24話 ランク認定戦
『System All Green』
搭乗しているPTトレーナー改修機のシステムが立ち上がったのを確認し、タッチパネルを操作して武装を確認する。
うん、いつもの武装だ。手元にはアサルトライフルに、シールド。予備兵装としてフォトンブレードもある。
背部に搭載されているフライトユニットも問題なく機能しているようだった。
そして昇降機がせり上がる。
『傭兵様、アリーナへようこそ。貴方様がたの機体がアリーナに到着する前に簡易的に説明をさせていただきます。アリーナへ到着後、機体の火器管制システムと駆動系統は一時的に停止します。これは観客様がたに戦闘に参加する機体を鑑賞していただくためです。カウントダウン後、システムは復帰するのでご安心ください。では貴方様がたの健闘を祈っております』
合成音声がそう告げる。
それでさっきメカニックの人たちが機体を弄っていたのか。フライング防止用にシステムを組み込んだのだろう。
そして昇降機は停止した。
『カウントダウン開始。30、29、28――』
この30秒間の間に観客はモニター越し、あるいは目視でアリーナに参加する傭兵の機体を眺めるのだろう。
可能であればこの間に敵機の情報を集めたかったが、ロック圏外にいるらしくてHUDに情報は載っていなかった。それかあるいはジャミングが掛けられていて、試合開始前には参照できないようになっているのか。
『5、4、3、2、1――0。試合開始』
カウントがゼロになったところで、機体のシステムロックが解除された。
『敵を補足するまで私の機体から離れないで。指示は状況に応じて出すわ』
「わかった。まあ、多分俺は突っ込むんだろうけどな。せめてアサルトライフルの威力がそれなりにあればな……」
『ユウさんはフォトンブレードだけ持っていればいいんですよ。それ以外はそんなに期待していませんし』
『そういうことだ。バシッと決めて来いよ?』
「ゲラルド。お前、いいやつだったんだな……。それに比べてミリアの言い方は酷くね? その言い分だと俺はまるでFPSでナイフ一本で特攻するアホみたいじゃないか」
モニター越しに映る3人の目が泳ぐ。
こいつら……そんなことを考えていたのか。
その時、レーダー照射を受けた際に鳴り響く警告音が聞こえた。
遮蔽物の影からこちらを視線感知ロックで補足し、誘導ミサイルの発射タイミングを見計らっている敵機が見える。
ホリーから指示はまだ飛んで来ない。
しかし彼女の狙撃銃の発砲音を合図に無数のミサイルがこちらに向かって飛んできた。
ドランガに搭載されたAMSがそれらを迎撃していく。
『散開! ファイアアットウィル! ミリアとゲラルドは私の機体のAMSの範囲を意識して。ユウは言わなくても分かるわよね?』
「勿論。お望み通り、期待に応えてやるよ」
ミリアはライフルでけん制射撃をしながら敵の出方を窺っている。
ゲラルドはホリー機の後ろに回って長距離誘導ミサイルをばら撒きだした。
俺は右翼から回り込んで敵陣へ乗り込むため、スロットルレバーを押し込む。
その俺と入れ違うようにして、シールドを持った敵の重量級が全速力で自陣へ突撃してきた。
ああ、所謂タンク役か。あれはホリーらに任せて俺は敵陣を荒らしますか。
その敵重量級に続いて4機の敵機が続く。
しかし彼らは左方から迫りくる俺の機体に気づいたらしい。
『ははっ! 単騎で突っ込んできやがった。初心者かよ』
確かにアリーナ戦は初心者なんだよなあ……。
なんだっけ、あのおしゃべり傭兵が言っていたやつ。ラン、らんらん? ランなんとか戦略ってやつ。
要は敵の頭数を減らせば有利になるんだろう。
4機のパーソナルトルーパらが視線感知ロックでこちらを補足しようとする。
その時、俺の機体は空を駆けた。
『はあ!?』
『あいつ、空を飛びやがった! トップランカーのサブアカウントか!?』
敵陣から無数の弾丸が飛んでくる。
PTトレーナー改修機に搭載されたフライトユニットが火を噴き、羽から飛行機雲が伸びる。
敵機から放たれた弾はその後方を掠めていく。
『こっちの援護をしてくれよ! 何のための囮だと思っているんだ!』
『てめぇの後ろはそれどころじゃねぇんだよ! 羽付きのパーソナルトルーパーが俺らの――』
その傭兵の言葉はそこで途切れた。
俺の機体が旋回しながらすれ違い様にフォトンブレードで両断したため、その敵機の通信機能が駄目になったからだ。
後方で青白い爆風が広がり、爆発の余波による振動を受け感じ取る。
レーダー照射を受け、次の瞬間ミサイルが飛来することを告げる警告音と警告灯の点滅。
俺はシールドを投げ捨て、腰部ラックからアサルトライフルを取り出してそれを迎撃した。
その俺に向かってミサイルを発射した敵機は、ゲラルド機の誘導ミサイルの雨により両腕部を損傷する。
『コールファイア! ゲラルド機の目標に攻撃を合わせるわよ!』
その両腕から火花をまき散らす敵機はホリー、ミリア、ゲラルドの射撃の嵐により鉄屑へと化した。
どうやらその敵機のジェネレーターは無事だが、機体の外装そのものがオシャカになってしまったようだ。
その敵機が敵側の司令塔だったらしい。残る3機は攻撃対象がバラバラになり、火力が分散する。
そしてついにタンク役である重量級のシールドがひしゃげ、彼はそれをパージした。
タンクである敵重量級にアサルトライフルの弾丸をお見舞いする。
するとそれを不快に思ったのか、重量級は機動を変更した。しかしそれは悪手である。
ホリー機からしたらその機動、速度はとても狙いやすいものであったに違いない。彼女の機体から放たれた数発の弾丸はほぼ同じ個所に直撃し、次に放たれた弾丸が敵機の装甲を貫通した。
ジェネレーターに直撃したそれを確認した敵傭兵はベイルアウトする。
その機体の爆風を眺めながら俺は敵軽量級をフォトンブレードで薙ぎ払う。
彼の機体はベイルアウトする間もなく、ジェネレーターが光を発する。
勢いそのままに、左右のフットペダルを軽快に踏み分け敵の攻撃を躱し、最後の敵機に向けてスロットルレバーを目一杯押し込む。
『羽付き。お前さえ、お前さえ居なければ……!』
青白い爆風を背に、フォトンブレードを手に持ち迫りくるPTトレーナー改修機を目の当たりにした彼は、一体どんな言葉を続けたかったのだろうか。
* * *
リザルトが表示される。
こちらはホリーらが若干の被弾はあったものの、誰一人欠けることなくランク認定戦で勝利を収めた。快勝と言ってもいいのではないだろうか。
『選考中――決議を確認。ユウ様のパーティはダイアランク相当と認定されました。次回の戦闘より同ランク帯のパーティとマッチングするようになります。またの参加をお待ちしております』
ダイアランクは上から3つ目のランクか。
その上がマスターランクで、一番上がミシックランクだっけか。
ジキルはミシック帯にいるだろうから、聳え立つ壁はまだまだ高いと言える。
「ホリー、指揮助かった。ゲラルドとミリアもいい仕事してくれていたな」
アリーナの受付窓口の前で俺らは談笑する。
「そう? ありがとう。それにしてもいきなりダイアランクからスタートとはね」
「マジでそれが問題だって話。ユウ、どうする? ファイトマネーが入ったし、無理してでも機体を買った方がいいと思うぞ?」
「そうですね。幸いなことにアリーナでは機体が壊れても保険金が下りますし、ここは奮発するしかないかと」
やはりEランク機体じゃきついんだな。
実際ホリーも敵重量級の装甲をぶち抜くのに苦労してたみたいだし。
「分かった。んじゃ機体・パーツ販売窓口へファストトラベルするか。あと初戦突破ってことで、戦勝祝いも考えてみるか」
「というと?」
ホリーが首を傾げながらそう尋ねる。
「飯でも食いながら話すだけでいいだろ」
「分かりました。それじゃ早速格納庫にファストトラベルしますね」
ミリアが光の粒子となって消えたのを皮切りに、ゲラルド、ホリーの順でファストトラベルを使用していった。
そして俺もそれに倣い、ファストトラベルする。
視界が真っ白に染まった。
本作は全5章+エピローグ1話で完結します。
理由はプロットがそこまでしかないのと、引き延ばしをしたくないこと。また、5章の結末的にエピローグに繋げやすいためです。
そんな感じの話でした。最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。




