25話 カリナC
残金が2万BILL弱になってしまった……。
理由は言うまでもない、新しい機体を購入したためだ。
新機体はDランク軽量級のカリナCという機体に、オプションとしてBランクのフライトユニットを取り付けてある。アサルトライフルやフォトンブレードもDランクに昇格した。
フォトンブレードは元々よく切れるが、アサルトライフルの豆鉄砲加減が以前は酷かった。よってDランクのアサルトライフルがそれなりの火力を有していることを願う。
シールド? 彼には悪いが戦力外通告を出すことにした。元々そんなに被弾するようなスタイルの戦い方はしないから、いつかはシールドを手放そうとしていた。それが軽量級に乗り換えたことがきっかけとなって――というわけだ。
「やはり重量級よね……。Cランク機体にオプションは――予算的に大丈夫そう。肩部ハードポイントにも武装を積めそうね」
ホリーはCランク機体であるラミンダという重量級機体を購入することに決めたそうだ。
武装は腕部には以前のようにスナイパーライフルを搭載し、オプションとしてAMSを積んでいる。ドランガでは肩部に誘導ミサイルを搭載していたが、それを今回は除外し、代わりに肩部カノン砲を使うことにしたようだ。
「私も買いましたよ! 見てください。新機体ですよ、新機体!」
所持機体が表示されているウィンドウをパーティメンバー限定で公開設定にし、彼女はその機体を見せびらかしてくる。
ミリアはダリルLを売却し、予算をかさ上げしてファルスというCランク中量級を購入した。武装はライフルにシールド、加えて肩には新たに肩部PPMGを搭載している。
エネルギー兵器持ちか。まあ、中量級ならジェネレーターの出力に余裕があるから大丈夫だろう。彼女はもう初心者ではないし、その辺の計算は出来るだろうから俺は口を挟まない。
「俺はビゼンの後継機にした。ナガフネって名前のCランク重量級」
ゲラルドはCランク重量級のナガフネを購入したそうだ。
金銭的には彼が一番余裕がある。ソロでも活動していたからな。
ナガフネには両肩部に誘導ミサイルを搭載し、右腕部には新たにショートレンジミサイル――通称SRMがあった。このSRMは近接信管タイプのミサイルで、有効射程は短いが、近距離にいる敵にも信管が作動するタイプのミサイルである。なお肩部誘導ミサイルとは異なり、SRMは誘導しないので偏差射撃が必要になる。
ナガフネの左腕には以前のようにシールドが搭載されていた。
「ユウは殆ど武装が変わっていないのね。シールドを取り払ったくらいかしら?」
「そうだな。ぶっちゃけあれ要らんだろ。片手が空いたからアサルトライフルとフォトンブレードを両方使えて助かるくらいだし」
「ユウさんは被弾しないからそんなことを言えるんですよ。私たちは普通に被弾するので、シールドが何枚あっても困らないんですけどね。ホリーさんは長物を持っているからシールドを所持できませんが」
どうやら俺は異端児だったらしい。
ゲームの設計的に、対人戦では攻撃が命中するのを前提としている節がある。だから以前PKされた際に遭遇した傭兵が乗っていた機体はミラルジーナという装甲が分厚い重量級だったし、奴は対人戦を意識して装甲を貫通しやすいエネルギー兵器を搭載していた。
そもそもこのVRゲームは敵に狙いをつけやすいんだよな。視線に追従する形で銃口がそっちに向くわけだし。
その点、空を飛んだりする俺はかなり特殊な戦法を取っていることになる。
事実、ランク認定戦では俺が後衛を荒らしたせいで相手パーティはほぼ何もできなかったしな。彼らには悪いことをした、なお反省はしていない。対人戦は相手が厄介だと思うことをしてなんぼよ。
ランク認定戦で戦った敵パーティはゴールドランク帯にいたそうだ。リザルト画面にそう表示されていた。そのゴールドランクを一方的にボコボコにした俺らが、その1つ上のランクであるダイアランクに留まっていていいのだろうか、という懸念もある。
これは慢心とかではなくて、単純にまた圧勝して賭博の胴元であるアリーナ運営に迷惑を掛けないかという心配だ。先ほどのランク認定戦は大穴も良いところだったと思う。俺らに掛けていた人らは大儲けしたことだろう。
「それで、この後はどうするんですか?」
「勿論戦勝祝いするぞ。オススメの店があるんだ、俺がBtHOを始めたての頃に入った店なんだけどな」
「ちなみにどんな料理が出てくるんだ」
「詳しくは知らんけど、俺はディストピア飯を食った」
その言葉を聞いたホリーら3人はしかめっ面をする。
おい、美人アバターが台無しだぞ。
「なんだよ、その反応」
「ディストピア飯って、あれよね……? あの、カラフルなペースト状の何かと錠剤が出てくる――」
「そうだぞ」
俺とホリーの会話を聞いていたゲラルドが鼻で笑う。
「ふっ、鼻垂れ小僧のユウには女性のエスコートは無理か。仕方ねぇな、俺が良い店を紹介してやるよ。第1区画にファストトラベルするぞ」
ゲラルドは光の粒子となって先にファストトラベルした。同じくミリアも光を発しながら消える。
「そんなことないわ。ユウは立派に女性をエスコートできる紳士よ。現にこの間だってアクセサリーを――」
「それ以上言わせないぞ。恥ずかしいったらありゃしない」
その言葉をきっかけとし、ホリーは自分が何を言おうとしていたのか自覚したらしい。
彼女は顔を背けながら光と化し、ファストトラベルした。
どうせ数秒後にはまた顔を合わせるんだけどな。ホリーはその辺を理解しているのだろうか。
だがじっちゃんは『レディに干渉し過ぎてはいかんのじゃ』って言っていたし、この件を掘り返すような真似はしないようにする。
とりあえず、俺も第1区画に向かうとしますか。




