表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/33

#20眠れる者達【上】

大変御待たせしていてすいません。色々と考えて修正した結果、以前投稿させて頂いた20話と話の落ち以外は変わらない物となりました。



※二ヶ月近く、投稿出来ずにすいません! 仕事が多忙すぎて、働いて帰って寝ては仕事に向かう日々が続いております……。ゴールデンウィーク終り頃には投稿出来ると思いますので、何とぞ御了承頂ければ嬉しく思います。


【訂正】・ジャージー→ジャージに訂正します。・後半部分の文章を増やしました。



※仕事で体を壊してしまい、休養をとっていました。ある程度落ち着きましたので続きを書くとともに、文章の修正を行っていきたいと考えています。長らくお待たせしてしまいすいません。そして待っていてくださった読者の皆様、ありがとうございます! (6/3)

望達と同じ由利原学園に入学し、同級生であった上原真理恵(うえはらまりえ)が駅前で交通事故に会ってしまい、何らかの理由で異世界に引き込まれてから5日が過ぎているのだが。


彼女が干渉しなくなったからといって、彼女と言う登場人物が欠けたここ篠木町の日常は良くも悪くも平和な日常が止まる事なく意図なわれていた。



そんな良く晴れた日曜日の朝8時40分頃。


彼女が災難に巻き込まれる始点となった篠木町(しのぎちょう)駅前は日曜日の休日と言うこともあり、駅の出入口が1ヶ所しかない中規模の駅にも関わらず、多くの人々が世話しなく入り乱れていた。



その中には休日出勤に駆り出されたスーツ姿の男性がため息をつきながら改札口を通る姿や、嬉々とした様子で手を繋ぎながら駅近くにあるカラオケ店に入っていく若い男女のカップルや、野球のユニフォームを着て背中にリュックサックとバットケースを背負った無邪気な野球少年達が駅の切符販売機で談笑しながら切符を購入している様な風景があった。



そこには事件に巻き込まれた彼女の身を案ずる人はおらず、この場所で悲劇があった事を示す様に約2mに渡って続いているバイクのブレーキ痕が駅前のバスロータリーの道に残っていると言うだけである。



そんなそれぞれ一人一人が思い思いに行動している早朝の乗客に対して駅員さん達の挨拶が飛び交う駅の改札口を越え、通路を抜けた奥の方にある駅のホームからは電車が到着した事を告げる爽やかなオルゴールのBGMと共に、電車がゆっくりと停車するブレーキ音とアナウンスが改札口にも響いて来た。



篠木町(しのぎちょう)ー、篠木町ー。お忘れ物の無いよう御注意ください……》


そのアナウンスを聴いて先程まで切符売り場ではしゃいでいた6人の野球少年達から悲鳴があがる。


「やっべぇ!! もう電車来ちまった!! おまえら急げ、急げ!!!」


「まっじかよ!!? 予定より二分も速いじゃんかよー!!」


切符を前列で先に購入出来た少年達は切符を手にした者から慌てて改札口へと駆け出していき、ゲートを潜り走り出す競走馬の様にホームへと駆け出していく。


そんな少年達の中にはまだ切符を購入する事が出来ていない少年も一人おり、置いていかれると感じた切符を買い終えたばかりの最後尾の少年は思わず慌ててしまう。


「うわわっ?! み……みんな、待って!! 待ってよ!!」


その少年の声は電車に乗り遅れまいと一目散にホームに駆け出す少年達には聴こえていないらしく。先に走り出した少年達は振り返る余裕もなく、その後ろ姿は縦40mの長さと大人が横に6人並べる程の広さがある通路の奥の方へと離れていってしまう。



出遅れた少年も急ぎ、レーンを出る競走馬の様にやっと改札口に切符を通して走り始めるのだが。


既に先にでた仲間達は通路の最先端にあるホームに通じる、左右に別れた二つの階段に向かう別れ道の内、右側の階段を駆け上がっていく仲間達の後ろ姿を見て、出遅れて取り残された少年は半泣きになりながらもめげずに後を追うのだがーー


「あうっ?!!」


少年が素早く踏み出すことに意識を集中し過ぎていたために、爪先を足下の黄色い点字ブロックの凸凹に引っ掛けてしまい。勢いよく顔面から床に身体を叩き付けるような体勢で自分がこのままだと転んでしまう事を自覚した少年は感覚が研ぎ澄まされ、意識が集中されている事からゆっくりと流れ行く景色を見る。


その視界の中には到着した電車から降り、階段を降りて通路に出てきた乗客達が目に写っており。その自分が転びそうになっている瞬間を目撃した乗車客達から出される、スロー再生された様な悲鳴を聴きながら。


少年が倒れる事によりゆっくりと床に敷かれた黄色い点字ブロックが迫り来る。



(駄目だ、ぶつかる……!!)


自らにやがて訪れるであろう激痛に、覚悟を決めた少年は目と歯を食い縛ろうとした次の瞬間。少年の中でゆっくりと流れていた筈の景色の中で、目の前から高速で走ってくる紅白色の巫女服を身に纏った同い年ほどの少女を少年は目撃する事となり。


「危ない!!」


やがて少年の前に躍り出た少女は開いた両手で少年の身体を抱止めて見せ、御互いに身体がぶつかる衝撃はあったものの、少年の身体が倒れ切る前の斜め向きの姿勢で少年は怪我する事なく謎の巫女服少女に抱き止められていた。



「はあはあ……何とか間に合って良かったのです。大丈夫? 痛いところは無いのです?」


「あっ、はっはい! 大丈夫です!! ありがとうございます!!」


「良かったのです! 君が無事で本当に良かったのです……ふぅ」


「もご?! む、胸が、当たって……?!」



大怪我をしそうになっていた少年が無事で有った事に心から安堵した巫女こと身体を少女の姿に変化させている佐々木望(ささきのぞむ)は背が自分より頭2つ分程低い少年を母親の様に優しく、少女にしては大きい胸をクッションにする様にして抱き締め。少年を嬉しそうに撫でるものだから流石の少年も顔を真っ赤にさせてどもる事しか出来ずにいた。


そんな一難去ってまた一難を経験している少年の元に望の友人達と野次馬達も加わって余計に大変な事になっていく。



「望さん!! 男の子は無事ですか!?」


「何とか間に合った見たいなのです、空お姉ちゃん」


「良かった……。怖かったよね、もう大丈夫だからね?」


「あああ、ありがとうございます!!」


少年を抱き抱える望の側にクリーム色のシルクのシャツのうえに桜色のカーディガンを羽織り、腰にブラウンのウェストポーチを後ろに付けた、青のジーンズ姿の林原空(はやしばらそら)が遅れて駆け寄り。少年が無事であったことに望と共に安堵する。


そんな三人の様子を後を追う形で、共に行動していた二人の少女達も合流する。


「……望さんの世話焼きに……女体化した影響なのか母性も加わって……大変な事になってる……。うん……秋葉姉がより甘えん坊になって……駄目になる未来が見えるよ……」


「流石です主殿(あるじどの)!!! 私を助けてくださった時よりも素早く少年を救出されるとは、(かなめ)感服いたしました!!!」



後方から二人の後を追い掛けて来たのは、服とズボンの外側が黄緑色で内側が黄色いフード付きのウィンドブレイカーを着込み、しっかりとフードを頭に被っている金髪ツインテール狐少女の山中風香(やまなかふうか)と。


モコモコした白いジャケットを羽織り、下は赤いミニスカートと黒色のニーソックスと言う暖かくしたいのか、涼しくしたいのか解らない出で立ちで、主と慕う望に目を輝かせて寄り添う狸族の忠狸、絹山要(きぬやまかなめ)の二名であり。


望達はその後、暫くの間周りからの称賛を受けたり、写メ等を散々撮られた後。時間が経って落ち着いてきた所で先程までは何度も頭を下げて感謝していた野球少年がふと我に帰り、自らが仲間達に置いていかれて電車に乗りそびれた事を思いだす。



「あっ……そうだ電車は!?」


少年の質問に答えるかのように、駅のホームから電車が発車した事を告げる扉が閉まる音と甲高いモーターの音を響かせながら電車の走り去る音が通路に響いて来た音を聴いたが為に、再び襲ってきた絶望感に少年は頭を抱えてしまう。



「ううう……置いていかれちゃうなんて最悪だ……。どうしよう、次の電車まで30分以上かかるみたいだし。このままじゃ大事な試合に間に合わないよ……」


項垂れて顔を真っ青にさせて震える少年の姿を見て、少年の状況を理解した空は正面からしゃがんで少年の目線に合わせつつ彼の両肩に手を置いて慰める。


「……その試合は君にとって大切な試合なんだよね?」


「うん。僕、皆と比べて下手くそで。だから精一杯練習して、初めて出られる試合だったんです……。でも、もう……」


その理由を聴いた空は右隣にいる望を見詰め、此れから行うことの了承を得るためにアイコンタクトを送り、望もその意味を真剣な表情で頷く事で了承し、空はそれを笑顔で頷きながら感謝しつつ絶望している少年に再び向き直る。



「私に任せて。必ず君を大切な試合に出られるように間に合わせて見せるから」


「え……」


「こっちに来て貰って良いかな?」


その言葉を聴いて少年が動揺している内に、空は駅構内に備えられている身体障害者の為の広いトイレに少年の手を引いて連れ込んで行き、望達もその後を追い掛けて行く。



やがて大きな横開きのスライドドアを開け、室内に空達が入った所で動揺しながら連れてこられた少年の前を歩いていた空は少年に向き直り、間を置かずに指示を出していく。


「今から少し目を瞑ってもらって、試合をする場所を思い浮かべて貰いたいんだけど出来るかな?」


「はあ……。何度か行った事はありますから出来ますけど……」


「よし。じゃあお願いするね」


そのお願いされた理由が全く理解出来ず。不思議に思いつつも少年は目を閉じて、目的地であったスポーツ広場の情景をイメージしていく。

その様子を確認した空はウェストポーチから神社で頂いた御札を、キョンシーの様に少年の頭に張り付けてから自らも目を閉じ、少年の頭に浮かんだ情景を自らの頭の中にも写し出して行く。



「なっ、何ですかこの紙!?」


「大丈夫、君はそのまま広場の事を頭の中に思い浮かべて……」


思わず戸惑う少年を落ち着かせ、広場の情況がはっきりと見えた所で空は全神経を集中させて御札に込められた力を解放する。



「【転移札(てんいふ)】起動……」


その叫びに同調するかの様に御札に刻まれた刻印が一瞬煌めき、光ったと一同が感じたその瞬間トイレを(まばゆ)い光が二秒程包み込み。次に目を開けた時には少年の前からは望達の姿は消えており。


少年が何度も訪れてた事があるスポーツ広場の男子トイレの洋式便器の椅子に座っていた。



「この光景……このトイレの落書き……まさか……」


そう言って恐る恐る個室から出た少年の前には見慣れた広場があり、動揺の余り息を飲む少年の耳に今度は聞き慣れた声が聴こえてくる。


「うーん……コーンポタージュも捨てがたいが、おしるこも……」


「あれ、この声はまさか監督ですか?!」


「うん? 荒木じゃないか?! えらく早めに来たな!!」


恐る恐る個室から出た少年の目に写ったのは記憶の中にあるスポーツ広場そのものであり、先に来てトイレ前に置かれている自動販売機とにらめっこしていた中年男性の監督と目が合ってしまう。


その夢の様な状況に少年が戸惑っている内に、監督は豪快な笑い声をあげながら先程まで悩んでいた自動販売機を操作し、二本の缶を手に取る。


「今日はお前の初舞台だからな! 気合いが入って早めに来るのもわけないか!! ほれ、さっさと手を洗ってこい!!! 暖かいしるこが冷めてしまうからな!!!」


「あの、監督!! 実はーー」


「「「監督!!! 荒木が! 荒木が!!!」」」



自分が体験した不思議な出来事を説明しようとした所で顔を青ざめさせた荒木と呼ばれる少年を置き去りにしてしまった少年達が駆け込んできた。


「なんだなんだお前達。そんなに慌てて何があったんだ?」


「俺達、駅に荒木を置いていっちまったみたいで!!!」


「あん? 何を言ってるんだ御前達は? 荒木なら此処にいるじゃないか」


「え?! そんな訳あるはず……ええええええ?!! 何で俺達よりも先に荒木が到着してるんだよ!?」


「俺達が乗った電車は快速だったから、先につく処か追い付ける筈もないのに何でだよ!?」

「実はねーー」



その後、先に辿り着く事が出来た少年の話に監督を含めた野球少年達は驚愕させられる事になる。




強い発光が収まったトイレの個室。そこには先程まで狼狽えていた少年の姿が消えており、それを確認した空は無事に少年を送り届ける事に安堵しつつも、辛そうに肩で息をする空が望達の前に立っており。その姿を見た望が慌てて空に駆け寄り、彼女の身体を支える為に抱き寄せる。


「空お姉ちゃん!! 大丈夫なのです?!」


「はあ……はあ……。大丈夫だよ、望さん。少し疲れただけで、ちゃんと彼を送り届けられたみたいだから……。私も彼も大丈夫……」


額に汗を掻き、その表情苦しそうではあったが彼女の心は達成感に満ち溢れたほがらかなものであり。その姿に思わず心配で駆け寄った望も驚いた顔になるが、次第に彼女の事を誇らしく思う気持ちが溢れてきて自然と笑顔になり。その様子を見ていた仲間達も微笑みを浮かべていた。


そんな望達が気を緩めたそんな時だった。突然勢いよく望達の入っていた障害者用トイレの出入口であるスライドドア式の扉がガラガラッと勢い良く音を出しながら開け放たれ、がたいの良い鍛えられたがたいのいい、スキンヘッドにグラサンと言ういかつい男が息を荒げて乱入してきたのは。



「すまねぇお嬢ちゃん達!!! もしかしてあんた達巫女さんか?!! 頼みがあるんだ!!!」


「きゃああぁ!!? だっ、誰なの?!」


「なっ、何事なのですぅ?!」


「あれ……スンスン……この匂い何処かで……」


「あわわわ!! 主殿、敵襲です!! 私の後ろにお控えください!!!」



突然の乱入者に思わず空は悲鳴をあげて望の背後に隠れ、何やら思考にふける風香は男の登場に動じるわけでもなくじっと男を観察を続けており、予め望達の背後を警戒していた要はそのまま後ろに振り返り、望と空を守るためにポケットの中に用意していた変化様の木の葉に手を這わせて戦闘体勢を取る。



そして身構えさせられる原因となった人物はと言うと、出入口を開けたであろう扉を右手で押さえたその体勢のまま駅員に後ろから両羽で羽交い締めにされて(うめ)いていると言う状態であり。トイレには男が駅員を振りほどこうとする唸り声が響く。



「だあぁぁ!! 離しやがれっ!!! 俺はこの子達にやましくない、大事な用があるんだよ!!」


そんな彼の容姿は黒いジャージ姿で顔に眉毛がなく、黒いグラサンにスキンヘッドと言ういかつい顔に似合わないお腹部分に可愛らしいたい焼きのキャラクターの絵が描かれたピンク色のエプロンを身にまとったガタイの良い姿でありながら。


(わら)にもすがる様な必死な様子で自分を拘束している駅員を振り切って望達に近付こうとしている物だから、人に少なからず恐怖心を持っている空は恐怖心で身体を震わせる。




「突然驚かせてすまねぇ!! さっきあんた達と一緒にいた坊主を消したその力、あんた達もしかして巫女さんなんだよな?! 頼む!! 俺の娘を助けてやってくれないか?!」


「お客さん困ります!!! 女の子達がいるトイレに突撃するだなんて羨ま……えっふん! 犯罪行為は許されませんよ!!」



突然の乱入者に一同が唖然としている中、騒ぎを聞き付けた駅員さんが男の背後から羽交い締めにかかるが、男はそれでも必死に叫び続ける。


「うるせえ!! 鼻の下伸ばしたお前と一緒にするんじゃねぇ!!! こっちは娘の命がかかってるんだ!!!」


「あんたみたいな厳つくて、マフィアみたいな男に娘がいる筈ないだろ!!! いい加減にしろ!!!」


「おいぃ?!! お前が一番失礼じゃないか!!? ちょっと待ってろ、俺が嘘つきじゃない事を証明として携帯の待ち受けにしている家族写真を見せてやる!!!」



男同士で醜い罵り合いをしていた男達であったが、マフィアの様なたい焼き男が既婚者である事の証拠とばかりに見せた携帯の待受画面の為に、駅員だけでなく望達も驚かされる事となる。


その写真は何処かの遊園地で撮られた物であり、大きな観覧車をバックに、家族三人で写っているその家族写真の真ん中で満面の笑顔で娘として写っていたその少女を見た要が驚きの声を上げる。


「ひまわりの様な笑顔で両親に挟まれて写真に写っておられるこの方は……!!」


「知っているのですか、要ちゃん?!」


「はい、主殿! この方は学園で迷子になっていた私を助けてくださり、今回私達が探していた御方です!! 間違いありません!!!」


「ナッ、ナンダッテー?!!」



その人物が望達が捜索しようと考えていた人物、上原真理恵その本人であったから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ