第41話 始まる世界会議
第41話 始まる世界会議
日本がこの異世界から転移してから約3年の月日が経過していた。
その間に、この国はエルミハナ大陸の国々と交流を広めて、その大陸の1つの国と交戦をし、それを撃退する。そして日本国内にいた外国人達は地球連盟国という国を建国した。
そこからこの世界の列強2ヶ国とそれに従う大陸諸国連合軍とも戦い、その連合軍に勝利をする。
その後、超大国であるムー共和国と念願の国交を結ぶことが出来、この世界に転移してから2年弱でようやくこの世界で認知され始めたのだ。
ムー共和国との国交を結び通商条約も結んでからは、主に日本最大の民間企業である「小島」グループを筆頭にムー共和国に向けて盛んに貿易が行われた。
ムー国へ輸出される貿易品には、ブラウン管テレビ・家庭用ビデオカメラ・洗濯機・石油ファンヒーター等、1970年代の日本製の製品が50年ぶりに製造され、それがムー国の貨物船に詰められているのだ。
4億人もの消費者が出現したことにより、日本の民間企業はこぞってムー国へ輸出する昭和レトロ家電品を造ろうと動き出した。
そんな中で遂に日本と地球連盟国は、この世界で最も重要な行事である世界会議に参加する日が訪れた。
両国は、世界会議の主催場所である約6万キロメートル離れたアトランティス大陸に向けて出港を開始した。
日本と地球連盟国は全権大使を乗せた客船とその護衛艦隊が数万キロメートルもの大航海に出ていた。
アトランティス帝国 首都アトランタ
この国の首都アトランタには、現在世界中の主要国が大使とその護衛艦隊を引き連れて入国していた。
世界最大規模を誇るその港には、この期間の間だけ、民間の船の出入りが規制されて各国の艦隊を迎え入れていた。
「ガントバラス帝国使節団、入港してきます!護衛艦隊は、巡洋戦艦1隻、空母1隻、巡洋艦4隻です!」
「・・・事前の報告通りだな。よしっ!第2エリアに入れろ!」
「はいっ!」
「続いてケネエシタラ連合王国使節団がその後方にっ!護衛艦隊は装甲艦3隻、軽装甲艦2隻とのことです!」
「うむ、これも問題無いな。第5エリアに案内しろ!」
「分かりましたっ!」
港には、列強国はもちろんのこと準列強国も参加してくる為に、港を管理する管理官と外務省の職員達は大忙しであった。
どの国もこの世界に影響力を持ち、その国の重要人物が乗っているので、何かあれば主催国であるアトランティス帝国の名に泥を塗ってしまうかも知れないので心が休まる暇がない。
港近くの場所にはアトランタ付近の海域にいる海軍からの魔信を受信する通信室が設置されており、そこから外務省の重役に位置する者が確認をして停泊する場所を指示していた。
「っ、チェーニブル法国使節団を確認したようです!護衛艦隊は魔動特級戦艦1隻、魔動空母2隻、魔波動式巡洋艦4隻とのことです!」
「む、遂にチェーニブルが来たかっ!・・・これも問題無し。第1エリアに案内しろ!」
「はい!」
「そろそろムー国も来る時間かな?」
多数の使節団が入港してからある程度の時間が経過してから先ほどまで指示を出していた外務省の重役がそう呟いた。
「海軍から魔力レーダーに僅かながらの反応を複数確認したようです。この反応ですと科学文明諸国のいずれでしょう。恐らくまだ来ていないムー共和国、レムリア連邦そして日本国に地球連盟国だと思われます。」
その重役の呟きに魔信を聞いてた1人の部下がそう報告をした。
「ふむ、確かその日本と地球連盟国はレムリア連邦と同行するらしいからな。その4ヶ国が固まっているのかな?」
「そうかと思われますが・・・海軍からはレーダーに映っている数が明らかに少ないとの知らせが、」
「なに?」
魔力レーダーは基本的に軍艦等の魔法石の魔力を感知して反応するが、ムー国のように魔法石を使用しない科学文明諸国にも使える。
その時は魔法石ではなく、それに乗っている者の微量の魔力を感知するのだ。だが、その微量の魔力を数百キロメートル先で感知する程の高性能の魔力レーダーを保有しているのは、チェーニブル法国とこのアトランティス帝国くらいである。
だが、この世界に転移した地球人達は当然ながら魔力という概念が無いので、魔力レーダーに反応しない。
とはいえ、この世界でも万が一の為に魔法文明国も科学文明側も一応、互いの魔力レーダー・電波レーダーを旧式ではあるが、それを設置していた。
しかし、今回は日本側の艦隊の多くが史実世界よりも高性能のステルス性能であった故に旧式のしかも半世紀前のレーダーに映らなかったのだ。反応していた客船や補給船もあったのだが、同行していたレムリア連邦等の艦隊の一部と誤認されていたのだ。
その為、この都市近海に待機しているアトランティス帝国海軍は現在、両レーダーに反応しない艦隊を目視で確認出来る距離でようやく日本・地球連盟国使節団を確認した。
両レーダーに映っていた数よりも明らかに多くの艦影 が見えたことに海軍側は困惑したのである。
「海軍からまた報告が・・・両レーダーに反応しない日本と地球連盟国使節艦隊を目視で確認したようです。」
「何?レーダーに反応しないだと?」
「は、はい。レーダーで確認したのはどうやらムー国とレムリア連邦国だけだったようです。」
「ふぅむ・・・レーダーの故障か?旧式だからな。最新の物を設置したいものだな。まぁムーがそれを渡すとは思えないが。」
結局、今回の件は電波レーダーの故障ということで処理された。
その後、各国の護衛艦隊の編成を確認してそれぞれのエリアに案内指示を出した彼は異世界から来た艦隊を一目見ようと外に出て港に入った。編成報告の際に1隻だけ明らかに大きい艦だという報告を聞いたというのもある。
ゆっくり目に歩いて、港に入った頃には、既に水平線の向こうに護衛艦隊が見えた。
「む?丁度いいタイミングであったか。まだハッキリ見えないが4ヶ国が固まっているようだな?」
彼は遠目から見える艦隊の数が明らかに多いのを見てそう判断した。
もうしばらく待つと、ここからでもハッキリ見える距離まで近付いてきた。最初は興味本位で来た彼であるが、段々と見えてくる艦隊のとある艦を見て驚きに目を見開く。
彼だけでなく、港にいた外務省職員や整備員、誘導員や他国の使節団の者達やその近くで野次馬となっていた民衆や報道員達も近付いてくる艦隊を見て驚く。
本来ならば、超大国の一角であるムー共和国の使節艦隊を見てそれで盛り上がるものだが、今回は違った。
その理由とはムー共和国の使節艦隊の隣で航海している地球連盟国の使節艦隊だ。正確には、その艦隊の中心部にいる原子力空母である。
アメリカ海軍の誇る第7艦隊最大の艦である原子力空母ニクソンだ。
史実世界よりも大幅に強化されているアメリカは軍も大幅に強化されており、特に中国と最前線で戦う可能性のある第7艦隊を積極的に強化していた。
その第7艦隊の空母ニクソンは全長371メートルの世界最大の空母で、最大排水量は約16万トンになる。航空機の搭載数は94機で余りの巨大さに地球でも停泊出来る場所は数えるくらいしかなかった。
横にいるムー共和国の空母は300メートル程の大きさを誇り、今までの科学文明諸国海軍の中で最大の大きさを誇っていた空母が横に並んでみると小さく見えてしまう程の大きさであった。
その近くにいた日本国のヘリ空母も見えたが、そのヘリ空母も260メートル程の大きさと、列強国並みの大きさで他国にただの新興国ではないと見せつけることがよく分かった。
だが、やはり圧倒的な大きさを誇る地球連盟国の原子力空母が最も目立っていた。
「あ、あれが空母かっ!なんという大きさだっ!」
「大使、あれが地球連盟国のようです!」
「何とっ・・・まさかあれ程の大きさの軍艦を保有しているとはっ!」
「あり得ない・・・たかだか科学文明国があんな艦を持つだなんてっ!」
「おぉ!あれが噂の日本と地球連盟国かっ!はっはっ!噂以上じゃないかっ!これは頼もしい!」
「空母か・・・あれだけの大きさだと一体どれだけの航空機を収用出来るのか。」
「大使、あの周りにいる軍艦も妙です。大口径の大砲ではなく、単装砲であの小口径だとは・・・」
「ムー国のようなものだとでも言うのか?そんなバカなっ。」
「こ、港長!あの艦をどこに誘導すればっ!?言われていた第2エリアでは狭いですよ!?」
「う、上に報告して、第1エリアに入れろようにしろ!」
「おぉ!あれが異世界から来たという艦隊かっ!」
「パパ、あのお船すごく大きいよ?」
「あ、あぁ・・・すごく大きいな・・・」
「ご覧下さい!あれが異世界から来たという国の使節艦隊ですっ!その横にいるのはムー国の空母でしょうか、その大きさの差がよく分かります!」
と周囲にいた者達も様々な反応をして、空母ニクソンを見ていた。
その様子を日本使節艦隊側の客船の甲板に出ていた外務省職員は溜め息を漏らして呟いた。
「はぁ・・・あいつらにはやられたな。本来ならばうちが噂の的になっていた筈なのに。」
「おい。」
外務省職員の1人がそう呟くと副大使である高田渡が注意する。それをこの客船に同乗していた海上自衛隊いや、日本国防海軍の隊員がなだめる。
「いえ、いいんですよ。事実あの艦には勝てませんからね。相手が悪すぎますよ。」
「そう言って頂けるとありがたい。しかし・・・まるで砲艦外交だな。」
高田副大使は、港に停泊している軍艦を見てそう呟いた。彼の言葉の通りに、港には世界大戦中の戦艦や空母、巡洋艦はもちろんのこと、見たことのない形状の軍艦がズラリと並んでおり、とても会議をするための行事とは思えなかった。
「それもあるが、この港の大きさも凄いものだ。恐らくアメリカや中国の港よりも大きいのじゃないか?」
後ろからそう発したのは、今回の使節団の大使である日本の外務大臣である神谷勇治だ。そしてその言葉通りにこの首都アトランタの港は凄まじく大きい。何十もの軍艦が停泊しても有り余るぐらいの大きさで、しかも国ごとにスペースを空けているのだ、まさに超大国に相応しい港だ。
「これは大臣、お疲れ様です。」
「ありがとう。ようやく着いたと思うとこの1ヶ月半の航海も良い思い出だったと言えるかな?」
「まだ帰りの分もありますよ?」
「・・・飛行機で帰りたくなってきた。」
「諦めるしかありませんね。ほら、もう港には我々を歓迎してくれる方々が集まってきてますよ?急いで支度しましょう。」
「そうだな。船長、ここまでの安全な航海にありがとうございます。」
神谷大臣は甲板にいた船長にそうお礼を言った。
「大臣にそう言って頂けるとは、操縦士達も喜びますよ。」
船長もそう大臣にそう返事をした。その後神谷大臣達は、今日から始まる世界会議に戦闘モードに入った。
首都アトランタ 港
港付近にいた誘導船の案内の元、無事に日本と地球連盟国の使節艦隊は港に停泊することが出来た。
そして各々の大使達の乗った客船から大使達がアトランティス帝国の地を踏みしめた。船から降りるとその先には既にアトランティス帝国外務省の者が待機しており、歓迎をしてくれた。
そして日本・地球連盟国の使節団の大使は船に積んでおいた外務省の車に乗り込み、アトランティス外務省の案内により世界会議の開催場所へ向かった。
日本の大使はその場にいたアトランティス外務省の者と軽い世間話をしてから向かったが、地球連盟国の大使は先に向かって行った。
道中はアトランティス警察の厳重な警備が行われていた。
ここまでならば、地球でのG7サミット等のようなものと変わらないが、この世界では、外務省の車と警察等の警備車両と別の各国の特殊部隊の乗った軍用車両が大使達の車列に混ざっていた。
日本の特殊急襲制圧部隊、地球連盟国のグリーンベレー、これらの特殊部隊が乗った軍用車両が街中を大使達と一緒に走るのだ、地球では考えられないことである。
各国の特殊部隊も普通の兵士の見た目をしていないが、日本の特殊部隊はこの世界でも異質な見た目をしているようだ。車の窓から見える特急隊員を見て街中で各国の車列を見ていた野次馬達が驚きの反応をしていた。
「おい、さっきの車の中の奴、なんか恐ろしい姿をしていたぞ!?」
「俺も見たっ!何処の国のだ?」
「あの国旗・・・あの噂の日本じゃないか?艦隊は地味って聞いてたけどなぁ。」
比較的車列の後ろで走っていた神谷大臣の乗った車から野次馬達の特急部隊を見て驚愕した表情を見て神谷大臣は苦笑いをしていた。
首都アトランタ 皇政中央区 世界議会堂
神谷大使達が案内された場所は、アトランタ内でも厳重な警備が敷かれている皇政中央区内にある世界議会堂であった。
赤レンガ造りの昔ながらの建築物のように見えるが実際は、最新の対衝撃、耐震、耐火等の様々な魔法により、強化されており、そこらのシェルターよりも頑丈な造りであった。
そして、世界議会堂から半径2キロメートル圏内では、完全武装した軍と警察が地上を警戒しており、その上空では、飛行の魔法を行使できる魔術師達が魔動式銃を持って空を警戒していた。
既にその議会堂には、各国の大使とその護衛部隊である特殊部隊が集まっていた。
議会堂周辺はアトランティス帝国の警察及び軍が警備を行っているが、議会堂内部では、その者達以外にその特殊部隊が警備を担うことになっている。
これは言わば儀仗兵の役割ということであり、この場においても各国がそれぞれの虎の子部隊を見せしめる場所だということだ。
そして大使の護衛として4名までが各国の大使と話し合う場所である世界議会室の入室が許されている。
そんな場所に神谷外務大臣は、4名の特急部隊と副大使、書記官を連れてその議会堂に入ると、少し先に先行していたレムリア連邦外務議団の外務議長が待ってくれていた。
「如何でしたか?異世界の超大国の首都は?」
そう50代程の白髪少し目立つ男アンファーレド・ドレムリット外務議長が神谷外務大臣に話し掛けた。
「そうですね・・・驚いたのは兵士達の中に巨人がいたということですね。ムー国から聞いてはいましたが、実際に目にすると驚きですね。」
そう神谷外務大臣は言って笑った。ドレムリット外務議長もそれに反応するように笑いながら言った。
「ははは。確かに私も彼等を初めて見た時は驚きましたよ。まぁ、貴方のその後ろにいる彼等も十分に驚きますがね。」
ドレムリット外務議長はそう言って神谷外務大臣の後ろにいる特急部隊を見た。確かに彼等は科学文明諸国の護衛部隊と比べるとかなり異質だ。
魔法文明諸国ならば、その魔力を最大限に活かせれるように鎧のような魔道具を身に付けるので、特急部隊のように全身を隠す装備を付ける特殊部隊もいたが、それでも特急部隊程に不気味な見た目をしている国は少なかった。
レムリア連邦の特殊部隊も全身を黒い防弾チョッキやヘルメットで身に纏っており、並みの兵士ではないと分かるが、特急部隊と見比べるとその異質さは見劣っていた。
「あぁ、確かに言われてみれば彼等も異質ですな。しかし、やはりあの巨人達の方が私的には驚きですよ。」
「いや何を仰る。貴国の護衛部隊を見て驚きに目を見開くアトランティス帝国軍人達の顔を見て笑ってしまいましたぞ。」
「ん?」
突然横からそう声が聞こえた。その方向を見てみると、そこには、60代前半のスキンヘッド頭の男性が笑って立っていた。
神谷外務大臣が誰なのかと疑問に思っていると、ドレムリット外務議長が紹介をしてくれた。
「神谷大臣殿、この方は上位列強国のガントバラス帝国外務大臣のリガムシウ・バニイリール殿です。」
「これは失礼しました。初めまして、私は日本国外務省の大臣を務めさせて頂いています神谷勇治と申します。以後よろしくお願いいたします。」
「いやぁ此方こそ丁寧に、ご紹介預かりました、ガントバラス帝国外務大臣のバニイリールです。それはそうと、貴国のその護衛部隊を遠目から見させて頂きましたが・・・噂以上ですなっ!それに先ほど地球連盟国の外務大臣殿ともお話ししましたが、あの国の空母も実に素晴らしいっ!あの魔法文明国達の驚いた顔ときたら、思い出すだけでも愉快だ!」
バニイリール外務大臣はそう言ってがはははっ!と笑った。見た目どおりの豪胆そうな笑い声に神谷外務大臣は少し引いた。正直個人的に苦手な人だ。
「バニイリール大臣殿は既に地球連盟国の方とお話をしましたか。」
ドレムリット外務議長がそう彼に聞いた。
「えぇ、何せ初めての世界会議できっとお困りでしょうから、話し掛けたら、中々に話の合う方でしてね。年甲斐もなくはしゃいでしまいましたわい」
そう言って再びがはははっ!と笑った。すると、また別の方から声が聞こえてきた。
「バニイリール殿、少し声が大きいですよ。ここは神聖な世界議会堂です。アトランティスの方々が良い顔をしませんよ?」
「む?おぉ、アワバルド殿かっ!いやぁ懐かしいですなぁ。」
そうアワバルドと呼ばれた準列強国であるバンホマード諸島連合国の外務大臣カナイリス・アワバルドは苦笑いをしていた。
バンホマード諸島連合国・・・レムリア連邦が支配するレンモネス大陸よりも北に1万5000キロメートル程に位置する準列強国であり、科学文明国である。
準列強国内でも上に位置する立場の国で、人口が約4000万人程で4000余りの島々を支配している。元々は数十程の国で別れていたが、数十年前に連合国として1つの国にとなり、準列強国になった国である。
「初めまして神谷大臣殿、地球連盟国の艦隊も凄まじいの一言に尽きますが、貴国の艦隊も実に素晴らしいものでした。貴国は異世界から転移したと聞きましたが、まさにお伽噺話のような綺麗な形をした軍艦に惚れ惚れとしましたよ。」
「それは見に余るお言葉です。彼等も喜ぶでしょう。」
そう神谷大臣が返事をしていたら横目から地球連盟国の外務大臣ジョン・トールズがこっちに近付いてきた。周りに多くの大使達を引き連れて。
護衛の者も付いてくる為にかなりの集団となっていた。
(あの男・・・もうあんなに人脈を築いている、やはりあの空母を引き連れるとあんなに寄ってくるものか。)
神谷大臣はそう内心で思った。他国の軍艦が多く集まるあの場所で370メートルもの巨大な軍艦を連れてくれば、その強大な国にあやかろうとする者も当然現れる。
間違いなくそれを計画して日本と同行せずに先に世界議会堂に入ったのだろう。噂の中心となっている日本よりも先に。
「ミスター神谷、お先に失礼してましたよ。ここは非常に広いですな。しかし、心優しき方々のお陰で迷わずに済みましたよ。」
「トールズ殿、この方はもしやあの日本国の方ですか?」
トールズ外務大臣の周りにいた男がそう聞いた。トールズ大臣はその質問に答えた。
「えぇ、その通りです。この方か日本国外務大臣の神谷勇治殿です。」
「そうでしたかっ!いやはや、貴国の噂を聞かない日はありませんでしたよっ!」
「神谷大臣殿っ!是非とも貴国日本と我が国との間に国交を結びたい。今日の世界会議が終わったらこの後私と話をしたいのですが・・・」
「はははっ!、そう慌てずともまだまだ時間は大量にあります。ゆっくりとしませんか。ねぇ?神谷殿。」
日本の外務大臣と聞いて日本と国交を結びたいという準列強国の大臣達をトールズ大臣が宥めた。そうは言っているが、先にこの国々と国交を結んで有利な通商条約を結ぶつもりであろう。
(この世界でも絶対的な影響力を握るつもりか?まぁ向こうは1つの大きな島くらいしか無いからな。そりゃあ必死になるか・・・)
それを副大使として神谷外務大臣の後ろに控えていた高田渡がそう考えていた。
「確かにトールズ大臣の言う通り。そう焦らずとも我が国の門は何時でも開いていますよ。」
「がはははっ!成る程流石は日本だっ、寛大な心をもっているっ!これは列強国の器だ!」
バニイリール大臣がまた笑いながら神谷大臣をそう誉める。この人は、本心なのかお世辞で言っているのか、よく分からない。
(神谷さんも大変そうだな。地球ではあんな外務大臣いなかったからなぁ。)
高田副大使は神谷大臣にそう同情の目を向けた。
そして、そんな神谷大臣達を好意的に見ている者達もいれば、非好意的の目で見ている者達もいた。
それは魔法文明諸国の大臣達である。
「彼らが日本と地球連盟国の大使ですか・・・既に科学文明諸国と接触していたか。」
そう列強国のジュニバール帝王国外務大臣であるアルマホモ・カモナリウスが忌々しそうに呟いた
「オーマバスも愚かなことをっ、あんな国に無惨にも負けるとは、」
準列強国の大使がそう同調するように言った。
「・・・やはりオーマバスも科学文明国に鞍替えするのでしょうか?」
「もう既にそうなっていますよ。オーマバス国大使は、パースミニア王国と一緒にムー国大使に挨拶に向かっているのを見ました。」
オーマバス国は降伏後、日本の親日政策によって親日派の政治家(元軍務大臣派閥)が実権を握っていた。その後、日本の仲介によりパースミニア王国と友好条約を結び、表面上ではあるが友好関係が成り立った。
パースミニア王国も日本側に恩があるために今まで魔法文明と科学文明とは中立を守っていたが、その方針を変えてオーマバス国と共に科学文明国に鞍替えをした。
「あの腑抜け共め!アトランティス帝国は一体どうするつもりなのかっ・・・」
「まぁ落ち着いて下さい。」
「これが落ち着いていられますかっ!お陰で科学文明勢力は拡大したのです!」
「皆さん如何なさいましたか?」
魔法文明諸国の大使達(主に準列強国)が深刻な顔で話していると、そこに魔法文明諸国序列2位であるチェーニブル法国のホリット・ケイソン外務大臣が黒い民族衣装を着て立っていた。
「あ、これはケイソン大使殿、お久し振りです。」
「えぇ皆さんもお久し振りです。それで、一体何を話していたのですか?そんな深刻な顔で。」
準列強国の大使達はケイソン大使に今までの話を全て話した。
「成る程、まぁ良いのでは?我々は別に戦争をしたくてこの世界会議を開いているわけではないのですよ?それを回避する為のものでもあります。」
「し、しかし!それではあの日本等に我等の勢力圏を侵害されます!」
そう大使が言うとケイソン大使は、少しだけ今もバニイリール大使による一方的な話をして疲れていそうな神谷大臣を見た。
「・・・まぁ問題無いでしょう。調べてみればあの国には、覇権主義では無いようですからね。まぁ地球連盟国は断定出来ませんでしたが。」
「ケイソン大使殿がそう仰るならば・・・我等も安心出来るのですが。」
(日本に地球連盟国か・・・あの空母はいささか予想外であったが、牽制するべき国だな。この弱小国には荷が重過ぎる。お前達はまだ勝手に動くなよ?)
とケイソン大使はそう心のなかで言った。確かに彼等の言う通りに、日本等が勢力を一気に拡大してくる可能性もゼロでは無いと彼も思っている。
だが、チェーニブル情報統制省からの情報では、少なくとも日本は、覇権主義国家では無いとの判断を下していた。
その為、少なくともチェーニブル法国はまだ本格的な敵対行動はおこさないつもりだ。勝手な技術提供は批判するつもりではあるが。
(アトランティスは良いとして、ジュニバール帝王国とガーハンス鬼神国が心配だな。あいつらの軍部には、血の気の多い連中が高官に就いていると聞く、先に警告をしておくか。)
ケイソン大使は事前にアトランティス帝国側と日本側の対応について話し合っていたので、次はジュニバール帝王国等の列強国と話し合うことにした。
(日本に地球連盟国・・・もう少し様子を見させて貰うよ。)
そう考えていると、議会堂内から世界会議開始まであと1時間という内容のアナウンスが流れた。
ケイソン大使はなるべく急いだ方が良いと考え先を急いだ。
如何でしたか?
世界会議と言っておきながら少し世界会議の内容が少ないと思ったらすみません。
次は本格的に世界会議が始まると思います!




