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第20話 次は手加減しないぞ?


 アクセサリーショップに戻ってから数分足らずで、咲茉が男達に絡まれてるとは思わなかった。


 やはり他の男からすれば、それだけ咲茉は魅力的に見えるのだろう。


 悠也から贔屓目に見ても、今の彼女はおしゃれをしている所為で可愛さが何倍も格段に跳ね上がっている。ひとりで居れば見知らぬ男に声を掛けられるのも、考えれば当然だった。


「ひとりにして悪かった。本当にごめん」


 たった数分でも街中でひとりにしてしまったことを後悔しながら、もう一度だけ悠也が背後にいる咲茉に謝罪する。


 そんな彼の背中に、咲茉は不満そうに頬を膨らませていた。


「別に怒ってないもん。でも次からは私もちゃんと連れてって」

「……ごめん。次から気を付ける」


 恐る恐ると振り返った悠也が咲茉の顔を見るなり、無意識に苦笑いが出てしまう。


 先日の事件も無事解決して、もう大丈夫だと気が緩んでしまったのかもしれない。


 もう彼女が不安になる人間も居なくなり、これから安心して過ごせるようになったと。


 だが考えれば、その考えはあまりにも楽観的だった。世の中には他にも男が数多くいる。惹かれる女の子を手に入れたい欲望のままに、強引な手を使う男がいないわけではない。その手の話は、生きていれば勝手に耳にする話だ。


 言葉巧みに騙されて、酒に酔わされて、本人の意思に関係なく女の子がホテルや家に連れ込まれた。そんなニュースや噂話を聞くことも多々ある。


 だからこそ女の子は身を守る為の自衛するのだが、今も男に恐怖心のある咲茉がそれを満足にできるはずもなかった。


 もし彼女に何かあれば、自分が守らなければならない。


 何か起きてからでは遅い。だから、彼女を守れる男になると心に決めたのだから。


 今一度、悠也が緩んでいた心を引き締めると目の前の男達を鋭く睨みつけた。


「俺の女に何か用か? 話があるなら俺が聞くぞ?」


 見るからに歳上と分かる彼等でも、咲茉に手を出そうとしたのなら礼儀など見せる気もない。


 淡々と悠也がそう告げると、男達の表情が不快に歪んだ。


「チッ……なんだよ、マジで彼氏持ちかよ」

「でもコイツ、またガキじゃね?」

「ん? よく見れば確かに」


 咲茉が本当に彼氏がいると知って難色を示す彼等だったが、悠也を見るなり失笑する。


 明らかに馬鹿にされていると分かる反応だったが、悠也は特に気にする素振りも見せず、目の前の男達を睨みつけていた。


「用がないなら、さっさとどっか行ってくれないか? 人の女に手を出すほどアンタらも腐ってないだろ?」

「はっ、歳下がイキってんじゃねぇよ。お前みたいなガキがその子を満足されられるのか?」

「やっぱり子供より大人の方が何かと彼女も喜んでくれると思うけど?」


 悠也が歳下の子供と知って、男達が小馬鹿にした笑みを浮かべる。


 どうやら彼等も引く気はないらしい。


 周囲の人達が騒ぎを聞きつけているのにも関わらず、なぜ引かないのだろうか?


「勝手に言ってろ。アンタらに何を言われても、この子は俺のだ」

「歳上に対する礼儀、お前知らねぇの?」


 一貫して毅然とした態度の悠也に、彼等の1人が苛立った表情を見せる。


 しかしそれも、悠也からすれば心底どうでも良かった。


「さっきからごちゃごちゃとうるさいな。鬱陶しいから消えろ。騒ぎを聞きつけて警備員とか来たら困るのはアンタ達だろ?」


 彼等の視線が背後の咲茉を見ていると察すると、悠也は身体で彼女を隠した。


「なら先にその子を俺達が連れてけば良いだけじゃね?」

「それもそうだな。ねぇ、君。そんなガキより大人の俺達と来たようが楽しいよ?」

「行くわけないでしょ! アンタ達みたいな男の人、私は死ぬほど嫌いなの!」


 ハッキリと拒絶する意思を見せる咲茉に、彼等の表情が不快に歪む。


 そして彼等の1人が反論しようと口を開いたが――睨む悠也達を見ると、おもむろに舌打ちを鳴らしていた。


「チッ、こりゃダメだ。折角の良い女見つけたと思ったのに。他の子探すか、おい行くぞ」


 悠也達の反応で諦めたのか、彼等の1人が相方に声を掛ける。


 しかし彼に言われても、もうひとりの男はジッと咲茉を見つめていた。


「諦めるとか冗談だろ? こんな可愛い子、大学でも滅多に居ないぞ?」

「やめとけ。最初からダメ元で声掛けたんだし、彼氏持ちでガードも固いとなったら俺達に勝ち目ねぇよ。それに騒ぎが大きくなると面倒だし」


 思いのほか話の分かる片割れに、悠也が内心で驚く。


 しかしもうひとりの方は、そう上手くいかなかった。


「こんなガキくらいさっさとボコって女の子連れてきゃ良いだろ?」

「やめとけ。流石にライン超えだ。俺はパス」

「はっ、ビビってるのかよ。なら彼女を捕まえても、俺だけのモンだからな」

「……はぁ、勝手にしろ。お前が捕まっても俺は知らねぇからな」


 話にならないと、彼等の1人が頭を抱える。


 そんな彼の態度に失笑しながら、もうひとりの片割れがゆっくりと悠也に迫った。


「悪いがこの子は俺が貰ってくわ。どう見てもお前みたいなガキにはもったいない女だ」

「貰う? はっ、女の子の気持ちも振り向かせられないからって強引なことしかできない男はダサいぞ? 少しは女の子に好かれる努力した方が良いんじゃないか? アンタの場合、その綺麗な外見じゃなくて、その汚い内面の方を変えないと無理そうだけどな?」


 自分のよりも背格好の良い大人の男に迫られても、悠也は怯むことはなかった。


 悠也の馬鹿にした言葉に、彼に迫っていた男が顔を真っ赤にする。


「おいおい、ガキに好き勝手言われてんぞ?」

「うるせぇ! 生意気なこと言いやがって、ぶっ飛ばしてやるっ!」


 仲間からヤジを飛ばされて、怒りを露わにした男が悠也に拳を振りかざす。


 大振りで振りかざした拳など、悠也にとっては脅威ですらなかった。


 殴ってくるタイミングが分かりやすければ、その分だけ対処は簡単になる。


「オラッ!」

「……はぁ」


 振り抜かれた拳を、悠也の手が内側に弾く。


「……はっ?」


 一体なにが起きたか理解する暇も与えずに悠也が前に踏み出すと、体勢を崩した男の足に自身の足を引っ掛ける。


 そのまま悠也が男の身体を前に押し出すと、簡単に彼の身体は天井を見上げていた。


「いっ……!」


 背中を強打した男が、身悶える。


 彼の仲間も、何が起きたか分からないまま唖然としてしまった。


「おい、次は手加減しないぞ?」


 隙だらけの攻撃に対する対処法は、悠也も習得している。


 今のも手加減しなければ相手を無力化できたが、流石に程度を弁えた。


 その強気な悠也の態度が、彼等に喧嘩では勝てないことを物語っていた。


「おい、そこまでだ。あのガキ、絶対なにか習ってる。アレだと喧嘩してもお前じゃ勝てねぇよ」

「……クソッ‼」


 仲間に諭されて、悠也に喧嘩では勝てないと理解してしまった男が舌打ちを鳴らす。


 そして痛みに顔を歪めて立つなり、男達は逃げるように走り去ってしまった。


「咲茉、大丈夫だったか?」


 彼等の姿が消えて、すぐに振り返った悠也が咲茉に心配の声を掛ける。


 そんな彼の姿に、呆けて眺めていた咲茉は少し遅れて反応していた。


「う、うん。ゆーやが来てくれたから大丈夫だったよ」

「良かった。次からは気につけるから、許してくれ」

「あっ……」


 そしていつの間にか悠也に抱き寄せられてしまえば、先程まで抱いていた負の感情もどこかに消え去った。


 彼等に対する恐怖心も、悠也が自分をひとりにした小さな苛立ちも、どうでも良くなった。


「じゃあ今日はもっと私のこと、甘やかしてくれる?」

「それで咲茉が許してくれるなら、いくらでも」

「なら、許してあげる」


 嫌な気持ちになった分だけ、甘えよう。


 そう思いながら咲茉が悠也に抱きついている時だった。


 突然、周りから小さな拍手が鳴り響いた。


 何事かと思った悠也が周囲を見回すと、なぜか周りの人達が自分達を見ながら拍手していた。


 どうやら先程の男達を追い払った場面を見られて、騒ぎになってしまったらしい。


 妙な拍手に悠也が苦笑してしてしまう。そして咲茉も、恥ずかしそうに俯いていた。


 このまま居ると、面倒なことになる。


「咲茉、この場にいるとアレだから早く行こう」

「……うん」


 そう判断した悠也が咲茉の手を握ると、慌ただしくその場を立ち去っていた。

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