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強化日本異世界戦記  作者: 関東国軍
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第74話 3人の活動

お待たせしました。

第74話 3人の活動



    バフマン王国 王都ソウバリン


バフマン王国最大都市であるソウバリンの中でも人通りの少ない区域を木花と外套を深く被ったアリアにオタクの3人が歩いていた。


「この先にもう1軒ある筈です。 そこに行っても無ければ別の場所を探しましょう。」


木花が隣を歩くアリアにそう言った。アリアはそれに静かに頷いて歩く。


そんな様子を少し後を着いていくような形で歩くオタクは注視していた。


「・・・精神的には安定しているのかな? 立ち直りの早い男なこと。」


オタクは木花の精神力の強さに舌を巻きながらも呑気な雰囲気を醸し出して歩く。


そして目的の店に辿り着いた3人は、そこである物を探すが、やはりこの店にも無いことが分かると木花は溜め息を吐いた。


「ここもか・・・」


「やはり一筋縄では行かないのだな。 ここはそなた達が管理していた場所で探した方が良いのではないか?」


アリアからの提案に木花は渋々ながらも頷いて、オタクの方を見た。


「おい、本当に王神組はもう本土に撤収したんだろうな?」


木花は熊光組の管轄する区域で王神組の組員が残っていないか懸念をした。


「それは確かだよ。 連中もこんな国とはさっさとおさらばしたいのだから、残る理由は無いよ。」


その言葉に木花は安堵する。因縁の五十嵐と会えないのは残念だが、いまここで王神組の連中と遭遇すれば面倒な事になるのは自明の理だ。


そこで木花は、いま自分達のやっていることを思い出して溜め息を吐いた。それを見たオタクは苦笑いをする。


(・・・なんで俺達がこんな事を、って思ってる顔だな。)


彼等がこうしているのを知るには少し時を巻き戻す必要がある。







「俺は反対だ!」


彼等が隠れ家とする建物の大広間で多数の男達が大テーブルの前で会議をしている中、1人の男性が確固たる意思を見せつけるように強く言い放った。


それを聞いた公安零課に所属する男性こと12番は、予想していた反応に軽く溜め息を吐きながらも目の前の険しい表情をしている同僚に言う。因みにだが12番の隣の席にはオタクがテーブルの上に頭をのせて豪快に寝ている。


「Zzzzz・・・」


「・・・何度も言わせるな。これは課長からの指示だ。 現場の我々がどうこう出来る問題じゃないんだよ。」


寝ているオタクを見て眉をヒクヒクと動かす12番の言葉に、反対をしていた男は立ち上がって続けた。


「だがあの若造を零課が引き入れるなんて馬鹿げた話を受け入れられる訳がないだろ!

しかも奴は武竜会に所属していた男だぞ!? 連中に情報を漏らすだろうが!」


「一時的な話だ。 それに彼はその武竜会から追われの身となっている。追放処分を受けた彼に、もはや連中の側に付く理由は無い。」


淡々と言い終えた12番の言葉を聞いた彼等はそこで暫く沈黙の時間が流れた。


そこへ別の同僚が、手を挙げて12番に気になっていた事を質問した。


「確認なんだが・・・あの木花の父親は本当に俺達零課の職員だったのか?」


彼のそんな質問にテーブルを挟んでいた同僚達も同じ疑問を抱いていたようで、一斉に12番の方を見た。


そもそも何故、彼等がここで言い争っているかと言うと、身柄を確保した木花の父親が武竜会に潜入捜査をしていた元零課の職員であったことが判明したのだ。


更には零課内で最も古い名称である「無名」を使用されていた事から、彼の父親は少なくとも零課でもかなりの古参であった可能性が極めて高い。


その情報を報告するために本土と連絡を取っているであろう12番から聞こうと彼等は耳を傾けているのである。


そんな彼等を見た12番は数秒の沈黙の後、重々しく口を開いた。


「・・・課長からは明確な返答は帰って来なかった。 明確に返して来ないってことは、つまりそう言うことなんだろ。」


「事実なのか。」


「『無名』なんぞ俺は所属してからは一度も使われたのを見たことが無いぞ? 寧ろ久し振りに聞いた位だ。」


「だが、それが本当ならば問題じゃないか? 奴の父親は機密書類を外部に置きっぱにしたということだ。 重大な規則違反だ。そもそも何故、零課が潜入捜査をするんだ? 

 そう言うのは1課や特課の仕事だろう・・・」


「そう言ったら俺達がいま国外に居るのも可笑しいだろ? 零課は本土専門の部署だろ? なぜ2課を使わないんだ。」


「2課の連中が代わりにやっているんだろ?

2年前の話だとジュニバール帝王国の工作員達を纏めて確保したのも奴等が・・・」


段々と話が逸れていくのを見て我慢の限界だと感じた先程の怒鳴った同僚がテーブルを強く叩いて視線を集める。


「関係ない話を持ち込むな! 俺達はいまあの若造について話してるんだろ!」


それに12番も同調するように言った。


「その通りだ。話を戻そう・・・木花の父親の詳細については本土の連中が調べるだろう。

 いま俺達が話し合うべきなのは、あの木花をどう扱うか、それを決める事だ。」


「そもそも奴は使えるのか? チンピラを仲間に加えると言われても困るぞ。 素人の尻拭いをする程、俺達に余裕は無いぜ?」


その言葉に怒鳴っていた同僚が同意するように何度も大きく頷いた。そんな彼を横目に12番が答える。


「その点は杞憂と考えても良いだろう。木花の能力は優秀な部類に入る。 プロの格闘家団体から推薦が入る程の運動能力に、名門大学を上位の成績で卒業するだけの学力を持っている。

 現にこのソウバリンでも熊光組が強い影響力を持てたのは木花の手腕に依るものだ。」


「ふんっ! それで公安の仕事が勤まるとは限らないだろうが。」


憎々しげに呟く同僚を軽く聞き流す12番だが、彼の懸念も確かなのは事実であった。それとこれとは別物というものだ。


「だからこそ、ここで奴の試験を行う訳だ。それに合格すれば奴は仮ではあるものの、我々の仲間に引き入れる。 それでどうだ?」


「具体的にはどうするんだ? 俺達がやったような試験内容をやるのか? この国で?」


遠目の席に座っていた同僚がそう聞いてきたが、彼は首を横に振った。


「流石にそれは無理だ。 あくまでもこれは、仮の試験だ。 そんな時間も場所も無いしな・・・」


「ならどうすんだ?」


そんな質問に彼は懐から封筒を取り出した。


「取り敢えずは俺とこのオタクが郊外で用意した場所に・・・」


「ちょっと待った!」


12番がテーブルの上に試験内容を記載した紙を広げようとするが、反対派の同僚がまた大きな声を出した。


「そっちが用意したのは身体能力や思想チェックとかの試験用のもんなんだろう?」


「まぁそれに近いのは用意してるな・・・」


「それじゃあ駄目だ! そんな簡易的なもんで仲間に加えられても俺達の命をそいつの背中に預けられないな!」


その言葉に、周りの同僚達も「確かに・・・」と言った様子で反応をした。


「ならお前は何か案があるのか?」


「ある・・・おい。」


「はいよ。」


流石にうんざりしたような様子をみせる12番を目にして、反対していた同僚は隣の席に座っている別の男に声を掛けた。


掛けられたその男はテーブルの上に乗せていたパソコンを操作してとある画面を開いて、全員に見えるように画面の向きを変えて彼等に見せた。


「これは何だ?」


見せられた画面を見た12番が困惑気味に聞いた。画面を見てもよく分からない数字の羅列が流れてるだけで、意味が全く分からなかったのだ。それにパソコンを開いた同僚が説明する。


「・・・私も最近になって判明したのだが、どうやらこの街の日本大使館で使用されていた外務省のパソコンが、この街の何処かに流出しているようだ。」


「なに?」


その言葉に周囲の同僚達も警戒の色を見せる。


「どういう意味だ? 有事の際には外務省は大使館内の全ての機密機器の類いは処分をする筈だろう? まさか意図的に流出したのか?」


「そこ迄は知らん。 だが1台のパソコンがこの街の何処かにあるのは確定だ。 この画面はそのパソコンが送っている信号を文字化したものだ。

 これを読んでみると、パスワードの解除の類いはされてないようだ。

 稀に電源を付けたり消したりを繰り返している。 ひょっとすると現地人が偶然にも大使館内で発見したものが持って行かれたのかも知れないな。」


「外務省の連中め・・・しっかり仕事をしろってんだ! 奴等も把握しているのか?」


「経験豊富な職員がまともに居ない連中が把握しているとでも? 第一、それを確認するための機械は全て処分しているんだぞ?」


異世界転移で深刻な人手不足を招いている外務省をそう皮肉った同僚の言葉に、12番は小さく舌打ちをした。


「それで?・・・それを俺達に見せたのには試験と関係する理由があるんだろうな?」


「勿論だ。零課に入るための試験ともなればやはり実際にやるのが1番だ。 奴にこのパソコンを探させる。実に簡単な話だろ?」


軽く予想していた答えに12番は頷いた。正直いってそれは状況次第ではそちらの方が容易な気がするが。


外務省のPCならば現在地を示す専用のGPSソフトがあらかじめ内蔵されているのだから、その情報を元に辿ればすぐに見つかるだろう。


「・・・まぁ、確かに実地試験は重要だがな。良いだろう。それを木花に探させるんだな?」


12番が同意したのを聞いた彼はニヤリと笑った。


「決まりだな。」


「だな。 ならそれに関する情報を木花に説明してさっそく捜索を・・・」


「すまないが殆ど情報は無いぞ。 あるのはこのパソコンがこの街の何処かにあるというだけだ。」


「は?」


パソコンを開いている同僚の言葉に、思わず12番は間抜けな声を出した。


「そんな馬鹿な・・・外務省のPCなら専用のソフトがインストールされてるだろ?」


12番の唖然とした様子を意地の悪い表情で反対していた同僚が補足した。


「ここが人手不足の激しい外務省の悪い所だ。こんな辺境の国に送った備品はどれも年代の古い物ばかりでな。 マトモなPCは殆どが列強や準列強国に優先されているようだ。

 だからこの国の大使館のPCはGPSソフトをインストールすらされなかった物を送った訳だ。

 外務省は数も質も大きく低下してるようだな。

まぁ・・・大使が俺達よりも若い奴が採用されてる位なんだからな。」


「お前・・・それを知ってて提案したんだな?」


12番は僅かに怒気を含んだ声でそう言って席から立ち上がる。


「お前はそれに同意したんだ。 引っくり返すのは無しだぜ?」


「素人にこの街からたった1台のパソコンを探させろってか!? まともな情報を無しに! ふざけるな!」


同僚の前にまで歩いた彼を見て、同僚も同じように立ち上がって応えた。


「俺だってヤクザを公安に引き入れるなんてふざけるなって言いたいね。」


「課長の命令だぞ。」


いつ殴り合っても可笑しくない位に近付いた2人を見た周囲の同僚が何時でも止めれるように姿勢を変えた。


「おいおい・・・」


「俺達が内輪揉めなんて洒落にならんぞ?」


「どっちかが動いたら止めるぞ・・・うん?」


一発即発の状態の中、今まで寝ていた筈のオタクが突如として立ち上がりこう、言った。


「・・・つまり木花がそのパソコンを見つければ認めるんだね? 6番さん。」


「あん? お前起きてたのか?」


オタクの言葉に、同僚こと、木花を拷問していた6番はそう反応する。しかしオタクはそれを無視しても一度質問をする。


「見つけたら、認めるんだね?」


「まぁな・・・」


「よし。なら同意しようじゃないか。12番。」


「「なに?」」


オタクの言葉に、睨み合っていた2人は同じ反応をした。


「言っておくがお前が協力するのは無しだぞ?

まぁ協力した所で、なんだがな・・・」


人口が10万人を優に越えているこの街の中から録な手掛かり無しで探し物を見つけることなど不可能に近い。しかも街は先の暴動で荒れている有り様である。


「俺は監視するだけさ。 監視役は必要でしょ?」


「おいオタクなにを勝手に決めて・・・」


話を進めるオタクを止めようとする12番を、逆にオタクが止めた。


「俺達はそっちの要求通りにそれを試験に変更する。その代わりに、こっちの要求はその捜索にはあのお嬢ちゃんも加えること。 成功したらその2人をうちの仲間として認める。 それが条件だ。」


「あん?・・・あの外人をか?」


6番は困惑気味に聞き返した。


「何だってあの外人まで・・・」


「良いんだよね?」


「あ、あぁ。良いだろう。見つけたらの話だがな。」


少し迷ったが、素人に過ぎない2人が手を組んだ所で、見つけれる訳がないので取り敢えずは同意した。


仮にこのオタクが協力したところで、彼にもそんな技術は無いのは知っているので問題は無いだろう。のオタクは戦闘特化型の職員なのだから。


あの2人が失敗すれば、今度は自分達があらゆる技術をフルに活用すれば短期間で見つけるのは可能だろう。そうなればあのヤクザを追い出すように上層部に言える。


そんな6番の内心を見透かすような目で見るオタクはニヤリと笑ってこう言った。


「話は纏まったね。」






誰も居なくなった大広間で12番は後ろに座っているオタクを見た。


「・・・本気であの木花とお嬢ちゃんが見つけれると思ってるのか? それとも何か打算でもあるのか?」


「うん? そんなの無いよ。」


予想はしていた返答ではあったが、救いのない言葉に彼は頭を抑える。


「運頼みかよ・・・」


「まぁ反対するアイツの考えも分かるからね。失敗したらその時はどうにかするさ。 それよりも木花の様子は?」


オタクは身内を大勢失った木花の最近の様子を聞いた。


「・・・今は落ち着いてるな。まぁ流石に井岡って奴の遺体の状況を見た時はかなりショックを受けていたようだがな。」


死亡した後、暴徒達によって暴行を受けて顔が分からない程に損傷を受けた井岡の遺体の写真をアリアから受け取った木花は暫く立ち竦んでいたようだ。


そんな事を聞いたオタクは頷いた。


「ふぅん・・・と、なると今は五十嵐って奴の復讐で一杯なのかな?」


「元凶は奴だからな。それは有り得るな。 復讐を糧にして今回のを成功させると?」


「木花はこの街の裏社会の一角を牛耳ってたんでしょ? それのネットワークを使えば可能性は充分にあるよ。」


「こんな有り様の街でか? なら確かに大いに有り得るだろうよ。 それよりも先に、殺されるかもな。」


列強人狩りの現場であるこの街の様子をみていた12番はそう皮肉った。


そんな彼を他所に、オタクは2人を呼んだ。


(まぁ・・・あの2人のお手並み拝見と言ったところか?)


12番はそう考えて、2人に説明するための資料を纏め始めた。







そうして説明を受けた2人はオタクの監視の元、こうやって街に出て、闇市場等を渡り歩いている今に至った。


取り敢えずは隠れ家付近の市場や裏路地にある質屋等には、パソコンの類いは無いのが分かっただけでも大きい。


ここからは木花がよく知るかつて熊光組が管理していた区域にある場所を念入りに探す。


先頭を歩いていた木花は、大通りから外れて人通りの少ない通りに入ってそこの角にある小汚ない酒場の所にまで着いた。


「ここは?」


身バレ防止の為に外套を被ったアリアがフードを少し上げて、酒場の看板を見る。それにオタクも目の前の建物の全容を見る。


「あまりサービスが期待出来なさそうな店だね。」


オタクの感想を聞いた木花が反応する。


「当然だ。ここは盗賊組合御用達の酒場だからな。とは言ってもこの店の連中は殆どチンピラ同然の奴等だけどな。」


その言葉にオタクは興奮気味に反応した。


「おぉ! 盗賊ギルドかぁ! 冒険者ギルドもそうだけど、本当に実在するんだなぁ!」


ファンタジー感満載の単語を聞いたオタクは嬉しそうに言う。それに木花とアリアは少し引くが、構わずに会話をする。


「ここに来た目的は何なのだ?」


「この店は情報屋も良く滞在している店です。盗難品専門の情報屋を知っているので、ソイツなら何か知ってる可能性がありますので。」


「そういう事か。 ならば入ろう。」


アリアの言葉に、木花は頷いて未だに興奮しているオタクを置いて先に中へと入った。


ウエスタンドアを両手で押し開けながら店内を見る。


店内は広く、奥にはカウンターがあり、その後ろには何十本もの酒瓶が並んでいた。


何卓もある丸テーブルにはいかにも暴力を生業としてそうな荒くれ者の男達が何人も座っていた。


そんな男達が入ってきた木花の方を一瞬だけ視線を向けてまた興味が無さそうに戻そうとするが、すぐにギョッとした表情で木花を見た。


「き、キハナだ・・・」


「マジかよ、生きてやがったのか? あんな大きな騒ぎだったろ。 なんて奴だよ・・・」


「待て待て、クッコウグミの連中は最近まったく見ねぇぞ? ひょっとしたら生き残りはキハナだけじゃねぇのか? ならビビる必要なんて無いだろ。」


「ならお前が行けよ。」


「嫌だよ。アイツ全然容赦ねぇもん。」


一般人ならば目が合っただけですぐにでも頭を下げてしまうような屈強な男達が木花を見ただけで、その場にいた全員が一斉に目を見開いて驚いたような反応をするのは実に新鮮であろう。


そんな彼等を無視して、木花は堂々と奥のカウンターへと歩いた。


既にカウンターにも数人の客が居たのだが、木花が近付いてくるのを見て慌てて席を外した。


そうしてカウンターにまで着いた木花はそこで怯えている店主に声を掛ける。


「サゾンに会いに来た。 奴は上に居るか?」


この店は酒場だが、上の階を宿場として部屋を貸し出している宿でもある。


「は、はい! アイツなら2階の角部屋にいますっ! キハナの旦那っ!」


それを聞いた木花は後ろのアリアの方へ振り返った。


「そうか。 2階だそうです。行きましょう。」


「分かった。」


そうして2人はカウンターの横にある階段から2階へと上がった。それを店内の男達は瞬きすらせずに2人が完全に見えなくなるまで見つめた。


そして、その2人より少し遅れて店内に入ったオタクはと言うと「うおぉ! もろ漫画じゃんか!?」

とか「うんっ! でも少し暗いし、臭せぇっ!!」等と大声でリアクションしており、そんなオタクを変人を見るような目で見る男達。






「う~ん。」


時間は既に昼過ぎだと言うのに、借りた部屋の粗末な作りの寝台でだらしなく寝ている男がいた。


男は情報屋のサゾンであった。特に高価な品物等を追い掛ける専門の情報屋だ。とは言っても最近は客なんて来ないから常に金無し状態であるが。


滅多に客なんて来ないので、最近のやることと言えばこうして真っ昼間からダラダラと寝てるだけしかない。


コンコン


「・・・うん?・・・誰だよ、気持ち良く寝てたのに。」


扉を叩く音が聞こえたので、この日初めて寝台から立ち上がってボサボサの髪を直すこともなく、扉の鍵を開けた。


ドンッ!

「ふぎゃっ!?」


その瞬間、扉が勢い良く開いて、扉の前にいたサゾンは顔面と強く衝突して後ろに倒れた。


「へっ? えっ? なに?・・・」


突然の痛みに目頭に涙を浮かべ、先の衝突で真っ赤に腫れた鼻を痛そうに抑えたサゾンは開かれた扉で立っている男を見て全身を震え上がらせた。


「ひぃっ!? キハナの旦那っ!! 生きてたんですか!?」


「全く、どいつもこいつも・・・俺が生きてて残念そうだな。」


そこにはあの暴動以降、全く姿を見せずに死んだと思っていた木花が立っていたのだ。


サゾンの人生の中でも最も会いたくない人物が目の前にいる現実に卒倒しそうになる。


そんなサゾンの叫びとも言える言葉を聞いた木花は不機嫌そうな表情で倒れていた彼の胸ぐらを掴んで立たせた。


「ひぇっ」

(殺される!)


物凄い力で立たされたサゾンは掠れ声を出したが、そんなのも気にも止めずに木花は質問をする。


「お前に聞きたいことがある。 最近、日本の品物が市場に流れてないか? 黒くて薄い折り畳める板みたいな奴だ。 見覚えは?」


「はひぃ・・・殺さないでください! 俺は何もしてましぇん! ふぐっ!?」


木花は泣いて命乞いをするサゾンの頭を叩いた。


「俺の質問に答えろ。 見たのか? 見てないのか?」


「ひぐっひぐっ・・・ニホンの大使館から持ってきた盗難品ってのは良く見ますけど、多過ぎて覚えてないです! 許してください!」


「そうか。なら、それはどこで見た? 全ての場所を言え。 そうすれば俺は帰る。」


「え、えっと・・・な、なんだっけあの場所の名前って・・・」


あまりの恐怖に、名前を思い出せなくなったサゾンはこれ以上木花に殴られまいと必死に頑張るが、焦るせいで更に思い出せない悪循環に入ってしまう。


「え、えっと! あれ、何だっけ・・・」


「速く喋れっ! おちょくってのか!?」


一向に名前を言わないサゾンを見て、遂に我慢の限界を迎えた木花がまた頭を叩いた。


それを見ていたアリアは、木花を止める。


「落ち着かぬか。 全くそなたは・・・それでは余計に話せないではないか。」


「お嬢様・・・」


部屋に入り、人の目が無くなったアリアは、そこで外套のフードを外してその顔をサゾンに見せた。


(うわぁ・・・凄い美人だ・・・)


アリアの美しい顔を見て、サゾンは思わず見とれていたが、またもや木花に頭を叩かれる。


「いてっ!」


「なにボーっとしてんだ。」


「す、すいません!」


慌てて頭を下げて謝罪するサゾンを見て、アリアは落ち着かせるように言う。


「そなたは下がっておれ・・・案ずるな。 ゆっくり思い出すのだ。」


膝付くサゾンに対して、アリアはかがんでその整った顔を惜しげもなく見せた。


それにうっとりとした表情になるが、隣に立つ木花の怒りの表情を見てまた慌てて始める。


「コイツは・・・」


これでは埒が明かないと判断した木花は、サゾンの髪を掴んで部屋から出た。


「こっちこい!」


「どうするのだ?」


「面倒なので直接、コイツに案内させます。」


「へっ!?」


思わずサゾンはそう反応する。だが木花は無視してそのまま1階へと降りた。アリアはそれに続くが、乱暴なやり方に眉を潜める。


そうして酒場でまた盛り上がっているオタクも連れて怯えるサゾンの案内のもと、再度ソウバリンを歩き回った。





何軒目かの店をしらみ潰しに探していた一行は、そこで別の店にも入った。


「こ、ここです! ここでニホンの品物を沢山見ました!」


「分かった分かった・・・」


そう大声で呼ぶサゾンに、木花は軽く黙らせて店内に入った。正直、期待はしていない。


どうやら質屋の様で、店内には多種多様の品物が乱雑に置かれていた。そこには確かに木花も日本では馴染みのある物が多く置かれていた。


「妙な物ばかりだ・・・」


「ライトにボールペンやらファインダーに・・・ダルマまであるじゃん。 どこのお土産屋さんよ?」


店内を軽く見回していたオタクが呆れた様子でそう呟いた。それに反してアリアは見る事の無い日本の小物に興味津々であった。


「なんでダルマがあるの? 職員の趣味なん?」


「知るか。」


木花にそう聞いてきたオタクを適当に相手して、奥に立っていた、ここの店主らしき人物に声をかけようと近付く。


「イルシク万物店へようこそ。物を預かる質屋から人を探す興信所に、物を探すよろず屋まで、何でもこなしますよ。」


店主らしき男は両手を広げてにこやかにそう言う。


「なら、丁度良いな。 いまは物を探しているんだ。 こういった物に見覚えは?」


木花は懐からスマホを取り出してノートパソコンの写真を男に見せた。


「素晴らしい道具ですねぇ。 良ければ買い取りますけど、どうです?」


しかし、男はスマホの方に気をとられてるようだ。


「売らん。 それよりも見たことはあるのか?」


「左様ですか、少しお待ちを店主を呼びますので。」


お前じゃないかい。そうツッコミをしたそうに隣で表情を変えるオタクを横目に、男はその場で店主を呼んだ。


「兄貴っ! お客さんだよぉ!」


そこから暫く待つと、レトロな眼鏡を掛けた髭面の男が店の奥から不機嫌そうな表情で出てきた。


「店主って呼べと何度言えば分かるんだ! このアホめ・・・おぉ!?」


そう男に怒鳴る店主は木花の方を見て顔を硬直させて固まった。


「有名人だね。」


「黙れ。」


顔を間近に近付けて囁き声で言ってくるオタクを睨み付けた。


「どうしたんです兄貴? お客さんですよ?」


「馬鹿っ! この方はクッコウグミのキハナさんだ! この辺りを取り仕切る方だぞ!」


店主がそう言うと、男は驚いたような反応をした。


「えぇ!? このお客さんが!? まだ若いじゃないですか!?」


オタクは2人のやり取りを面白そうに見ていたが、本人である木花は何度も見たやり取りに、うんざりした様子で言った。


「おい店主、驚くのは後で頼む。これに見覚えはあるか?」


木花はスマホの画面を店主に見せた。店主は恐る恐るといった様子でその画面を見て、表情を変えた。


「あぁこれですか、ありますよ。」


「そうか、邪魔した・・・ん?」


スマホをしまって店を後にしようとしたが、予想外の事態に止まった。木花だけじゃなく、店頭に並んであった小物を見ていたアリアといつの間にかその隣に移動してダルマを触っていたオタクとサゾンも思わず店主を直視した。


「・・・あるのか!?」


「い、言っておきますけど、見た事があるって意味ですからね!? 期待しないでくださいよ! うちの店に持ってきた客がそれに似た物を持ってきたんですよぉ!」


予想以上の木花達の反応に店主は怯えながらそう言った。


「誰だ! どこのどいつが持ってる!?」


詰め寄る木花に、店主はしどろもどろになりながらも答える。


「若い2人組です! 最近はこの時間帯になるとよく来るんで、彼等に聞いてください!・・・」


「イルシクさぁん! 今日も来たよ! 今日は俺の取って置きのを持ってきた・・・うん?」


と、そのタイミングで店内に入ってきた大きな箱を持った青年は店主であるイルシクの名前を呼んで止まった。


更にその後ろからも、連れらしき別の大きな箱を持った青年が入ってきた。


「おいパノン、自分の分もちゃんと持てよ!・・・ん?」


店内にいた全員の視線が、新たに入ってきた2人組に集まり、2人組はばつが悪そうにたじろぐ。


「な、なんすか?」


日本大使館に侵入したパノンと呼ばれた青年は、後退りをしながらそう見てきる木花達に言った。それを店主、イルシクが指差して大声で言った。


「あの2人組です! あいつ等が持ってきました! 私達は関係無いです!」


「っ!? バサソンっ! 逃げっぞ!」


尋常じゃない様子のイルシクを見たパノンは、後ろにいるバサソンを連れて、逃げようとするが、背中を向けた瞬間、木花がドロップキックをかます。


「ふぶぅ!?」


「逃がすかっ!」


パノンが荷物を散らかして吹っ飛ぶのを見て呆然とするバサソンを今度は近くにいたオタクが更に近付いて拘束をした。


「ちょっとお兄さん達とお話しようねぇ。」


「ひぇっ!」


あっという間に2人を拘束した木花とオタクを見て、イルシクとその弟分である男、チュンシクはその2人の素早い動きに感嘆の息をもらした。


「うわぁ・・・本当におっかないですね、兄貴」


「関わらないのが1番だ。俺は何も見ていない。」


イルシクはそう言うと懐から日本製のサングラスを取り出して眼鏡と取り替えた。


そんな2人を他所に、木花は床に倒れているパノンの背中を踏んで、スマホの画面を見せた。


「おい、これに見覚えはあるな? 何処にある?」


「お、俺は何も知りま・・・ふぐっ!?」


パノンの言葉を聞いて木花は、背中を踏んでいた足に力を込めた。


「俺は気が短いんだ。さっさと言え。」


「はいっ! あります! 今も持ってまぁす!」


パノンはそう言うと散らばった荷物の方を指差して必死の形相で白状した。


すかさずアリアがその散らばった荷物を掻き分けてパソコンを見つけた。


「キハナっ! これで良いのか?」


アリアの手には黒のノートパソコンがあり、それを見た木花は安堵した様子で言った。


「それです!お嬢様っ!」


「マジか・・・初日で見つかちゃったよ・・・」


「あ、それじゃあ、僕はこれで失礼します・・・」


用無しと判断したサゾンは、木花の返事を聞く間もなく全速力で店から出た。


そして木花は踏みつけているパノンを解放しようと力を抜くが、散らばった荷物の1つを見つけてまた力を込めた。


「おい・・・これは何処で見つけたんだ?」


木花は踏みつけながら、それを拾ってパノンに見せた。その手にはなんと国防軍が採用している9mm拳銃が握り締められていた。


現地人がこんなものを持っている筈がない。つまりこいつらは大使館で国防隊員から奪い取った可能性が高い。


「そ、それは・・・その・・・」

(ま、まさかニホン軍か!? やばい!)


すると今度はオタクが拘束していたバサソンの意識を一瞬で落としてパノンの関節を決める。


「いだだだだだっ!?」


「詳しくお話を聞こうじゃないの?」


オタクは笑ってはいたが、目が笑っていなかった。


「い言います!言います! 大使館で拾いました! 許してください! 殺さないで!」


「なら、これ以外にも持ってるだろ? 全部吐いて貰おうか?」


オタクは更に力を込めた。それに苦痛に顔を歪ませてパノンは叫ぶ。


「ば、バサソンの箱にあります! 装備品は一式全部あります!」


その言葉に、木花とオタクは互いに顔を見合わせてから後ろで気絶しているバサソンの方を見た。







店の奥にある部屋の隅で顔全体をボコボコに腫らしながら正座をしているパノンとバサソンを横目に、木花とアリア、オタクの3人は2人が持ってきた箱の中身を机の上に載せて整理していた。


丁度その時に、この店の人間であるイルシクとチョンシクが人数分のお茶を持って入室してきた。


すると机の上を見たチョンシクが、興奮を収まらせない様子で声を掛けた。


「うはっ・・・珍しい物はかりですねぇ。 買い取らせて頂く事は可能ですか? 奮発しちゃいますよ?」


その言葉に、防弾チョッキを机の上に載せ終えた木花の手が止まり、真顔でチョンシクの顔を振り返った。


「あんだって?」


「すいません。 お茶をどうぞ。」


即座に顔を伏せてお茶を置いたチョンシク。それにイルシクが呆れたように顔を振った。


「・・・何で我々がキハナの旦那達をもてなしてるんだ?」


イルシクは誰にも聞こえないような小声でそう呟いた。


それを他所に、一息ついてオタクが木花に声をかけた。


「これで全部かな? 本当に国防隊員の装備一式が揃ってるな。」


「どうやって入手したかは予想が付くな。」


その瞬間、2人の視線が怯えているパノン達の方へと向いた。


「ひぇっ!」

「命だけはお助けをっ! どうかニホン軍にだけは勘弁をっ!」


即座に土下座をする2人。それを無視してオタクが質問をする。


「殺さないよ。 それよりもパソコンはどうやって見つけたんだ? 大使館でこれ以外のは見つけたのか?」


それにパノンが遠慮がちに答えた。


「ぱそこんってその黒い板の事ですか? でしたら俺達は別の店で売ってあったのを見つけて気になったから買っただけです。」


「そうです! それ以外のは見てないです!」


「その店の名は?」


「メルクス通りのダンコ物店です。」


パノンの言った店名に、近くにいたイルシクが反応した。


「そこでしたら私の知人が運営してる店ですね。私の方から聞いてみましょうか?」


「だってさ、どうする?」


イルシクの提案にオタクは木花の方を見た。


「その辺りは、熊光組の管轄外だからな・・・ならそうして貰おうか。」


「お任せください旦那。」


自信満々に言うイルシクを見た弟分のチョンシクは慌てて彼の服の裾を掴んだ。


(なに考えてるですか兄貴!? あんなおっかない人達と関わらないのが1番って言ってたでしょ!?)


それにイルシクはチョンシクの肩に腕をまわして言い聞かせるように言う。


(いいかチョンシクよ。 これは好機だ。)


(好機ですか?)


イルシクは片腕を上に上げて優雅に舞わせる。


(いいか? あの人達は珍しい物を持っている。しかもキハナの旦那と言えば、あのクッコウグミの頭だ。 ご贔屓になれば俺達もおこぼれを・・・)


(クッコウグミって壊滅しませんでしたっけ?)


その言葉にチョンシクの頭をひっぱったいた。


「いたっ!?」


「馬鹿っ あの方達の事だ。すぐに復活するさ。それにあの女性を見てみろ。」


イルシクはそう言って、9mm拳銃を触っているアリアの方を指差した。


(あの女性がなんです?)


(美しい・・・)


(は?)


チョンシクは兄貴であるイルシクの顔を見た。その顔は完全に気の抜けただらしない表情をしていた。


(美しい女性には出来るだけ手助けをすると言うだろ?)


こいつ、それが本音だな。そう察したチョンシクは諦めたように頷いた。


そう会話しているタイミングで、木花が部屋の壁際に置かれている壺の中身を見て声をあげた。


「おいっ! これは何だ?」


「なになに? 何をみつけたん?」


「どうしたのだ?」


木花の言葉に、オタクとアリアが集まって壺の中身を見て口をぽかんと開けた。


「銃弾・・・?」


その壺の中身には大量の薬莢入りの銃弾が部屋の灯りに灯されて黄金色を輝せていた。


「あぁ、それですか? お客さんの多くが大使館から奪った列強の武器とかを持ってくるもんですから、買い取ってるんですよ。 倉庫には沢山ありますよ。 良く分からない書類とか。

このご時世ですからね、お客さんの多くが拾った銃を売って金にするんですよ。」


「列強の武器を持ってても使いこなせないのが大半ですからね。」


「拾った武器を持ってくるのかよ・・・」


どんだけ荒れてるんだこの街は・・・そう今の状況に呆れる木花だが、イルシクの言葉を思い出して聞き返した。


「待てっ! 武器以外もあるのか? 書類って言ったか?」


その言葉にオタクもハッとした反応でイルシクを見た。それにイルシクは訝しげに答える。


「えぇ、ありますよ。 質の良い紙とかは裏面を再利用したりするもんですから。」


「それを見せろ!」









ばんっ! どんっ!


突如として大テーブルの上に数箱を勢い良く載せてきたオタクに、この場にいる同僚達は困惑気味に聞いた。


「この箱は何だ?」


その言葉を待ってましたと言わんはかりの表情のオタクは嬉々として箱を開けてある物を取り出した。


大テーブルの上に探していたノートパソコンがオタクの手によって置かれると、目の前の席にいた6番が反応した。


「・・・は?」


「お探しの物。」


「・・・は?」


6番だけじゃなく、周囲の同僚達はみんな、唖然とした表情をした。


(し、初日で見つけただと!? 有り得ない! そんな馬鹿な話があるか!?)


そんな思いと共に慌ててノートパソコンを開いて隣のパソコンを操作している同僚に渡す。


「ん。」


渡された同僚は、懐からケーブルを取り出して自分のPCと渡されたPCに繋いで、専用のソフトを起動してパスワードを一瞬で解除した後、中身を暫く見続けた。


「ど、どうだ?・・・」


6番からの質問に、彼は大きく頷くと、感嘆の息を漏らした。


「間違いない。大使館から流出していたパソコンだよ。 外務省職員のメールや資料がびっしり載ってる。」


「おぉ・・・」


「やるじゃないか。」


「初日で見つけるなんて、どうやったんだ?」


周りの同僚達からも驚きと感心の声が漏れるのが聞こえた。そこへ12番がいまだ混乱の収まらない室内に響き渡らすように言った。


「決まりだな。 約束通りに2人はうちに迎え入れる。」


「ち、ちょっと待ったっ! 可笑しいだろ!」


6番の言葉に、オタクがつっかかる。


「なぁに? こっちは君の条件に従ったのにそっちは無理って言うつもりなん?」


「ぐっ・・・は、速すぎるだろ!? お前が裏でなにかをしたに・・・」


「えぇ? どうやって? 僕ぁ、今日初めてノートパソコンの件をしったんぁよ? どうやって裏でやるのよ?」


「い、いや待てよ! 絶対なんか可笑しい!」


オタクの煽り口調に顔を真っ赤にするも、録に反論も出来ない6番に、同僚が声をかける。


「もうよせ。 あの2人の実力は分かった。俺達は賛成だ。」


「その通り。 文句無しだ。」


「お、お前ら・・・」


6番は尚もどうにかしようとするが、オタクが別の箱の中身を次々と開けてトドメをさした。


「んな!?」


机の上には、大使館襲撃の際に奪われたであろう国防隊員の2人分の装備一式と銃器に、列強諸国の大使館に保管されていた重要書類が広げられた。


12番が書類の1枚を取って聞いてきた。


「・・・これは?」


「それはジュニバール帝王国の暗号解読表だよ。大使館の連中、録に処分する時間もなかったみたいだね。 それだけじゃなくて、この国で行った諜報活動の断片的だけど報告書をあるよ。」


「っ!?」


「ほう・・・それは大きいな。 暗号はすぐに変更される可能性はあるとして、充分な参考資料になる。」


「そうでしょう・・・で? アンタは、どうするの?」


オタクの言葉に、全員の視線が6番に集まった。それに6番はガックリとした様子で頷いた。


「わ、分かったよ・・・認めるよ。」


「よし。 これで現場の意見は一致したな。あの2人は仮ではあるが、零課の職員待遇として扱う。

・・・それと、どうやら列強諸国の本土で大規模な軍の動きを国防省が確認したらしい。

もしかしたら早急な撤収指示が来るかも知れないから各自は準備をしておけ。」


「ん? ならあのお嬢ちゃんはどうすんだ?」


「それなんだが・・・本格的に保守派の取り締まりが厳しくなってる。あのお嬢ちゃんも禁近衛庁が捕らえるって話だ。 我々の情報が漏れる前に本国に引き入れるかもな・・・」







   日本国 北海道 第14師団 師団本部



北海道を拠点する日本国防陸軍 普通科以外に多数の戦車部隊で構成される師団のトップに座る鬼導院師団長が参謀と話をしていた。


長年の勤務がかたったのか頭部は完全に禿げとなった壮年の男性である師団長は、忌々しげに言う。


「ふん・・・あの男め、一足先に出動準備をしておけ、と言ってきたか。 気の速い男だ。」


「それは国防大臣のことですか?」


「さてな・・・まぁ命令通りにやるのみだ。

 第14師団の各連隊長と大隊長を集めろ。外征の前準備だ。」


その言葉に参謀は応え、彼から離れた。鬼導院師団長は、そこから基地内を見渡す。


そこには複数の90式戦車が並べられており、今は整備中であった。


「・・・列強か。 相手がどうであれ、私は仕事をこなすだけだ。」


そう言い、鬼導院は90式に背を向けた。


話が進まない・・・こうなったら多少、早足でもいいからどこかのタイミングで一気に走らせたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 木花達は暴動前までの活動とそれで得た情報、裏社会の経験値をもって試験を突破するだけでなく、お目当てのノートPC以外にも多数のオマケまで持ってきて合格できたようで何よりです。 [気になる点]…
[一言] 予算があるなら書類とかは定期的に全部買い取って情報集め件恩を売れば良いのにな 銃弾や銃に関しても予算があれば治安の関係からかってもいいし。 くそ怪しい人間が盗賊ギルドにながしているならそこか…
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