第36話 大連合戦争後の各国の反応 その2
大変!お待たせしました!
この2週間の間に無事に!仮免許を習得をし、教習所を卒業することが出来ました!
いやぁ~長かった!次は免許センターで正式な免許です!
それは置いといて、本当にお待たせしまいました。
すいません。
今日からまた投稿を再開します。どうか長い目でお待ちくださいませ。
第36話 大連合戦争後の各国の反応 その2
レンモネス大陸 レムリア連邦
この広大な世界で列強という高い国際地位を持った国レムリア連邦では、先の大連合戦争で日本国の捕虜になった兵士達が祖国に帰還していた。
レムリア連邦内にある港湾都市では、帰還兵達が連邦の輸送船から降り立ち祖国の地を踏んでいた。そしてそんな彼等を家族が迎え入れていた。
「お父さん!」「あなた!」
「ヘディ!ムーナも!来てくれたのか!?」
「親父!」
「よく帰ってくれたっ!」
そしてこの帰還兵の中には、最後まで北海道で日本の自衛隊と交戦していたノムファ・ゲール海軍主席指揮官がいた。
これは本来ならばあり得ない話である。日本を苦しめた軍の指揮官が何も戦争犯罪者として裁かれずに祖国に帰還出来るなどあり得ないのだ。
だが、日本との会談で、レムリア連邦は海軍内で絶大な影響力を持つノムファ主席指揮官が生きていると判明した際に、彼の引き渡しを要請したのだ。
日本政府は、当然の事ながらこれを拒否したが、彼は海軍から多くの支持を得ており、彼を処罰すれば軍内部の反日感情が更に悪化すると言われた。
普通ならそんな理由で彼を解放するわけも無いのだが、これ以上戦争の火種を残すのは困るのと、収容所の職員からノムファの模範囚とも言える態度を聞き、財務大臣が、彼を使い親日派閥をつくれないかと会議で発案したのだ。
これには、防衛大臣や官房長官などが反対したが、レムリア連邦内に親日派をつくりたがっていた外務大臣や総務大臣らがそれに賛同するような発言をしたのだ。
総理は悩んだ末に、彼を解放することを選んだ。この決断には反対者も多数出たが、彼は日本の強さを把握しており、これまでの行動から冷静かつ理性的な判断力・決断力を持っていると判断されたため、彼を解放することを正式に決定した。
もちろん彼が反日行動を起こさないように、監視体制を整えることにした。速やかにレムリア連邦上層部にスパイを送り込む準備を整えて、大使館を急いで設置し、それを中心に活動する予定だ。
この決断が果たして日本に吉と出るか凶と出るかは分からない。
そんな複雑な思惑が重なり、彼ノムファ海軍主席指揮官は、この祖国に帰還することが出来た。
そして今彼の前には海軍の主要な幹部達が彼を歓迎していた。
「「閣下、お帰りなさいませ!」」
彼等はそう言い、一斉にレムリア式の敬礼をした。それにノムファも返礼をし感謝の言葉を述べた。
「うむ、ありがとう。私がいない間何か問題は無かったか。」
「閣下がご不在の間、海軍軍人達は皆、閣下のことが心配で気が気ではありませんでした!」
1人の幹部が今にも泣きそうな顔でそう言った。周りにいた幹部達もそれに同意するかのように頷いていた。
「すまなかったな。だが、こうして喜びにしたっている場合ではない。我々は進まなくてはならない。今後は日本と共に歩むのだ。彼等の技術を少しでも速くそして多く吸収しなくてはな。」
「日本とはそれほどの国なのですか?」
幹部の1人が驚いた様な顔で聞いた。
「あぁ、総議長のご決断は正解だよ。お前達私がいない間、あの国と徹底抗戦すると息巻いていたんじゃないか?」
「・・・」
その言葉に幹部達は、一斉に黙りこんだ。まさしくその通りで、今まで総議長の決断に不満を感じていたのだ。
「その気持ちはありがたいが、そうした場合、一時の感情で国が滅ぶところだった。日本と総議長には、感謝しかないよ。」
ノムファはそう愉快気味に笑い、幹部達が用意した車に乗って首都へ向かった。
彼は、帰還する前に日本政府と会談した内容を、車の中で思い出していた。
「・・・さて、ノムファさん。貴方はこれから祖国へ帰還する事が決まりましたが、それには貴方の側に条件が付きます。」
「うむ、承知している。」
「よろしい。ではまず1つ目は、貴方は解放した際には反日感情を持った軍人の説得にあたって欲しい。
2つ目は、我々日本への敵対行動を行おうとする者達の監視・牽制をすること。
再度の戦争は、両国にとって良いことなんてありませんからね。
・・・ちなみにこれらは貴方を解放する条件ですが、我々にはそれを強制する力はありません。貴方が何もしない又は、敵対行為をしようとも我々にはそれを止める術はないです。しかし、それをすれば、我が国と貴国はまた意味のない戦争をすることになる。そうなれば貴国は再起不能のダメージを負うかも知れません。」
「ご心配なく。私はそのような事はしない。もう貴国との戦争は懲り懲りだ。」
「よろしい。ではこれにて、貴方はレムリア連邦の輸送船で祖国へ帰還します。」
あの時の会話を思い出し、彼は今一度この国と日本との歩み方を考えた。
(さてね・・・一体何年掛ければあの国と並ぶことが出来るんだろうな?)
彼の疑問は心の中にのみ、響いた。彼は今後、総議長らと共に親日派を先導することになる。
ちなみにだが、同じくレムリア連邦の陸軍中将ジェネットも、レムリア政府は無罪放免を要求したが、これには流石の日本も拒否した。
少なくとも国民に差し出す生け贄が、日本政府には必要なのだ。そうしなければ、日本政府はレムリア連邦に屈したと批判されることになる。
レムリア連邦としても、ジェネットは日本との戦争で生き残った数少ない将校であり、陸軍内部でもそれなりに高い地位についていたため引き下がりたくなかった。しかし日本政府は、ノムファ主席指揮官だけを釈放すると言い切り、それ以上の話し合いには応じなかった。
最後まで抵抗したノムファが釈放され、ジェネットが裁かれるという奇妙な展開になったが、日本政府も目に見える成果を1つでも失いたくないため必死だった。
ヨンバハーツ大陸 港湾都市 マニート
この大陸の、メンリルバス教同盟国の1つであるマンハタニア王国。その首都である港湾都市マニートでも、メンリルバス教同盟国から徴兵された一般兵士や冒険者達が帰還していた。
日本より出してくれた輸送船で、兵士や冒険者達は自分達の活動拠点である大陸に帰還した。
冒険者達は無理矢理徴兵されたことと、彼等による犠牲者や損害が報告されていない事から裁かれることなく、帰還できた。
唯一の損害といえば、特殊急襲制圧部隊の隊員の装備品に破損が出たくらいだろう。(修理費用453万円)
そして講和が結ばれた為に、兵士達もそれぞれの国に帰ることが出来た。
港湾都市の港では、帰還した冒険者達が、ようやく帰還出来たことに感謝していた。
マニート 港
「はぁ~ようやく帰れたぁ!!」
そう叫んだのは唯一の損害を出した凄腕の女冒険者である、「宝玉の剣」のリーダーのアンナ・ヒリシタリアだった。彼女等「宝玉の剣」はこの都市が活動拠点であった。
彼女は久しぶりの故郷の地を踏み締めながら固くなった体をほぐしていた。
そしてその後ろにも、同じチームメンバーが体をほぐしていた。
「う~ん。・・・ねぇアンナ、あれ見てよ。」
体をほぐしながら周りを見ていたチームメンバーの女魔術師であるヘンナ・リンメトが指を指してアンナを呼ぶ。
その先では、講和の条件である戦争犯罪者引き渡しの為に、陸上自衛隊の隊員が次々とこの港に上陸していた。自衛隊以外にも、民間人らしき者達や、先日アンナが戦った特殊急襲制圧部隊も、数人だけだが上陸していた。
本来ならば、明らかに恐ろしげな見た目をしている特殊急襲制圧部隊は、むやみに上陸させる訳にいかない。しかし、まだ日本との講和を納得していない勢力への抑止力として、一部を現地人に見せつける形で上陸させていた。
それを発見したのだが、その時アンナが名残惜しそうに呟いた。
「はぁ~・・・また戦いたいなぁ。」
「絶対に駄目だからね?」
アンナの呟きをヘンナが止める。それに他の仲間達も同意するように頷いた。
「だってさぁ~結局あいつらの中身が分からずじまいだよ?気になるじゃん。」
「あ~もう、なんでそんなに命知らずなのかな~」
「お前・・・いつか死ぬぜ?」
「まぁそれでここまで強くなったのかも知れないけどさぁ。」
「アンナさん!」
そう彼等が話していると、アンナ達を呼ぶ声が聞こえてきた。振り返ると呼んでいたのは、40代ほどで短い顎髭が特徴的な、冒険者組合の組合長であった。
「あれ~?組合長じゃん。来てくれたんだぁ。」
アンナがそう能天気に反応した。組合長はやや速足で歩み寄った。
「生きていたんですな!いやぁ~良かった!良かった!」
組合長は、そう笑顔で本当にホッとしように喜んでいた。彼は、組合の主力である「宝玉の剣」と有力な上位の冒険者チームが長らく不在で、しかも死んだかも知れないと聞き、暫くの間は、不安でろくに眠れていなかったのだ。
だが今は、彼女等とその他の冒険者チームがほぼ無傷で帰ってくれたことで、ようやく安心出来たのだ。
「それって本当に私たちの身を心配してたの?組合の経営の方が不安で一杯だったんじゃないの?」
ヘンナが組合長をじっと見つめながら言った。組合長は、その言葉に冷や汗をかきながら反論した。
「い、いやまさか!私はしっかり君達の身を案じていたよ!本当さ!」
本当は、上位の冒険者しか受けられない案件が大量に溜まっており、そのせいで依頼者達が組合に押し掛けてきて、違約金を払う羽目になった案件が複数あったのだ。そのため今後の経営をどう展開するかでずっと悩んでいたのだ。
だが、当然だが、彼もしっかりと行方不明になった彼女等のことを心配はしていたのだ。普段の彼ならばあり得ないぐらいに毎日神に祈っていたのだ。
「ふぅん。・・・まぁいいけどさぁ。」
ヘンナは呆れたように溜め息を漏らしながら、そう呟いた。
「えへへ・・・あ、そうだ。それで、どうだった?日本には、有望な冒険者志望者とかいたの?」
「ん?・・・いいやそれっぽい奴は見てないなぁ。私達が見たのは、基本的にあいつらだし。」
アンナはそう言い、自衛隊のいる方へ目を向けた。組合長もそれに釣られて自衛隊を見た。
「あぁ、あれが噂の日本の兵隊さん?なんか変わった軍服だねぇ。ん?なんか黒い化物いるんだけど・・・」
組合長は、迷彩柄の自衛隊以外に一際背の高く、しかも異常な見た目をしている特殊急襲制圧部隊の隊員を見て驚いた。
「ねぇ、アンナさん。あれと戦ってたの?」
「ん?まぁそうだよ。」
その言葉に、組合長は少し考えた後にまたアンナに質問をした。
「あの化物をうちの組合に誘えないかな?」
「んー・・・止めといた方が良いんじゃない?その言葉にあいつらが乗るとは思えないし。それに、日本に狙われるなんて嫌でしょ?」
アンナがそう言うと、彼はゾッとしたような反応をした。
「ひぇ~、それは嫌だね。列強をあんな短期間で倒すような国には睨まれたくないよ。・・・それで?あれって強かったの?」
「さぁ~?少ししか戦ってなかったからなぁ~。まぁでも、そこら辺のミスリル級じゃあ、ちょっと厳しいと思うよ。」
「そんな強いの?マジで?」
組合長は、目を見開いて驚愕した。ミスリル級ともなれば、そこら辺の兵士ぐらいならば、数十人が束になって掛かってきても倒せる程の強さなのだ。
「身体能力も凄いけれど、何よりも連中の使ってる銃?がヤバイのよ。オーマバスの兵隊も銃を使ってたんだけど・・・あまりにも性能の差がありすぎる。それに、ヘンナの攻撃魔法を耐えてたのよ。」
「え!?ヘンナの魔法を!?信じられない!!」
「しかもあいつらの使ってる乗り物がずるいくらいに速くて強いの。空を飛ぶ乗り物なんてヘンナ達の防御魔法にヒビを入れる程よ。」
「ふひゃぁ~!そんな凄いんだぁ。まぁオーマバスとレムリアを破ったんだからそれくらいは凄くて当然なのかな?アンナなら勝てる?」
その質問にアンナは、彼等を見ながら考えた。あの時の戦闘を思い出して。
「・・・アンナ?」
「・・・・・・一対一なら勝てる自信はある。何なら三対一でもいけると思う。でもあいつらあんな化物を何体も持ってた。緑色の兵隊の持つ銃も、レムリアの銃よりもずっと高性能だった。あいつらに数で掛かってこられたら無理だなぁ。」
「う~ん。となるとあの情報は間違いないのかなぁ?」
「何が?」
「ほら、ずっと前に世界情報通信会社が報道してた日本の取材の事さ。」
「あぁ~確かに。異世界へ転移したとか、とんでもない高さの建物がそこら辺に建ってるとか噂になってたなぁ。」
「そうそう、だからさ。上がさ、日本に冒険者組合の支部を設置するって話を聞いたんだよ。」
「支部を?果たして乗ってくれるのかな?その冒険者達があの国に侵攻しちゃったし。」
「不可抗力だからな~。それに列強の中にも冒険者組合を設置してる所だってあるじゃんか。」
「かなり微妙だと思うよ。向こうには危険な亜種族とか見なかったし、あんな軍隊がいるなら必要ないでしょ。」
「ですよね~。」
組合長は、街中へ入っていく自衛隊を見ながらそう呟いた。
するとアンナは何かを決心したように声を出した。
「・・・よし!」
「ん?何がよしなの?ってちょっと!?アンナさぁん?」
組合長は、聞こうとしたが、アンナは街中へ入っていった自衛隊の方へ走り去ってしまった。
「あれ~?組合長、どったの?そんな大きい声を出して?」
少し遠くて仲間達と雑談をしていたヘンナがそう聞く。
「いや~ちょっとアンナさんが、日本の兵隊さんの所に走り去っちゃったの・・・」
「・・・はぁ~!?」
マニート 住宅区画
ここマニートの平民や商人達が行き交う区画の中央大通りでは、日本の自衛隊員が歩いていた。
戦争犯罪者の引き渡しをするグループと大陸の軽い調査を行うグループで行動していたのだ。
正確には、魔法技術の理解を深める為に魔法文明の国にこうして向かわせている。
だが、迷彩柄の、しかも10人程の集団の彼等は、この街中では非常に目立つ為に、住民達の噂の的になっていた。
「あれが噂の?」
「緑色だな。華やかさが一切ないぞ?」
「本当にあいつらにオーマバスとレムリアが負けたのか?」
「俺なら1発であいつらを黙らせてやれるぜ!」
何やら勝手な事を言っているが彼等はそれを無視して歩く。
「今更ながら、本当に俺達は目立つな。」
自衛隊隊員の1人がそう仲間に言う。
「そう言うな。別のあのグループの方がもっと目立つだろうよ。」
「ふっ、確かにな。」
隊員が言った別のグループとは、学者を連れたグループである。別に学者を連れているだけならそこまで目立ちはしないが、護衛の為に自衛隊以外に特殊急襲制圧部隊も連れていたのだ。
その集団はかなり目立つことであろう。只でさえ自衛隊の迷彩柄で目立つのに、黒い化物が数人ついてくるのだ。恐ろしいったらありゃしない。
そう考えていると、彼等のグループに黒髪ロングの美女が声を掛けてきた。
「お~い。そこの日本の兵隊さぁん!」
そこそこ大きい声であった為に周りにいた住民達もその声に反応した。すると住民達はその女性を見て、驚いた様な声をあげた。
その様子に自衛隊の隊員は疑問に思う。
「ん?なんだぁ?有名人か?」
「ここからじゃあ人が邪魔で見えないぞ。」
そう彼等が周りの反応に困惑していると、人混みが割れた。その割れた所から1人の黒髪女性が見えた。中々の美人であった。
「おい、誰だあいつ?」
「ちょっと待て!あの人確か・・・特急部隊と互角に戦ってた人だ!!」
「嘘だろ!?」「あの冒険者か!?」
特急部隊とは、特殊急襲制圧部隊の呼称を自衛隊の隊員が勝手に縮めたあだ名で、そっちの方が呼びやすく、速いので基本的にそっちで呼ばれている。
そして自衛隊員の間でも、あの特急部隊と互角に戦い生き延びた冒険者は有名で、そんな人物が自分達を呼んでいることに恐怖を感じた。
アンナが自衛隊員グループの元まで近付くと、一番近くにいた隊員に、質問をしてきた。
「う~ん・・・ねぇ、あの黒い兵隊さんって何処に行ったか知ってる?」
「く、黒い兵隊さん・・・ですか?」
隊員はすぐに特急部隊のことを言っているのだと気付いた。
(な、なぁどう考えても特急部隊のことを聞いているんだよな!?)
(ど、どうする!?素直に教えるべきか!?)
(いや待て待て!何で特急部隊を探しているんだ?ひょっとしたら決闘をしようとしているんじゃないのか!?)
(そんなバカな!・・・いや、でも冒険者はそんな血気盛んな集団だってオタクが言ってたな。)
そう後ろにいた隊員達が小声で、教えるべきか、誤魔化すべきなのか考えていると、質問されていた隊員が答えた。
「え、えぇと確か・・・あっちの方角に行きましたよ。」
(((おぉい!?)))
あっさり教えてしまった隊員に全員がその隊員を見てしまう。だが、既に時遅し。
「ふぅん、あっちか。ありがとうね!親切な兵隊さん!」
アンナは親切に教えてくれた隊員に笑顔でお礼を言って走り去ってしまった。
美女からの笑顔のお礼の言葉に言われた隊員は、思わずにやけてしまっていた。すると周りにいた隊員がその頭をひっぱたく。
ペシッ!
「いた!?」
「お前何やってんだ!?素直に教えるだなんて!」
「そうだぞ!どうすんだ!決闘沙汰になったら俺等の責任になるんだぞ!!」
「い、いや・・・つい教えちゃったよ。」
「ついじゃねぇぞ!!やべぇよ。本当に何かあったらどうしよう!」
「お、落ち着け!取り敢えず報告を・・・」
「どう報告すんだよ!間違って要注意冒険者に特急部隊の居所を教えてしまいましたって言うのか!?」
「で、でも報告をしないわけには・・・」
狼狽える隊員達を見てこのこのグループのリーダー各の隊員が言う。
「はぁ・・・取り敢えずだ。向こうの班にも知らせよう。本部には、俺が報告をする。お前達は、このまま魔道具らしきものを見つけたら撮影と、出来るならば交換して貰った金で購入しろ。」
「了解」
その頃の学者と特急部隊が混合したグループでは、やはりかなり目立っていた。
彼等は現在、この首都で一番大きい市場である中央市場に来ているのだが、混雑しているというのに、半径2メートル以内には、絶対に近付いてこないし、通り過ぎるとほぼ100パーセントの確率で振り返って見てくるのだ。
明らかに目立ち過ぎるのだが、このグループの良いところは、殆ど面倒な連中に絡まれないというところだ。
他のグループでは、奇妙な服装で強そうに見えないから命知らずの無謀な連中に陰口や直接絡まれたりする事が起きるのだ。
やはり、知名度が低すぎるのと、見た目が彼等の常識と違いすぎる、スリ目的、異教徒であるが故に評判が悪い、遺族からの恨みなど様々な理由で複数のグループが絡まれるのだ。
だがしかし、このグループは例外だ。どう良く見ても魔人のような見た目をしている連中に、誰が絡むというのだ。
だから、完全に悪手とは言えないのだが、一緒にいる自衛隊員は悪質だと思ったことだろう。
それは特急部隊も同じだ。まるで見世物のような気分でいい気はしないのだ。
そんな護衛役の彼等の気持ちを露知らずか、学者達は市場で売られている魔道具を熱心に見たり、店主を質問責めにしていた。
「ふむふむ!なるほど・・・つまりこれは周囲の気温を少しではあるが下げることが出来るのか!」
学者からのしつこい程の質問に店主は疲れた様な感じで答えた。
「へぇ、そうです。」
「魔道具というのは路上で売る程、安いものなのか?」
別の学者が店主に質問した。確かに彼の言う通りに、魔道具らしき物が至る所で路上にマットを敷いて販売していたり、屋台の様な所であるテーブルに無造作に置かれているのだ。
「いんや、基本的に魔道具は専門の店で扱ってるもんでやすが、こういった中古の物や人気のない魔道具は、こうやって市場で店を開いて売るんでさぁ。それなら仲介で売るよりも手数料も掛からないんで。」
つまり、人気のない魔道具は、こうして市場で店を開いて欲しがっている者に直接売るということだ。それならば、買取業者に払う手数料や買い叩かれる可能性が無くなり、商業組合に払う場所代だけで済むので、都合が良いようだ。
だから市場には、毎日多くの人々が掘り出し物を見つける為に、繁盛しているようだ。
「これも興味深いな・・・よし!店主、これ全部頂こう。」
「え、全部ですかい?」
店主は驚く。ここにある魔道具は、10品ぐらいあり、それを全部買うとなるとかなりの金額になる。それこそ中流階級の商人の主でもそう簡単に出せるような額ではない。
「金ならある。」
疑うような顔の店主に、学者の1人が懐にしまってある金貨の入った袋を、テーブルにのせて見せた。
何十枚と入った金貨を見て、店主はすぐさま商品を渡す。
「ふむ・・・早く調べたいものだ。」
「木梨さん」
魔道具を見て怪しげな表情をする学者に特急部隊の隊員が宥める。
隊員に呼ばれた木梨、物理科学研究所の職員である木梨は隊員の方に目をやり反応した。
「なんですかいな?」
「ここでそんな表情をしないで下さい。周囲の民間人が不審がります。」
「ふんっ!そんなことを言ったらそっちこそ不審そのものではないか!」
全くの正論に隊員は動揺せずに反論した。
「皆さんの安全の為です。もうこの辺りで艦に戻りましょう。もう満足したでしょう?」
「何を言う!まだまだ見たことの無い魔道具がズラリと並んでいるじゃないか!それに、魔道具の専門店にも行かねばならん!」
「しかし、今日のところはもう戻りましょう。それに他の班が専門店の方向に行ったのですからその心配は無いでしょう。」
「私達の目で見て判別したいのだ!」
「そうだ!他の奴等に任せられるか!」
「今日にでも多くの品を集めなくてはならんのだ!今日あった品物が明日あるとは限らないのだぞ!」
荒れる博士達に護衛の自衛官と特急部隊らは疲れたような表情で溜め息を漏らした。
文句を言い続ける博士達を宥めていると、遠くで彼等を見ていた野次馬から突然騒ぎ声が聞こえてきた。
ただならない雰囲気を察知した隊員らが一斉に警戒体制に入った。
(一体何だ?)
(分かりません。向こうから声が聞こえてきまして・・・)
さっきまで騒いでいた博士達も異常な空気を察知したようで、すぐに自衛官の背中に隠れた。
そう警戒していると騒ぎ声の聞こえた方角の野次馬が別れ始めた。綺麗に別れるその中心には1人の黒髪の女性が歩いていた。
周りの住民の驚いた顔を見る限りかなりの有名人なのだろう。
だが、驚いたのは住民だけでなく特急部隊の隊員も驚愕していた。何せその女性は特急部隊の隊員と一対一で戦い抜いた人物でその隊員いわく、まともに戦ったら勝てる気がしないと言わせた冒険者なのだから。
彼女、アンナはようやくお目当ての相手と会えたことに喜びながら彼等の元へ歩み寄る。
近付いてくるアンナを見て隊員達は動揺する。
(ど、どうする!?何故あいつがここにいる!?)
(た、確かここが彼女等の活動拠点だとは聞いていましたけど、何でこっちに来るの!?)
「いやぁ~ようやく会えたよ。久し振りだねぇ~」
アンナと特急部隊との距離が数メートルの所でそう話し掛けてきた。隊員は話し掛けてきたことに内心、驚きながらも平然とした態度で応えた。
「貴方は確か・・・宝玉の剣の冒険者でしたね?あの時の隊員とは知り合いですがこの場には居ませんよ?」
そう応えるとアンナは驚いたような表情をした。その反応に困惑したがすぐにアンナが次の言葉を発する。
「これは驚いた・・・その声に、気配に匂い、やっぱり魔人とかじゃなくて人間なんだなぁ~。その鎧に身体能力向上の魔化が籠められているの?それとも訓練の賜物なの?それとあの時の彼は何処にいるの?」
人間ではなく魔人と勘違いされていたことに困惑するが、それも仕方ないと考えて質問に答えようとする。が、その前に木梨達、学者等が質問してきた。
「今、身体能力向上の魔化と言ったのか!?そんな魔法があるのか!?」
突然の横からの質問にアンナは驚くがすぐに応えてくれた。
「ん?勿論あるよ。てか、そんなことも知らなかったんだ・・・いよいよ国ごと転移したって話の信憑性が増してきたな。」
「それを具体的に教えてくれ!」
「道具に付けるのと唱えるもので別れたりするのか!」
「ちょっと!皆さん落ち着いて下さい!失礼ですよ!」
「えぇい!うるさい!あんな重要な情報を聞いて落ち着いていられるか!」
次々と近付いて質問してくる博士達に、アンナが少し嫌そうな表情をしてるのに気付き、隊員が慌てて博士達を引き剥がした。
ここで激怒されて暴れられたらとんでもない事態になると思ったのだ。
その様子にアンナは意外そうに呟いた。
「へぇ~結構大変そうだね。階級ってそんなに高くないの?おたくらって。」
「この方々は民間人ですので身の安全の為にそうしているのです。」
「お、それは私が危険って言ってる?」
「あ、いや、それは・・・」
アンナからの言葉にこの場にいた博士達を除く者達は焦った。不快な気分にさせてしまったのかと恐れた。
「冗談だよ。一度戦った仲だからね。そう警戒するのは当然だよ。ごめんね!ちょっと話してみたかっただけだから。また会おう!」
アンナはそう言い人間とは思えない程の跳躍力で建物を登り、去ってしまった。その人間離れの身体能力に隊員達は唖然とする。
「嘘だろ・・・」
「何メートルもある建物をあんな一瞬で飛び越えて消えた・・・なんつぅ化物だ。」
一方博士達はアンナにまともに質問の答えを聞けずに消えてしまったことに心底残念そうだった。
「あぁ~!せめて違いだけでも教えてくれぇ!」
「そんな!もっと聞きたいことがあるのに!」
「ちょっと!皆さんいい加減にしてください!皆に見られてますよ!」
騒ぐ博士達がこれ以上周りに無様な様子を見せないよう、隊員達が本日何度目かの注意をした。それでも騒ぐ博士達を相手する中、1人の隊員が心の中で思っていたことを呟いた。
「何しに来たんだ?」
彼の呟きは博士達の怒号にかきけされてしまい、誰の耳にも聞こえることは無かった。
「ふふ~ん。話してみると意外と面白い奴等だったなー。」
とある高い建物の屋根の上で体育座りをしながらアンナはそう楽しそうに呟いた。
(まだまだ謎は多いけれど、時間を掛けて調べてみよっと。)
そうアンナは考え、仲間達のいる宿へ向かう。そこでアンナはあることに気付く。
「そう言えば・・・あの時の戦った彼の名前くらい聞いとけば良かったなー。てか、質問しといて答えを聞いてなかったし。」
「ま、またいつかで良いかな。」っと割りきり、アンナは今度こそ仲間達のいる宿へ向かった。
いかがでしたか?ここまでありがとうございました
ちょっと主要国の反応が少なかったので次もそれだと思います。
それでは、また次のお話で。




