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28話 選考通知

 HL杯の選考通知が届いた。

 これはBtHO内のメッセージ経由ではなく、俺のVR機器に搭載されているメッセージ機能に直接届いた。そんなものだから、BtHOを遊ぼうとしてVR機器を立ち上げたときはびっくりしたものである。


 結論から述べるとHL杯に参加可能とのこと。

 参加チームはシード権も含めて8チーム。これをトーナメント方式で戦うことになるそうだ。つまり3勝すれば優勝となる。

 そのメールに選考基準についても記載されていた。どうやら直近のアリーナでの戦績をもとに、レート等を考査しHL杯に出場するチームを決定したとか、そんなことが書かれていた。

 ようは俺らはその最低基準をギリ満たしていたのだろう。最大5vs5というルールの中で、俺らはチームメンバーが4人しかいない異色なパーティだ。戦績的にはギリギリなものだったと思う。


 そして、大会当日までアリーナで戦闘を繰り返して経験を積む。

 その甲斐もあってか、俺らのランクはミシックになった。

 一方で、未だにジキルとはマッチングしない。まことしやかに噂されていた内部レートの実在というものが、今回の選考通知メールで明らかになった。要するに、俺らとジキルのレートは離れすぎているために早々マッチングしないのだろう。


 メールに添付されているトーナメント表を見る。

 仮に俺らが勝ち上がっていったとしたら、決勝戦で当たるのはミリオンダラーの面々、つまりジキルやソフィーらが所属するパーティになる。

 そして悲しいことに、そのジキルらが初戦で戦うことになる相手はばう丸さん達のパーティだった。

 ばう丸さん、貴方はいいやつだった……。君のことは忘れない。


「ユウ」


「なんだ?」


 ミリアとゲラルドはまだログインしていない。

 HL杯参加の通知は皆のVR機器に届いているだろうから、その辺の心配をする必要はないだろう。

 ゲラルドは彼女がいるから予定が入っている可能性がある。まあ、あいつもあいつで結構忙しい。

 一方で、ミリアがログインしていないというのは珍しい出来事だった。何か用事でもあるのかな?


「ユウなら優勝できるわよね?」


「無理。俺1人で戦う試合じゃない。皆が力を合わせて何とか勝てるかもしれないってレベルの相手しかいないだろう。――だから、頼むぜ? 相棒」


「ええ、そうね」


 ホリーはアリーナ受付の近くにあるソファーに座り、こちらをじっと見つめてくる。

 ……俺もそっちに行けってか? まあ、行くんだけどな。


「ちょっと失礼」


「どうぞ」


 ホリーに断りを入れてから彼女の隣に座る。

 彼女は俯き、膝元で両手の指同士を何度も組み替える。


「なんか悩みでもあるのか?」


 俺は自然とその言葉を口にしていた。

 一方で後悔もした。彼女から言い出すまで、こちらから話題を切り出すことは避けた方が良かったのかもしれない。もしかしたら、とても話しにくいことで悩んでいる可能性があったからだ。


 その予感は少なくとも半分は的中していた。

 彼女からの返答は即座に訪れなかった。

 そして寸刻の時が流れる。


「……私、ユウに嫉妬していたのかも」


 話の意図が読めない。

 かといって、俺は否定することも、肯定することもなく話の続きを待つ。


「初めて一緒に地上に出た時から、ユウはなんでもできた。ユウはあの時、私の援護があったから楽できたって言っていたけど、私がその場に居なくてもあの武装盗賊団を一人で壊滅できたって、そう思う」


 ホリーは指を絡ませていたそれを止め、両手をソファーに添えて深く腰掛けた。

 無意識の内にリラックスしたがっているというのが見て取れる。


「でも、私がソロだったら無理だったわ」


「あの時は、だろ? 今なら可能だろう」


「そうね。でも――でも、ユウはいつも私たちの一歩先を進んでいる。地上に家を建てようだなんて一風変わったことを考えたのもそうだし、いつも私たちのことを俯瞰で見て、気遣ってくれるのもそう。だから、そう……ユウは前に進み過ぎちゃって私たちを置いて行っちゃうんじゃないかなって」


「それで、俺が上位クランへの引き抜きの可能性があるという話題が出た時、あんな反応をしたわけだ」


「そうね。でも、私には貴方を引き留める権利はない」


 俺は頭を搔く。

 彼女は変なところで自己肯定感が低い。普段は芯がしっかりしているのに、だ。

 まるでホリーという人物が複数人いるかのよう。


「あるだろうに」


「……えっ?」


「言わなきゃわからんらしいし言うぞ。単純にフレンドだからもっと一緒に遊びたいって言えばいいんだよ。それだけの話」


 ホリーは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐさまその言葉を咀嚼して飲み込んだらしく、納得した表情を浮かべる。


「ああ、そう。そうなんだ……。私がユウに抱いていた感情って――」


 彼女は続きの言葉を紡がない。


「なんだよ、気になるだろ」


「そうよね、ここまで言ったら気になるわよね。じゃあ言うわ。一つは憧れ、嫉妬じゃなかった」


「もう一つは?」


 彼女は淡い笑みを浮かべて言葉を続ける。


「秘密」

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