少将だが、いつまた暴発するか分からないので適当な理由を付けて建物から離れた参謀がいた。
ジュニバール陸軍中央参謀大学校を卒業して十数年、今作戦の任についた比較的若手の参謀である大佐は、そこで懐から葉巻を取り出して一息ついた。
ジュニバール帝王国の属領大陸から産出されるイマジギ産の葉巻の深い味に、暫しの至福の時間を堪能していると、そんな彼のもとへ部下が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大佐殿、一大事です!」
その一言に彼は一気に気分を害した。どう考えても面倒事なのは間違いないのだから。そんな参謀を他所に部下は報告を続け、参謀は自分の予感が間違っていないことを確信した。
「後方にいた第89砲兵中隊が日本からの航空攻撃を受けて壊滅状態です! 更にはその後方に築いていた補給拠点も幾つかが何者かの襲撃にあい、大量の補給物資が失われたと、報告が・・・」
その内容に参謀は頭を強く叩かれる感覚を覚えた。
なんだその被害は?航空攻撃だと?こちら側はそんな報せはなんも受けていないのに・・・しかも補給拠点までもが攻撃を受けた!?
当然ながらジュニバール帝王国にも電波レーダーを保有している。そして今回の出兵では魔力を持たない日本への対策の為に電波レーダーを通常よりも多く配備している。
確かに科学文明の列強が使用する物と比べれば性能は劣るだろう、だからそれを補う為に大量に用意したのだ。それこそ前線には全域を覆うように大小合わせて数十基を越える対空レーダーが置かれている。
そしてそれらを運用している部隊からこの司令部に向けて探知したという報告は受けていない。
それだけ周到に用意された対空レーダーが反応しなかった・・・一体何故?
「故障したのか?」
だがすぐにそれは無いと首を横に振った。数十を超すレーダーが同時に故障など天文学的な確率だ。
「・・・誤報ではないのか?」
僅かな可能性に懸けてそう聞いたが、だが現実は実に残酷なものだ。
「それは何度も確認しました。 馬に乗って報告をしにきた二等兵がいましたが、その者も負傷をしており、襲撃を受けたのは確かです。」
参謀は顔を覆った。この内容をどうやってあのバイート少将に報告すれば良いのか。
最悪なのは後方の補給路を担当していたのは他でもない彼なのだった。もし、これが上の耳に入れば処罰は免れない。
おぉ神よ!どうして、よりにもよって何故私にこのような役を渡したのか!
一瞬目の前の部下に報告をさせるかと考えが過ったが、一番先に報告を受けたのは自分だとバレるだろう。そうなったらそれはそれであのバイート少将から更に叱責されるに決まってる。
そんな面倒事は勘弁したい。どうすれば良いかと考えた参謀はある答えに辿り着く。すぐに部下の肩を掴んで、こう口を開いた。
「いいか? 我々はなにも報告を受けていないし、第89砲兵中隊は今も健全だ。 なんの損害も被っていない。」
襲撃を揉み消す。それが彼が導き出した答えだ。当然ながら目の前の部下は目を丸くしてすぐに反論した。
「な、何を言っているのですか!? 砲兵中隊が壊滅したのですよ! 補給拠点も損害を受けており、既に何百もの兵達が・・・」
「分かった分かった。なら話を変えよう。損害は確かに受けはしたが、大した損失ではない。あくまでも一部の部隊が損害を受けた。 司令部に報告をする程でもない程度の、な。」
「何を言って・・・」
信じられないといった表情をする部下に参謀は苛立ち気味に言い放った。
「ならお前はどう報告をするんだ!? こんな大事な作戦で日本軍との会戦前に損害を出したと総司令部の耳に入ればお前も只では済まされないぞ!?
いいか? 第89砲兵中隊の損害は軽微であり、補給拠点も問題ない。」
「し、しかし、仮にそれで砲兵隊は通せたとしても、補給拠点は?
部隊の進行に支障が・・・」
物資が無ければ軍は何も出来ない。その場にいるだけでも大量の物資を消費する彼等の補給が途絶えれば死活問題だ。
「確か・・・その区域の補給拠点は第202歩兵大隊が受け取る拠点だったな?」
彼も腐っても参謀である。瞬時に補給を受ける部隊を当てた。
「そ、その通りです。」
その言葉に参謀は微笑む。
「なら安心だ。あの歩兵大隊には別の補給ルートを設けてある。 それに別の部隊にも幾らか融通を通すように手配しよう。 これで問題ないな?」
その言葉に部下は尚も食い下がろうとするが、参謀からの眼光の圧力に負けて、彼はそのまま下がった。
それを見送った参謀は咥えていた葉巻を投げ棄て、その場から離れた。既に彼の脳内には被害を受けた部隊の事は入っていなかった。
当然ながら、歩兵大隊への補給の融通などしない。別の補給ルートがあるのも嘘である。彼等には申し訳ないが、そのまま進軍して貰う。
どうせ全部隊が同時に進軍するのだ。その際には補給に滞る部隊も幾つか出てくるだろう。その部隊もそのせいで補給がされなかったと角は立つ。
後であの部下にも口裏を合わせねば・・・そう参謀は決めると、すぐに他の部隊に進軍命令を通信兵達に出そうと歩いた。
彼にとって兵達の死など書類上の数字に過ぎなかった。
センゲル平野 第2戦闘団
広大で緑で覆われた平野を多数の重厚な車輌が走行していく。
戦闘車輌の集団がまるで1つの生命体のように一矢乱れぬ動きで走るその姿は、軍関係者達が見れば、非常に練度の高い部隊だと分かるであろう。
彼等こそが池田団長率いる第2戦闘団であり、多数の装甲科部隊が所属する戦闘団の中でも最も突破力に優れた部隊だ。
装甲科部隊は日本独自で編成された機甲部隊であり、その中でも第1と第10師団の2つの師団にしかいない部隊だ。
既存する機甲部隊と違う点は機甲部隊は戦車を中心とした戦闘車両に対して、装甲科はそれら戦闘車両だけではなく、普通科隊員を乗せた装甲輸送部隊がおり、更に追加としてドローン等を使用した無人機運用部隊までもが所属する重戦闘部隊だ。
これらは既存の機甲部隊よりも多くの状況に対応することが強みだ。
しかしこの部隊には大きな欠点があった。それが莫大な物資を消費する点だ。
これは非常に大きな弱点となる。特に今回のような補給が限定される異国の地においては、下手をすれば敵と戦わずして全滅する可能性が高いのだから。
現に現在、このバリアン大陸に展開する5つの戦闘団の中で最も多くの物資を消費しているのが、池田率いる第2戦闘団なのだ。
その1日に消費する量は約460トン・・・これは全ての戦闘団が消費する割合の約3割を占めていた。
これがどれだけの量かと言うと、一般的に普通の師団が1日に消費する物資が約700トンだと言われており、師団の定員は15000~8000となっている事から、どう多く見積もっても3000程度に過ぎない第2戦闘団がどれだけの大飯食いかが分かるだろう。
そんな戦闘団を指揮する池田は、高機動車の後部座席に腕を組んだ状態で座っていた。
「今のところは順調の様だな。」
車内に設置した無線機からの一連の報告を聞いた池田はそう呟き、窓の方へ顔を向けた。
その視線の先には、荒い道路から外れて走行する90式戦車を筆頭に89式装甲戦闘車や87式偵察警戒車が広大な平野を埋め尽くすようにして展開していた。
そして池田からは見えないが、更に後方には自走式ロケット砲や自走式榴弾砲等の大口径の砲部隊も走行していた。
そこからまた更に普通科隊員を載せた装甲兵員輸送車に、重装甲化した高機動車が砂埃を舞かせながらセンゲル平野を駆ける。
間違いなく地球においても強力な戦闘部隊が、世界を跨がって砂埃を舞わせる光景は圧巻の一言に尽きるだろう。
そんな部隊を指揮する池田は、視線を正面に戻して持っていた地図を広げる。
「状況を見るに・・・貴戸は問題ねぇな。」
ハマ山岳に展開する第3戦闘団を指揮する貴戸はうまく敵の攻撃を短時間の内に撃退した事に、池田はこれからの自身の指揮に集中する。
これまでに集まった偵察の報告内容を脳内で集積して整理をしていると、無線から追加の報告が入ってきた。
『こちらホークアイ01、センゲル平野に駐屯するジュニバール帝王国軍の動きを確認。
また、同地域内の全ての部隊が同時にハマ山岳へ進軍しているのを確認した。』
バリアン大陸に派遣された警戒航空団からの報告だった。彼等は高高度飛行による偵察で最新の情報を随時送っていた。
そして池田は、その報告に地図から視線を上げて、無線機を取り出した。
「こちら池田だ。ホークアイ01に確認する。 本当に全部隊が同時に動いたのか?」
するとすぐに返答が返ってきた。
『こちらホークアイ01、間違いなく確認しました。』
「それは航空攻撃を行ったα区域にいる部隊も含んでいるんだな?」
『その通りです。』
その返答に、車内の助手席に座っていた幕僚も怪奇気味に首を傾げた。
「それは変ですね・・・あそこの区域にいた敵砲兵中隊と補給拠点は爆撃を終えていた筈です。 そんな状態で進軍させれば影響は大きいですよ。」
α区域は最初にF-15Jによる爆撃をした場所を示しており、その区域は壊滅状態なのは確認されていた。
池田の記憶が正しければあの区域には大隊規模の歩兵部隊が付近にいる筈であり、恐らくは破壊された補給拠点を利用すると考えていた。
普通ならその該当区域付近の部隊は進軍から除外するだろう。しかし先の報告では『全部隊』が進軍している。
恐らくその部隊はまともな補給を受けれずに混乱状態になっている筈だ。何せこちらは補給をされる前に攻撃をしたのだから。
そこまで考えて池田は答えを導く。
「・・・敵の指揮官は血気盛んか、部下が揉み消したな。」
池田はそうほくそ笑みを浮かべて言った。楽観視とも言える考えだが、それを覆すだけの判断材料が少ないので幕僚は黙る。
そんな幕僚を他所に池田は再度、地図に視線を下ろしてα区域の場所を確認した。
池田達の現在地はそのα区域とは少し距離があるが、完全機械化された国防軍からしたら、すぐに辿り着ける場所だった。
地図全体を一通り見た池田は意を決して無線機を手に取って、第2戦闘団の全部隊へ通達した。
最初の計画では池田はもう少し状況を見てから動き積もりであったが、彼はすぐに計画を変更した。
「こちら池田だ、全部隊に発令。これより我が第2戦闘団は攻撃に入る。
先頭の第17戦車中隊は進路を東へ進め。第2装甲大隊は脇を固めて進軍だ。
いいか、耳をかっぽじってよぉく聞けよ?
お前等はただひたすら突き進め。 奴等ぁに誰の尻尾を踏んだのかを思い知らせろ。以上。」
池田はそう言って無線を切ると、何かを言おうとする幕僚を遮って運転席の隊員に指示をする。
「アクセル全開にしろ。」
「了解。」
そう会話を終えたと同時に、周囲を囲むように走行していた90式戦車も速度を上げて、隊列を崩すことなく動いた。
100を優に超す戦闘車両が同時にセンゲル平野の中心部へと進路を変えて動き出した。
センゲル平野
第202歩兵大隊の指揮官は、魔信から受けた前線司令官バイート少将による全軍の進軍命令に対して怒りを感じていた。
「補給部隊はまだ来ないのか!? 補給もままならんのに、進軍など無理だぞ!」
本来ならば既に補給品を満杯に積んだ輸送トラックがこの歩兵大隊と合流する筈なのに、一向に来ない中で、この進軍命令だ。
この大隊に必要な消耗品の在庫は既に切れかかっているというのに、このままの状態で進軍しろなどふざけているとしか思えなかった。
只でさえ必要以上に進軍していて、補給が滞っている部隊もいるというのに、あのバイート少将は御構いなしに進ませる。
そんな状態に指揮官が憤怒していると、側に控えていた副官が口を開いた。
「現在、偵察隊の一部を動かして後方に確認をとらせていますが・・・もう少し時間がかかるかと。」
魔信機で確認をとろうにも何故か通じないので、わざわざ部隊を後方にまで引き返させて確認をとっていたが距離的に考えてまだ連絡が来るのは先であろう。
出来る事なら偵察隊からの連絡が来るまで、この場に留まっておきたいが、司令部からの命令は絶対なので、指揮官は苦悩しながらも副官に指示を出す。
「・・・糞っ。 仕方ないが動くしかあるまい。 ルービン小隊だけを残して我々は前進する。 補給部隊が到着したら合流を急がせるんだ。」
指揮官の指示のもと、第202歩兵大隊は一部の部隊を残してハマ山岳へと向かった。
第202歩兵大隊は土を踏み固めただけの簡素な道路を幾つかの集団に別れて徒歩で進軍していく。
先頭を歩くのは、経験豊富な下士官の軍曹が指揮下小隊の歩兵を展開させて警戒しながら確保していた。
警戒とは言っても肝心の敵は数十km先のハマ山岳に立て籠っている部隊しか付近にはいないと偵察隊や司令部から聞いているので、彼等はのんびりとした空気で包まれていた。
流石に小隊長である軍曹の近くではそんな様子は見せずに、見掛けだけは油断なく警戒してる振りをするが、彼等の大半は戦闘とは別の事を考えていた。
場所的にも考えて、比較的後方に位置する自分達が現場に到着するよりも、前衛に配置された部隊が攻勢を仕掛けて、すぐに勝敗は決するだろう。
なぜ急に全部隊の進軍命令が出たのかは不明だが、敵は大した数では無いし、その多くが烏合の衆だと上官達から聞いている。
なので変に緊張はせずに寧ろその後の不慣れな山岳への行軍に憂鬱を感じる位には余裕があった。
それから暫く、退屈な青空を眺めながら果てしなく続く道を進んでいた最中、最前列を進んでいた1人の兵士が違和感を見つけた。
「・・・なんだ?」
違和感を見つけた兵士は、この小隊の中では最も視力の良い者だった。だからこそ最前列を歩かされているのたが。
そんな彼の目には、自分達よりも遥か先の方向にある地平線の先に土煙が幾つも空に舞っているのを見つけたのだ。恐らくは大量の何かがこちら側に向かって移動しているのだろう。
はて、あれは何だ? この辺りに現地人の村等は無く、あそこに現地人がいるとは思えない。
あれだけの土煙を舞う程の大型の魔獣等の類いも居ないのは知っている・・・ならばあれは一体なんなんだ?
彼がそう考えていると、他の同僚達もあの土煙に気付いた様で、近くにいた者と会話する声が聞こえてきた。
「別動隊か?あれは。」
同僚の1人が先行していた別の部隊によるものだと予想した。しかしすぐに別の同僚が否定の声を出す。
「いや、この辺りに大規模な輸送トラックとかが通るのは聞いてない。 来るとしても後ろからだろ? 何で前方から見えるだよ。」
機甲部隊はここよりもずっと後方に配置されており、外周側に配置された自分達と擦れ違う事は無い。かといって補給部隊は後方から来る筈なので、あの土煙の正体だとは考えにくい。
ならばあの土煙は一体誰の者なんだ?そんな疑問が小隊の彼等に脳内に過ったが、すぐに軍曹の怒鳴り声が響いた。
「何をしとるか! 異変があったらすぐに報告をせぬか!?」
その怒鳴り声に彼等の多くが心臓をバクバクと鼓動させる。この小隊に配属されてから、この男が非常に厳しい事は嫌と言う程に思い知らされたので、慌てて敬礼して答える。
「はっ! 申し訳ありません!」
「まったく、貴様等は・・・」
軍曹はそう言うと、近くにいた通信兵を引き寄せて、背中に背負っていた大型の受話器を手に取って後方の本隊へと報告をした。
「こちらバホン小隊、前方に土煙を多数視認した。 大規模な部隊がこちら側に向かっていると思われる。 付近に別動隊がいるのか?」
『こちら大隊本部、そのような連絡は受けていない。 砂嵐の類いではないのか?』
「こちらバホン小隊、砂嵐とは思えない。まず間違いなく多数の何かが移動している。
この付近に敵部隊はいないという認識で構わないのだよな?
敵は幾つかの部隊に別れてると聞いている。もしやその別動隊ではないのか?」
軍曹はそう言い、険しい視線を前方の土煙へと向けた。本当ならば持っている双眼鏡で確認したかったが、その方向の地形は僅かに丘になっており、その土煙の下までは見えなかった。
そしてそれを聞いていた兵士達の間に緊張が走った。
もしそうであれば直ちに戦闘態勢に入らねばならない。しかもあの土煙から見ても相当な規模だと分かり、激戦になると想像に難くない。しかしすぐにその緊張は解かれる。
『こちら大隊本部、最新の情報ではそのような報告は受けていない。 仮にそうだったとしても動きが速過ぎる。 確か・・・遊牧民がこの平野にいた筈だ。その家畜か何かだろう。』
その報告に彼等は安堵の息を漏らした。確かに遊牧民族はこの大陸に来てからは何回も見てきた。
移動を繰り返す彼等ならば、近くに村が無くても納得出来る。恐らくは彼等の移動ルートと偶然にも重なったのだろう。
そうであれば話は早い。このまま彼等と接触したら彼等の物資を徴収しよう。軍曹からは物資が心許ないから節約しろと、言われていたので食料品か何かを得れば御の字だ。
家畜ならば羊や豚であると助かる。この小隊には農村の出が多く、肉の捌き方を知ってるから運が良ければ今夜は肉が食えるだろう。
そう楽しみが増えたと心の中で喜ぶ小隊だが、先程の土煙を最初に見つけた兵士が突然足を止めた。
急に足を止めた彼に、周りの同僚はどうした?と声を掛けたが、当の本人は土煙の方向を凝視したままだった。
更には大隊本部と通信をしていた軍曹からも異変が起こった。
『・・・可能ならばその遊牧民に食糧品等を回収してザザザザッ!ーーピーーー!』
「な、なんだ? 応答せよ・・・急になんだ? 出力を上げろ。」
魔力に乱れが生じたのか、原因は分からないが突如として本部との通信が途絶えた軍曹は通信兵に機器の魔力出力を上げさせた。
しかし通信兵は困惑気味に答える。
「軍曹、駄目です。 出力を上げましたが通信が取れません。」
「むぅ・・・故障か? こんな時に。」
そう呟く軍曹だが、そこで先頭で足を止めていた兵士に気付いて、声をかけた。
「どうした! 何を立ち止まってるか!」
いつもならば、これで慌てて足を動かすのだがどういう訳か、彼は全く動く様子がなかった。
その代わりに指を前方に指した彼が掠れ声で返答が返ってきた。
「ぐ、軍曹、あれって・・・」
そのただならぬ様子に軍曹は状況を察した。思えば彼はこの小隊で一番目が良い者だったと思い出して、すぐに双眼鏡を取り出してその指の先を見る。
最初に目に映ったのは鮮明に見えた土煙だった。そこからすぐに土煙の根元へと視線を下ろして土煙の正体を確認して彼は大声を出した。
「っ!? 全員装填しろ! あれは敵だ! 敵の機甲部隊だ! こっちに真っ直ぐ向かってきてるぞ!」
そう。あの土煙の正体は敵の機甲部隊であった。しかもかなりの数であり、距離感から考えてもその何れもが重厚な戦闘車両だと今更にして気付いたのだ。
それを聞いた彼等はポカンとした。すぐには頭が理解出来なかったのだ。なにせ敵は近くにはいないと聞いており、先程の通信でもその可能性はないと言っていたのだから。
・・・敵?付近には居ないと言ってたじゃないか。しかも機甲部隊だって!?
頭が良くないと自覚してる彼等でも機甲部隊の恐ろしさは知っていた。
歩兵を圧倒する攻撃力と騎兵以上の俊敏さを誇る移動力。そして何よりも生半可な攻撃を弾き返す強靭な防御力・・・それはまさに歩兵達が恐れるべき存在だ。
味方ならば頼もしいが敵ならば死神と化す殺戮部隊。録な対戦車兵器を持たない彼等では何もすることは出来ない。
そこまで考えた彼等はようやく状況を理解した。いや、理解してしまったのだ。今がどれ程危険な状況なのかを。
いま自分達は見通しの良い平原におり、持っている武器と言えば手に持つ小銃と手榴弾のみ。
そして友軍は後方から数km離れており、今から走って合流しようとしても、先に敵の機甲部隊に追い付かれる。
詰んだ。誰もがそう気付いてしまった。
何故だ? 敵に機甲部隊がいるなんて聞いてない。そもそも近くにはいないじゃなかったのか!?
「何をボサッとしている!? 速く動かぬか!?」
軍曹の怒鳴り声が再度響き渡って彼等は動いた。しかし、涙目になって動きもたどたどしく、とても満足に動けるとは思えなかった。
そんな彼等の元へ第一の攻撃が迫っていた。
最初に気付いたのは、やはり一番視力の良い兵士の彼だった。
彼の目には充分な位には近付いていた敵の乗り物から何やら黒い謎の物体が数個、飛び立ったのだ。
それは敵の乗っている乗り物から見たら小型の飛行物体だが、それはぐんぐんと自分達の方へと物凄い速さで飛んできており、その飛行音が彼等の耳に入ってくるのに時間は掛からなかった。
「伏せろぉ!」
その飛行物体を見た軍曹が自分達にそう指示をしてきたが、そのすぐあとに彼等は爆発に包まれた。
先頭にいた視力の良い兵士は、それを凝視していたお陰か、その正体をハッキリ見ることが出来た。
(あれは飛行機? だが小さい・・・あんなの・・・あ、何かを落とした・・・)
羽を付けた物体は、高度数百mの低空で飛行しながら、胴体から何かを投下したところまでを見て彼は爆発に身を包まれて絶命した。
第2戦闘団のドローン部隊による爆撃。対人用爆撃を搭載したドローンは最前列にいた10人程の兵士に向けて投下した。
「効果を確認をしました。続けて投下します。」
「おう。」
車内に設置したタブレットを見ていた幕僚からの報告に池田はつまらなそうに答えた。
装甲輸送トラックから発射された5機のドローンは胴体部分に10kg爆弾を投下する固定翼機タイプで、それをあと4回繰り返した。
1発が半径10m以内への殺傷能力を持つ威力で、それをあと4回も投下するならばあの小隊規模の敵は全滅出来るだろう。
「俺達はこのまま向こうの歩兵大隊を潰したら敵本隊の後方へ回り込むぞ。」
池田はそう言うと今度は楽しそうに表情を歪ませた。
「既に野郎共の大半はハマ山岳に入ってる。そこで退路を封じる。」
敵の通信は既にこちら側のジャミング装置で魔心は遮断されているから、向こうは自分達の存在を察知するのは大分先になる。
そして池田はあらかじめ高高度偵察機でこの先の歩兵大隊の本隊を直接画面で確認して、彼は確信していた。
(本隊の規模から輸送トラックの数が少ねぇ。やはり奴等は補給は受けていない・・・しかも敵の偵察もお粗末だ。 既に連中の連絡体制に乱れが生じてるな。 ならやることは1つだ。 敵の主力を潰す。)
池田は人生初の実戦を前にして興奮を隠さずにいた。
「先頭の戦車連隊共に通達だ! お前等は歩兵大隊は蹴散らした後はその先にいる敵も蹴散らしてこい! お前らの獲物は敵の機甲部隊だ!」
池田からの指令を受けた第17戦車中隊は90式と第2装甲大隊の装甲車を含んだ部隊はそのまま速度を上げてその先の歩兵大隊へと向かった。
突如として前方を進む小隊からの通信が途絶えた事に困惑していた大隊本部は、前方からの轟音と衝撃波に大混乱状態となった。
大隊本部の前方数kmを進んでいた歩兵中隊の列が爆発に包まれたのだ。
センゲル平野に突如として現れた敵の機甲部隊は全く襲撃に備えていない歩兵を次々と蹴散らしていき、その先にいる大隊本部へと真っ直ぐ突撃してきた。
大型の戦車部隊とそれらの脇を守る装甲車部隊に度肝を抜かれた彼等だが、すぐに対戦車兵器を持つ部隊を前に出して迎撃体制をとる。
しかし敵の機甲部隊は射程距離外から精密砲撃をしてきた事でその計画は破綻した。
指揮官は前方の光景を見て空いた口が動かなかった。
「何故だ! あの距離であんな馬鹿げた命中率はなんなんだ!?」
信じられなかった。敵は強力な機甲部隊を有しており、大した性能ではないと聞いてきた戦車は彼等の知る戦車の射程距離を大幅に越えた距離で砲撃を行い、あろうことかとんでもない確率で命中弾を量産していった。
対戦車兵器である対戦車砲や、対戦車投擲射機を装備した部下達が次々と砲撃で地に伏していく。
運良く戦車の砲撃から逃れた者もいたが、そんな彼等を掃討する為に、敵の装甲車が動き回って攻撃してくる。
気が付けば彼が指揮する歩兵大隊は壊滅的な状態になっていた。
「魔信はまだ繋がらんのか!? 速くしろ!」
指揮官は側にいた通信兵にそう怒鳴るが、当の彼も訳が分からないといった様子で必死に通信機を操作する。
「駄目です!どの出力波を試しても繋がりまそん! これは外部からの妨害が出てるとしか思えません!!」
「外部からだと!?」
指揮官はそこで、まさか日本が妨害しているのかと考えた。魔力の無い彼等が何かをしたのだろうと。
だが、大した魔法技術を持たない彼等がどうやってそれを行ったのかが分からない。
日本では敵の通信を妨害するためのジャミング技術を保有している。そしてそれは魔信にも効果があるということも確認済みだ。効果範囲こそは無線と比べると限定的になってしまうのだが。
傍受が可能ならば妨害も可能だろう。日本がそれに気付くのに時間はそんなに要らなかった。
そしてこの指揮官がその答えに辿り着く時は来なかった。颯爽と突撃してくる90式戦車の砲撃が彼の足元へと着弾したから。
ジュニバール帝王国 第202歩兵大隊 全滅
死体の道を造り上げた第2戦闘団はそのままの勢いでセンゲル平野を駆け巡る。
歩兵大隊を殲滅した彼等はその付近に展開していた多数の部隊を短時間で撃破し続けていくと、
「第3戦闘団より入電、ハマ山岳で敵の大部隊と交戦に入った模様。 5000前後の敵部隊が既にハマ山岳へと入ったようです。」
池田の元へそう報告が入る。
「そうか。 俺達はこのまま敵の機甲部隊を叩く。」
「敵の司令部は叩かないので?」
幕僚がそう聞いてきた。敵の前線司令部を叩けばその周辺の部隊は孤立するだろう。
「それは後だ。 敵の主力が先だ。 そろそろ向こうもこっちに気付くだろうしな。」
既にこの数時間の間に池田はセンゲル平野の後方に位置する敵部隊の殆どを撃破していた。
池田は次々と舞い降りる報告から、敵の詳細な場所と行軍ルートを正確に予測して最短距離で敵を各個撃破していたのだ。
とっくに敵の後方は丸裸になっていたのだ。
そして池田は次の指示を出す。
「こっちのジャミングを一時解除させろ。 向こうに後方の状況を把握させてやれ。」
「それは・・・敵をこちら側へと集中させる狙いですか?」
司令部の後方ががら空きだと悟れば、ハマ山岳に展開させていた部隊を護衛の為に戻さねばならないだろう。そうなれば貴戸達の負担が減る。
もし、この考えが正しいならば幕僚は池田の事を少し見直す。
「そうだ。貴戸の野郎に手柄は出してやんねぇよ。 機甲部隊は俺のもんだ。」
違った。コイツは手柄が欲しいだけだった。本当に同じ日本人か?
そう気を落とす幕僚をよそに池田は地図に視線を落としてこう続けて指示を出す。
「機甲部隊を潰したら、すぐに全隊を纏めて反対側へと向かうぞ。」
「すぐにですか? 補給は・・・」
センゲル平野にいる敵機甲部隊は小規模ですぐに倒せるとは思えるが、既に一連の戦闘で第2戦闘団は多くの物資を消耗していた。
普通ならば補給をするが、池田はぶっきらぼうに答えた。
「するに決まってるだろうが。 全速力で移動しながら補給するんだよ。 何のために加藤がいると思ってるんだ。」
このバリアン大陸にいる全戦闘団の補給を担当する後方支援隊の加藤大佐について言及するが、幕僚は続ける。
「い、一体どこまで行くんですか?」
そう聞かれた池田は地図を彼に見せて指を指した。
その指が座す場所には、ここから200km離れた場所にいるガーハンス鬼神国の駐屯する都市国家があった。
「俺の狙いはジュニバールじゃねぇ、ガーハンス共だ。」
池田はそう言って楽しそうに笑った。
もうちょっと細かく書いても良かったかな・・・
あと外伝とか投稿するべきか・・・




