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強化日本異世界戦記  作者: 関東国軍
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第44話 暗躍する者達

遅れました!すいません!

第44話 暗躍する者達



      日本国 東京 国防総省


日本の国防を担う組織、国防総省のとある会議室では、国防大臣とその幹部達が揃い会議をしていた。


「では、核についてはまだ大臣達はまだはっきり決めていないと?」


国防総省に所属する国防陸軍省の長官が国防大臣にそう質問する。


質問された国防大臣、岩田智之は彼の質問を素直に答えた。


「そうだ。自分達が核兵器も持つことに嫌悪感を感じている。それに任期も近い。ここで明らかな反発を招く行為をしたくは無いからな。」


「しかし現状では防衛状況に限界があります。オーマ島の駐屯している部隊は1個師団分で最低限度にしていますが、過激派からの対応に人手不足です。」


「それだけではありません。遠方にある列強国等から輸入した石油等のタンカーや貨物船の護衛の為に少なくない数の艦を動員しているのです。」


彼等の訴えの通りにオーマ島に駐屯している国防陸軍は一部のメンリルバス教の過激派から今でも襲撃を受けることがあるのだ。


武装した彼等に対して市民に毛が生えた程度の武装では大して脅威ではないのだが、彼等には魔法がある。攻撃魔法を喰らえば武装していようとも、厳しいものがあった。


小規模な為に負傷者は出ているが死者はまだ出ていない。だが、いつ彼等が徒党を組んで大規模なテロ行為をするか分からない。未然に防ごうとしても日本よりも広大な島を1万人程度で完璧に対応するには無理がある。


一応地球連盟国にも駐屯軍はいるが、彼等の手を借りても各地で動く過激派に手を焼いている状態だ。


そして各地の日本国籍のタンカーや貨物船が他国の貿易の為に行き来しているのだが、地球よりも遥かに広大なこの世界では片道で数万キロメートルを超えるのは大して珍しくない。


その航路の間に海賊や魔海獣が襲ってくることがあり、その護衛の為に国防海軍が動員されているのだ。


だが、国防海軍が護衛に回せる艦は限られている。その為に民間船は商隊を組んでその集団に数隻の戦闘艦で護衛して効率を図っているが、貿易の観点から見るとこの方法は非効率的なのだ。


しかし被害を出さないようにもこの方法を採用するしかない。輸入品はどうしようもないが、輸出品は現地の工場の設備が完全に整い始めたので、輸出品を載せた貨物船の数を減ってきてはあるが、やはり民間人からのクレームが来ていた。


「すまない。説得は続けるつもりだ。お前達は各軍の拡張に集中してくれ。今年の志願者も多いのだろ?数年の辛抱だ、耐えてくれ。」


そう言い岩田国防大臣は幹部達に頭を下げた。その様子に幹部達は慌てて頭を上げるようにお願いした。


「兎も角、弾道ミサイル等の開発準備をしておいてくれ。最悪、否決されても秘密裏に開発をするんだ。あれを含めてな。」


「あれ」という言葉に幹部達は何のことかを察した。彼等にとってこの国の切り札になりうるものを異世界転移後に考案していたのだ。


それは明らかな職務違反であり、法律にも反している。だが、彼にとってそんなものはどうでも良い。異世界転移という未曾有の危機からこの国を守るのに規則など守ってはいられない。


彼はそれに気付き、行動に移した。この件のことを知るのはここにいる者達と野村総理、一部の国立科学研究所の職員そして、JAXA・・・宇宙航空研究開発機構の責任者とその管轄である複数の省の一部の職員だけだ。


極秘中の極秘であるが故に一部の大臣達にしか知らされていない計画は、あの特殊急襲制圧部隊の時のように厳重な情報統制がされていた。


「しかし・・・何かと秘密事が多いですね。我々は、これでは国民の信頼を失いそうですよ。」


幹部の1人がそう言った。


「国を守る為だ。それに虐殺の為ではない。そう信じて突き進むしかない。それが我々の役目だ。いつか隠し事のない時代が来るさ。それまでは我々が犠牲となるのだ。」


「重苦しい空気になりましたね。話題を変えましょう。横須賀にある新たな造船所の確保が完了しました。これで更に2隻を同時に製造することが可能になります。そしてこの内の1ヶ所はあの大型強襲揚陸艦に当てます。その後に空母の方は在日米軍が利用していた空母の修理用ドックを利用して・・・」


彼等の会議はまだ続いた。彼等の選択が間違いではないこと祈る。








「オリビア・エイベル、貴官はこれより新たに列強国となった日本に向かい情報を集めよ。貴官の身分証はこの書類に入っている。完璧に覚えろ。」


「了解しました。」


場所は変わり、たった今オリビア・エイベルと呼ばれた長髪の金髪女性、ジュニバール帝王国情報統制管理省の高等情報処理課の職員である彼女は自身の上司である課長直々の命令を承った。


彼女の所属する高等情報処理課とは国外の重要情報主に列強国等を相手に情報を集めるエリートしか入れない課である。


その課でも彼女は1番の実力を持つ言わばスパイとして活躍していた。まだ20代半に入ったばかりの彼女は今までに数々の情報を持ち帰った成果があるために今回の任務を任されていた。


そんな彼女はいつも通りに任務を引き受け、早速これからの自分の素性を確認した。要約すると下記の通りになる。


・エルミハナ大陸 アルシンダ王国出身


・年齢23歳 名前ルナ・ミカエリナ 



そして、その身分証には本物と酷似した身分証があった。高度な創造魔法を使えばアルシンダ王国の発行している身分証など簡単に作れる。


「まず最初にエルミハナ大陸のアルシンダ王国首都に向かえ、そこで協力者と合流するんだ。」


「了解しました。」


そうして彼女は飛行機で複数の大陸を横断した後に船でエルミハナ大陸へ向かった。これだけで1ヶ月半も掛かってしまったがそのお陰で自身の偽の身分証は完璧に暗記できた。


ようやくエルミハナ大陸のアルシンダ王国首都に到着した彼女は港から程近い酒場に入りそこである人物を見付けてその人物のいるテーブル席に座り周りに聞かれないように話し掛けた。


「久し振りねビリー。」


「ここではロジリナだ。そしてお前の上司となるわけだ。」


ロジリナと名乗る男、30代に入ったばかりであろうその男はルナと同じく高等情報処理課の職員で彼は1年前からここで生活していた。


「分かっているわよ。」


「うむ・・・いつ見てもお前の変装魔法は見事だな。それならば見破られる心配はないだろう。」


ロジリナはそう彼女に言った。彼の言う通りに彼女は顔が変わっていた。髪型は少し変えただけだが、目や鼻、口が完全に別人となっていた。


そう、彼女は高位の魔法の使い手である。彼女はこれを使って今まで任務を遂行してきた。


幻術魔法とは違い、実際に顔の形を変える魔法を行使して変装をしていた。その為に触れられても気付かれる心配がない。


「そう?ありがとう・・・それよりも聞きたいことがあるんだけど。」


「言うな、察しはついている。この街についてだろう?」


「えぇ。まさかここまでだなんて、実際に目にするまで半信半疑だったわ。」


彼女はこの都市の予想以上の発展振りに驚いていた。何度も上司からや自身の伝を使ってその情報を聞いてはいたがどうにも信じられず、実際に目にしてようやく信じきれたのだ。


「ニュースでは、こんな辺境の大陸なんて報道されないからな。するのは日本や地球連盟国のことばかりだ。」


「最近になって鎖国政策を緩和したから余計にこの大陸が注目されてなかったということね。」


「そう言うことだ・・・っと、もうすぐ日本行きの船が到着する。今のうちに手続きを済ますぞ。」


「了解。」


「あぁそれと、今回は俺とお前以外にも4人程追加で行くことになっている。」


「分かってるわ。」


2人はそう言い酒場を後にした。彼女等はこれから日本に向かう日本の客船に乗り込んだ。最初の入国審査に難なく通過出来た。





        日本国 福岡県


短い船旅を経て日本に到着した彼女等は降りた場所で最後の入国審査を受けていた。彼女は身分証と最初の入国審査で貰った入国許可証を持って入国審査官と話していた。


「出身とお名前をお願いします。」


「アルシンダ王国出身、ルナ・ミカエリナです。」


入国審査官は入国許可証を見てそう聞いた。


「入国の目的は?」


「私の叔父とその同僚と一緒に日本の観光に来ました。」


「叔父とですか?ご家族ではなく?」


「はい。家族は事故で亡くなっていて叔父の所で引き取って貰いました。」


「そうでしたか・・・申し訳ありません。」


「構いません。もう何年も前のことです。」


「はい・・・問題ありません。ようこそ日本へ」


入国審査官はそう言い、入国許可証に許可の判子を押して彼女に返した。


「ありがとうございます。」


彼女はそれに笑顔で言った。これで最初の難関は突破した。これで次は情報収集だ。



「・・・お、お前も無事に通過したか。」


港から出るとロジリナと4人の男達が先に待っていた。


「お陰様でね・・・でも叔父とその同僚だなんて不自然じゃないの?その家族とかでしょ?普通」


「普通はな。だが最近のアルシンダ王国じゃあ、日本と貿易してる商会の連中が自分の子供や姪っ子を連れて行ってるんだ。ガキどもに日本の商品の見る目を肥えさせる為にな。それと親が死んだなら同情して通し易くなるからな。」


「そう言うことね。」


「そうだ。ここからはバスに乗って一気に日本の首都東京に向かうぞ。」


「分かったわ。」


彼女等はそのままバスに乗り込み東京を目指した。その様子を遠目から見ていた男達がいた。


「・・・先輩行かせて良かったんですか?」


先輩と呼ばれた男、公安の職員の男は答える様子がなく、後輩らしき男は言葉を続けた。


「あの身分証、ICチップが無かったんですよ?」


彼の言った身分証とは彼女等が持っていたアルシンダ王国から発行されていた身分証の事である。


アルシンダ王国から発行していると言われているが、実際には日本が裏で発行しており、他国では製造出来ない極小のICチップが埋め込まれていた。


ジュニバール帝王国が用意した偽の身分証は高度の創造魔法のお陰で外見こそ完璧にコピー出来たが、身分証の中にあるICチップまでは魔法の力で作ることが出来なかったのだ。


科学文明国では、外見を完璧に真似る魔法対策の為にこの場合は身分証やパスポートに科学文明国でありながらも偽造防止魔法関連の魔法を付与してから配布していたのだ。


だが、日本は未だにそれを使っていないとの情報とそもそも魔法を行使出来ないことから創造魔法だけで造ったのだ。


「まぁ待て。」


先輩と呼ばれた男がようやく言葉を発した。


「確かに最初の入国審査の時に確保するのも手だが、あの偽の身分証・・・かなり細部まで似てきたようじゃないか。俺もその写真を確認したが、あれは個人で出来る代物じゃない。恐らく列強あたりが絡んでる。それにあのルナっていう女、あいつからは只者の目をしているようには見えなかった。巧妙に隠しているがあれはスパイのような獲物を探る目だ。」


その言葉に後輩は怒鳴り掛ける。それならば尚のこと入国させるべきではないからだ。


「ならっ!」


しかしそれを先輩は止める。


「落ち着け・・・連中が既にこの国に根城を作ってる可能性もある。もし、それがあったら不味い。連中が集まった所を一網打尽にして捕らえる。」


「成る程。」


「俺の考えすぎかも知れない。破壊工作の為に入国した可能性もある。一か八かだな。まぁ奴等のお手並み拝見といこうや。東京にはマジもんの化物集団の公安部隊がいるんだ。訓練がてらに丁度良い。」


「わ、分かりました。」


「既に東京の公安部隊には報告したな?」


「はい。その点は抜かりなく。」


「それなら良し。東京には化物の公安部隊とおびただしい数の防犯カメラがあるんだ。お前達は逃げれれないぜ。覚悟しろ、スパイ共め。」


公安の男はもう見えなくなったバスに乗る彼女等に対してそう言った。




        首都東京 銀座


「ねぇ・・・ちょっとこれ、」


「言うな。言いたいことは分かってる。これは俺でも予想以上だ。」


東京についた彼女等は上流階級で人気のある観光名所銀座に向かったのだが、バスの窓から見える光景にただ唖然とするしかなかった。


「何が列強よ。これじゃあ上位列強国どころでは済まないわ。」


「任務じゃあ、日本の危険な技術を詳細に調べろと言われたが・・・どれから調べれば良いのか分からんぞ。」


「ロジリナさん、もうすぐ目的地に着きます。」


「ん?あぁそうか、分かった。ルナ、降りる準備しろ。」


「えぇ、けど何処から調べるか決まったの?」


「取り敢えずはこれから泊まるホテルに向かうからそこで荷物を置いてからだ。」


そう言いうと目的地に着いたのか、バスは止まりドアが開いた。バスガイドの女性もここが自分達の泊まるホテルだと言ったことから、そうなのだろう。


バスから降りると正面にホテルが見えるのだが、やはり自国のどのホテルよりも立派な造りだったということにロジリナは溜め息を漏らした。


「・・・はぁ。やはり予想よりも上か。」


「私も覚悟はしてたわ。」


2人は覚悟はしていたが、他のロジリナの部下らしき男達はまたもや唖然としていた。そんな彼等をロジリナは声かけをして目を覚まさせた。


受付を終えて案内された部屋に入った彼等はまず最初に部屋を調べた。魔法による盗聴等が付与されていないかや、隣の部屋の覗き穴があったりしないか、隠し部屋が無いかを調べたり、ソファを座ってみて刃物が突き出たりしないか等と様々な状況を想定して調べた。


「私の部屋は問題無かったわ。そっちは?」


ルナは女性なので1人部屋だった彼女は自室を調べ終えてロジリナに報告をした。クローゼットを調べていたロジリナが返事をする。


「速いな。そっちは1人なのに。」


「1人は慣れてるからね。そっちは5人もいてまだ調べてるの?」


「念入りにやってるんだ。奴等には魔法は使えないと聞いたが念には念を入れてだ。」


「それは分かってるわ。それで、まだ?」


「ちょっと待て・・・よし、こっちはこれで終わりだ。」


「浴室も問題ありません。」


「窓にも異常はありませんでした。」


「廊下も異常無しです。」


「天井も何もありません。ロジリナさん。」


調べていた他の4人も集まりロジリナに報告をした。それを聞いたロジリナはルナ達に集まるように指示した。


「よし、お前ら集まれ。」


集まったのを確認したロジリナは打ち合わせを始めた。


「よし・・・まずはこの辺りの地理把握だな。2人1組で組んで3組で行動する。その内の1組は万が一に備えて留守番だ。道中で何か問題が起こればすぐに魔信で知らせろ。」


「了解したわ。それで、誰と誰が組むの?」


「それはだな・・・」


その後暫くして組が決まり、行動を開始した。



「ルナ、俺達は向こうに行くぞ。」


外に出たロジリナは手に持っていた地図を見ながらルナにそう言う。


「分かったわ・・・何であんたと私が組むのよ。」


「そう言うな。他の奴等じゃあ万が一の時だとお前に着いていけない。一番実力が近いのが俺なんだから。」


「確かにそうだけど・・・彼等は大丈夫なの?」


「あいつらは俺が鍛え上げたんだ。大抵の問題なら問題ない。」


「そう、なら良いの。私達は何から調べる?」


ロジリナは少し考えてから言った。


「・・・書店を見に行く。ここまでの技術を持っているんだ。そこらの書店から思いもよらない情報が見つかるかもしれん。」


「確かにね・・・なら急ぎましょ。」


書店に着いた2人は早速店に入り、あらゆる分野の本を読んだ。既に日本語は習得済みの2人は難なく本を読むことが出来た。


(経済学、地学、歴史・・・どれも確かに貴重な情報だが、そんなものではなくてもっと重要なものを・・・っ!あった!やはり本にしてあった!)


ルナは棚にある本を軽く読んでまた別の本を軽く見ながら目的の本を探していたが、ここで読みたかった本を探した。それは数年前の大連合戦争に関する本である。


(プロパガンダの為にも本にすると思って正解だった。誇張気味だとは思うけど無いよりはマシだわ)


プロパガンダ等の為にもあの戦争を本にして国民に読ませると踏んでいた彼女はそれを探していたのだ。


「お、お前はそれを見つけたか。」


ルナを見つけたロジリナが数冊の本を抱かえながら、声を掛けてきた。


「えぇ、貴方は?」


「俺は一応、建築士としての顔も持ってるから建築関連の本が多いな。まぁでもこれは外せないけどな。」


ロジリナはそう言い数冊の本の中から一冊の本をルナに見せた。それは2人が最も欲していた物であった。


  【これが自衛隊だ!自衛隊の装備目録】


「自衛隊っ・・・今は国防軍に名称が変わったから古い情報だろうけど。これは良いわ。私が見た時は売り切れていたけど、どうしたの?」


「それがな・・・知った顔が持ってた。ここにいたんだよ。ライバルがな。そいつに譲って貰った。」 


つまり他国のスパイがこの書店にいることということだ。


その言葉にルナは瞬時に周囲を警戒した。もちろん今までも十分に警戒していたが、今は自身の聴覚と視覚等をフルに使って警戒した。


「まぁ待て、あいつらも俺達と同じ目的だったんだ。日本の情報を集めている。」


「よく貴方に譲ったわね。向こうも欲しい筈なのに。」


「あいつは記憶力が並外れて高い。既に完璧に覚え終わってあとは戻そうとしていたんだ。そこを話し掛けて譲って貰った。」


「あら、そんな便利な特技を持っていたの?羨ましいわね。」


ルナはそう言った。そんな特技を持っていれば店員等に怪しまれずに済むのだから。異国の人間が自国の軍関連の本を購入するなど怪しんでくれっと言っているようなものなのだから。


「だからこそあいつが送られたのたろう。」


「でも信用出来るの?通報でもされたら。」


「その可能性もあるが、通報したら記録が残る。通報者として警察辺りにマークされたりするのは向こうも避けたい筈だ。ここは互いに通報せずに手を組むってことだな。」


「そうね、ならもう戻りま・・・?」


ルナは言葉の途中で横目で周囲を見渡した。その様子にロジリナもいつも通りにするフリで警戒し始めて小声で話し掛けた。


(どうした?)


(一瞬、変な気配がした気がするの。でも気のせいかも知れないわ。本当に一瞬だったから。)


(一瞬か?お前クラスなら俺には感じ取れない程の実力者を察知しても可笑しくない。)


(でも、周りには怪しい奴なんて見えないわ。)


(魔法を使うか?)


(それでもしこの国がそれを察知する魔道具を置いてたらどうするの?ここでそんな危険は犯せないわ。)


(なら急いでとんずらだな。気のせいかも知れんが警戒しながら戻ろう。)


そう言って2人は目当ての本とカモフラージュの為の観光関連の本を混ぜて購入した。


その後2人は、人通りの多い道を使って人混みに紛れてホテルへ戻った。


その様子を遠目で見張っていた者達がいた。公安の者達であった。それも首都東京を活動拠点とする集団で、表向きでは存在しない警視庁の公安部隊である。


異世界転移前では、東京で活動をしていた中国・北朝鮮・ロシア等のスパイやマフィア等の多くを闇に葬り去った部隊でその実力は世界でもトップクラスであった。


既に日本本土の上陸を許可してから、数ヵ月の間に複数の国のスパイを捕らえていた。


そんな彼等はスマホを使って連絡を取っていた。


「こちら2番、荷物はバックに戻った。途中で書店に寄っていた。」


「了解した、引き続き監視を続行せよ。」


「了解・・・っと。福岡の連中の言う通りに雰囲気が他の連中と違うな。」


「うむ、あの女、かなり勘が鋭い。危うく見つかるところだった。」


1人の男がそう言った。彼の言う通りにルナが感じた気配は彼等が原因で彼女等の顔を確認する為にほんの一瞬だけ目視をしたらその気配を感じ取られたのだ。


「中々侮れんな。他のチームはどうなんだ?」


「さっき連絡したが、異常はないようだ。あの2人がリーダー格として見て間違いないだろう。」


「ならば連中は速いうちに掃除しとくか。」


そう彼等は言い、バラバラに別れて何処かへと消えていった。





        数日後  ホテル内 


「どう?読み終わった?」


数日前に持ち帰った本を読んでいたロジリナにルナが声を掛けた。


「自衛隊・・・こいつらの装備を読んでいるが、どうも信じられん。1人の兵士に持たせる個人装備が尋常じゃないぞ。それこそ超大国の様な規模だ。」


「・・・私もよ。大連合戦争だけど軍艦の性能が可笑し過ぎるわ。数百キロメートル離れた標的を感知して攻撃したとか、ジェット戦闘機で100機余りのオーマバス空軍を蹂躙したとか・・・まるでムーやアトランティスのみたいだわ。」


「まさかこの国は上位列強国どころか超大国並だということですか?」


ロジリナの部下がそう聞く。


「・・・誇張という線だってあるが実際にオーマバスとレムリアを相手に勝利しているし、この街を見れば可能性は高い・・・としか言えないな。」


「上から何か聞いてないの?」


ルナかそうロジリナに聞く。


「お前がそれを聞くってことはお前も聞いていないわけか。なら答えるが俺も何も聞いていない。外務省辺りが何か把握しているかもしれんが・・・」


「知ってたら此方に情報を寄越す筈・・・でも届いていない。駐日大使に聞いてみる?身分を明かして。」


「そんなバカな事が出来るか。日本側にバレたらスパイを送ってますと自白してるものだ。」


「でもこの情報を持ち帰って上が信じてくれる?軍関連でここまで荒唐無稽な内容を?」


「日本の技術を把握してくれば何とか。魔写は何枚か撮っている。それで説得するさ。」


そうロジリナか言うと扉からノックが聞こえた。そのあとに掃除をしにきたという声が聞こえた。


「あぁそう言えばそんな時間ね。」


ルナがそう思い出したかのように言った。


「話しすぎたな。開けてこい。」


ロジリナは瞬時に本を片付けて部下にそう命令した。命令された部下は扉を開けにいった。


ロジリナは他に怪しい所は無いか周囲を見渡す。


(・・・特に問題なさそうだな。さて、どう報告書を纏めるか。外務省もこの国と最低限の交流しかしてないから事前に情報が無かったのか?だとしてもとっと情報があっても良いだろうに。駐日大使の報告を上が半信半疑だったとか?・・・有り得るな)

 

「・・・ねぇ」


ロジリナが思案しているとルナが話し掛けてきた。その声にロジリナは考えるのを止めてルナの方を見た。その表情はかなり警戒している時の表情だ。


「彼・・・いつ戻ってくるの?」


その言葉に扉を開けにいった部下がまだ戻らないことに気付いた。本来ならば既にホテルの者と一緒に戻ってきても良い筈なのに。


「っ糞、ルナ!お前はすぐにっ!?」


ロジリナがルナに指示をする前に突如、彼等がいる部屋に棒状の物が投げ込まれた。それは催涙ガスを出すものであった。


ブシュウゥゥ


彼等はそれに瞬時に魔法で対処した。この程度ならば魔法で防げる。ガスで視界が悪くなる中、部屋に数人の何者かが入ってくる気配がした。


「やれ!」


そんな声が聞こえた。その瞬間にパシュッという音が聞こえ、部下達の胸辺りに当たった。恐らくサイレンサーを付けた銃であろう。


「がっ!」「ぐぅっ!」


「っ!糞!」 


「ロジリナ!次くる!」


ルナの言葉にロジリナは慌てて姿勢を低くして撃ってきた方向に突進した。


パシュッ


また発砲してきたが、運良く外れて1人の襲撃者にタックルした。


「むっ!」「うおぉぉぉ!」


タックルした後、互いに倒れたがロジリナは小型ナイフで攻撃をする。しかしそのすぐ隣にいたのだろうパシュッという音が聞こえて気を失った。


「ロジリナっあぁもう!」


これでルナ1人だけとなった彼女は既にガスが切れて周りを見渡せるようになった室内を見た。その場には黒い戦闘服を着た数人の襲撃者が見えた。恐らく日本の特殊部隊か何かであろう。


「腹這いになれ。」


襲撃者の1人から銃を突き付けながらそう命令をしてきた。


「言う通りにしますっよ!」


ルナは魔法を発動した。それは衝撃波を出す魔法であった。そこまで大したものではないが、照準をずらすにはもってこいだ。


「っち!」   


そう舌打ちが聞こえた。パシュッと連続して撃ってくるがそれらを彼女はかわしていく。1人の襲撃者の懐まで近づけた彼女は前から首を締めてその男が持っていた銃を奪った。


「動くなっ!仲間が死ぬわよ?」


ルナはそう言って、動きを止めさせる。だが、彼等は動きを止めない。その言葉を無視してジリジリと動く。拘束している彼を撃ち殺せば自分も容赦なく撃たれる。それを互いに分かってる為に人質は効果がない。


「無駄な抵抗はするな。後ろの窓は防弾だ。飛び下りて逃げることも出来ん。」


襲撃者の1人がそう言う。その言葉が本当かどうかは分からないが今は下手に動けない。


「貴方達、日本の特殊部隊?」


ルナはそう質問する。だが、彼等は答えない。その瞬間、拘束していた男が急にバランスを崩してした。


それに思わずルナもバランスを崩してしまい、その瞬間にパシュッと音が聞こえた。ルナの肩に注射器らしきものが刺さり、そのまま体に力が入らずに倒れてしまう。


拘束されていた男はわざとバランスを崩し、彼女の隙を作ったのであった。その一瞬を彼等は見逃さずに見事、彼女に命中した。


「クリア!」


「ふぅ~焦ったぜ。魔法はどうも慣れないな。」


「だが、あの判断はよくやった。」


「こちら1番、部屋はクリアした。最初の部屋にいなかった女性も2部屋目にいた。」


次第に意識が薄れていくルナの耳にその会話が聞こえてきたが、すぐに気を失った。


ジュニバール帝王国の日本に派遣されたスパイ達はこれで全滅した。他の国のスパイ達もすぐに襲撃を受けるであろう。


如何でしたか?


私の方から連絡が1つ、これからは仕事がスタートする為に投稿ペースが落ちると思います!


慣れない研修期間だと思いますのでかなり遅れると思いますが、どうか首を長くしてお待ちください!


それではまた!

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