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レベル1の時点で異世界最強  作者: ろーたす
終章 エターナルトワイライト
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97.届かぬ想い

「うおおおっ!参ノ太刀【月咬】!!」

「サンダースタンプッ!!」


マナ姉と息を合わせて左右からヴィータに技を放つ。しかしヴィータは両手を前に出して魔法陣を形成、それで技を受け止めそのまま衝撃を跳ね返された。


「唸れ、【世界樹の星根(エトワールロワ)】!!」


宙を舞う俺達の真下を通り、呼び出された巨大な根が一斉にヴィータを襲うが、微塵も焦らずヴィータは跳躍し、根を蹴って弾丸のようにクレハへと接近する。


「させるかよ、【炎龍閃えんりゅうせん】!!」

「【フリーズバレット】!!」


そんなヴィータにソルが真横から燃え盛る突きを放ち、身を捻ってそれを躱した彼女目掛けてユリウスが氷結弾を撃ち込む。


「あははっ、いいねぇ。口先だけじゃないみたいだ」

「【ライジングストーム】!!」


だが、氷結弾を素手で消し飛ばし、ソルを蹴ってエリナの魔法にぶつけ、爆発させた。そのまま華麗に着地したヴィータは、戦いが始まってからまだ1度も傷を負っていない。


「だけど、あまりむやみに魔法を撃ってしまうと、今みたいに味方を盾に使われても文句は言えないね。君達の連携はこの程度じゃない筈だけど」

「そうだな。ここは1度、冷静になった方が良さそうだ」


ヴィータは微塵も本気を出していない。それこそ、赤ちゃんと戯れているような感じなのだろう。だけど、そこに必ず隙が生まれる。親父達の攻撃が効いていたのだから、ヴィータだって無敵ではない筈だ。


「ティアーズ、限界まで魔力を解放する。君の魔力も貸してくれ」

『勿論です、ユウ様。水の女神の魔力、思う存分使ってください』

「よし、頼むぞ……!」


魔力を温存していても、どのみちヴィータが相手だと意味が無い。ならば全力で隙を生み出し、そこで一気に勝負を仕掛けた方が勝率は上がる。


俺は自身の奥底に眠る魔力を解き放ち、同時に神雫に宿るティアーズの魔力を纏った。それでもヴィータは余裕を崩さない。その場から動かず、俺が仕掛けるのを待っている───と。


「ふふ……矢も3本集まれば折れないと皆が信じているみたいだけど、それ以上の力でへし折ればいいだけなのにね」


次の瞬間、恐ろしい程の速度でヴィータが足場を蹴った。咄嗟に神雫で身を守ろうとしたが、あまりにも反応が遅れすぎた。


体が浮く程の、容赦ないボディブローが俺を襲う。衝撃は体を貫通し、血を吐いた俺の後方に立っていたクレハ達が吹っ飛んだのが分かった。


「このォ……!」


膝をついた俺にヴィータが追撃を加えようとした直後、凄まじい魔力がすぐ近くで解き放たれた。見れば、マナ姉の姿が変化している。あれが親父との修行で制御できるようになった、半獣化状態か。


「はあッ!!」

「おっと」


雷光を纏った蹴りがヴィータに迫るが、彼女はそれを手の甲で受け止め、マナ姉の足首を掴んで地面目掛けて腕を振り下ろす。それによってマナ姉は下に叩きつけられ、更にお返しとばかりに蹴られて俺に向かって吹っ飛んできた。


「マナ姉、大丈夫か!?」

「ほ、骨が折れたかも……」


腹部を押さえ、顔を歪めるマナ姉。軽く蹴ったように見えたが、この状態のマナ姉にここまでダメージを与えるとは。


「回復します!」

「アーリア……悪い、助かる!」


そんなマナ姉と俺を、アーリアが唱えた回復魔法の光が包み込む。その光景を見てヴィータは再度俺達に接近しようとしたが、ソルとリースがそれを止めてくれた。


「ソルさん、本気出した方が良さそうですよ!」

「おうよ、リースちゃんもな!」


2人同時に魔力を解放し、強烈な突きと鉄拳が炸裂。しかしヴィータは僅かに体を動かしただけでそれを避け、カウンターで放たれた回し蹴りが2人を吹っ飛ばす。


「星根よ!」


クレハも解放した魔力で大樹の根を強化し、ヴィータの動きを止める為に殺到させるが、ヴィータはのんびりとした動作で根の上に乗り、まるで歩くかのように移動を開始する。


「甘い……甘いね、皆」

「【ライトニングシャワー】!!」


エリナが放った光の雨も、ヴィータには掠りもしない。ユリウスの魔弾も彼女に当たった瞬間に跳ね返され、そのままヴィータは勢いよく星根を踏んだ。


あまりの破壊力を前に星根は弾け飛び、衝撃波が空間を駆け巡る。まともにそれを浴びた俺達は全員吹き飛ばされ、ヴィータが狙ったのは回復の最中だったマナ姉で───


「まずは貴女です、マナ先生」

「させるか、【限界加速オーバーアクセル】!!」


着地と同時に俺は加速魔法を使い、まだ空中で体勢が崩れたままのマナ姉に向かって跳躍。魔法を放とうとしていたヴィータの前に割り込み、全力で神雫を振るう。


「ふふっ、来ると思ったよ」

「なっ……!?」


しかし、俺の行動は予測されていたらしい。ヴィータは片手で神雫を受け止め、マナ姉に向けていた手のひらをクレハ達に向けた。


「【黒風刃こくふうじん】」


魔法陣から飛び出した、数え切れない程の黒い風の刃。それは着地直後だったクレハ達を容赦なく襲う。


「魔力解放、【ウォール】!!」


が、アーリアが展開した障壁がある程度それを防いだようだ。何発かは直撃したようだが、全員致命傷は負っていない。


「ユウ君離れて!はあああッ!!」

「マナ姉───うおっ!?」


クレハ達の無事が確認できてホッとした直後、マナ姉が爆発的に魔力を高めてヴィータを蹴り落とした。更に空中を蹴って自身も急降下し、ヴィータ目掛けて稲妻を纏った踵落としを放つ。


「【サンダースタンプ】!!」

「ふふっ……」


それを、ヴィータは人差し指のみで受け止めてみせた。さすがに予想外だったらしく、不敵に笑うヴィータの前でマナ姉は動きを止めたが、すぐにとてつもない速度での連続蹴りを繰り出す。


まともに食らえば肉塊にされてしまうであろう、それ程までに凄まじい蹴りのラッシュ。その全てをヴィータは余裕を持って躱し、徐々に魔力を手元に集め始めた。


「くぅッ……!」

「遅いですよ、マナ先生。ほら、お腹ががら空きですし」


そして放たれた拳がマナ姉の腹部に炸裂。それも1発ではなく、今の一瞬で何発も放たれたらしい。宙に浮いたマナ姉は目を逸らしたくなる程の血を吐き出し、ヴィータに蹴られて吹っ飛んだ。


「ヴィータァ!!」

「来なよユウ君、もっと楽しもう」


水の刃を連続で放ち、それを避けたヴィータ目掛けて神雫を振り下ろす。当然のようにそれは受け止められたが、それによって動きを止めたヴィータをエリナの雷とクレハの爆発魔法が襲う……が、爆煙の中から飛び出したヴィータはやはり無傷。


「希望を持った人間は恐ろしい……うん、確かにそうだね。だって、無駄で愚かな行為を必要なことだと信じて疑わないのだから」


強烈な蹴りを浴びて俺は歪む地面を転がる。


「止めて欲しい?何を馬鹿な。私は終末の真実を知ってもらい、過去の住民である君達に別れを告げようと思っただけなのに」


ヴィータの魔力が更に上昇する。駄目だ、この程度の魔力じゃ彼女には到底敵わない。


「ティアーズ、あれ(・・)を使う!」

『っ、分かりました。魔力の安定は私にお任せ下さい!』

「に、兄さん?何を……」


母さんから教わりはしたが、使うのはこれが初めてだ。成功する保証はないけど、ここはやるしかない……!


「銀閃一刀流──零ノ太刀(ぜろのたち)無月むげつ】!!」

『こ、これがユウ様の全魔力……!』


恐らくだが、これは俺と母さんしか使えない技だと思う。魔力解放を行った際、第2の魔力と元々纏っていた第1の魔力は入れ替わる。


しかし、この技は2つの魔力を同時に引き出す事ができる。肉体への負担は尋常ではないが、ティアーズがある程度それを軽減してくれているので、遠慮なく力を振るわせてもらおう。


「はあああああ……ッ!!」

「凄いね、どんどん魔力が上昇してる……!」

「行くぞヴィータッ!!」


ヴィータとの距離が一瞬で消える。俺の動きは当然のように目で追えているようだが、俺は高まり続ける魔力を神雫に纏わせた。


「【月衝閃げっしょうせん】!!」


全力の突きをヴィータはしゃがんで躱し、立ち上がるのと同時に脚を振り上げた。爪先が猛スピードで眼前まで迫ってきたので、ギリギリで体を反らせて蹴りを避ける。


「【銀月輪ぎんげつりん】!!」


そのまま体を回して斬撃を放つが、それをヴィータは魔力で生みだされた輝く剣で受け止める。纏う魔力が右腕全体を包み、まるで漆黒の剣のようになっているのだ。


「母さんを圧倒した……!」

「魔剣クロノス……さあ、行くよユウ君!」


俺を弾き飛ばし、同時に一瞬で距離を詰めてきたヴィータ。振り下ろされた魔剣と神雫がぶつかり合い、空間が激しく揺さぶられる。その直後にはお互い相当な魔力を使用した斬り合いへと発展し、俺の持つ神雫──ティアーズが緊張しているのが伝わってきた。


「だああああッ!!」

「あははははッ!!」


向こうはどうなのか分からないが、俺の方はヴィータの動きがほぼ見えない。直感で魔剣を弾き、避け、受け流す。時折身を裂かれながらも、ここでひるめば一撃で終わらされるだろう。


「【三日月みかづき】!!」

「【破獄薙はごくなぎ】」


銀の一撃と黒い一撃が衝突、踏ん張れなかった俺は勢いよく後方へと吹っ飛ばされた。そんな俺を追ってヴィータは駆け出したが、真横から暴風の弾丸を浴びて立ち止まる。


「邪魔するの?リースさん」

「おおっ、黙ってみてるわけにはいかんやろ!」

「当然私達もね!」


風を纏ったリースがヴィータに攻撃を仕掛け、向こうからエリナが雷魔法でサポートする。ほんの僅かだがヴィータの意識は彼女達に向けられ、俺はこの隙に神雫へと膨大な魔力を流し込んだ。


『くっ、ううっ!?』

「すまない、耐えてくれティアーズ……!」

『は、はい。この身は貴方へ捧げると誓いました。ユウ様の全てを受け止めます……!』

「感謝してもしきれないな!!」


リースを魔法で吹き飛ばしたヴィータ目掛けて足場を蹴り、俺は残る大半の魔力をこの一撃に込める。


「強化します、先輩!」


そしてアーリアの魔法で身体能力が大幅に上昇した俺は、ようやく俺の接近に気付いたヴィータの目の前で神雫を振り上げ────


「っ!しまっ────」

「壱ノ太刀【幻月乱舞】!!」


凄まじい速度で神雫を何度も振るい、銀閃一刀流の奥義を放つ。数え切れない程の斬撃は、咄嗟にヴィータが展開した障壁を粉々に破壊し────


「あははっ、それッ!!」

「なっ!?」


その全てが、ヴィータの魔剣で消し飛ばされた。俺以上の速度とパワーで、全力の奥義が破られたのだ。


「【ディザスターストーム】」


そして、ヴィータは黒い嵐を巻き起こし───


「【天地魔壊の大海竜大口(リヴァイアサン)】」


造り出された水竜が暴れ狂い───


「【穿つ煉獄の六柱(インフェルノピラー)】」


足元から飛び出した灼熱の柱が俺達を包み───


「【テラ・ボルテクス】」


破滅の雷が容赦なく降り注ぎ───


「【アースブレイカー】」


圧縮された空間が弾けて大爆発が発生し───


「【セイントジェネシス】」


眩い閃光が空間を駆け抜け───


「【ブラックラグナロク】」


湧き出た暗黒が果てしなく広がり───


「ふふ、人間にしてはよくやったと思うよ」


まるで息をするように手加減された最上位魔法を連発したヴィータは、もはや立ち上がることすらできない俺達を見てそう言った。


「う、ぐう……」

「そんな……」


1分間にも満たない時間で、この状況。誰もが今ので戦意を喪失したようで、呆然と我が身に起きた事を理解しようとしている。


「嘘……こ、こんな、ことって……」


マナ姉ですら、うつ伏せの状態でガタガタ震えていた。それ程までの力量差。俺達の何もかもが、終の女神としてのヴィータには届かない。


彼女の魔力は未だに上昇し続けている。今の時点で、彼女は親父と母さんを同時に相手した時程の魔力は引き出していない。それに、彼女が本気を出せば……それは、俺の両親ですら手も足も出ない次元だ。


『ユ、ユウ様……』

「くそォ……!」


腕に力が入らない。すぐそばに落ちている神雫を取ろうとしても、指一本すら動かせなかった。そんな俺の前を、記憶の水晶がゆっくりと通り過ぎていく。


「……あ」


その記憶は、ヴィータの前で止まった。そしてそれを見て、ヴィータは見たことがないような表情を浮かべた。


「あはは、見ろってことかな……?」


ヴィータが、水晶を指で弾く。その直後、空間全体に水晶から溢れた記憶が広がった。


「まさか世界樹が記憶を引き継いでいるとは思わなかったけど……これはね、〝失われた記憶〟なんだ」


優しさが溢れる笑みを浮かべ、ヴィータが言う。


「私だけが知る、〝本来の歴史〟。丁度いいか、私がどれだけの思いを持ってこの場に立っているのか……君達に知ってもらえるのなら」


そして俺達の前に広がったのは、信じられないような光景……とある少女の記憶だった。

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