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強化日本異世界戦記  作者: 関東国軍
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第28話 日本の猛攻

関東に雪降りましたね 

第28話 日本の猛攻


第1護衛大群旗艦「あかぎ」CIC


この300メートルを誇る巨大な軍艦の、最も重要な区画にて、この艦隊の総司令官である今村大将が室内に多数あるディスプレイを眺めていた。


「・・・やはりレムリア連邦は動いていないのか。」


「はい。レムリア海軍はレンモネス大陸の近海付近に待機しているだけです。今からここに向かうとしても間に合わないでしょう。」


「連中はオーマバスを捨てたということか?それとも我々と講和するために待機しているのか?オーマバスとの戦況次第では変わりそうだな。」


そう呟いていると、別のディスプレイから反応がでた。


「オーマ島より多数の航空機反応を確認。距離は約10!オーマバス空軍のものと思われます。」


「来たか。現在発艦中の機体に迎撃させろ。」


「了解。」




「あかぎ」 甲板


「あかぎ」の甲板では複数機のF-32Jが待機していた。


航空機誘導員からのハンドサインにより、待機していたF-32Jがカタパルトにて射出される。


一気に急加速した機体に強烈なGが掛かるが、パイロットはそれに耐えて無事に飛び立った。周囲を見渡すと、陸地側では現在も、多数の上陸用舟艇が兵士を運んでは戻ってを繰り返していた。


貨物船の方を見ると、まだ多くの兵士達が待機していた。


そう少しの間見渡してから、既に飛び立っていた仲間と合流。編成を組んで敵陣地を攻撃に向かう。


「これより、我々は敵陣地を爆撃する。1班はこのまま爆撃を、2班は敵航空機に備えろ。」


「「「了解」」」


隊長機からの指示に隊員達は一斉に返事をした。




この様子は地上の上陸部隊からも見えていた。


「味方の航空機だ!」「助かったぞ!!」


「HAHAHA頼んだぞ!!」


頼もしい空からの援軍に、地球連合軍の士気は最高潮になった。


一方のオーマバス側は、今までに聞いたことの無い轟音を出しながら、とんでもない速度で飛行してくる戦闘機に動揺する。


「敵の新手だぞぉ!!」「何だあれは!?」「悪魔だ・・・悪魔の乗り物だぁ!!」


兵士達が機関銃や数少なくなった対空砲で迎撃しようとするが、全く当たる様子が無かった。


だが、こちらにも味方の航空機が来たようだ。後方より、90機を越える数の複葉機が来てくれた。


90機に対して日本は今のところ20機程度だった。まだまだ増えそうではあるが、各個撃破をすれば、勝てるだろうと考えていた。


「敵は足が速いが、数ではこちらが上だ!列強国の底力を見せてやれ!」


「「「「了解」」」」


すると、敵の航空機はなんと二手に別れ始めた。こちらに向かってくるのはたったの10機程度だった。


「舐めやがって!返り討ちにしてやる!」


90対10・・・勝敗は分かりきっていると思っていたが、オーマバス側は驚愕することになる。


敵の両翼下から何かが分離し、それがこちらに向かって物凄い速さで突っ込んできたのだ。


「な!噂に聞く光る矢かっ!!全員回避ぃ!」


隊長からの指示に、部下は一斉に回避行動をとった。だが、光る矢は方向を変え、逃げる標的を追尾したのだ。


「うわぁぁ!追尾してくる!」「糞っ!後ろにつかれたぁ!」「助けて!助けて!」


部下からの悲痛な叫びに、何も出来なかった隊長は悔しげに叫んだ。


「糞ったれがぁ!!あれから光る矢を出していたのか!あれを何としてでも倒すぞ!」


生き残ったのは50機程にまで減ったが、それでも5倍の戦力差があるため、戦闘を続行した。


彼等はまた驚愕することになる。速いとは思っていたが、近付くにつれ、その速さがよくわかる。彼等の予想を遥かに上回る速さだったのだ。


それだけではない、互いの距離があと4キロメートル程のところで、日本の航空機が機銃で攻撃してきた。しかもそれは、オーマバスの機銃よりもずっと強力だった。


ドガガガガガガガガッ!!


少しでも掠った航空機は瞬く間に墜落した。正面から被弾してしまった者はエンジンや羽がグチャグチャになりならがら墜落した。


「ッ!なんて威力だ!」


「被弾した!墜落する!誰かぁ!!」


圧倒的過ぎる性能差に、オーマバス空軍はひたすら逃げ回ることしか出来なかった。しかし、それでもすぐに追いつかれ撃墜された。


10分も経てばオーマバス空軍は全滅していた。この様子を見ていたオーマバス陸軍は、余りにも一方的過ぎる戦いに言葉も出なかった。


最近になって創設された組織とはいえ、そこらの飛竜よりずっと強い筈の航空機が、敵の数倍の数いたのだ。なのに、敵を一機も落とせずに全滅。その衝撃は当然大きい。


しかし、驚いている暇は無かった。先ほどから、日本の航空機による爆撃が激しく、塹壕に篭っている兵士達は何も出来なかったのだ。


連中は戦車を中心に攻撃しているらしく、戦車の爆発音が鳴り止まない。更には上陸部隊が総攻撃を開始したのだ。


しかも敵は、頑丈な特殊部隊や装甲車・戦車を前面に出して進撃して来る。必死に食い止めようとするが、それも叶わなかった。


頼みの綱である戦車は、爆撃から逃れる為に逃げ回っていて、それどころではなかった。亜種族師団もゴブリンは全滅、オーガや巨人の全滅も時間の問題だろう。地雷もあらかた片付けたらしく、敵はこちらに向け突っ込んで来た。


「もうダメだ!食い止められない!!」


仲間の誰かがそう叫ぶ。塹壕の中では、敵からの射撃により頭をぶち抜かれて、脳みそが飛び出ていたり、死体から出てしまった糞尿や内蔵であふれていた。


「諦めるな!第1師団が来るまでの辛抱だ!」


「もう無理だぁ!!」


仲間の1人がそう言い、武器を放り投げて後方へ走り去った。


それを見ていた仲間の数人が少しずつ下がり、逃げてしまった。


「こ、こら!貴様等、逃げるなぁ!!」


上官がそう怒鳴るが、1人、また1人と逃げる。恐れていた士気の崩壊が始まったのだ。



その様子を見ていた地球連合軍は声を上げた。


「敵は逃げていくぞ!今のうちに突撃だぁ!!」


「「「「おおぅ!!」」」」


上陸部隊は全速力で走り出した。もはや敵の戦車は殆ど残っておらず、恐れるものは無くなった。


端の方では生き残っていたオーガ・巨人が武器を振り回しているが、装甲車の重機関砲で頭や腹部を撃たれ、内蔵を撒き散らしながら倒れる。


そして遂に、先頭を走っていた戦車が塹壕に到達した。塹壕に残っていた数少ないオーマバス兵士が発砲するが、すぐ後ろにいた装甲車の重機関銃が彼等を撃ち抜く。


他の特殊部隊や地球連盟陸軍・陸上自衛隊も塹壕に到達し、いよいよ敵本陣へと向かう。


塹壕を抜けた先は平地になっているが、塹壕らしき物も無く、機関銃等の固定武器も前線に殆ど置いたのだろう。まともな防衛設備は無さそうだった。


地球連合軍はそのままの勢いで本陣に向かった。




その頃、オーマバス司令部では大混乱だった。敵の強さは、彼らの想定を遥かに越えていたのだ。


「魔動式戦車部隊はどうしたのだ!?」

「本当に空軍は全滅したのか!?速すぎるぞ!!」

「敵はここに来るぞ!迎撃準備を急げ!」


外で司令部の防衛にあたっていた兵士達が急いで敵に向かうが、どの兵士も顔色が悪かった。あれだけいた前線の兵士達がやられ、敵がここまでくるのだ。恐怖を抱かない筈が無い。


天幕内にいた総司令官に参謀長が話す。


「総司令官!ここも危険です。別の場所に司令部を移しましょう。」


「あぁ、そうだな。準備を急がせろ。」


「は!」


そう話していると、外から轟音が聞こえた。慌てて外に出てみると、上空に見たことの無い航空機が飛んでいた。20機程の数が、こちらに向け飛行していた。


「日本の航空機か!?」

「な、何をしている!速く撃ち落とせ!!」


本陣にある対空砲が航空機に向かって発射するが、標的が速すぎる為に、全く当たる様子が無かった。


それに気付いた航空機が機銃掃射をしてくる。その威力が、彼等の知るどんな機銃より強力だった。


ドガガガガガガガガッ!!


「ぐわあぁぁ!!」「痛ぇよ!!助けてくれぇ!」

「ひいぃぃ!」

「衛生兵を呼べ!速く!」


撃たれた場所は悲惨だった。対空砲を中心に攻撃された為、それを操作していた兵士達が負傷した。辺りには撃たれた兵士のものと思われる手足が落ちていた。


それを見ていた兵士達の一部が吐いてしまった。司令部にいた参謀達もそれを見て顔面蒼白となっていた。


「これは・・・あまりにも酷い。」


「ここもいよいよ危険だ!速く撤収しろ!」


そう参謀達が言っていると、伝令兵が近付いて来た。その様子を見るかぎり、大事のようだ。


「ほ、報告!敵に本陣の前衛基地を占領されました!更には中衛基地も壊滅状態で、既に敵に降伏した部隊も多数あります!」


その報告に聞いていた全員が絶句した。


「バカな!?前衛どころか中衛もだと!?速すぎる!幾らなんでもそんな短期間で!」


「これは不味い!不味すぎるぞ!!」


「落ち着けぇ!!」


慌てふためく参謀達を見て総司令官がそう怒鳴る。


「最低限の設備を回収してマッケラまで後退する!第1師団にもそう通達しろ!後衛基地部隊には殿を努めさせる!」


マッケラとはここより真東に40キロメートル程歩くとあるオーマバスの都市である。


人工は70万人程の規模で、首都から通じる国道があるため、重要都市である。


「ここで戦っても被害が広がるだけだ!市街戦に持ち込むぞ!」


「「「は!」」」


その言葉にその場にいた兵士達は一斉に行動を開始した。通信設備を輸送車に詰め込み、最低限の弾薬と大砲をゴーレムに牽引させる。


「ここまでの被害はどれくらいだ?おおまかでかまわん。」


総司令官の質問に隣にいた幹部の1人が答える。


「本陣の中衛基地まで攻め込まれたので・・・3万人は確実に殺られたかと。亜種族も含めば4万人です。戦車部隊も全滅でしょう。もはや残っているのは、第1師団の100両だけです。」


「残っているのは6万強か。追撃を考えるともっと減るだろうな・・・他の援軍は頼めそうか?」


「厳しいでしょう。植民地の防衛に加え、パースミニア王国の牽制にだいぶ持っていかれています。」


「糞・・・レムリア軍さえいれば、何とかなるのに。」


彼等がそう話している頃、本陣の後衛基地では1万人程の兵士達が必死に時間稼ぎをしていた。ここを抜かれると司令部の守りは空になるため、皆必死に戦っていた。


だが、既に3万人程の地球連合軍が上陸しており、しかも弾薬を満タンにした戦闘ヘリが暴れまくっている。全滅は時間の問題だ。


「行け行け!敵ら疲弊しているぞ!」

「GOGO!海兵隊の力を見せてやれ!」

「南米1の力を見せてやる!」

「アジア1の力を思い知れ!」


地球連合軍は怒涛の勢いで進軍していた。予想以上に手強かった戦車もいない今、彼等を止める者はいない。


オーマバスの司令部はどこなのか。天幕や地下壕が大量にあり、迷いそうになる。しかし天幕は、戦車や装甲車などの戦闘車輌が突進し、中にいた敵ごと押し潰した。


地下壕は特殊急襲制圧部隊が先行して制圧していた。


ドガガガガガッ!


「ぐわっ!」「ぎゃあ!」


「クリア!」「クリア!」


次々と地下壕を制圧していく特殊部隊に、地下で戦っているオーマバス軍は恐怖していた。


「畜生!ここももう持たねぇぞ!」


「黙れ!異教徒共に降伏するくらいならここで戦って死ぬ方がマシだ!」


一部のオーマバス兵士は、まるでかつての旧日本軍のように最期まで降伏せずに戦って死ぬ者も多数いた。


中には、爆弾を持てるだけ持って突撃する者すらいて、特殊部隊側を慌てさせた。


こんな地下で爆発でもされれば、幾ら彼等でも只では済まないので必死だ。


「・・・糞。また突撃野郎だ。」


特殊急襲制圧部隊の隊員がそう呟く。


「今の所はまだ浅いから、万が一でも仲間が回収してくれるだろう。しかしこれ以上は危険だ。C4を設置して戻るぞ。」


隊員達はこれ以上は危険だと判断し、壁の目立たない場所に爆弾を設置し、撤収した。


その後、全員の撤収を確認した後に、起爆して敵を生き埋めにした。


地上戦でもオーマバス兵は即席のバリケードに隠れたり、魔術師の結界魔法を使って果敢に戦うが、戦闘車輌を前に苦戦していた。


オーマバス兵の小銃は貫通しないが、逆に地球連合軍の重機関銃はバリケードや結界を打ち砕き、敵を殲滅した。


ドドドドドドドッ!!


パリンッ!!


「結界が破られたぞ!」


「糞っ!魔術師もやられた!」


「もうこれ以上は持ちこたえられないぞ!」


ここには60人程の兵士達が戦っていたが、たったの3両程度の装甲車と30人の兵士達に大苦戦だった。


バリケード内には先程の銃撃で片腕を吹き飛ばされた魔術師が倒れており、撃たれたバリケードも崩壊していた。


バリケードには土嚢やかき集めた木材を積んでいたが、地球連合軍相手には不足していた。


「どうする?降伏するべきか?」


「上官から聞いてないのか?奴等は捕虜を虐殺するんだぞ!?そんな事出来るか!」


オーマバス軍の中には日本に関する情報に嘘の情報を教え、最期まで戦わせるようにしている上官もおり、降伏に反対する者が多数いた。


その話の直後、敵側から声が聞こえてきた。


「降伏しろ!これ以上の戦闘は無駄だ。既にお前達の本隊は逃げた。だが、航空部隊が追撃に出ている。諸君らの戦いには敬意を表する。身の安全は保証する。多くの諸君らの仲間も降伏している。悪いようにはしない。繰り返す・・・」


その言葉にバリケード内にいた兵士達は話し合う。


「どうする?身の安全は保証するって言ってるが・・・」


「あれを信じるのか?仲間よりも敵の情報を信じるのか!?」


「だけど本隊に追撃をしているんだろ?俺達がこれ以上戦ったって意味無いじゃないか。」


「ここ以外にも戦っている仲間がいる!追撃なんて出来っこない。」


「いや、俺見たんだ・・・高速で羽を回してる機械が、本隊の逃げた方向に飛んでってるのを・・・」


彼の言ってることは正解だ。追撃の為に、雷鳥とコブラが本隊の追撃に出ていたのだ。


「なぁ・・・俺死にたくねぇよ。戦って死ぬよりは、降伏した方がまだ希望はあるだろ。」


その言葉に最後まで反対していた彼も諦めた。


その後、50人程までに減った兵士達は降伏した。この戦いで5万弱のオーマバス兵士が死亡し、1万程の兵士達が捕虜となった。


更に5万人程の本隊も、戦闘ヘリの追撃により3000人近くの兵士が倒された。


地球連合軍には900人の被害が出ていた。その内の約500人程は、オーマバスの魔動式戦車によるものだった。


予想以上の戦闘能力を持つ戦車に、地球連合軍の上層部は気を引き締めた。


その後、オーマ島の西海岸には、貨物船に待機していた部隊も合わせ、6万6000名が上陸した。




     地球連合軍 上陸部隊内訳


陸上自衛隊     3万6000名


特殊急襲制圧部隊  1000名


地球連盟陸軍    2万9000名


合計6万6000名



この約7万の大軍は、遂にオーマ島に上陸し、占領することが出来た。


そして、マッケラには4万7000の兵士と都市にいた4000人そして第1師団の1万の合計6万1000人の兵士が待ち構えた。


もし、このマッケラが占領されれば、オーマ島の東南にある首都シンメネリアまで800キロメートルしか無かった。


しかも国道が走っているため、すぐに到達するだろう。だからこそマッケラにいる兵士達は死に物狂いで抵抗する。



だが、地球連合軍側には数千キロの航続距離を誇る爆撃機「よざくら」があった。


その爆撃機が日本列島から飛び立ち、オーマ島の首都へ向かおうと準備していた。


そして地球連合軍は、それを迎える為に、西海岸に即席の滑走路を造っていた。








上陸戦闘後より8時間後


オーマ島 西海岸 地球連合軍 司令部


ここ、地球連合軍にとって最重要の場所を、多くの軍人が警備していた。


その横では、重機で3000メートル級と5000メートル級の滑走路を造っていた。


地球連合軍の拠点であり、ここで爆撃機が来るのを待っていた。


爆撃機が到着後に燃料補給をし、首都に降伏勧告のビラをばらまき、首都内にある軍務局に小型誘導爆弾を投下する。それでも降伏しない場合は、オーマ島にある主要軍事基地を爆撃する。


それでも降伏を拒否するのであれば、最終手段の大規模爆撃をする。


その間の待機場所となる重要な場所である為、司令部のすぐ横に建設するのだ。


そして司令部では、各国の主要指揮官が集まって会議をしていた。


「・・・奴等の戦車について何か分かったのですか?」


そう発言したのは、ブラジル人の指揮官フェヘイラ・サントスだ。


その言葉に今村大将が答える。


「えぇ。外務省から遅れて報告が来まして。列強国では魔法石という特殊な資源を使っているらしく、それが強力な力を持っているらしいです。そしてその戦車にそれが、」


「使われていたと?」


そう言ったのはロシア人のスミノフ・ダニールだ。


「はい、そうです。このような貴重な情報が、戦闘後に届いたことに関して本当に申し訳ありません」


そう言い今村は頭を下げる。


「・・・いや、これに関しては致し方ない。ドバラキ公国の使者から初めて聞いて、しかもその情報は、列強国クラスしか知らないのです。無理もありません。それに、これが原因でこじれるのが怖いです。」


そう今村をフォローしたのは中国人のワン・フォンであった。


確かに彼の言う通り、魔法石を使った強力な兵器については列強くらいしか知らない。それを日本が事前に把握しろというのは少し無理がある。


それにこちらも、簡単に片付くと慢心していたのも原因の一つだろう。この件で拗れて何かしらの重大なミスが起これば、それこそ危険だ。


ここにいる者達はそれを理解しているからこそ、無理に責任を擦り付けようとはしなかった。


次に同じ事が起きないのであれば、それで構わない。今後は慢心せずに戦う覚悟を決められたならプラスだ。そう考えることにした。


亡くなった部下達の事を考えると怒りを覚えてしまうが、それは心の奥底にしまった。


「確かにその通りです。それで、我々はここで待機でよろしいのですね?」


アメリカ人のリチャード・クリントンがそう確認する。


「はい、そうですね。爆撃機がここに到着するので、その後は、降伏勧告をした後、降伏すればそのまま進軍して、首都及び主要拠点を占領。しないのならば、攻撃して占領します。」


「滑走路はどれ程で完了するのです?完了前に爆撃機が到着したらどうするのですか?」


「その点はご心配無く。ここの土地は土が硬く、滑走路に向いていた為、即席ならば、あと数時間で完了します。間に合わなければ、完了するまで、オーマ島上空を飛行させます。彼等に圧力を掛けることが出来ますしね。帰還用の燃料補給の為に建設させてますが、暫くは飛行出来るので。」


「敵が爆撃機を撃墜する力を持っていれば?」


「それを調べる為にも飛行させます。それに、その際には、護衛としてあかぎの戦闘機も一緒に飛ばします。」


その後も、彼等の会議は続く。





オーマバス神聖教皇国 首都 シンメネリア


この国の政治の中枢である、オーマバス大聖堂の会議室では重苦しい空気だった。


どの大臣も顔色が悪く、特に軍務大臣は今にも倒れそうな程に悪かった。


それもその筈、オーマバス神聖教皇国の本土にしかも僅か半日の間に上陸され、防衛軍も半分以上を失うという大失態をしたのだ。


先日は教皇に対して、必ず迎撃して見せると言い放ったのに、数万もの陸軍を失い、空軍に限っては全滅したのだから、いつ教皇から破門をされるか、気が気ではなかった。


「・・・日本軍は西海岸を現在も占領しており、マッケラを攻撃する様子は今の所、確認出来ていないとのことです。」


軍務大臣の補佐官がそう報告する。


「・・・つまり、未だに日本軍を追い返していないということか?」


財務大臣が怒りの表情でそう聞く。


「っ、はい。マッケラに待機している軍は被害が大きく、すぐに迎撃出来る状態ではありません。」


「第1師団では?あれならばすぐに動かせれるだろう?」


「敵は予想以上の強敵です。第1師団だけではいささか不安があります。各個撃破を防ぐ為にももう少し時間を掛けt」


「ではいつだ!?いつになったら奴等を追い出すのだ!?」


植民管理大臣がそう怒鳴る。彼の担当である植民地では、師団を減らされており、いつ反乱が起きるのか、不安で一杯だったのだ。


「あと1日あれば、万全の状態になります。」


「君はもういい。軍務大臣!君が直接報告するべきでは?部下に任せっきりではなく!」


教育大臣からの言葉に軍務大臣はテーブルの上に置いてあるコップの水を飲んでから発言した。


「そうですな、失礼しました。彼の言う通り、1日あれば、編成も整い、出陣できます。」


「・・・日本軍は滑走路を造っているとの報告があるが、その点については?」


「それに関しては日本の空母からの航空機の離着陸の為に建設しているのかと思われます。」

 

「空母を持っているのが問題だ!我々ですら保有していない空母を日本が持っているのですよ!それに、日本本土から爆撃機が来ればどうするつもりですか?更には、日本以外の国旗も確認したとの報告まであるんですが!?」


「それは・・・日本の爆撃機の性能によります。ですが、どんな高性能でも軍が、全力で食い止めます。また、複数の国が絡んでいようとも、我々が撃滅して見せます。」


もはや精神論になってしまったが、軍の大臣として無理など言える筈がない。


すると、教皇が口を開いた。


「・・・食い止めるのですね?いいですか?その言葉を忘れないように。もし、また私の期待を裏切るような事をすれば、破門にします。」


教皇からの絶望的な言葉に軍務大臣は震える。


「ッ!か、必ず食い止めて見せます!必ずや!」


「はぁ、わかれば良いのです。それで、レムリア連邦はいつ動くのです?」


次に教皇は外務大臣に質問した。


「レムリア連邦に問い合わせていますが、未だに防衛の為に動かせないと言っています。」


「必ず動かせなさい。でなければ、貴方も破門にします。いいですね?」


軍務大臣に続いて外務大臣までもが、破門の危機に陥ったことに、他の大臣らは怯える。もし、自分らも何か失敗すれば、今度はこちらの番だと気付いたからだ。


「は、はっ!必ず動かせます!」


「頼りにしていますよ。」


そして、次に情報大臣を見た。


「次に情報大臣、貴方は破門です。出て行きなさい。」


教皇の突然の破門宣告に情報大臣は顔を青ざめた。


「な!?、何故ですか!?」


「分からないと?元凶は貴方がしっかり情報を集めなかったからでしょう?これ以上の理由がありますか?」


そう教皇は言い、控えていた兵士が情報大臣の両腕を掴み連行した。


「な、離せ!教皇猊下!チャンスを下さい!どうか!どうか!」


情報大臣はそう喚きながら連行された。破門された彼は、身分と財産を没収されて一族全員国外追放だろう。例え赤子でも容赦なく追い出され、ヨンバハーツ大陸の反メンリルバス同盟国の奴隷になるか、殺されるだろう。


いや、そもそもそんな所まで辿り着けずに飢え死にする可能性が高い。


大臣らは恐怖で震え上がった。教皇はいつも通りの平然とした様子だったが、内心では、不安に駆られていた。


(一体何をやっているのだ!・・・あぁ、もっと慎重にしていれば!そもそもレムリア連邦は何のつもりなんだ!一体どれ程の額を納めていると思っているのだ!臆病者のワグスめ!)


教皇はレムリア連邦のボーワン・ワグス総議長の顔を思い浮かべる。


彼とは何度か顔を合わせた事があるが、常時しかめっ面で気に食わなかったのだ。だが、格上の国でもある為、何も出来なかった。




教皇や大臣らが不安に駆られている頃、レムリア連邦では総議長がある決断をする。





レムリア連邦 首都ペニテハリン


大義会場 総議長室


この部屋ではボーワン・ワグス総議長が書類を整理していた。


すると入り口から、ノックの音が聞こえる。総議長は入れと言い、扉が開く。入って来たのは、彼の補佐官であった。総議長が、心の底から信頼出来る数少ない人物である。


「失礼します。総議長、スパイから報告が来ました。日本軍らしき軍勢がオーマ島の西海岸を占領したようです。」


「そうか、随分早いな。その後の動きは?」


総議長は書類を整理しながら聞いていた。


「その後は海岸付近に拠点を造っているようです。滑走路らしきものを確認したと。更には・・・空母も確認したようです。それもかなり巨大な。」


その言葉で総議長は動きを止めて、そこで初めて部下を見た。


「どれくらいなんだ?」


「詳しくは・・・しかし、そこから飛び立つ航空機はとんでもない速さだったそうです。たったの10機で数10機のオーマバス空軍機を全て撃墜したようです。僅か10数分で。」


「・・・海岸はどれくらいで占領された?」


「半日足らずでオーマバス軍は撤退したようです。」


「そうか・・・外務議長を呼べ。」


「畏まりましたが・・・一体何の用で?」


「私は決めたぞ。我々レムリア連邦は・・・」


総議長は、机に置いてあるコップの牛乳を飲んでから発言した。


「日本と講和する。早い話、屈伏するのだよ。」



いかがでしたか?


関東に雪が降ったので昼間は少し遊びながら雪掻きをしていました笑


楽しいですね

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 教皇の人格が、未だはっきりしませんね。 私利私欲で行動しているのかそうでないのか、それすらはっきりしない。 情報大臣が罰せられるのは、彼のミスで国が道を誤ったのだから、解るとして。
[良い点] レムリアの総議長は随分あっさり合理的判断に至りましたね。 お国の為に私心の無い性格のようですので、列強のプライドが邪魔する事も無かったんでしょうね。 [気になる点] 問題はオーマバスですね…
[一言] ワグス総議長、えらく冷徹な決断をしましたね。 『もはや、戦っても勝ち目無し。多少の屈辱に耐えてもここで講和した方が、失う物が少なくて済む』という判断でしょうが。
感想一覧
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