明るい未来への第一歩
本当にお久しぶりです。私は生きていましたよ!ええ!就活と卒論と言う地獄と戦いながらも生きていましたよ!でも一年以上更新できなかったのは誠に申し訳ありませんでした!
そして今回はスランプ状態なため、文字数は少ないですし、いろいろガバガバだと思います。
それでも楽しんでいただけたら幸いです!
ではどうぞ!
1914年 大正三年 春
世界は未だに平和を謳歌していた。
東の果てにある極東、大日本帝国もまたその平和を享受していた。
大日本帝国の首都であり、天皇が居城を構えている帝都東京の中にある有栖川宮邸。
そこの主である有栖川宮威仁は内大臣であり、帝国海軍中将であった。最近の彼の行動は中々無茶な事をやっていたり、やろうとしていた。周りが止めようとしてもほとんどの場合は止まることが無かった。
「何故こんなことが思い付くのですか?」
側近の一人が威仁に質問すると、威仁は決まってこう返した。
「息子に教わったのだ」
有栖川宮威仁には息子が一人いた。
名前は有栖川宮義仁という。義仁は幼い頃から体を鍛え、勉学に励んでいた。周りからは神童と持てはやされていたが、本人は驕り高ぶることも無く、ひたすら己を鍛えていた。何かを恐れるかのように。
ある日、威仁は義仁に聞いた。
「お前は、将来何になりたい?」
義仁は答えた。
「陛下と帝国を護る盾になりたい。陛下と帝国に刃を向ける全てを滅ぼしたい」
威仁は更に聞いた。
「そのためには何が必要だ?」
義仁は答えた。
「帝国の強国化、近代化、国力増進、軍の近代化、戦力拡充、技術向上、教育向上。それらを行えるようにする軍人としての地位、政府への影響力」
そこで一度言葉を句切り、息を吸ってから、ハッキリと言った。
「アジアの団結が必要です」
1910年に日本は韓国併合ニ関スル条約を大韓帝国と結び、朝鮮を併合した。もとから反日意識が強かった朝鮮はこれをきっかけに反日活動が激化し多くの血が流れる事となった。
日本では、未開の土地に目をつけた財閥が経済活動範囲を増やすために朝鮮へ資本を投下、政府は近代化のために国民の血税を大量に投入していたが、そこに異を唱える人物が現れ始めた。
北海道・東北などから選出された議員たちだ。
彼らは、与党、野党関係なく超党派として訴えた。
『外地よりまず内地を近代化せよ!帝国臣民の血税を汚泥に垂れ流すな!』
このようなスローガンを掲げながら痛烈な批判を行った。
東北は主要な産業がよしんば農業と漁業であり、近代化とはほど遠いのが現状である。北海道は広大な土地で行っている農業・漁業や炭鉱などの産業があるが、厳しい環境と人的資源の不足によって近代化が遅れている。
どの議員も総じて貧しい地域から選出された者であり、地元の願いを一身に背負った。
しかしただ彼らが異を唱えても、少数であり政局を覆すことは出来ないでいた。本来なら党の大本から叩き潰されるのが目に見えてていたからだ。
だがある人物が天皇陛下に直接そのことを報告したのだ。
有栖川宮義仁の父親であり内大臣である有栖川宮威仁が北海道・東北・北陸などの臣民の声として報告したのである。
そして陛下は、内閣にこの事は本当なのかと質問をした。
内閣は、事実であることを認めた。
それを聞いた陛下は少し考えてから、口を開いた。
「内地の近代化を先に進めてはどうか?外地はほどほどに教育に力を入れてはどうか?」
これをきっかけに史実とは違う外地政策が始まった。
「なるほどつまりは父上が陛下に御進言した結果がこれなのですね?」
「そう言うことだな。だが私は内地の現状を国民の声としてご説明しただけだ」
幼年学校から公務を理由に戻ってきていた義仁が目にしていたのは、新聞の一面にでかでかと書かれていた言葉だった。
《内閣、内地優先政策を国会に提示。与野党内から反発あるも可決される見通し》
「新聞ではこちらが大きく取り上げられていますね。本命はこちらのはずなのに」
その新聞の隅に小さく書かれていた。
《外地教育法可決》
外地、すなわち朝鮮半島と台湾に対しての教育法である。朝鮮と台湾に教育に関する法が無かったわけではない。この時期はまだいわゆる皇民化と言われている政策は行われていない。
しかしまだまだ統治に問題があった時期でもあった。史実では1919年に三・一独立運動が朝鮮で起き、その後の朝鮮問題に影響を与え、台湾では1930年に霧社事件が起きている。
これらを何とか防ぐことはできないか?
威仁の一つ目の答えが、これだった。
『最初から同化教育を行えば独立運動も文化衝突も起きないはずだ』
そう考えたのである。
それを幼い子供たちに徹底して教育すれば、本土と外地は一体化し大日本帝国は完成する。
今後の帝国の百年を考えた提案だった。
しかし義仁はこれにあるものを加えて欲しいと言った。
『朝鮮独立の約束をしてください。そして文化は保護すべきです』
当然なぜだと威仁は聞いた。
そして義仁は答えた。
『それでは欧米列強とやっていることが同じではありませんか。我々はアジアの希望、全植民地の希望なのです。その我が帝国が欧米共の猿真似をして何の意味があると言うのですか?……全アジアが団結する事こそが重要なのです。ですのでアジアが植民地が希望を抱き歓喜する事を、欧米が顔をしかめ侮蔑することをして行かなければなりません。この朝鮮独立は、我らが世界に向けて最初に放つ希望の矢とならなければなりません。その次は台湾です。しかし台湾は朝鮮以上に力がありませんので、ある程度なってから約束しましょう』
そんな事を義仁は言った。
そして威仁は陛下にそのまま伝えた。すると陛下は
『朝鮮は日本と共にアジアを盛り立てる国になって欲しいな』
と言われた。
次の日には威仁は、文部省で当時の文部大臣奥田義人に会っていた。
更にその翌週には、朝鮮総督寺内正毅、政務総監山縣伊三郎、内務部長官宇佐美勝夫、学務局長関屋貞三郎が縮こまって目の前に居た。その後朝鮮のお土産を買って帰った。
さらに二週間後には台湾総督佐久間左馬太、民政長官内田嘉吉、学務部長隈本繁吉が少し震えながら目の前に居た。その後台湾のお土産を買って帰った。
それからたった一年で今日の《外地教育法可決》までたどり着いた。たどり着いてしまったのである。
「そう考えると一年というのはあっという間だな……年を取ると尚更早く感じる」
「父上にはまだまだ頑張ってもらわないと困ります。最低でも私が成人して陸海軍の士官になるまでは」
「……長いな~。まあ出来る限りの事はやってみせるよ」
苦笑いしながらも威厳のある顔をしながら、可愛い息子と陛下と帝国の未来のために頑張ろうと胸の中で改めて誓った威仁だった。
「さすが父上、格好いいです!」
「よ~し!もっと頑張るぞ!」
息子にそう言われて、先ほどまでの顔は一瞬で崩壊し、デレデレしながら立ち上がり大声で気合を入れる父親の姿になった。
「失礼します。お茶をお持ちしました~」
襖を開けたのはファンだった。
ニコニコしながらお茶が入った湯呑を二人の前に置く。
それを手に持ち一息ついた二人であった。のんびりとお茶を持ってきてくれたファンを見る義仁、やたらとニコニコと笑っているファンに聞いてみた。
「ファン、何だか嬉しそうだね。何か良いことでもあったの?」
「はい。つい今しがたありました」
「えっ?一体何が……」
「威仁様と義仁様の話を聞いていました」
そう満面の笑みを浮かべながらファンは言ったが、二人の反応は乏しくない。ファンが話を聞いていたことが問題ではなく、何でそんなに喜んでいるかがいまいち理解できていないのである。
その事を伝えるとファンはニコニコしながら言った。
「だって、朝鮮の独立を約束してくれるお二人ですからね!必ずや私たちの祖国を独立させると言いきる人ですから、助けてくれると確信していますからね!」
そんなことを満面の笑みでファンは言ったが、威仁は微妙な表情に、それとは対照的に義仁はにこやかに笑った。
その顔を見たは首を傾げてしまう。
「お二人ともどうしたのですか?」
「いや~何でもないよ」
そう少し陰のある笑顔で返した威仁は返し、ファンもそれに納得したのか、何かあったら呼んでくださいねと一言いって部屋を出て行った。
ファンの足音が聞こえなくなるまで、沈黙が続いた。
「本当によかったんだろうか」
「何がですか?」
「朝鮮独立だ。確かに我々は約束した、だがそれは“我々の中だけでの話”だ。当事者の朝鮮人たちは何も知らないんだぞ」
「だから今回の教育法なんですよ。我が帝国は世界に冠たる帝国にならなければなりません。しかし如何せん圧倒的国力差は気合や根性で覆すのは不可能です。ではどうすべきなのか?答えは簡単で仲間を増やせばいいんですよ。今現在の朝鮮人の数は約1500万人、このまま順調に人口が増えていけばアメリカと開戦する頃には2000万人は優に超えるでしょう。その人的資源を有効に使わなければ、勿体ないでしょう?だから“大日本帝国は朝鮮民族にとって良い国”とならなければいけないんですよ」
義仁はそう言いながら先ほどと変わらぬにこやかな笑みを浮かべていた。だが威仁の顔はすぐれない。そして愛するわが子に少し、ほんの少しだけ息を吐いた後、聞いた。
「お前にとってのその“良い国”とは何だ?」
「そうですね~……植民地から独立させ、その独立の大義名分を与え、軍事力を与えてくれた。そして……」
「“対等”な同盟を結んでくれる心がとても広い国の事です」
威仁には分からなかった。
朝鮮を植民地にしたのは我々であるし、その贖罪として独立させるならまあ納得できる。しかしその独立の大義名分とは何だ?すでにある日本からの不当な支配からの解放という大義ではなく別にあるのか?軍事力を与えれば反乱が起きるのではないか?
そして何より、“対等”な同盟にそこまでの価値はあるのか?
それが分からなかった。
だが義仁は本当に楽しそうに笑っていた。
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