第75話 号外
第75話 号外
バフマン王国 王都ソウバリン
「号外だっ! 号外だよ!」
人混みの混み合う石畳の大通りで新聞配りで生計を立てている子供が持てるだけの一杯の新聞紙を投げるように配っていた。
ここ最近、連日として号外が発行されているので街の住民達は、またか…、と気疲れた反応で道に落ちた新聞紙を拾って読んだ。
今度はどの保守派の要人が失脚してどの改新派がそのポストに収まったのか、そういった興味で読んでいく人々は、次第にそういった種類の号外ではないことに気付いて、読んでいる新聞紙の内容が間違いでは無いことを何度も確認する。
やがて、それが間違いでは無いことを確信すると、呆然としていく人々。そのうちの1人が唖然とした声で呟いた。
「なんて事だ・・・」
彼等が読んだ号外の内容とは・・・
日本国 東京 スモールアイランドタワー
日本最大の財閥である『小島グループ』の本社の通路を1人の壮年の男性が歩いていた。
その男性は通路の各要所に配置されている警備員達を横目に、興味深そうに眺めながら、この階の最も警備が厳重である部屋へと入り、その先にいる黒檀の椅子に座っている人物へ深々とお辞儀をした。
「社長、バフマン王国に関する情報を持って参りました。」
社長と呼ばれた男、日本最大にして、この異世界においてもトップクラスの資産を保有している『小島グループ』最高責任者 小島宗次郎は目の前の男性に視線を向けて、彼が持っている物を見て苦笑いをした。
「はは・・・この時代に紙か? しかも室長ともあろう男が、態々手渡しだとは・・・」
その社長からの言葉に、宗次郎の側近である遠藤義純室長は表情を変えることなく持っていた書類を渡した。
「これらは機密情報です。流出の危険性を考えれば、手渡しが最も信用できる手段です。 それを承知の上で私に国防省から受け取れと指示したのでは?」
「最もだな。 年を食った爺からしたら、それが1番単純で堅実であるな。」
宗次郎はそう言ってその書類を受け取り中身を読んでいく。
その間を遠藤室長は、この部屋に入るまでの警備員達の装備を思い返していた。
そんな遠藤室長の考えを敏感に感じ取った宗次郎は、書類から目を離して、彼に話し掛けた。
「やはり君も気になったか? あの警備員達に。」
「警備員ですか?・・・もはや彼等は・・・」
警備兵と呼称した方が妥当なのでは? そう遠藤室長が言うと、宗次郎は上機嫌に笑った。
「警備兵か・・・確かにな。 そっちの方が分かりやすくて良い。」
宗次郎はそう言うと、机の上に置かれた監視モニターの方に視線を向けた。それに連られて遠藤室長も一緒にそのモニター画面を見た。
そこには、この本社ビルの重要階やロビー、そしてこの部屋の通路の警備状況が映し出されていた。
この本社の1階にあるロビーには、多数の職員や来客が歩き回り、そんな中を警備員達が険しい眼差しで警戒にあたっていた。
ロビーにいる警備員達は警棒や無線機等の一般の警備員達と変わらない装備をしていたが、この2人が話しているのは当然ながら彼等の事ではない。
2人の視線は、そこよりも上階にある警備レベルの高い場所に配属されている警備員達が映っているモニター画面の方を見ていた。
その画面には、転移以前の日本であればまず有り得ない光景が映っていたのだ。
軍人が装備する様な防弾装備を身に付けて、腰には自動拳銃と軍用ナイフが、そしてその両手には軍用ライフルを持って警戒をしている屈強な警備兵達が多数、映っていた。
遠藤室長は、そんな彼等の装備を注視してこう問い掛けた。
「いつの間に、あれだけの装備を用意していたのですか? しかも国防軍の物とは違うように見受けられましたが・・・まさか新装備ですか?」
彼の目には、日本国防省が採用している国防隊員の装備とは素人目でも分かる位には違いの大きい警備兵の装備に興味がそそられた。
「新装備なのは間違いない。 だが、あれは国内向けでは無かったのだがね・・・」
そんな宗次郎の言葉に、何かを察した遠藤室長は納得したように頷いた。
「あぁ、そう言う事ですか・・・紛争以前から社長は軍事分野に手を出そうとしてたんですか? 輸出予定先は何処の国だったんです? 韓国ですか? それともオーストラリア? ひょっとしてアメリカですか?」
遠藤室長は中国軍との紛争後の『小島グループ』の軍事企業の買収が迅速に行われていた事に疑問を抱いていたが、その理由を知る事が出来た。
興味深そうに候補国を上げていく遠藤室長の答えに宗次郎は首を横に降った。
「残念ながら全て違う。 あれらの装備は欧州に輸出する予定の物だ。 正確に言えばポーランドやドイツに・・・ウクライナさ。」
「欧州・・・では中国への牽制ではなく、ロシアに対応する為ですか?」
「そうだ。 ロシア軍によるクリミア半島占領以降、ロシア軍の動きは活発している。 それに先んじて動いていたんだがね・・・あの転移のお陰で輸出先が途絶えてしまった。 だが不幸中の幸いか、民間企業による武装法案が通ったわけさ。 今後も更に装備は増えるだろう。
・・・もしかすると今頃はウクライナと戦争をしているかも知れないな。」
「その様子ですと、歩兵装備だけでは無さそうですね。 民間企業による装甲車使用に関する法案が国会に提出されたと聞きましたが、それと関係ありますか?」
そう聞いてくる遠藤室長に、宗次郎はモニター画面を消した。
「じきに分かるさ・・・さて、本題に戻ろう。バフマン王国の状況はどうなってるか?・・・」
宗次郎は書類の続きを読み始めた。遠藤室長は読み終えるのを暫く待っていたが、宗次郎はその途中で再び読むのを中断した。
「・・・バフマン王国の各地で現地人が武装蜂起、各国が軍を出して鎮圧を行っている様だが、首謀者と思われる冒険者連中は未だに姿を現していないようだな?」
「更に言えば、列強の装備を纏った現地人勢力もあの暴動以降、全く姿を確認出来ていないようです」
「人工衛星からでも発見できなかったのか?」
「その様です。不気味な位に見つからないのだとか。 戦闘車両も保有していたので隠すのは困難だと思うんですがね・・・」
その報告に、宗次郎は訳が分からないといった表情をして最後の書類の内容に目を通して固まった。
「これは・・・間違いないのか?」
思わず最後の書類の内容の真偽を遠藤室長に確認するが、彼は真実だと言うことを肯定した。
「書類に添付されている写真の通りです。先程、現地の大使館から緊急の内容で送られた物を入手しました。 どういった経緯かは不明ですが、その内容の新聞記事がバフマンの首都で号外として貼り出されてます。
他の列強諸国もすぐに食い付くでしょうな。」
その言葉に宗次郎は座っていた椅子の背凭れに背中を預けた。
「・・・これは一悶着あるな。 列強諸国は一気に疑いの目をこの国に向けてくるぞ。」
「既に列強諸国の駐日大使が動いています。列強だけでなく各列強の息の掛かった準列強国は勿論のこと、高度文明大国までもが外務省に押し掛けていますよ。」
「動きが速いな。」
「後ろ楯がある連中はいつもそうですよ。」
遠藤室長の言葉を聞いた宗次郎は目の前の黒檀の机に置かれている呼び出しボタンを押した。
『こちら秘書室です社長。』
すると隣の部屋にいる秘書官から通信が入ったのを確認した宗次郎は指示を出す。
「すぐに外務省とアポを取ってくれ。 大臣クラスと会談をする。」
『畏まりました。』
通信が切れたのを見た遠藤室長は、深々とお辞儀をして、宗次郎に声をかける。
「それでは私はこれにて。」
退出する遠藤室長を見送った宗次郎は椅子から立ち上がって、机の上に置いてある書類の写真を睨み込んだ。
「・・・この若造は何者なんだ? まぁ、何にしても状況を複雑にしてくれたんもんだ。」
彼が睨んだ写真には、抱き締め会う2人の男女が映っていた。そしてその書類にはその写真の詳細を説明する文章が載っていた。
その内容は・・・
日本国 広島県 武竜会支部事務所
日本最大の犯罪組織である武竜会の支部事務所の1つである建物のとある室内に1人の壮年の男性がスーツ姿で座っていた。
「・・・何だって執行部が俺を呼ぶんだ?」
そう壮年の男性もとい、五十嵐銀三郎は窮屈そうに絞めていたネクタイを僅かに緩めた。
そのタイミングで扉がノックも無しに開かれる。ノックも無しに開けた人物を軽く睨み付けようとした五十嵐だが、その正体を見た五十嵐は少し目を見開き、慌てて椅子から立ち上がった。
「こ、これはお疲れ様です!」
普段の五十嵐を知ってる者ならば、そんな彼らしからぬ反応に新鮮な感覚を覚えるであろう。
深々と頭を下げる五十嵐を見た、男は軽く片手を上げて返礼をし、この部屋の上座にあたる椅子に座って五十嵐に座るように促した。
「おう、まぁ座れや。」
「へ、へい。失礼します・・・」
恐る恐るといった様子で座ったのを確認した男は、懐から煙草を取り出して口に咥えた。
「どうぞ。」
それを見た五十嵐は、すかさず懐からライターを取り出して上座に座る男の煙草に火を付けた。
「ん。」
火のついた煙草を満足そうに吸った男は、五十嵐を見た。
「辺境から帰ってきたばかりのお前さんを呼び出して悪かったな。 呼び出したのは内容が内容だからな。 こうして来て貰った訳なんだわ。」
そんな詫びの言葉に五十嵐はまたもや深々と頭を下げて目の前の男に言う。
「い、いいえ飛んでもございません! まさか執行部の方がこうして御話をして頂けるとは感無量です!」
五十嵐は額に冷や汗を流しながらそう言って、目の前の自身よりも年上の男に視線を向けた。
いま彼の前に座る男とは、構成員4万人以上を束ねている武竜会の方針を決める決定権を保有する執行部の1人であり、武竜会の直系組織である『猪名川組』の組長でもある猪名川由蔵だ。
そんな日本の裏社会で大物である男が五十嵐の前に要ることに彼は戦慄した。
確かに自身も直系組織である王神組に所属しており、その組長も執行部の1人ではあるが、当の自分はあくまでもその王神組の古参程度の立場であり役職なんて持っていない。
かつては突撃隊長を勤めてはいたが、現在は若手に譲っており、猪名川程の大物が何故、目の前にいるのかが分からなかった。
そんな五十嵐の困惑を知ってか知らずか、猪名川は話を続けた。
「先日の熊光組はまだ覚えているか?」
「それは勿論ですとも。」
五十嵐はそう忌々しげに頷いた。それを横目に猪名川は続ける。
「・・・あのバフマン王国だったか? そこで太田の馬鹿は現地人共に貴重な銃器を売り払い、あの撃ち合いの引き金を引いた、それがお前さんからの報告で間違いないな?」
「はい。その通りです。」
「そして太田は現地で死亡が確認され、その他の現地にいた組員等もあの暴動により全滅した、だったよな?」
「はい。 ついでに本土にいる熊光組の残党も解散させた上で警察に連行させました。 これで武竜会に害が及ぶことはないかと・・・」
「そうか。 熊光組は全滅した、それで良いんだな?」
五十嵐は妙な違和感を感じたが、それを無視して答えた。
「?・・・はい。それは間違いありません。」
それを聞いた猪名川は半分程減った煙草を灰皿に押し付けて五十嵐に1つの質問をした。
「お前・・・木花って奴は知ってるな?」
木花という単語を耳にした五十嵐は憎々しげに表情を歪めて強く頷いた。
「勿論ですとも。 あの生意気な若造は忘れる方が難しいです・・・しかし何故、あの餓鬼を?」
そんな疑問を浮かべた五十嵐に、猪名川は懐から写真を彼に見せた。
見せられた写真を見た五十嵐は、驚愕に表情を歪ませて、驚きの声を漏らした。
「こ、これは!?」
その写真には暴動の際に撮られたと思われる木花の姿が映っていた。
しかもそれには、五十嵐も見覚えのあった金髪のアリアと木花が何故か抱き締め合っている状態の写真であった。
(・・・何故この2人が? この人は俺に何のつもりで見せた?)
困惑する五十嵐を前にして猪名川は不快気味に持っていた煙草を投げ捨てた。
「熊光組の若頭 木花はまだ生きてやがるぞっ! 挙げ句の果てには、この写真に映っている女はあの国の宰相の娘ときた!
現地でこの写真を使った号外が貼り出されてるのは知ってんのかぁ!?」
そう怒鳴り声を挙げながら、机の上に置いた写真を何度も強く叩く。
「さ、さぁ・・・全く分かりません。」
急に態度を一変させる猪名川に驚きながらも五十嵐はそう答えるしかなかった。それに猪名川は更に気分を害した様子で言った。
「あのなぁ! 向こうでは日本人が反列強同盟と手を組んで武器を供給したって報道されてんだよ! 事の重大さが分かってんのか!? 若頭の安否も録に確認しねぇで帰国しやがって! お陰でいま執行部で緊急招集が掛かったんだぞ!」
「なっ!?」
五十嵐がそんな反応をすると、猪名川は頭を乱雑にかきむしった。
「はぁ・・・熊光組の馬鹿のせいで親分衆の家宅捜査が行われるようだ。
まぁそれで我々が不利になるような事は無いだろうが、速いとこ木花って奴を始末しねぇと公安共に捕まった時にゃあ、俺達にとって不利に動くのは間違いねぇ。 何だって自分達を切り捨てたんだからなぁ。」
「す、すぐさま現地に向かって始末を・・・」
「馬鹿野郎、あんな騒動の起きた国にどうやって入国するんだ? それよりも先に公安が動いて既に確保してるだろうよ。」
「こ、公安ですか? 警察とかではなくて?」
五十嵐はそう困惑した様子で聞いた。
「警察があの国での捜査権はまだねぇよ。 それにこういった大事では公安が動くって決まってんだ・・・あぁ、お前さん。『別班』は聞いたことあるか?」
「『別班』ですか?・・・あの都市伝説の?」
「都市伝説だと思うか?」
意味ありげな表情で言う猪名川に五十嵐は聞き返した。
「では実在すると?」
その質問に、猪名川は新たな煙草を取り出した。そしてすぐさま、五十嵐は煙草に火をつける。
「・・・昔の話だがな。 武竜会に潜入してた奴がいたんだよ。 当時の会長の屋敷に潜んでいたそいつを捕まえようとしたんだがな・・・馬鹿みたいに強かったよ。 何人もの手下共があっという間に殺された。
結局、奴の正体は分からずに逃げられた。」
猪名川はその時の記憶を思い起こすように五十嵐に話した。
「そいつがあの『別班』ですと?」
「・・・それは知らねぇ。 だがな、執行部の連中の間では、ある噂、があるんだよ。」
「ある噂ですか?」
「日本の裏社会を秘密裏に監視する謎の部隊がいる・・・そいつ等は決まった名前は無く、時には政治家共にまで牙を剥く存在だと。」
猪名川の荒唐無稽な内容に五十嵐は思わず胡散臭そうな表情をした。それに猪名川は機嫌を直したのか、何故か愉快気味に笑う。
「がははっ! 信じられないって顔をしてるな?」
「あ、いいえ! 失礼しました! そんな訳では・・・」
慌てて弁明をする五十嵐だが、そんなのはどうでも良いと言わんばかりの様子で続けた。
「まぁ無理もない。 殆ど情報は無いんだからな。 だがな・・・確実にいるぜ。 法律を完全に無視した部隊はな。 そいつ等は長年、俺達、武竜会に牙を向き続けている。」
「・・・それが公安にいると? 何故、分かるんです?」
「はははっ。理由なんてねぇよ。 ただ単に当時の執行部の1人がそう言い出したから、今も公安に所属してるって言い伝えてるわけだ。」
「は、はぁ・・・」
そんな適当で良いのか? そう思った五十嵐だが、木花の件を思い出して、慌てて猪名川に言う。
「そ、そうだ! あの木花はどうするんですか? 奴を消さなければ・・・」
「まぁ落ち着け。例の部隊が動いたなら木花って奴を本土に移送するだろうよ。 その時に木花を始末する。」
そう自信満々に言う猪名川に五十嵐は遠慮がちに言った。
「お言葉ですが・・・木花がいつ本土に移送するかなんて分かるんですか?」
「お前・・・この写真をどうやって入手したか分かるだろ?」
木花とアリアとの写真を指差した猪名川に、五十嵐は少し考えてから答えた。
「省庁に息の掛かった奴がいるので?」
「それもある。 武竜会の力を舐めて貰っちゃ困るぜ。 既に日本国内にある大小全ての港や空港には監視の目を付けてある。」
「で、ですが、それで木花がその部隊と共に居るのでしょう? その部隊と殺り合うと?」
「なんだお前? 武竜会には荷が重いって言いたいのか?」
「いいえ! ただ、私は武竜会がそんな大事をすると言うのは・・・」
「安心しろ。 武竜会にも秘密の戦闘員を隠し持っている・・・想像出来るか? 正規軍顔負けの装備と訓練を受けた組員がいると。」
猪名川の言葉に五十嵐は目を丸くした。確かに噂程度なら聞いていたが、それを執行部の役員から聞かされるとは思ってもいなかった。
「そればかりかじゃねぇ。 今や武竜会に膝を屈したマフィア共も動かす。」
そこで五十嵐は転移して祖国を失った海外マフィアを武竜会が吸収した話を思い出した。
「連中なんて信用出来るんですか? 特に中国人共なんてすぐに裏切りますよ?」
「馬鹿が。 それは下っ端連中のことだろ?俺が言ってんのは精鋭共の事を言っている。」
その言葉に五十嵐はある答えに辿り着いたようで、驚愕した反応を見せた。
「ま、まさか! 『九龍聖囂会』の事ですか!?」
九龍聖囂会・・・中国の最大犯罪組織であるチャイニーズマフィアの組織名であり、世界的にも強力な力を持っているマフィアだ。
そんな五十嵐の反応に、更に気を良くした猪名川は次々と組織名を挙げていく。
「それだけじゃない。ロシアの『ルスカド・メア』やアメリカの『ラコーレ・ゴッド』にメキシコの『ロバタニア・カルテル』、これら組織の狂暴な戦闘員を武竜会は手に入れたんだよ。」
(どれも各々の国内最大組織じゃねぇか!? しかもロシアの『ルスカド・メア』だと!?)
五十嵐は心の中で戦慄をした。これらの組織は武竜会クラスの強大な力を持っている犯罪組織であり、特にロシアの『ルスカド・メア』はロシア政府が肩入れしている世界最強のマフィア組織だ。
しかも『ルスカド・メア』が配下としている構成員の中にはソ連時代の特殊部隊が大勢所属しており、その彼等が育て上げた戦闘員がいる。
そんな彼等の武装と錬度は『並の特殊部隊と同等かそれ以上』の評価を受けている事で有名だ。
それを知っている五十嵐は全身から冷や汗を流して猪名川を見つめる。
「お前も分かったな? 例え噂の部隊が相手でも武竜会の敵ではない。 だからドンッと構えとけ。
木花が本土に帰還次第、そいつ等ごと皆殺しだ。」
猪名川はそう言って煙草を深く吸い始めた。そして五十嵐は自身が飛んでもない話に巻き込まれた事を察した。
こんな大事を一介の王神組に話したと言うことは、自分もそれに混ざって仕事をしろ、という意味だろう。
拒否すれば先程の戦闘員を自分に差し向けて殺す。そう言外に猪名川は伝えているのだ。
恐らくは自身を囮にして木花を誘い出すつもりなのだろう。願わくば、その噂の部隊も同時に始末出来れば御の字、そう言ったところだ。
法律を無視した部隊を武竜会が消しても、日本政府は堂々とそれを自分達に裁く事は難しいだろう。それを行えば、日本にそんな部隊が所属していることを政府が証明するようなものだ。
更に言えば、この木花とアリアとの写真の影響で列強諸国との間で亀裂が入ったのだ。そもそもの話、日本政府がそれに介入する余裕すら無いかも知れない。
五十嵐は武竜会執行部の決断に肝を冷やした。それと同時に面倒ごとを増やしてくれた木花に憎悪が湧き出てきた。
(あの糞餓鬼・・・生きてたなら良いぜ。 だったら俺が必ず殺してやる。)
五十嵐はそう静かに誓った。
日本最大の財閥と犯罪組織がそれぞれ動き出す中、世界情勢を大きく動かす切っ掛けを作った当の本人である木花とアリアはバフマン王国でピンチになっていた。
バフマン王国 王都ソウバリン
日本の公安の隠れ家で、12番は現地で号外として配っていた現地新聞を震えた手で呼んでいた。
その新聞には例の写真と共に見出しでこう書かれていた『領政官の娘キム・アリアが謎のニホン人と恋仲関係! 領政官はこの謎のニホン人経由で列強の武器を入手して列強諸国に宣戦布告をした!?』と、言い掛かりに等しい内容だった。
「おいおい・・・洒落になんないぞ。 いつこんな写真を撮られたんだよ・・・」
「国中にカップリング発表されちゃったね。」
隣にいるオタクがそう能天気に話し掛けてきたが、12番は全く余裕のない様子で怒鳴った。
「ふざけてる場合か!? おいっ! 木花とアリアは何処にいるんだ!?」
それに近くにいた同僚が慌てて答える。
「あの2人なら外にいる・・・」
当たり前の様に外出している事実に12番は怒りの声を上げる。
「何で外出してるんだ!?」
「それが・・・お嬢ちゃんが、あの罷免された領政官が改新派の私兵によって牢から出されて街中を見せしめに連行されたのを聞いたらしくて・・・」
「糞っ! どう考えても罠に決まってるだろうが!? なんだって行かせたんだ!」
こんな見え見えの罠に、同僚達が黙って行かせたという失態に彼は呆れる。
「すまない・・・無論止めたんだが、その時は近くに俺しかいなかったもんで…」
「糞っ 急いで向かうぞ! おいっオタク! お前もついてこい!」
12番が隠れ家で待機していた同僚達にそう指示した。それにオタクも自動拳銃の弾倉を持てるだけ持って返事をした。
「こっちは準備オッケーだよ。」
それを聞いた12番は頷き、外に出ようとしたがそこへ隣の部屋にいた同僚が鬼の形相である知らせを彼等に伝えた。
「・・・はぁ!?」
それを聞いた彼等はあまりの衝撃の知らせに驚愕の表情を浮かべた。基本的に他人事の反応をするあのオタクですらも非常に驚いていた。
その知らせとは・・・
ソウバリンの人混みの多い大通りをアリアと木花の2人が走っていた。
正確に言えば脇目も振らずに一心不乱に走るアリアをその少し後ろで追い掛けるように木花が走っていた。大通りを走る2人に怪奇な目で見てくる通行人もいるが、2人はそれを気にもとめない。
「お嬢様っ! 止まってください!」
全速力で走るアリアを木花が声を掛けて止めようと促すが、やはり口で言っても止まらない。
漸くアリアの腕を掴んで足を止めることに成功した木花は再度、息を切らしているアリアに声をかける。
「っ!」
「お待ちください。 行ったって何も出来る事なんて・・・っ!」
木花は急いで隠れ家に戻ろうとしたが、タイミング悪く、2人のいる大通りの車道の奥から牢造りに改良された馬車に領政官を乗せた列が見えた。何十もの武装した私兵を護衛にして。
大通りにいた通行人達も車道のそれに気付いたのだろう、その馬車に視線を向けていく。
「領政官のバンウォン様だ・・・」
「あの方に対してなんて無礼な事をするんだ!」
「止めとけ。連中に聞こえたらお前まで反列強同盟だって捕まるぞ。」
「お嬢様は無事なのか? あのお方まで捕まったらいよいよこの国はおしまいだ・・・」
「あの号外を見たろ? ご無事なのは間違いない。」
「けど、ニホン人と関係があるんだろ? まさか本当にあの暴動に手助けを・・・」
そう口々に話をする通行人達に木花は舌打ちをする。
(っ・・・不味いな。 速いとこお嬢様を安全なところまで・・・あっ!?)
通行人達の会話に気を取られていた木花は、領政官を乗せた馬車の前にまで飛び出してしまったアリアに気付くのに遅れた。
私兵達は脇の歩道から飛び出てきた女性を察知して退くように罵声を出そうとするが、その途中で彼女の正体に気付いて驚愕する。
「そこの女っ! 道を空けぬか・・・っ!?」
驚く私兵達に続いて周囲の通行人達もアリアの正体に気付いた様だ。周りの空気が一気に変わる。
「キムお嬢様だ!」
「本当だ・・・お嬢様だぞ!!」
とうとう周りの人々にもバレてしまったのを見て木花は頭を掻いて悪態をつく。
「ちっ! 本当にあのお嬢様はっ!」
そうこうしている間にもアリアは驚きのあまりに固まっている私兵達を掻き分けるようにして馬車に乗せられている領政官の元にまで辿り着いた。
馬車の壁は撤去されている変わりに牢のように鉄格子で張り巡らされているので、中に閉じ込められた領政官もすぐにアリアの存在に気付いて、目を見開いて自分の娘を見た。
「アリアっ!? 無事だったのか!? いや、そもそも何故ここに居る!?」
領政官は投獄されている間も自身を慕ってくれる部下達のお陰で外の状況について聞いており、それで自身の娘が行方不明だったことを聞いていた。
そんな自分の父親が無事な自分を見て明らかに安堵した反応を見たアリアは、嬉しさに目に涙を浮かべるが、ようやく動揺から覚めた私兵の1人が剣を抜いてアリアの首もとに近付ける。
「逆賊キム・アリアっ! お前を反逆の罪で捕らえる! 覚悟しろ!」
そう私兵は下衆な表情を浮かべながら剣をアリアに見せつけるように動かす。それに領政官が怒りの表情で怒鳴る。
「貴様っ! 私の娘になにをする! たかだか一介の私兵ごときが剣を向けて良い相手ではないぞ! 下がれ、無礼者めっ!」
「黙れっ! もうお前達は貴族でも領政官でもない! 反逆者の一族として死んでいくのだ!
お前達っ、この女も引っ捕らえろ!」
その指示に周りの私兵達もアリアを捕らえようと動き出した。私兵達を睨み付けるアリアを無視して私兵の1人が彼女の腕を掴もうとした瞬間、木花がその私兵の腕を逆に掴んで関節を決めた。
「キハナ・・・」
「うぎゃっ!?」
「っ! お前は何者だ!?」
突如として現れた謎の男に私兵達は一斉に剣をその男に向けた。
多数の剣を抜いた私兵達に問われた木花は、1人の私兵の関節を決めながら彼等に言う。
「名乗る者でもねぇよ・・・それよりもお前等に誰かを拘束する権限なんて無いだろ。 捕補庁の役人でもないお前等にお嬢様を捕らえる道理なんて無い。 そうだろ?」
「黙れっ! 我々はリボン都長より命令を受けてやっているのだ! 目の前に逆賊がいるのであれば捕らえるのは当然のことだ!」
(都長・・・都知事クラスまでが改新派かよ。 いよいよ不味い事になったな。)
私兵達の言葉を聞いても何食わぬ顔で立っている木花は、周囲に視線を向けて公安の職員達を探したが見つかないので心の中で舌打ちをした。
(さて、どうする? この状況で俺達だけで逃げ切るのは難しいぞ・・・ましてやお嬢様は1人で逃げるつもりは無さそうだし。
あぁ糞っ・・・アイツ等は何してるんだ? あの号外といい、大事になってきたぞ。)
木花がそう悩んでいると囲んでいた私兵の1人が朝の号外にあった写真の男と同じ顔をしていることに気付いて大声で仲間に知らせた。
「お、おいっ! この男、号外で載ってたあのニホン人だ! 間違いない! このキム家の娘の恋人だ!」
その声を聞こえた全ての人々が一斉に木花とアリアに視線が集中した。それに木花の表情が歪んだ。
(とんでもない勘違いだ! どこの馬鹿があれを撮りやがったんだ!)
ふとアリアの方を見れば何故か顔を真っ赤にしており、その近くにいた領政官は殺すと言わんばかりの表情で木花を睨んでいた。
目が合った木花はすぐに視線を逸らして私兵達の方を注視する。しかし後ろからは凄まじい殺気を感じており、思わず冷や汗を流す。
そんな木花を置いて私兵達が動く。まずは未だに木花の手によって痛がっている仲間を救おうと近くにいた私兵が剣を振るう。
それを察知した木花がすぐに掴んでいた私兵の腕を離して、攻撃してきた私兵に蹴りを喰らわして攻撃を防いだ。
後ろに倒れ込んだ仲間を見て、他の私兵達も警戒を上げて用心深く木花の包囲を縮めていく。
それを見ていた周りの通行人達も固唾を呑んで木花の方を見た。
そんな野次馬達の中から数人の男達が突如として銃を取り出して私兵達に銃口を向けて発砲した。
「なっ!?」
私兵の何人かがそれに命中して驚愕の声をあげた。慌てて私兵達が撃ってきた男達に走って攻撃をしようとするが次々と撃たれて倒れていく。
「迂闊に近付くな! 奴等の銃は列強のだぞ!?」
「っ!?」
連続して放たれる発砲から相手は火縄銃ではなく、連発式の銃だと気付いた私兵は仲間に知らせるがすぐに撃たれてしまう。
そして木花は彼等が扱っている銃に見覚えがあった。何故ならばそれは熊光組がヨルダン達に売却したスペンサー銃だからだ。と言うことはつまり。
(あのヨルダンの爺が領政官を救いに来たのか!)
木花がその答えに辿り着いた時、突如として始まった銃撃に人々が逃げ惑う中、領政官を乗せた馬車に駆け抜けた複数の男達が目に見えた。そしてその中にクッダを見つけた。
「アリアっ! 旦那様っ! いまここを開けます!」
「師匠っ! ご無事だったのですね!?」
アリアは久し振りに会うクッダを見て安心したように言った。しかしそんな彼女の後ろから血を流した私兵が怒りの表情で剣を彼女の背中に振り下ろそうとした。
「っ!? アリアっ! 避けろ! 」
クッダが気付いて指示を出すが、彼女は振り返るので精一杯だった。その時には振り下ろされた剣は避けれない所にまできていた。
アリアはこれから来る痛みに耐えようと目を瞑る。それにクッダと領政官も凄惨な光景を目にすると予期したが、その前に私兵は頭から血を流して倒れた。
「キハナっ!」
「お嬢様っ! ご無事ですか!?」
咄嗟の判断で木花が腰に付けていたグロック拳銃で私兵の頭部を撃ち抜いたことにより事なきを得た。
木花を見たクッダは彼を軽く睨んでこう言った。
「お前・・・色々と問い立たしたい事だらけだが、一先ずはここから離れるぞ! おいっ、旦那様を担いで行くぞ!」
「はい! クッダさん! さぁ旦那様、私の背中へ。」
クッダは一緒にいた同胞に指示を出して、この場から離れようとする。それにアリアも一緒に行こうとするが木花が彼女の腕を掴んで止めた。
「キハナ、何のつもりだ?」
乱戦のなか、アリアは掴んできた木花を睨んだ。それに対して木花も彼女を睨み返す。
「それはこっちのセリフです。 アイツ等に無断で出ていき、あまつさえ堂々と保守派の連中の前に姿を現したんですよ貴方は。
これ以上の勝手は許容出来ません。領政官の身はクッダ達に任せて我々はこっちに行きましょう。」
そう言ってアリアの腕を掴んだまま、彼等とは別の方向へと行こうとする木花を、クッダがスペンサー銃の銃口を彼の顔に向ける。
「クッダ・・・邪魔をするな。どのみちお前等ではお嬢様を守ることは出来ない。銃口を下げろ。」
「お前は自分で何を言ってるのか分かってるのか? 他国の・・・しかも列強の人間にアリアを渡せる訳が無いだろうが!」
「列強でもないお前達が守り抜けるってか? 暴動の際、何も出来なかったお前等が。」
両者は互いに睨み会う。
クッダは彼女の面倒を見てきており、恩人の娘でもあるので手放すことは決してないだろう。
木花としても下手な集団にアリアを任せて、万が一敵対組織に彼女の身が渡って自分たちの情報が漏れれば木花の立場が悪化するのは目に見えているので引き下がれない。
クッダの仲間達が戦う中、2人の男がいつ互いの武器で殺し合いを始めるか、分からない状況下でまた別の動きが起こった。
大通りの奥から物凄い勢いで走る大型の馬車がクッダと木花達の近くにまで迫り停車した。そして馬車の扉が開いて付近にいた私兵達を次々と射殺していく。
そこから馬車の中にいた男達の1人が木花達を見て声を掛けた。
「お客さん 乗っていくかい?」
「なんだ!?」
「お前等はっ!?」
突然の事にクッダは銃を彼に向けて、木花はその男を見て目を丸くした。
そんな2人の反応を見たオタクは別の私兵達に拳銃を向けて次々と狙撃する。
「どうすんの? 馬車の方が速くここから逃げれるけど、乗るの? 乗らないの?」
「誰だお前達は!?」
クッダの反応を他所にオタクの対面に座る12番が冷静に話し掛ける。
「いいから速いとこ乗っていけ。 他の私兵達が騒ぎを聞き付けて次々と集まっているぞ。 禁近衛庁の役人も来ている。」
「っ!」
「お嬢様、乗ってください!」
「おいっ!?・・・ええぃ! 乗るぞ!」
「は、はい!」
クッダ達が迷うなか、木花はアリアを馬車に乗せていくのを見て仕方なく、クッダと領政官を背負う同胞も馬車に乗った。
流石の大型でも窮屈になった馬車の中を12番が御者席に座る同僚に合図を送る。
「出してくれ。」
「了解した。」
すると馬車は再び物凄い勢いで走り出していった。
「・・・」
「・・・」
「うわぁ・・・気まずい。」
クッダと木花が無言で睨みあっているのを見てオタクが茶化すが、12番は気にも止めずに木花とアリアに話をした。
「急な話で悪いが、俺達はこのまま本土に帰還する。 木花は勿論のことアリア、お嬢さんも一緒に来て貰うぞ。」
「何だと! 貴様っ、人拐いか!?」
話を聞いていたクッダがそう言って銃を12番に向けるが、彼は混乱することなく木花に視線を向ける。
「このおっさん達は?」
「お嬢様の師匠とその仲間だ。 そっちで俺を睨み続けている爺はその父親だ。」
「無礼な・・・」
「そう言う事か。 仕方ない。アンタ等もうちで保護するか?」
事情を察した12番がそう言ったがそれに木花は疑問の声をあげる。
「何をそんなに急いでる?」
「本土から報せが来たんだ。 ジュニバール帝王国とガーハンス鬼神国等が大規模な軍を動かした。
連中の行き先は・・・多分だが日本だ。」
「はぁ!?」
「っ!?・・・どういう事なのだ? 列強同士で戦うつもりか?」
「内輪揉めか・・・列強はやはり野蛮な国であったのか・・・ゴホッ!ゴホッ!」
「旦那様、酷い状態じゃないですか。 御体をお休みください。」
12番の衝撃の報せに続いてオタクが補足の説明をする。
「国防省の偵察衛星が大量の軍艦と戦闘車両の移動を確認したんだ。 更に膨大な無線を傍受した結果、おおよその行き先が判明した。
その行き先が日本の経済圏内の大陸の事を指していたんだよ。」
「だが、何故きゅうに列強が日本に攻めるんだ?」
「まだ宣戦布告はされていない。 行き先だって予想の域を出ていないが・・・ひょっとしたら仕組まれていたのかも知れないな。」
「何が?」
12番の意味ありげな言葉に木花の顔に『?』が浮かんだ。
「あの暴動の黒幕は日本だったと世界に公表して俺達を孤立させる狙いがあったのすれば?」
「それは・・・飛躍過ぎじゃないのか?」
「ところがどっこい。 あの号外が発表された瞬間、本土の魔法文明諸国側からの大使館から日本外務省にこう通達をしてきたらしいんだ。」
この場にいる者達は聞き耳を立てて、彼の言葉を待った。
「・・・曰く、『バフマン王国にいるキハナというニホン人とキム・アリアを世界裁判機構に出頭させよ。 これを断った場合、武力を持っての対応も辞さない』そう言ってきたらしい。」
「はぁ? なんで俺達の名を・・・」
「そうだ。 列強諸国は何故か既にお前達の名前を把握していて、号外の内容も事前に知っていたかのように即座に外務省に訴えてきた。
こんなの考えられるのは1つだけだろ?」
そこまできて分かった木花はこう続けた。
「異世界の国である俺達を排除しようってか? それで? 俺達をどうするんだ? 引き渡すのか?」
それにアリア経ちは身構えるが、12番は首を横に振った。
「そんな馬鹿な。 奴等に引き渡した所で、中立的な裁判を受けれるとでも?
日本側に対してあることないこと決めつけて日本を責め立てるに決まってる。
恐らく日本政府はお前等の存在を否定して秘密裏に保護する方針で決まるだろう。
俺達、公安としても20式を奪った組織を見つけるのにお前達が必要だ。」
「それに武竜会への対応にも君達が必要だからね。」
オタクの言葉に木花は再度、頭に『?』を浮かべる。
「武竜会? なぜ俺を?」
「上から通達があった。 どうやらお前を対武竜会への工作員として使いたいそうだ。」
「はぁ!?」
木花は今までで1番の大声を出した。武竜会の恐ろしさを理解しているので当然の反応だろう。
「武竜会もお前の生存を確認したらしい。 本土に帰還すれば遅かれ早かれ、お前を消しに来るだろうさ。 そこを・・・」
「つまり俺を囮にして武竜会を返り討ちにするってか? 日本の立場がヤバくなっている最中に?」
「公安独自に動くから体勢に変わりはない。 寧ろ日本の内側を掃除出来るまたとない機会だ。お前も五十嵐を消せる絶好の機会だぜ? どうする?」
「はっ・・・どうせ拒否権なんて無いんだろ?」
木花の言葉に12番はニヤリと笑った。そこへ窓を見ていたオタクから声がかかった。
「皆さぁん、追手が来たよ。」
その言葉に12番と木花、アリアにクッダが一斉に窓に視線を向けて警戒をした。見れば確かにこの馬車を追い掛けてきた馬に乗った私兵が大勢見えた。
その揃った動きを見たオタクは興奮したように言う。
「おぉ・・・これぞドリームチームってか?」
そんな馬鹿な事を言ってくるオタクを無視して彼等は各々の武器を持って追手を返り討ちにしようと構える。
「まぁ、まずはあの追手をどうにかするぞ。」
12番の言葉に木花達は一斉に頷いた。
ここから更に急展開っ!
近い内にマジもんの軍隊VS軍隊との大規模な戦闘を・・・
ついでに公安VS武竜会・マフィア連合との戦いも平行していきたいな・・・
地球の先進国VS異世界の列強連合・・・本当に興奮するシーンを書きたい!
ついでに軍隊装備をしたマフィアと特殊部隊との戦いも書きたい!
ちょうどコール・○○・ブューティのオフラインストーリーみたいな戦いを・・・




