第78話 初めての東京
第78話 初めての東京
バフマン王国に向けて出された日本政府が手配した避難船の船内アナウンスが椅子に座っていた木花の耳を撫でるように流れた。
『ご搭乗の皆様にお知らせ致します。当船は間もなく東京湾港へと到着致します。お忘れ物の無いようにお気をつけ下さいませ。』
そのアナウンスを聞いた乗員達は荷物を手に持ち船を降りる準備をした。それに木花も準備をするが、その前に隣に座るアリアに声をかけた。
「・・・お嬢様、到着しましたよ。」
「・・・分かった。」
声を掛けられたアリアは閉じていた瞼を開いてそう木花に返したが、彼女の表情は暗いままだった。
日本人ばかりの船内で彼女は目立たない様に金髪を綺麗に纏めてしまっていた帽子を再度、被り直したアリアは俯いた姿勢のまま瞼を閉じてしまう。
そんなアリアを反応を見た木花は、軽い溜め息を吐いた。
まだバフマン王国から発っての初日に比べれば遥かに落ち着いていたが、流石にこの数週間もの航路で経過すれば彼女の心情は安定している事に安堵するべきだろう。
だが木花にとっていま最も考えるべき事は今後の身の振り方であろう。
何せいま自身は日本の裏社会から追放され、追われの身となっているのだ。しかも表社会でもあの号外新聞のせいで表舞台に出ることもままならない。
幸いにもあの号外新聞の写真では木花の顔を全体までは写っては居なかったのである程度の誤魔化しは効くだろう。
だが問題は武竜会に自分の生存が認知された事だ。恐らく、いや確実に武竜会の手の者が既にこれから降りる港で監視しているだろう。
それを同船している12番達に念のため確認したが、「問題はない」の一点張りであった。
(隣のお嬢様もずっとこんな調子だし・・・本土に戻ったところで大丈夫か?)
木花がそう心のなかでぼやいていると、船内の通路から地味な服装に着替えた12番が後ろにオタクを連れて来たのが見えた。
「準備は出来たか?なら俺達に着いてこい。」
その言葉を聞いた木花は、今も俯いているアリアを立たせて2人に着いていった。
船内の通路を歩いて甲板へと出たことで街並みが一望できるので木花は後ろにで未だに俯いていたアリアに声をかけた。
「お嬢様、顔を上げてみてください。 ここが日本の首都ですよ。」
その声にようやく顔を上げたアリアは、甲板から見える東京を視界に入れた瞬間、彼女の瞳はこれでもかと言わんばかりに大きく開いた。
「あれが・・・トウキョウ?」
形のよい唇を僅かに震わせながらそう呟いたアリアは、目の前の光景を前にしても信じられない表情で見上げた。
甲板からでも充分過ぎる程に、その威容を訪れた者すべてに知らしめる様な見たことのない摩天楼の群れ。
日本のあらゆる分野の中心地である東京の超高層ビル郡は、傷心状態であった彼女を一時とは言えども忘れさせるには何も問題はなかった。
そんな彼女を傍目に、船はいよいよ港に停泊を完了した。
次々と乗船していた乗客達は荷物を片手に愛しの祖国の地を踏み締める彼等を一瞥した12番は懐から2つの小さなケースを取り出して後ろの木花とアリアの方へ振り返り手渡した。
「2人ともこれを掛けておけ。」
「?」
手渡されたケースを2人は何が入ってるのか確認する為にそれを開けて中身を見た。
「眼鏡?・・・なぜ急にこれを?」
2人が確認した中身は眼鏡であり、木花はこれといって特徴のない至って普通の眼鏡を渡した理由を聞いた。
「それは普通の眼鏡では無いぞ。 正確に言えばそのレンズに意味がある。
2人が持つ眼鏡レンズには特殊仕様でな。それを掛けておけば監視カメラの顔認証システムを阻害させてくれる。
アリアは兎も角、木花、お前の顔は既に武竜会のブラックリストに載せられている。ここでは俺の許可があるまではそれを外すな。」
その説明に木花は納得した。確かに武竜会ならばこの港はおろか、日本中のあらゆる監視システムに侵入できる抱かえのハッカー集団を使って自分を探すのも苦ではないだろう。
しかし本当にこれを掛けるだけで、監視カメラを無効化出来るのか、不安は残るのも事実。
その心情を木花の顔をみて察したのだろう、12番が補足説明をした。
「まぁ、それも完璧ではない。監視カメラとレンズとの角度によっては万が一の事もある。
だからなるべく監視カメラの無い所を歩くから俺達から離れるな。」
「ついでに港にいる武竜会の人間らしき連中も此方である程度の目星は着いてるから、安心しな。」
最後にオタクが携帯を弄りながら言った。
因みにアリアは、木花達との会話に全くついていけず、頭がこんがらがっていた。
「し、しすてむ? かんしカメラ? いったい何の話をしているのだ?」
「・・・後で説明しますお嬢様。 さぁ行きましょう。」
混乱しているアリアを連れて木花達は遂に日本の地を踏み越えた。
日本の地を踏み締めた喜びを感じる間もなく、一行はすぐに帰国の手続きの為に行列に並ぶことになる。
木花、特にアリアはパスポートの類いを持っていないのだが、12番から事前に用意してくれていた偽の身分証明書一式を持って列に並ぶ。
慣れぬ眼鏡を掛けている事や、名家の娘ともあり、行列に並ぶことに新鮮さを覚えているアリアに12番が小声で話しかけた。
(・・・アリア、お前はあの6番の入国審査官の方に行くんだ。 見えるか?)
アリアは12番が指差す方向を確認して頷いた。
(あぁ、あそこに行けば良いのか? ・・・しかし何故だ?)
(6番の審査官は、うちの職員の人間だ。部署は違うんだが、既にお前の事は伝えてある。
だから編に緊張することは無いぞ。
・・・あと、身分証の中身は確認したか?念のためもう一度確認しとけ。)
(分かった。)
アリアはそう言うと持っていた身分証の中身を読み直した。
事前に木花が手書きでバフマン文字でふりがなを振ってくれていたので日本語に苦悩することなくもう一度内容を確認した。
内容はアメリカ人の留学生で同じく偽の身分証でカモフラージュしている木花の同行者としてバフマン王国に入国したことになっている。
(・・・あめりかとは、そなた達の世界の国のことだな?)
バフマン王国に居た頃に木花から聞いたことのある国名が記載されていたので思わず12番に確認した。
(そうだ。アメリカは移民国家だからな。 お前の顔立ちから、全く疑問を持たれる事はない。
今後、この国で誰かに出自を聞かれた際にはその国の名を挙げろ。)
日本人にしてしまうと金髪の彼女の事を疑問に思う輩が表れるが、アメリカなら殆どの人間は納得するだろう。
「次の方どうぞ。」
そう会話している内に遂にアリアの番が来たので、彼女は指示通りに6番の表示がされている入国審査官の方へ向かった。
「パスポートを出してください。」
そう入国審査官はぶっきらぼうに指示されるが、アリアはすぐにパスポートを提出した。
入国審査官はそれを受け取って手慣れた動作で中身を確認して、その怠惰の感じ取れる、しかし鋭い視線を彼女に向けた。
「・・・そうか、貴方が例の・・・」
そう入国審査官は小さく呟くと、手前にあった固定電話を取って、誰かと一言二言話すとすぐにアリアの方へ視線を戻してパスポートを彼女に返却した。
「ようこそ日本へ。 これからの旅の武運を祈ってます。」
「・・・感謝する。 確認するのは、ぱすぽーとだけで構わんのか?」
アリアはそれ以外に持っていた書類を審査官に見せるが、彼は向こうにいる12番に視線を向けながら答えた。
「それらはここでは大丈夫ですよ。 ですがそれは今後の我々の仕事で使う物です。 失くさないようにお願いします。」
「承知した。 感謝する。」
アリアはそう言うとすぐに彼の前から移動した。その後ろ姿を審査官は横目で見送った。
「 ・・・えらく態度が大きかったな・・・次の方どうぞ。」
「ふぅ・・・」
建物から出て何とか無事に入国審査を終えたアリアは緊張を弛める為に深く息を吐いた。その際に眼鏡の位置が僅かにずれたのですぐに位置を修正する。
それもあり緊張がある程度とけた所でアリアは東京の景色を見渡した。
「凄い・・・これが列強国なのか・・・」
いま彼女の前には、異世界の国に相応しく全てが見たことのない光景が広がっていた。
あらゆる物を照らし続けていた太陽の光を遮させる程までに高く建てられた建物。
見上げるが無表情とも捉えれる無骨なコンクリート製の高層ビルもあれば、遮っている筈の太陽光を逆に地上に照り返しているとも言える窓の壁で造られたビル。
だが、彼女が驚くべき点はこのビルだけでは無かった。
彼女が立っているこの地上も、ソウバリンすら霞むほどの人だかり、そしてバフマンでは列強人のみが許された自動車が、ここでは数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の鉄の群が、時には妙に甲高い音を出しながら走り回っていた。
人間に過ぎない存在が文明をここまでに発展させる事が可能なのかと、まるで文明の最高到達点に到着したのではないのか、そう彼女に思わせるには充分過ぎた。
そんな田舎者よろしく、周囲をキョロキョロと落ち着きなく見回す彼女だが、手続きを済ませた木花が声をかけることで、それも終わりを迎える。
「どうです? 列強の首都を見た感想は。」
その言葉にようやく、自身が祖国ではどこにでもいる田舎娘と同じことをしていることに気付いたアリアは慌てて木花を見た。
「っ! あ、あぁ・・・本当に見事なものだな・・・バフマンでもいつか、こんな光景を見る日が来るのだろうか・・・」
そう口に出した彼女だが、心のなかでは無理なのでは、という考えがよぎる。とてもじゃないがどれだけの時間と金を掛けても、この都市のように発展させるとは思えなかった。
そんな悲観的な考えがよぎってしまい表情を暗くするアリアだが、彼女の心境を察した木花がこう言った。
「そこに人がいる限りは、文明は進み続けます。 いつかお嬢様の国にもこれと同じ光景を見る日が来ますよ。」
「・・・そうだな。 礼を言おうキハナ。」
木花の言葉に、アリアは笑みを溢しながらそう感謝の言葉を言った。それに木花も口元を緩ませる。
その様子は部外者が見れば恋人が仲良さげにしていると見える2人の姿に遅れてやってきた12番が声をかける。
「2人とも無事に完了したようだな。 こっちだ。オタクが車を用意してる。」
12番はそう言うと、1番先に手続きを終えたオタクの用意する車の方へ案内をした。
「そう言えば他の者達はどうしたのだ?」
そこでアリアは、12番とオタクの同僚達の姿が見えないことに気付いて聞いた。
「アイツ等は港でマークした武竜会の監視と陽動をしている。 少なくともまだお前達がここに来たことはバレてないだろう。」
「そうは言うが、本当に大丈夫か?」
一応、木花とアリアは眼鏡とマスクに帽子で顔全体は隠してはいるが、武竜会の恐ろしさ良く理解している木花の言葉に、12番が答える。
「安心しろ。零課は武竜会と長年いがみあってきた部署だ。 ある意味では連中の天敵みたいなもんだ。」
「天敵ね・・・」
そう話している内に、運転席に座っていたオタクが木花達を見つけたので窓を開けて軽く手を上げた。
「あまり目立たないように言ったろ・・・」
そんなオタクに対して、12番はそう呟くが、すぐに気を取り直して助手席のドアに手をかけた。
「2人は後部座席に座ってくれ。」
それに木花とアリアは頷いた。しかし初めての自動車に困惑しているアリアを見て、木花はすぐに後部座席のドアを開けた。
「どうぞお座りください。」
そう自然な動作でエスコートをしてくれた木花に、アリアも平常心を取り戻した。ようは馬車と同じ要領でいいのだ。
「ありがとう。」
後部座席に座ってからそう言うアリアを、木花は静かにドアを閉める事で返答とし、そこから反対側の席のドアを開けてアリアの隣に座る。
「んじゃ、出発しまぁす。」
全員が乗った事を確認したオタクは自動車を前進させて東京の道を走った。
「ほぉ・・・」
馬車よりも速く走行しているのにも関わらずに、窓から外の景色をいつまでも見ても人と建物が絶えず視界に映り続ける事にアリアは思わず感嘆の息を漏らす。
彼女としては珍しくその年相応の姿をサイドミラー越しで見た12番は、アリアに話し掛ける。
「この街も大したもんだろ? 日本人ですら地方から来た連中なら同じ反応をする位だからな。」
それにオタクも参加した。
「地震の多い国なのに、良くこんなに沢山のビルを建てたもんだよねぇ。」
「地震だと! だ、大丈夫なのか?」
地震という単語に、アリアはすっきょんだ声を出してしまう。もしそれが事実ならばいまの自分達は非常に危険な状態にある。
そんな彼女の反応に、木花が安心させるように言った。
「大丈夫ですよ。 日本の建物の耐震性能は元の世界でもトップクラスでしたからね。そうでなければ今頃、この辺りは更地ですよ。」
「そ、そうか。 そうだな・・・その通りだったな。」
冷静に考えれば、確かに対策をしてるからこその今の光景があることに気付いた彼女は僅かに顔を赤くして外を見る。
「だが馬鹿みたいだろ? 本来だったら、この国に200m以上の建造物なんて必要ないからな。 それなのにこの街には400m級以上の建物がゴロゴロとある。」
「・・・何故、これ程までに高い建物がたくさんあるのだ?」
「これは俺等よりも1つ上の世代の話なんだがな・・・一時期、この国の土地代が高騰した時代があったんだ。それも凄い勢いでな。」
「その結果、余りにも土地代が値上がり過ぎたから少ない土地を有効活用しようと高層ビルを大量に建てたんだ。」
12番とオタクの説明に彼女は理解した。
「そういう事か・・・だから、あんなにも高くなったのか・・・」
アリアはそこで500m級の超高層ビルを見つめた。そんな昔からあそこ迄に高い建造物を造るだけの技術力があることに呆れたが。それに気付いた木花が言った。
「正確に言えば、お嬢様が見ている超高層ビルについては違う理由があります。」
「なに?」
「あぁ・・・確かにそうだな。 詳しく言うとだな・・・そのあとに余りにも土地代が上がり過ぎた結果、今度はその土地代が下落しちまったんだ。 いまアリアが見ているビルはその時期に建てられた物だな。 俺達が言っていたのはあそこの建物だな。」
12番はそう言うと正面に見える先ほどとは高さの低い200m級のビルを指差した。
確かに先程まで見ていたビルと比べると低いが、それでもアリアにとっては常識外れの高さだ。
「何故なのだ? 土地代が下がったならばそれ以上に建物を高くする必要は無いではないか。」
理解できないといった様子のアリアに、オタクが説明した。
「そこが肝なのさ。 キッカケを作ったのは『小島グループ』、この国の最大の財閥さ。」
「・・・?」
「当時の『小島グループ』の社長、そして現グループ会長が低迷した日本経済を建て直す為に超高層ビル郡の大規模建造を発案したんだ。
奴の総資産の殆どを費やしてな。」
「その結果、今度は商業的価値を見いだした他国の大企業が東京に集まって、世界的な国際ビジネス都市になったんだ。
今は殆どが日本企業だけど、当時の超高層ビルの多くは海外企業が保有してたんだよ。」
「・・・専門家曰く、あの時のグループ社長が居なければ、この国の経済は今後数十年は停滞していたらしい・・・難かには信じがたい話だけどな。」
「ひょっとしたらバブルみたいに経済が弾けていたかも、という危険性があったと良くニュースで騒いでいたな。」
因みにその時の高度経済成長時代は、史実とは違ってバブル経済という名称は存在しない。
弾ける程の停滞が起こる前に持ち直すことに成功したからだ。
そんな彼等の説明に、アリアは少し混乱しながら反応する。
「・・・つまり、今のそなた達の国はそのコジマグループによって経済を握られているという訳か?」
そのアリアの言葉に12番は感心したように表情をうかべた。
「おぉ、良いところに気付いたな・・・その通りだ。 今の日本の経済はそのグループ一強によって成り立っているようなものだな。」
「一応、他の財閥や大企業もいますが、あのグループと比べると、見劣りしますね。」
車内が難しい経済の話になっていくのを、運転していたオタクが空気を変えた。
「あぁ! 止め止め! 経済の話なんてもう良いでしょうが!」
そこでオタクは車のラジオを付けて話題を変えた。しかしそのラジオのニュース内容に一同は表情を変える事となる。
『ザザザザッーーー 次のニュースです。
本日、国防省は日本経済圏にあるバリアン大陸に国防軍を派遣した事を正式に認めました。
このバリアン大陸は現在、大陸にいる日本人を不当に身柄を拘束しているとの情報が入っており、国防省は捕らわれた日本国民を保護する為に派遣したとのことです。
しかし派遣する規模や日時等の詳細は依然として公表されておらず、野党からは内閣の説明責任を果たして居ないとして批判が寄せられております。
また、先月より人工衛星から確認されていたジュニバール帝王国、ガーハンス鬼神国等の魔法文明諸国の軍艦と思われる艦隊が日本経済圏へ向かっている事と何か関連があるのではないかと推測されておりますが、日本外務省は本日の正午、『両国からの宣戦布告はされておらず、軍事衝突の可能性は低い』と見解を示しております。
また日本政府は観測衛星からの世界マップの更新を先月から停止にしている件について、『システム的な不具合による問題』と説明されておりすが、これに野党からは意図的に政府が情報を隠蔽していると非難の声が寄せられておりす。』
「これは・・・」
ラジオの内容に木花はそう眉をひそめて呟いた。
「まぁ今、マップの更新なんてしたら不味いもんねぇ。」
公安からある程度の外の状況を聞いていたオタク達はこの報道の裏側を察した。
「今ごろバリアン大陸近海には列強がウヨウヨしているだろうな。」
「そう言えばそのバリアン大陸に向かった軍ってあの『鬼の師団』なんでしょ? 大丈夫なのかなぁ・・・あんな禿げに。」
オタクは公安が行う国防省幹部の思想調査の結果を同僚から聞いており、そのお陰で鬼導院中将についてある程度は把握していた。
「まぁ、無能な奴を送る訳が無いだろう。」
12番のそんな呟きとも言える言葉を皮切りに車内は思い空気に支配された。
バリアン大陸 ノル・チェジニ港
ここバリアン大陸西部で数少ない設備の整った港では、日本国防軍の第14師団が全ての部隊の上陸を完了して基地の構築を行っていた。
そんな構築途中の基地を鬼導院中将は、背後に加藤大佐を引き連れて歩いていた。
「部隊の上陸は滞りなく完了しました。後は持ってきた物質の荷下ろしが残ってますが・・・」
途中で口ごもる加藤大佐に鬼導院中将は視線を後ろに向ける。
「まだ時間がかかるか?」
「はい・・・」
「理由は何だ?」
最初の部隊が上陸してからそれなりの日時が経過しというのに、荷下ろしにまだ時間がかかる理由を聞いた。
「最大の理由は、この港の積載能力の限界ですね。 他の大陸のマトモな港の半分以下の能力しかありません。」
これが本土の港ならばとうの昔に全ての準備が整っていたものだが。
「ならば先に弾薬と燃料を1会戦分の量を先に確保しろ。」
「・・・承知しましたが、何の為です?」
「1番先にやるべき仕事を終わらせる。
おい、青井大佐を呼んでこい。」
鬼導院中将の言葉に加藤大佐は不安げに見つめるが、彼はそれを気にも止めずに護衛の隊員に指示を出した。
「我が国の国民を拉致してる糞共の元へ向かう。 池田の部隊に連絡しろ。」
「ど、どのように?」
「そんなの決まってる。 完全武装して奴等の街まで乗り込む。」
彼がそう言い終えた瞬間、彼の前を90式戦車の列が通った。
次回からは列強諸国と鬼導院中将等との話をメインに入ってきます。
遂にここまで来れた・・・速く派手なシーンを書きたいものです。




