#閑話01 陰謀者達の末路
まるで具材が足りていないラーメンの様に証されず仕舞いの話が沢山有ると感じましたので、これから描く入学編に移る前に林原家を狙っていた者達の末路を書かせていただきました。
本来であれば、望が狐仮面に変身して工作員達を蹴散らす案も初期にあったのですが。どう考えてもアメリカドラマの様な激しい戦闘シーンとなる事と、工作員達が襲いに来るを1月~2月頃より先まで話の展開を早送りしなければ行けなくなる事を考えましたら、かつて話のテンポが崩れて作品を崩壊させてしまった前例がありますので安全策をとらせて頂きました。
※指摘していただいた誤字を修正しました。(1/25)
望が空の為に美少女となる事を決意したその夜、とあるブラインドカーテンを降ろして外窓を締め切っている五階建ての企業事務所の一角で、六人程の企業主達が密談を行っていた。
彼等は広い学校の教室の様な部屋の隅っこに設けられた来客者用のスペースで集まりあい。真ん中に透明な長方形のテーブルを四人掛けのソファーを左右に二個づつ間に挟む形で、三人ずつ座った御偉いさん達はある者は人形の様な無表情、ある者は金色の扇子で口元を隠してにやけ面を隠し、ある者は湧き出る汗を必死にハンカチで拭き取りながら先程まで話し合っていた話の結論を纏めて話す。
「え~ではですね、林原開発工業が製造予定を発表した【食品安全測定器】の販売と林原開発工業の出鼻を挫くために、我々は工作に秀でた者達を雇い。社長である林原達也の家族を暗殺する事で合意と言う事でよろしいでしょうか……?」
そんなこれから起こす行動に対して明らかに怯えきっている汗を拭いていた男に、他の代表者達は冷笑や、溜め息で答える。何故ならこの議論を始めてから既に三時間程が経過しており、皆の苛立ちの数を表現するかのようにテーブルに置かれたガラスの灰皿に針ねずみの様に吸殻が突き刺さっていた。
「林田くん、君もいい加減覚悟を決めたらどうだ? 奴等が開発している商品は、食品偽装や期限の捏造を行いながら何とか経営を支えている我々にとって致命的な損失を産み出すであろう目の上のコブなのだよ?!」
「ひいぃぃぃ!!? すいません十勝様!!」
白髪混じりで嗄れた頬にそばかすをつけた老人が目を血走らせながらテーブルを拳で叩いていきり立つ。
「……あんなものが国に気に入られた時点で直ぐに手を打つべきであったのに、おまえが大丈夫だと言うから放置していればこの有り様よ!! どう責任を取るつもりじゃ!?」
その話を聴いていた周囲の者達は「御前も同意してんじゃねーか、狸爺……」と心の中で悪態を着きながら、唯一影で暗殺を行う事が出来る工作員達と繋がりがある無表情な男、一之瀬恭一へと視線が注がれる。
「では、今回の話に皆様同意してくださるならこの書類にお持ちいただいた印鑑をお願い致します」
そういって一之瀬は頑丈そうな黒いアタッシュケースを開けて、中から五人分の書類を一枚ずつ配っていく。
そこには今回の暗殺依頼を正式に認める事とこの話を誰にも口外しないこと、依頼が完了後一週間以内に指定の口座に300万円を振り込む事等が書かれている。
その書類に一通り目を通した者達の反応はまちまちで、黙って頷き判を押すものや、依頼料に頭を抱える者、命を奪う悪魔の依頼書に改めて良心を痛めて同意出来ない者もいたが最終的には皆が判子を押した書類を一之瀬が回収し終わり。
一之瀬は軽く皆に会釈をした後、相変わらず機械の様な抑揚がない声で皆に最後の説明を行う。
「ありがとうございます皆様。この依頼は出来るだけ早く皆様に達成の報告を御伝え出来るようにしますのでご安心ください。では早速……」
そういって一之瀬はスーツの内ポケットからスマホを取りだし早速連絡を行う。
「私だ……例の件なのだが……鼠がチーズに食いついたよ」
その意味ありげな一之瀬の言葉に男達がざわめくが、その声を消し飛ばす様な力強い英語なまりの男性の声が響き渡る。
『Goodjob清姫!! 此方も無事に工作員達とのPartyが今終わった所で、来演者の方達は無事にPolicemen達がDeliveryしてくれたよ。そっちは大丈夫かい?』
「ええ勿論よ九尾のジャックさん、望様を脅かす脅威はこの清姫が消し去りますから……」
最早、完全に女性の声色で話し出している一之瀬、改め清姫は徐々に男性の姿から女性の姿へと見た目を変貌させていき。
その怪奇的な力を発揮する彼女の姿に男達の短い悲鳴があがるなか、スーツ姿の中学生程の美少女と化した彼女は黒髪のセミロングヘアーを軽く振って整えてから、まるで蛇の様にパッチリと開かれた金色の目は獲物を狩る目となっており。
5人組の男達は正しく蛇に睨まれたカエルの様に彼女から金縛りを受けており、身動きが取れないでいる。
「ばっ、化け物めぇ!! 本物の一之瀬じゃない貴様は何者じゃあ!?」
「まあ、化け物だなんて失礼な枯木ですね? 本来であれば激しく抵抗した一之瀬と言う男の様に御前達の様な偽り者は焼き払い消し炭とする所ですが、私は心優しき望様にお仕えし、全てをお捧げした将来の妻、清姫。望様の心を煩わせる訳にはいかないですからね……さようなら……」
そういって彼女が彼等に興味を無くした様に部屋から出ていくと入れ替わる様に、部屋の外で待機していた警官隊が突入し次々と悪巧みしていた者達を次々と手錠をかけて逮捕していく。
「ぬわぁあぁ!! 離せっ!! 離さんかぁ!!!」
彼等は喚き散らしながら次々とビルの外で待機していた大型のワゴン車タイプの警察用の輸送車に乗せられていく。
その様子をしげしげと見詰める清姫の隣に背広と少しくたびれた茶色のロングコートを来た若い青年の刑事が並ぶ。
「ご協力ありがとうございました清姫さん。お陰様で近年用心暗殺を行っていた工作員達と違法業者達を纏めて捕らえる事が出来ました!! あっ、あのよろしければこの後御礼に御食事でも……」
「すいません刑事さん。ご協力していただき本当に感謝しているのですが、私にはまだ仕事が残っていますので、これにて失礼致します」
「あっ、清姫さん……」
緊張を必死に抑えて食事に誘った青年であったが、見事に清姫に振られてしまい彼女の後ろ姿をみながら思わず肩を落とす。
「止めとけ、止めとけ優太。あんなかわいこちゃん振り向かせる為には御前さんじゃ数十年かかるぞ」
「親父さん……」
落ち込む優太の肩をベテランの風格が漂う刑事が叩いて励ます。
「だから御前さんが早く彼女を振り向かせる為にも、飯食いながら話合おうじゃないか! よし、ついてこい優太!!」
「はい! お付き合いさせて頂きます!!」
かくして数日間かけて林原家を狙っていた者達は悪巧みを働いていた十勝達が、自供すれば罪が軽くなると聴いて自分たちと同じように不正を働く業者の情報を自供する事により芋づる式に次々と発覚していき、一網打尽となる。
その活躍は望の未来を早々に予測していた稲荷神社を納める稲荷神による予測によるものであり、暫くの間は林原家を脅かす脅威は無くなる事となる。
何時もお読み頂き、そして初めて読んでくださった皆様ありがとうございました。
ずっと登場させたいと考えていたアメリカ被れの九尾兄さんや、様々な昔物語を見ていて鳥肌がたったヤンデレ日本代表の清姫ちゃん等を登場しました。(是非、元ネタも調べて頂ければより一層彼女の異常さが解ると思います)
さて今回は何故林原家が狙われなければ成らなかったのか、また狙っている悪者達がどういった奴等だったのか等、恋愛重視の本編では余り触れられなかった部分をピックアップする話となっています。
次回の話からは新編が始まりますので、今後ともよろしくお願いいたします!
PS、あとがきで偉そうに余計な話をし過ぎてしまい、不愉快になられた方はすいません。




