第12話 視察団の来日
第12話 視察団の来日
アルシンダ王国近海 ダイヤモンド・プリンセス号
この日本が誇る豪華客船内では「世界情報通信会社」の視察団が宿泊しており、その船内のとある客室ではこの視察団の団長であるベネットと副団長2人のルイスとソフィアの3人が日本国について話し合っていた。
「さて、今回の日本視察だが・・・どうやら我々が想定していた以上の国である事が判明したな。」
ベネットの感想に他2人も反応する。
「えぇ。まさか客船で列強国の空母以上の大きさだとは・・・船長の説明では290メートルらしいですよ。全く呆れるデカさですよ。列強国らの客船でも240もないですよ。客船でこの大きさなら彼らの軍艦や貨物船等はどれ程大きいというのか。」
ルイスが入船する際に個人的に船長に聞いていたことを言う。
「確かに大きさも驚きですが設備も驚きですよ。」
ソフィアはそう言いこの部屋の周囲を見渡す。ここは客室内でも1番高い部屋で、非常に豪華で広かった。
「・・・確かにな。映画館もあるらしく部下が見てきたようでしてね、その部下が言うにはカラーテレビでしかも画質が綺麗で驚いたそうですよ。さらにはジムやカジノ等言い出したらきりがないですよ。」
「全くだな。この航海はあと数時間だと思うと寂しく思えるな。」
ダイヤモンド・プリンセス号は最大で22ノットであるため、エルミハナ大陸と日本との距離ならば4時間もあれば到着するが、豪華客船の旅を満喫してもらうために、船長側の配慮でいつもより遅めに航海していた。
「そうですよね。着いた後すぐに仕事だと思うと気が滅入りますが、今回ばかりは楽しみで仕方ないですよ。」
ルイスの言葉にソフィアも同意する。
「私も同意件です。日本に着いたら家族への土産に何を買うか。そう今から考えるだけで楽しいですね。」
5時間後 新潟県
ダイヤモンド・プリンセス号は目的地である新潟県の新潟港に到着した。
視察団らは既に降りる準備を終えており、団長が先頭で日本の地に足をつけた。
「ここが日本の都市か・・・地方だと聞いていたが並みの列強国の主要都市みたいに発展しているじゃないか。」
ここ日本の新潟県は史実よりも発展しており、新潟港からでも高層ビル群が見えていた。
そうして船を降りた視察団の元に、日本の外務省の人間がやって来た。
「ようこそ視察団の皆様、我らが日本へよくお越しいただきました。私は日本国外務省の木原佳と申します。今回の案内役を努めさせていただきます。」
「これは丁寧にありがとうございます。私は今回の日本国視察団団長のベネット・フリキネスと申します。今回の来訪の許可を出していただき誠にありがとうございます。」
お互いに挨拶した後、視察団は外務省が用意した観光バスで駅まで向かい、東京までの新幹線に乗車した。
「これは・・・日本の鉄道か。そしてあの白いのは先ほど言っていた新幹線と言うものか。初めて見る形だ。」
ベネットの言葉に木原が説明する。
「この新幹線は名前は「とき」と呼ばれておりまして、最高時速は300キロメートルで新潟~首都東京までなら1時間30分で着きます。」
木原の説明にベネット達は驚愕した。
「300!?そんなスピードを出せるのですか!?」
ソフィアの反応も当然だった。列強国はおろかあの超大国ですらも200キロメートルあたりが限界なのだ。それを日本は大きく上回るのだから、驚いて当然だ。
「え、ええ。そして我が国では、リニアモーターカーという新たな電車が東京付近で使われておりまして、その最高時速は500キロメートル以上を記録しておりますよ。」
木原の更なる衝撃事実の告白に、もはや驚きを通り越して恐怖を感じた。そんな速さの列車を開発しているなど信じられなかった。
その後視察団は新幹線に乗りその速さと快適性に驚いた。
ベネットは高速で動く風景を見て呟く。
「う~む!時速300キロなど、最初はとても信じられなかったが、これでは信じるしかないな。」
「いやはや、速さもさることながら快適性も抜群で素晴らしいですよ。」
2時間後、視察団は東京に着き、東京駅の人の多さに驚いた。そして東京駅から出た風景を見て彼らの驚きはピークになった。
「こ、これは・・・凄いな。」
「あんなに高層ビル群があるなんて・・・超大国にすらここまではっ!」
視察団の者達は、東京の高層ビル群、人通りの多さに大型の広告モニターなど、挙げればきりがない光景に呆然とする。
ここ東京は史実よりも発展しており、人口は1600万人。ここだけで下手な大国の人口よりも多く、300メートル級のビル群や、中には500メートルを越えるビルも多数あり、東京スカイツリー等600メートル越えの建物など、史実世界のアメリカ並の超巨大都市に近かった。
彼らはこれから4日間の滞在をする予定だった。
「ここ東京は我が国の中心であり、経済・政治・文化などあるゆる面で最先端をゆく都市であり、またそれら以外にも・・・」
木原の説明にも聞き取れずに呆然としていたが団長はすぐに己の仕事を思い出し木原に聞いた。
「木原さん!これから我々は自由行動をしてもよろしいのでしたな?」
ベネットのやや興奮気味の質問に木原は少し引きつりながら応えた。
「え、ええ。あなた方はあくまで報道会社の方々なので、行動を制限されることはありません。ただ貴方方の身の安全のために、護衛を着けますのでご了承ください。それと最初に伝えましたが、軍事情報等の先端技術に関する本は、技術流出防止のため持ち帰ることは出来ませんし、その撮影もダメです。」
「うむ。分かっております。護衛の件についてもよろしくお願いします。」
木原の言った護衛というのは名目で実際は公安による監視であった。彼らに何かの機密情報を持ち帰らせないために、付くことになる。
その後彼等はこれから泊まるホテルへ向かい留守番組と情報収集に別れて別行動をした。
「ふーむ!やはり凄まじいな。遠目から見ても大きかったがこうして見ると更に凄いな。」
団長率いる数人のグループは東京スカイツリーの足元にまできていた。
ルイス率いるグループは銀座方面に向かい腕時計などや車を見に行っていた。
「・・・どの車を見てもやはり先進的なデザインだ。となると、アルシンダ王国から聞いた『異世界から来た』というのは本当なのか?」
ルイスは視察団結成時から、アルシンダ王国の『日本は異世界から来た転移国家だ』という話を疑っていた。しかし、この国を直接見て信じることにしたのだった。
ちなみにソフィア達は留守番組である。
その後、彼等は4日掛けて日本国について調べ、「世界情報通信会社」の本部に帰還後、この事を各国の支部経由で発表したのだった。
だが、視察団が纏めた情報全てを発表することは、本部の最高幹部会で待ったがかかった。
理由は、これらの情報を一気に発表することによる混乱の大きさと、列強国らの威信に関わるという最高幹部からの意見である。そこで時期を見て発表することになったが、この決定に視察団団長のベネットと副団長のルイス・ソフィアは激怒した。直後、彼らが揃って最高幹部に直訴するという騒動が起こるのだが、それはまた別の話である。
だが、規制された情報でも十分に驚く内容であるため、この発表後日本と国交を結ぼうとする国が多数現れることになる。
如何でしたか?
最後はかなり無理矢理終わらせた感があるんと思われた方々がいらっしゃれば本当に申し訳ありません。




