第11話 講和後のエルミハナ大陸
第11話 講和後のエルミハナ大陸
メールニア帝国との講和から5ヶ月が経ったエルミハナ大陸は大きく変化していた。
まず最初にメールニア帝国は講和後、皇帝が責任をとり譲位を行い息子の皇太子が皇帝になった。
だが講和条約で皇帝はメールニアの象徴のみの存在となり、政治的権力はなく、さらに君主制から民主制に変更しメールニア帝国はメールニア国と国名を変えた。
しばらくは知識人である貴族らが政治を行うが政策によって教育を受けた平民らが元老院となり政治を担うようになるだろう。
また、メールニア国は奴隷制を廃止したため、現在帝都等の大都市では解放され、日本の支援を受けた元奴隷達が平民と変わりなく働いていた。
だがエルフやドワーフ等の異種族らは問題ないが知能に問題のある亜種族らは街中に放っては危険でありかといって解放してしまえば再び大陸を荒らしてしまうため、メールニア政府は亜種族らを殺処分にし埋葬した。
この一件で奴隷制の廃止を要求した日本政府は野党等に配慮が足りなかったと追及されることになった。
メールニアの属国になっていたファンローム王国・メヤーダ国・ランマナ帝国らが解放され各国は親日国として日本と深い交流をしていた。
講和条約によって一気に国力を失ったメールニアだが皇族であるカリーナ皇女や各大臣らが国力の回復のために日々働いていた。
次にエルミハナ大陸で最も発展の速度が速いと言われているアルシンダ王国は戦争後より日本との交流は活発になり、アルシンダ王国首都は帝都のガッパギアのような大陸の交易の中心地となっていた。
王都アルシンダでの港の一角では国王の許可により日本の大型船でも停泊出来るように大規模工事がされており、そこから日本製の物品が運び込まれそれを手に入れようと大陸中から商人が来ていた。
「さあ!さあ!貴重なニホン製の宝石がこんなにあるよー!買った!買った」
「ニホン製の鏡はいらんかねー?今なら安く手にはいるよ!」
「その食器はニホン製か?・・・どれも全く同じ形じゃないか!どうやって作ってるんだ?」
「なんて上質な紙なんだ・・・メールニアのと比べ物にならんとは!」
王都内ではアスファルトの道路や電線、電波塔を建設しており少数ではあるが日本製の車も走っていた。また日本政府は通貨を紙幣に変える提案を王国にしており、上手く進めば半年以内にそれが採用されるようだ。
「この都市の道路は何で出来てるんだ?・・・石でもないし繋ぎ目が無いなど不思議だ。」
「おい。あの黒い縄は一体なんだ?建物に伝ってあるが・・・」「あぁ?あーあれは電線って言うらしくってなんでも日本製の品物を動かしたりするのに使うらしい。」
「ほえー。あれがクルマと言うものか!随分早くて堅そうだなー。本当に馬がないとは・・・」
さらにアルシンダ王国内では日本の技術者が鉄道を敷いておりそれはバードン共和国やメルニア王国などメールニア国にも大陸中に鉄道を敷く計画を立てていた。
「こ、これは!?メールニアの列車よりも速いではないか!?」
「ほえ~本当に速えーな!これなら目的地にすぐに着くな。」
既に王都付近の都市間では貨物列車が走っており日々多くの物資を運んでいた。メールニアの列車よりも遥かに速い列車を見るため多くの人々が駅におり、中には貴族らもいた。
日本国 東京 国会の某会議場
国会のとある会議場では日本政府の各大臣らが講和後のエルミハナ大陸についての会議が行われていた。
「・・・以上の報告により、現在メールニア国内では順調に戦後の復興が行われていたおります。また民主制の移行による混乱も収まりつつあり15年後を目安に普通教育を受けた子供の割合を9割になる予定です。また解放された元奴隷階級の者達の生活が安定してきているため保護期間の延長はしなくても良いと判断します。」
「外務省からは元属国の国々も我が国の技術者等による復興支援にも協力的でこのまま順調に行けば2年以内に完了する予定です。」
経済産業大臣・外務大臣からの報告に総理は頷く。
「そうか、たった4ヶ月でよくここまで出来たものだな。」
「えぇ、特にメールニア国ではカリーナ皇女らが奮闘してくれたため、我が国の負担は予想以上に少なかったですよ。」
「カリーナ皇女・・・あの皇女は切り替えが速く優秀で助かるよ。彼女が居なければもっと時間が掛かっていたでしょう。」
カリーナ皇女は講和後すぐに民主制の移行手続きや奴隷制の廃止、日本の技術者や監査官等の意見を熱心に聞きそれを実行しており、当日政府が考えていたよりも短期間に完了しており、親日政策も行ってくれたため政府の皇女に対する評価は高かった。
「全くだ。これならば皇女が言っていた来日も真面目に検討してみる価値があるな。」
カリーナ皇女は日本の外交官経由で復興が問題なく済みそうならば来日して日本について学びたいと提案をしており、当初政府は拒否していたが近い内に来日許可もおりるだろう。
「それと西平島の開拓もほぼ完了しており移民の数は3万人程になりました。」
経済産業大臣が報告したのは日本がメールニア帝国と接触してしばらく後に打ち上げられた人工衛星が発見したハワイ程の大きさの島で日本本土から約60キロ程離れておりエルミハナ大陸と日本本土の経由地として使えると判断した政府が開拓をし始めた島である。
西平島は鉱物資源は無かったが平地が多く危険な生物もおらず綺麗な川もあり、開拓がしやすいため比較的早くに都市の基礎はできており、あと半年もすれば海外の商人や観光客を招き発展することが出来るだろうと予想されていた。
「おぉ!そうかもう既にそこまで開拓が進んでいたか!戦争のお陰ですっかり忘れていたよ。」
総理の言葉に大臣らは苦笑いする。
「次の議題は先日、世界情報通信会社の設置に対する件でしたが、我々は一度彼らに視察団を招き入れて歓迎するとの事でしたが、日時が決まりました。」
外務大臣が言ったのは前回の会議で話された世界情報通信会社の支部設置で日本政府は最初は拒んだが現在は周辺国も安定したため、一度視察団を派遣してもらう方針で彼らに伝えていた。
その後返事が来て彼らは1ヶ月後に視察に来ることになった。
「む、そうか彼らには是非我が国の良さを伝えてもらわんとな。メールニアのような国が来ないようにも。」
「えぇ、しかし技術が漏れないように注意しなくては、彼らは無闇に情報を漏らさないと言っていましたが、それを馬鹿正直に信じるようなことはしません。」
「うむ、特に兵器については徹底してくれ、写真やその情報が記載されたものは持ち帰らせないように頼むよ。」
「心得ております。」
次は防衛大臣が報告をした。
「では次に私が、先日私が考案した特殊急襲制圧部隊に関してですが先週、その装備の準備が完了しました。」
「なに?もう完了したのか?速すぎじゃないのか?」
総理がそう反応する。
「はい。実は対中国での想定で数年前から密かに進められており、それを対異世界軍用に多少変更しただけですので。」
防衛大臣の衝撃事実に大臣らは驚いた。
「なに?そんな前から・・・私は聞いていないぞ!」
「申し訳ごさいません。情報の機密のために前防衛大臣と私と部下そして一部の公安くらいしか伝えられていなかったのです。」
「だが幾ら機密とはいえ総理にすら伝えないなど余りにも・・・」
官房長官の言葉に他の大臣らも同意する。
「・・・わかった。確かに何処に親中派の連中が潜んでいるか分からなかったからな。それについては後で審議しよう。それでその性能は問題ないのか?」
「はい。現在様々な状況を想定しての実験をしており、耐火、衝撃、銃撃、毒ガス等そしてハワードスーツを装着しているので高所からの落下や走行時のテストも行っております。」
「パワードスーツ?映画やゲームとかで見るあのパワードスーツか?」
総理がそう質問する。
「はい。主に空気の力を利用して関節部分の補助を行ってくれるものでアメリカもそれを軍事用に開発しておりました。」
「なるほど。パワードスーツか・・・それは楽しみだ。実戦配備はいつ頃になる?」
「様々なテストや部隊の選抜に時間が掛かるので不確かですが、少なくともあと10ヶ月は必要です。」
「わかった。期待以上の性能を頼むよ。そうじゃないと予算や機密保持の割にあわん。」
「畏まりました。」
「それで他に何かあるか?・・・ないようだから、今回はこれにて解散。」
総理の言葉に大臣らは起立し退出した。
1ヶ月後
アルシンダ王国 王都 ガッパギア
ここ王都の港の一角では「世界情報通信会社」の社員総勢150名が待機していた。
彼らはこれから日本に視察団として来日するためにここで集まっていた。
「・・・いよいよあの噂の日本に行ける日が来たか。長かったがなんとしても少しでも多くの情報を集めたい。」
そう呟いたのは今回の視察団の団長である「世界情報通信会社」の幹部でもあるベネット・フリキネスであった。
「そうですね。いよいよ行けると思うと凄く緊張してきましたよ。一体どんな国なのか。」
そう反応したのは副団長のルイス・ファンであった。彼は本部のエリートで超大国の支部で4年ほどだがそこに派遣される程の優秀な男である。
「えぇ。私も流石にドキドキしていますよ。既にこの港だけでかなりの大国なのは見てとれます。」
その横で周囲に目をやっている金髪の20代ほどの女性はソフィア・メリアントである。彼女も本部勤めで支部勤務はないがエリートでありこの若さで今回の視察団での2人目の副団長を努めている。
彼女が見ていたのは日本の技術者によって改良された港で王都の港の2割程を日本の所有地として工事していた。
そこにはコンクリートで作られており、貨物船の荷物を荷下ろしのための大型クレーンがあり、その横には日本の大型貨物船が停泊してその作業員らが仕事をしていた。
「・・・確かにな。それにあれ程の大きさの貨物船は列強国でも滅多に見ないぞ。これだけでもとんでもない国だな。」
「ええ。そしてここに我々を乗せてくれる客船はどんな物なんでしょうかね?」
「まぁ、1つ言える事は我々の想像を越えてくる可能性が高いことだな。」
そう話していると日本の外務省の人間が団長の所まで来た。
「ベネットさん。あと10分後にクルーズ船が到着するので準備をお願いします。」
「分かりました。喜山さん今回の視察団の歓迎、心より感謝申し上げます。」
その外交官喜山の知らせにベネット団長は丁重に挨拶する。
「あ、いえいえ我々も有名な報道会社にご興味を示してくれる等とても光栄に思っておりますので、此方こそありがとうございます。」
2人がそう話していると日本のクルーズ船が見えてきた。
「な、なんとあれ程の大きさとは!?」
「なんてデカイんだっ!」
視察団が目にしたのは日本が誇る豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」であった。
この船は異世界転移により使われて無かったのを政府がレンタルしたものだった。
総トン数 115,875トン
全 長 290メートル
乗員定員 2706名
かなりの大型船で視察団も余りの大きさに言葉を失っていた。
「ま、まさかここまで凄いとは・・・」
「れ、列強国の空母より大きいですよ・・・」
「なんてこと・・・」
これには流石のエリートである3人は驚くしかなかった。
「ダイヤモンド・プリンセス号。我が国でも指折りの豪華客船ですよ。良い旅を保証いたします。」
その後なんとか落ち着いた彼らは荷物を入れてもらい入船したのだった。
また、視察団の護衛のために客船からは目に見えない距離から巡視船2隻と護衛艦「みょうこう」が動員された。
彼らは日本の新潟港に向けて出港した。視察団らはまだ見ぬ日本に期待を込めて船旅を満喫するのだった。
ここまで後愛読ありがとうございます。
ちょっと今回は話の内容に自信がありません
不自然でなければいいのですが・・・
さて、次は視察団の入国でしょうね。それではまた。




