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04.呪いの腕輪vs魔剣

 昨晩届けられた試合用の服に着替えたレイは控え室前で交わされた護衛騎士の呟きを聞いて目を見開いた。

 どうやらレイは”魔剣”の生贄に選ばれたらしい。

 今回の試合に使われる”魔剣”は今まで何度も魔術師たちを殺しその血を吸ってきたようだ。

 その度に剣は魔術耐性の力を強くしその剣を持つものに掛かる魔法を無効化できるようになったようだ。

 特に魔力が強い”王族の血”はその力を増大させる。

 それを知った王がまだ生き残っている魔国の王族の血を求めて今回の婚姻がなされたようだ。

 後悔先に立たず。

 逃げるのが一番いいはずだが何の策もなく逃げた所でこの腕輪が嵌っていればいずれ潜伏場所がバレ、捕まって今度は問答無用で無抵抗の状態で死刑ってことも考えられなくもない。


 それは非常に嫌だ。

 だが闘技場に行っても・・・。


 カッチャン

 控え室の扉が開いて入り口で護衛をしていた武官に渋っていたが儀式をする闘技場に引きずって連れて行かれた。

 そこには剣を軽々と振り回している茶髪でがっしりとした体格のどこかで見た覚えのある美男子が待っていた。

 男が持つ剣に視線を合わせた途端レイの全身に震えが走った。

 そこからは何とも真っ黒なものがモウモウと蠢いていた。

 気色悪い。

 震えているのを見て取った護衛騎士はレイの腕をとると強引に中央まで引きずって剣を渡された。

 持ち上げるとずしりと重い。

 こんなもの持ち上げながら戦えるかと罵倒しようと口を開きかけた時、試合開始の合図が鳴った。

 美男子が剣を構えて迫って来る。

 レイは”身体強化”と呟くと剣を持ち上げ、自分の頭上に振り下ろされる相手の魔剣を受け止めた。

 ギシッと重い力が両腕にかかる。

 魔剣からはさらに黒い靄がモウモウとレイ目がけて吹き付けてくる。

 まさに呪いだ。

 ”呪い”

 ミシリと軋んだ刃にニヤリとした美男子そのまま魔剣を力任せに押してくる。

 レイが持っている剣が砕けた。

 レイは咄嗟に剣を手放すと左腕に着けられている腕輪で魔剣の刃を受けた。

 ミシリと今度は逆に魔剣の刃にヒビが入った。

 これで王家の呪いの腕輪が砕ければ魔法でこの場から逃走できる。

 レイはそのまま腕輪で刃を受けながら、さらにぐいぐいと力で押してくる美男子と対峙した。

 その時、信じられないことが起こった。

 レイが着けている腕輪ではなく美男子が持っている魔剣のヒビが大きくなり派手な音を立ててそれが砕け散った。


 パリーン。

 周囲に綺麗な音を響かせて魔剣が砕けた。


 唖然とする周囲に気をとられた美男子を無視するようにレイは彼が腰にさしていた剣をそのまま引き抜くと背後に回って男の首筋に剣の切っ先を当てた。

 もちろんその隙に魔法で男の足を地面に凍り付かせ動けなくしてある。

 目を見開く美男子を無視してレイは審判を怒鳴った。


 我に返った審判にレイは勝者の宣言を受けた。

 闘技場がどよめいた。

 割れんばかりの拍手の嵐にレイはその場で目を白黒させた。

 そのうち足を凍り付かせた男がその氷を力任せに砕くとレイの腕を頭上に上げさせた。

 そして耳元でなんで殺さなかったのかと聞いて来た。

 何でって言われても自分でもわからなかったので”気分”と答えると美男子は嬉しそうに笑うとレイを肩に抱きあげた。

 大歓声に応えたレイは観客に見送られるまま美男子に担がれて闘技場を後にした。


 闘技場を出てもその美男子はレイを肩に担いだままだったので降ろしてくれるようにそいつに声を掛けるが聞こえないふりをされた。


 そこに先程レイを強引に闘技場中央に引きずって行った護衛騎士が小走りに駆け寄って来た。

「アラン隊長。王が謁見の間に来るようにとのことです。」

「ああ、魔剣のことなら俺のせいじゃないって言っといてくれ。それとこれは予定通り俺が貰う。」

「ちょっ・・・アラン隊長。」

 アランと呼ばれた美男子は護衛騎士に王に伝えるように言うとそのまま闘技場を出た。そこで部下が乗っていた馬を奪い彼女を今度は小脇に抱え馬に飛び乗った。

 自分の全体重が抱えられている腹に圧し掛かる。

 思わず呻き声をあげると楽しそうに笑われ馬上に上げてくれた。

 次は馬が走る度地面が迫ってくるようで自分が振り落とされる恐怖に震えが上がった。

 早すぎる。

 危ないから降ろせ!

 文句を言えばあの魔剣を腕輪で受け止めた女のセリフではないと言われた。

 腕輪!?

 慌てて走る馬の上から腕に嵌っている腕輪を見るが傷一つついていなかった。

 がっくりと項垂れたレイには気づかずにアランはそのまま馬を走らせ郊外にある壮麗な屋敷の前に馬を止めた。

 ここはどこだと考えるうちにその屋敷に連れ込まれた。中央にあった階段をタンタンタンと軽快な音を響かせて登ると美男子は一際壮麗な飾りがついている扉を押し開けて彼女はそのままそこに運び込まれた。そこには大きなベッドが中央にドンと置かれていた。


「ちょっ・・・ちょっと何しようとしてるの?」

 アランはニヤリといやらしい笑みを浮かべるとレイをそこに放り投げ覆い被さった。

「当然ナニをするんだ。」


ギシッ


 はぁ~あ。

 思考が追いつかないうちにその場でアランと呼ばれた美男子に喰われました。

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