第49話 本部長のパーティー 後編
さてまた、時間が空いてしまい申し訳ありません。
海外ドラマとかに嵌まってしまいもう脱出出来ません・・・
でも何気に小説に使える情報が入ってるから助かりますね笑
第49話 本部長のパーティー 後編
「・・・噂よりも以外に若いのね。」
パーティー会場にて、噂の日本人である小島本部長の姿を見たこの国に4家しか無い侯爵家の令嬢チェレリア・デンネーマは、そう呟いた。
「チェレリア。大丈夫か?」
会場の隅で本部長を観察していると自身の父親であるデンネーマ侯爵家の当主であるガナマアド・デンネーマ侯爵が声を掛けた。
「御父様、はい問題ありません。」
「そうか。そろそろ彼に紹介に行こう。頼んだぞ。」
「お任せください御父様。」
デンネーマ侯爵が娘を連れて本部長の方へ歩み出すと様子見をしていた他の貴族・商人達が反応する。
「伯爵、遂にデンネーマ家が・・・」
「クルセナ侯爵の次はデンネーマ侯爵か、王族の方々はまだ様子見なのか?」
「やはり豪商とはいえ平民相手に自分から向かうのに抵抗があるのでょうな。」
「如何します?貴公もご息女を連れては?」
「いや、私は遠慮しときます。実はアットン伯爵から圧を掛けられていて・・・」
「む?侯爵家が動いたぞ。」
「なに?あの方は・・・デンネーマ家か。」
「ご令嬢をご覧ください。きらびやかな真珠のネックレスを着けています。」
「あれはお前の所の宝石か?馬鹿、我々に自慢してどうする。」
「宝石商の方々は今回の祝賀会で大儲けでしたでしょうな。」
「今そんな話はどうでもいいだろ?我々も彼とお話がしたいのだが・・・」
「大貴族の方々を差し置いて我々が行けば商会長はともかくだが、睨まれるぞ?」
そんな話がちらほらと聞こえるが2人は無視し、本部長の前まで近付く、それに本部長等も気付く。
(本部長、あちらの御二人はデンネーマ侯爵家です。)
(あぁ、覚えてる。前に挨拶していたからな。娘らしき方は初対面だが。)
(娘の方は貴族淑女学院で優秀な成績を修めているようです。侯爵クラスですから話術も相当なものだと思います。気を付けてくださいね。)
(分かってる分かってる。)
デンネーマ侯爵の2人が彼等の前まで近付くと声を掛けられる。
「お久しぶりです小島殿、本来ならばもう少し速くご挨拶したかったが申し訳ない。それとこの子は私の娘のチェレリアです。チェレリア、ご挨拶を」
ガナマアド侯爵がそう言うとチェレリアは優雅なお辞儀をしてから、本部長の目を見て挨拶をした。
「御初にお目にかかります。小島様、父よりご紹介お預かりしましたチェレリア・デンネーマです。どうかチェレリアとお呼びくださいませ。小島様とこうしてお会いできて誠に光栄です。」
そう紹介され本部長も返事をする。今日だけで何回もやった挨拶を。
「これは御丁寧にありがとうございます。私は日本国で活動する小島商会の本部長という役職を頂いております小島修治と申します。ガナマアド侯爵閣下そして見栄麗しいチェレリア嬢とお会いできて此方こそ光栄です。」
こうして互いの挨拶が終わると次は軽い世間話が始まる。ここまでの流れは何度も行った流れだ。
今回の立食会の感想に互いの服装を褒めあい、互いの最近の身の上話といった何気ない会話を楽しむ。
そんな会話の中でガナマアド侯爵は港について聞いてきた。
「ところで小島殿、港についてだが・・・いったいどこまで改修なされるのか?もう既に充分過ぎる程に立派なものになっているが・・・」
そう侯爵は言うとテラスの方を見る。この王城はちょっとした丘の上に建造されているので、窓やテラスを見ると都市内を見渡せる。
そして侯爵が見たテラスには丁度港が見える方向にあり、今は既に日が暮れているが港やそこに停泊している日本船の照明によって現地人から見ると幻想的な光景となっている。
「あぁ・・・確かに当初の依頼通りの改修は殆ど終了しておりますね。」
本部長が苦笑いしながらそう言うと侯爵は訝しげな表情をする。
「?・・・ではもうすぐ撤収されるということですかな?それにしては今日も多くの大型船が資材を大量に運んでいたと聞いたが。」
「あぁ、奥の方のあちらが見えますか?」
本部長はテラスの方まで歩きそこから見える港の奥の方にある海上に建てられた柱を指差す。
「おぉ、あれですかな?確かに見えますが何故あそこに柱が?」
侯爵は疑問に思い本部長に聞く。しかし娘のチェレリアは何か知っているようだ。本部長が何かを言うより先に口を開く。
「確か・・・海上に建物を建設する為の柱だとお聞きしました。」
その言葉に侯爵は少し驚く。自分が知らない事を娘が知っていることにだ。小国とはいえども彼は侯爵、りっぱな支配階級者である。
そんな彼の元には多くの情報が常に届く。それこそ大貴族ならばより確かな情報が迅速に届けられるものだ。
そんな自分よりも先に娘がどうやってその情報を手に入れたか気になるがそこで彼は先日、チェレリアは港に遊びにいったと聞いたことがあった。恐らくその時に聞いたのだろうと考える。
「チェレリア、ひょっとすると港に行った時に聞いたのか?」
「はい、お父様。港を歩いた時に聞きましたわ。」
それに侯爵は納得する。しかしそういった情報はすぐに自分に連絡して欲しかったと苛立ちを覚えるが、本部長が口を開いたのでそれに集中する。
「そうでしたか。確かにあの柱はあの上に建物を建てる為のものです。我々はあれを海上プラットホームと読んでいます。それとあそこに以外にも何ヵ所かあれと同じような物を建てています。あと1ヶ月もすれば全体像が分かりますよ。」
(海上プラットホーム・・・港の民達から聞いた際には日本が欲している資源採掘の為に建造しているとか。わざわざ海の上に建てるだなんて・・・)
チェレリアは心の中で彼のひいては日本の力に驚く。
そしてそんな彼女達の話に聞き耳をたてていた貴族達も驚愕する。
貴族達が日本の技術力に驚くなか、そんな彼等の間をずかずかと歩く男がいた。貴族達はそんな男の顔を見ると慌てて道を開ける。相手は王族しかも第一王子であったからだ。
本部長達はそんな王子を見て会話を中断する。その王子がこちらに近付いて来たからだ。
ガナマアド侯爵が王子に声を掛ける。
「これはドメル殿下、ご機嫌麗しゅうございます。王国の若き太陽の「挨拶は良い。私は彼に確認したいことがあるだけだ。」
ドメル殿下と呼ばれた男、ドメル王子は不機嫌そうな表情を隠すこともせずにガナマアド侯爵の挨拶を遮った。
そんな王族らしからぬ態度に本部長と秘書達は違和感を覚えるがそれは無視してドメル王子に礼をして挨拶をしようとするがやはり途中で遮ぎられた。
ドメル王子の日本の有力者に対しての失礼な態度に周りは冷や汗をかくがドメル王子は構わずに本部長に質問をした。
「小島・・・殿に聞くが、貴国しいては日本は一体どういうつもりか?」
その質問に本部長達は困惑するがそれは顔に出さずに質問の意図を聞く。
「ドメル殿下、それはどういう意味でしょうか?」
「白々しいぞ。」
その言葉にガナマアド侯爵は初めて慌てた表情をしてドメル王子を止める。
「殿下っ、小島殿に対してそれはいささか無礼ですぞ。この方は日本を代表して来られた国賓ですぞ!」
「無礼だと!?ではその日本は一体どうなのだ!?外交大使は来ずに代わりに外交官ですらない者が我が物顔でいるのだぞ!日本はこの国を蔑ろにしている何よりの証拠ではないかっ!これこそが無礼であろう!」
その発言にガナマアド侯爵だけでなくチェレリア令嬢と周りの聞こえていた貴族、商人や神官ひいては他の王族達は血の気が引いた。
列強しかも列強2ヶ国を同時に相手をして勝利した軍事大国の有力者に対してのその物言いは間違いなく外交問題になると想像出来るから。
「正気か?」
誰かの呟きが聞こえる。本来ならば不敬罪として処罰されても可笑しくない程の大罪だが、今この場にいる者達全員の言葉を代弁してくれた。
それは本部長達も同じである。互いの国力差は比べ物にならない程に離れている。ましてやこの国の基準では高度な教育を受けている筈の王子がそれをやったことに驚愕している。
(この男・・・なんのつもりだ?まさか本気でこの態度をとるとは。)
本部長もそう思うことしか出来ない程に驚いていた。地球でも自身にここまでの態度をとった人物は居なかった。どの政治家や資産家達でもそれなりの礼儀を守ってくれたからだ。
この異世界でも何ヵ国かの要人と会話をしたがここまでの暴挙に出た者は日本が列強国になってからは居なかった。それ以前はそもそも国外に出ることは無かったので今回のは本当に驚きである。
この場で最も不運なのは間違いなくガナマアド侯爵であろう。自身が本部長と話をしているタイミングでドメル王子の乱心に付き合わされているのだから。
今までの和やかな雰囲気とは一変して最悪な空気となってしまった会場ではガナマアド侯爵が必死にドメル王子と本部長を離れさせようとする。
「で、殿下っ!ひとまずあちらの談話室へ向かいましょうぞ!小島殿っ殿下は連日の公務でお疲れなのです。どうか暫しお待ちを!」
「あ、はい。分かりました・・・」
ガナマアド侯爵の言葉に他の大貴族達も慌ててドメル王子を別室へ連れて行こうとする。本部長達はただ困惑することしか出来ない。
「殿下っこちらへ!どこぞの者が殿下にそのような根も葉もないことを申したのでしょう!」
「そうです!日本の大使殿は、ご多忙ゆえに欠席しておられるのです。決して我が国を蔑ろにしておひません!」
「えぇい!黙らぬかっ!貴様達はこの国の貴族としての誇りを忘れたか!?列強だからと平民に媚びへつらいこの国の格式を落とすつもりか!それでよく貴族が務まったも「殿下っ!」
ドメル王子の言葉を遮ったのはこの国の宰相であるクルセナ侯爵だった。
宰相といえども王族のしかも第一王子に対するその態度にドメル王子は苛立ちを覚えるも何かを発する前にクルセナ侯爵が口を開く。
「陛下が御呼びです。こちらへどうぞ。」
「父上が?・・・ちっわかった。」
流石のドメル王子と言えども国王に呼ばれたのならば最優先で向かわねばならないことは理解している為にクルセナ侯爵には何も言わず歩く。だが、数歩歩いた後に本部長の方を振り向き、睨みながらこう言った。
「いかに列強と言えどもこの国を蔑ろにすることは王子であるこの私が許さぬ。それを肝に命じておけ。」
「殿下、我々日本は決して貴国を蔑ろにしているわけでは御座いませぬ。誤解を招いたことは大使に代わって私が謝罪致します。」
「殿下、陛下がお待ちなのです!おはやく!小島殿、誠に申し訳ございませぬ!」
クルセナ侯爵はそう謝罪してドメル王子を連れていく。その場に残った貴族達は必死に本部長のご機嫌を取ろうと話し掛ける。
「こ、小島殿っ。殿下は決して悪気があって申したのでは御座いませぬ。」
「さよう。この国で貴国に不満を持っている者などおりませぬ!どうかそれだけは誤解なきように・・・」
そう必死な表情で話し掛ける彼等に本部長はいつも通りの表情で喋る。
「ご安心くたさい。私はなんとも思っておりませんよ。殿下もきっと誤解なさっているだけ。今後とも手を取り合ってゆきましょう。」
その言葉に周りは安堵するが完全には安心できない。本来ならば激怒して本国に派兵させても可笑しくない程のことをしでかしたのだから。
この世界でもかつての地球の列強時代でも列強国とは法そのものである。列強国の要人が中小国程度の国ならば気にくわないだけで滅ぼしても平然と許されるものだ。
ましてや今回は王族が列強国1の資産家の息子に暴言を吐いたのだ。王族がそれをやってしまった以上はそれがその国の総意だと捉えられても可笑しくない。
だからそこ彼等は何としてでもそれを防がなくてはならない。中小国程度の国では列強国に叶うはずがないのだから。
そして当の本人である本部長も内心では苛立っている。新鮮な気持ちを味わえた楽しさもあったがそれを上回る怒りを感じている。それを敏感に感じ取った秘書が耳打ちをする。
(本部長、ひとまず休憩室へ入りますか?少し気を落ち着かせた方がよろしいかと。)
(あぁそうしよう。)「失礼、少し隣の休憩室へ行きます。流石に少し疲れてきてしまいましてね、いやぁお恥ずかしい。すぐに戻ってまいります。」
それに彼の内心を瞬時に察した貴族達は必死の作り笑顔で道を開ける。表情は笑っているが内心は非常に怯えている者が大半だ。
休憩室に入った本部長と秘書、護衛の職員達は周りに誰も居ないことを確認して本部長は備え付けられているソファに身を預け口を開く。
「あの王子は一体何なんだ?」
その言葉に秘書が答えた。
「彼はドメル・ビタイキイ・アルフリック第一王子ですね。現国王の長男で歳は24。武芸に長け、学問も優秀な成績のようなんですが・・・」
「あれでですか?」
学問が優秀だという言葉に元レンジャーの護衛職員である仲沢がそう口にする。
「私の情報はあくまで人づてからがメインですから。しかしまさかあそこ迄の考え無しだったのは予想外です。他の列強ならば間違いなく戦争ものです。」
「民主主義様々ですね。まぁそうじゃなくてもうちにそんな余裕なんて無いんですがね。」
「・・・この国に長居し過ぎたな。ここの調整も終わったしそろそろ国に帰るぞ。」
「あの後に帰国したらあの人達、絶対誤解しますよ。」
「そんなもの知らんよ。後は小林さんに任せるよ。元々あの人が来なかったからこんな事になったんだから、その責任をとって貰うよ。まぁそんな面倒ごとにはしないよ。工事に影響が出たら私が会社に責められる。」
「分かりました。ではそろそろ戻りますか?向こう側を安心させとかないと何するか分かりませんからね。」
「そうしよう。他の連中の挨拶もさっさと終わらせてすぐに帰らせて貰うよ。」
本部長はそう言いソファから立ち上がり会場へ戻り出す。戻ってきた本部長等を見てまた、貴族達がご機嫌を取ろうと集まってくるのをうんざりしたような気持ちで処理していく。
その頃、大問題行動をしたドメル王子はクルセナ侯爵と共に国王の前まで歩いた。
2人を見た国王は彼等を連れて別室へと入った。部屋に入り3人だけになったのを確認した国王は開口一言目にドメル王子を怒鳴った。
「お前はなんて事をしてくれたんだ!!」
その反応にドメル王子は悪びれる様子もなく平然と反論した。
「父上!貴方まであの男を庇うおつもりですか!?国王ともあろう方が何故、外交大使ですらない平民に媚びへつらうのですか!」
その言葉に国王は思わず顔を手で覆う。まさか自分の息子がこんな無茶苦茶なことをしでかしておいてこんな言葉を吐くのだから。
「お、お前は列強を何だと思ってるんだ?しかも相手はただの平民ではなくて日本有数の資産家なのだぞ?そしてその父親は日本最大の商会の主だ!」
「だから何ですか?所詮はただの商人です。」
ドメル王子はそれがどうしたのかと言う表情で聞き返す。それにクルセナ侯爵は口を開く。
「・・・恐れながら殿下、列強国の大商会は我等の知る商会とは違うのです。それらの大商会はそれぞれの列強国の権力者とも関係が深く中には独自の軍を保有する商会があるのです。有名な所ではチェーニブル法国のゴンボラート商会でしょう。」
ゴンボラート商会・・・最上位列強国であるチェーニブル法国の最大規模を誇る企業で実際の企業名はゴンボラート・チェーブル総合会社だ。
チェーブルという一族が財閥として経営しており、多くの分野に事業を展開している大企業だ。
兵器産業にも展開しているので独自の私兵を持ち植民地の反乱軍や海賊達を蹂躙していて下位列強国ですらも相手に出来る程の規模を持つと有名だ。
「あの男の商会もそれを持っていると?」
「列強国なのだぞ?持っていても可笑しくない。そうでなくとも本国の権力者達とも懇意にしている筈だ!そんな相手に対してお前はあんなことをやったのだぞ!?お前には港のあの巨大船が見えないのか!」
「大きいだけの船ですよ。大した大砲も無いじゃないですか。」
「あれが軍艦ではないからだ!それだけじゃない!あれ程の船を造る技術!それを保有する国力!何もかもが我が国とは違うのだ!せっかくそんな列強国がこの国と国交を結び、港だけとはいえ技術援助までしてくれたのだぞ!?あんなことをして只で済むと思っているのか!!」
本来ならば即座に本部長に直接謝罪させたいところだが、当の本人がこんなものだからそれも出来ない、火に油を注ぐようなものだ。国王自ら謝罪という手もあるが最低限の国王としての格式も守らねばならず、国王は必死に息子を説得することしか出来なかった。
「オーマバス神聖教皇国を忘れたのか!?あの国がどれだけの強引な要求をこの国にしてきたのを忘れたとは言わせないぞ!」
「だからこそですよ父上。日本はオーマバスとは違い対等な条約を結んできた。お陰でこの国の経済は活性化して100年振りの独立を果たしました。数年前と比べて財政も良くなり他国との自由な貿易も可能になりました。」
「お前・・・それを知っていて何故あんなことをっ」
「日本は恐れているのですよ?」
「は?」
国王は何を言っているんだという表情でドメル王子を見る。クルセナ侯爵も目を見開いていた。
「何故列強ともあろう大国がこんな小国と対等な関係を築くか、それは日本はこの国を恐れているからでしょう。」
「お、お前は・・・いや、何故そう思う?」
国王はこれ以上聞きたくなかったが何か深い考えがあると願いそう聞く。
「日本は先の戦争でレムリアとも戦ったと聞きます。列強2ヶ国と戦い無事で済む筈がありません。レムリアと早期に講話を結んだのもそれが理由でしょう。本土全域を占領することも出来ずに軍を撃退することしか出来なかったのが何よりの証明です!」
国王は今すぐにでも殴りたい衝動に駆られるが何とか理性でそれを押し殺す。
列強2ヶ国と交戦して無事では済まないというのはまだ分かる。だが、本土全域を占領することが出来ずに軍を撃退しただけだと?その軍を撃退するだけの力を持っていることに何故気付かない?少くとも日本はあの2ヶ国を上回るだけの軍事力を持っている何よりの証明じゃないか。
世界有数の物量を誇るレムリアが消耗を避けるために日本と講話を結んだのだぞ?
オーマバスは主力の殆どを失い首都を占領された。これらはたったの1年足らずの出来事なんたぞ?
尋常じゃない程の軍事力を持っていることに何故気付かない?こっちは独立したばかりでまともな軍はたったの数万人程度のちっぽけな規模だ。
だが、向こうは?その気になればレムリアを動かせれるし、何よりも先に隣国のソマナ連合議会国が日本の劣兵となるであろう。日本からの覚えを良くしても貰うと。
「・・・もういいお前は暫く城から出るな。いや、お前は自室謹慎を言い渡す。」
ただの謹慎ではなく自室の謹慎処分、それは食事も風呂もトイレも何もかも自室のみで行えという意味だ。第一王子ではある故に部屋は広いがその空間でのみ生活しろというには狭すぎる。これにドメル王子は反対をする。
「父上!!王おしての誇りをお持ちください!私はこの国の為にも申し上げているのです!」
「殿下、もうお止めください・・・近衛っ!殿下を自室へお連れせよ!」
クルセナ侯爵の命により外に控えていた近衛騎士がドメル王子が連れ出される。それを確認すると国王にこう言う。
「小島殿には私の方よりドメル殿下の処分を伝えておきます。」
「あぁそうせよ。余も書簡を彼に送ろう。」
「はい。日本からの戦争の可能性は世界情報通信会社の記事が正しければ低いでしょうが・・・もうこれ以上の支援は無理でしょうな。」
「と、とにかく他の大使達の動向も見張るのだ。何としてでも戦争だけは回避せねば・・・」
その後、国王はクルセナ侯爵を連れて会場に戻り本部長に王子の非礼を詫びたが、その1時間後に本部長達が帰ったのを聞いて国王は滅亡を覚悟したのは別のお話である。
立食会から数日後
同都市 小島グループ支部
「これは・・・凄いな。」
本部長の護衛職員である仲沢は支部の敷地内に設けられた中庭に積まれた大量の荷物を見てそう呟く。
今、彼の目の前には別の職員や現地で雇用している使用人達が貴族や商人果ては王宮から贈られてきた贈り物がこれでもかと言わんばかりに積まれていた。
この支部自体もそこらの貴族の邸宅よりも広い敷地を誇りその中庭も大型車が何十台も停めれる程の広さを持つがその敷地の半分を既に占領していることからもその量の凄さが見ただけで分かる。
「あそこの一角だけで大型トラックでも満杯になりますよ・・・呆れた量ですね。」
仲沢の隣に立っていた後輩の吉田柳三がそう言う。
「中身も凄いぞ・・・この目録を見てみろ。」
仲沢が支部の職員に渡された目録表を吉田に見せる。吉田はそれを手に取り読み始める。
(大理石の彫刻、等身大の彫刻、絵画、書物、黄金の腕輪、銀の刀剣、金の鎧、サファイヤとルビーの指輪、金製の弓矢?・・・馬が4頭に小型の魔獣まであるのか。これは・・・マジか、ヤバイだろ。)
「な、仲沢さん、この3頁目の奴って。」
吉田が目録表に書かれている中にあるものを見つけて仲沢に聞く。その仲沢は内容を察したのか苦虫を噛み潰したような表情でこう言った。
「あぁ・・・あれか。分かるよ、さっきも皆で話し合った奴だからな。こっちの身分制について知らない奴がいたんだろうな。」
2人が話しているものは、贈られてきた物の中に人が混ざっていたのだ。つまり奴隷を送ってこられたのである。
当然ながらそんなものは受け取れない為に後で送り返すようにしている。
「しかし・・・これだけの贈り物ってどうするんですかね?他の大陸で売り捌くのかな?」
「ん?いやこれらは全て返却する予定だ。」
「え?何でです?勿体ない。」
「法務部の連中がそう言ってる。こういった技術の未発達の国からの贈り物を受け取るのは禁止らしいんだとよ。まぁ少量ならば問題無いらしいんだが、この量だからな。あとは税金とかがうるさいんだろうよ。」
仲沢の言った内容とは、日本が転移後に発令された法令で、他国からの贈答品に関するものだ。
他国の特に中小国等から贈答品を受け取る際には申告が必要になり、更には量によっては返却せねばならないのだ。
これの法律の最大の目的は技術漏洩防止である。贈答品を手土産に日本の高度な技術を無闇に流出するのを防ぐ為にこれが可決された。
日本だけでなく他の列強国でも採用されており、これにより技術的優位性を強固にしている。
「そうなんですか・・・」
「まぁ会社宛ならばまだしもこれらは全て本部長の個人宛だから、余計に駄目なんだよ。税金が余計に取られる。」
「本部長はこの贈り物は見たんですか?」
「朝、ちょっとだけ見渡してすぐに戻ったよ。あの人にとっては他の大陸でも何度もあったようだからな。」
「マジですか?流石は財閥の御曹司様は違いますね。」
「他の財閥とは訳が違うからな。アジアトップの座を何十年も守り続けているんだ。」
余談だが小島グループ以外にも幾つかの財閥が日本にはある。戦後のGHQの統治で解体されずに日本経済を支え続けてきた。
そこに小島グループが世界に進出し、転移前は世界の大企業にまでに成長した。
「あぁそれと秘書さんから伝言だ。4日後に帰国するからそれ迄に荷物を纏めとけだとよ。」
「やっとの帰国ですか。今回は長かったですね。」
「立食会とあのプラットホームの建設も絡んでたからな。だが、これで暫くは安全な母国での勤務だ。」
「最近は他の大陸で物騒なことになってると聞きますからね。速く帰りたいですよ。」
「帰ったら俺達は訓練が待ってるけどな・・・?」
仲沢が話しているとあることに気付く。それに吉田が訝しげに聞く。
「どうしましたか?」
「本部長が来てる・・・こっちを見てるな。俺達に用があるのか?」
仲沢が見た先には確かに本部長が秘書と共にこちらに近付いていた。やや早歩きでしかもただ事ではない表情でだ。
それに2人は何かを察して本部長達の元まで走った。念のために腰に着けた拳銃をいつでも発砲出来るように安全装置を外す。
「本部長、何事ですか?」
仲沢がそう聞くと本部長は険しい表情をしながらこう言った。
「2人とも直ぐに帰国の準備をお願いします。これから船に乗ります。」
そのいきなりの言葉に2人は困惑する。
「い、今からですか?護衛の船は?」
この付近の海域は比較的安全とはいえ、大型の魔獣や海賊もゼロではないので、民間船は未だに船団を組んで海軍の護衛が必要だ。そしてその船団護衛のスケジュールは彼の記憶の限りは4日後の帰国日にしか無かった筈だ。
「既に海軍の『とね』と『めいけい』がここに来てくれてます。」
秘書がそう言う。それに2人は顔を見合わす。この2隻はいずれも本土にいる筈の艦でしかも『めいけい』は去年に就役したばかりの最新鋭艦だ。
「な、何故そんな急に・・・本土で何が。」
本部長は周りに聞かれないように小声で話す。
「・・・先ほど本社と国防省からほぼ同時に連絡が来ました。こことは別の大陸で現地人と日本人、列強国人での銃撃戦が起こったと。それも大規模な」
「「はい!?」」
「詳細はまだ分かりません。最悪、また戦争の可能性がある為に今から帰国します。」
「わ、分かりました、すぐに荷物を纏めます!」
そう言って2人は大急ぎで部屋に戻る。
事の発端は少し前に戻る。これは1つの大陸国家と日本そして複数の列強国が絡む大事件の始まりに過ぎなかった。
ここまでありがとうございました。
次はたぶん、戦闘シーンもあると思います。
皆さんは戦闘回の方が面白いですかね?平和回がつまんないと感じたらすいませんでした。
感想欄にて教えてくださいませ。
それらで内容の比率を変えたいと思います。これからもこの作品をよろしくお願いします!
ではまた、今週中にまたお会い出来るように頑張ります!




