23話 作戦
アリーナのシルバーランク帯の観戦を終えた俺らは、観客席を離れてアリーナ入口にある受付窓口へと戻っていった。
中級者同士の戦闘を見て、アリーナのルールは大体わかった。正直PKと大差ない。
ただ、EVACポイントはないから退却するという選択肢はないわけで……つまるところ、どちらかが全滅するか降参――サレンダーするまで勝負は続くことになる。
降参する理由は観客席にいたおしゃべり傭兵曰く、いくつかあるらしい。
例えば力量差がありすぎて心が折れて降参するパターンや、武装が全損または弾薬切れを起こしたためにやむなく降参する例などなど。
他にも数的有利を作られて試合の流れが確定した時などにも降参することが多いらしい。
話は変わり、自然と俺らもとりあえずそのアリーナに参加してみないかという話になった。
「って言ってもよ、俺はDランクの機体だからそこそこ戦えると思うんだが……ホリーとミリア、ユウはEランクの機体だろ? 大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですかね。ユウさんの機体についているフライトユニットはCランク相当ですから、ソロマッチならゴールドランクまで上がれるほどの下地はあると思いますよ。それに、空を飛べるってだけで私たちにはアドバンテージがありますから」
「そうね。ユウならスクワッドマッチでも1人で全滅させることもできるんじゃないかしら?」
「それは言いすぎだろ」
そう言い、俺は笑う。
しかし、ホリーらは冷ややかな視線を俺に向ける。
おい、お前ら……マジで言ってるのか。
「冗談だよな?」
「ユウさんの場合、冗談じゃなくそれができそうなんですよね。フォトンブレードさえ紛失しなければ空を飛びながらずったばったで無双するんじゃないですか?」
「おいやめろ。俺に無理難題を押し付けるんじゃない」
冗談なのか本気なのか分からんその言葉に困惑しながら会話をしていると、ホリーが受付でパーティ登録をしていた。
「パーティリーダーはユウでいいかしら?」
「名義上はそれでいいぞ」
「名義上ってなんだよ、それ」
「つまりだな、戦闘中の指揮は俺以外の誰かに執ってほしいんだよ。ほら、俺、たぶん敵陣に突っ込むだろうから後ろが見えなくてな」
「……ああ、確かにそうね。じゃあ私が指揮を執ろうかしら。狙撃用の機体だから私が適任だと思うのよ」
「そうして貰えると助かります」
ということで登録用のパーティリーダーは俺に、実際の戦闘での司令塔はホリーに決まった。
「で、アリーナでの作戦とかどうする?」
「ホリー機を中心として俺とミリアが陣取って、スリーマンセルを作るのがいいんじゃねぇか? ホリーのドランガにはAMSがついているから、ミサイル対策になるだろうしよ」
「……俺だけ仲間外れじゃないか?」
その時、ホリーにぽんっと肩を手でたたかれた。
彼女の顔を見ると満面の笑み。
いやぁ、美人アバターの笑顔は様になるなあ。
「つまり?」
「頑張ってくださいね」
「一番大変な役割じゃないか!?」
ホリーらはこう言いたいのだ。
『ユウ、貴方は遊撃を担当して敵機を各個撃破してね』と。
俺の機体にはAMSがついていないんだぞ。ミサイル対策ですら割ときついのに、彼女らはなんてことを頼むんだ。
「おん? なんだ? ユウ、お前、出来ないのか? びびってんのか?」
「ゲラルド、煽るんじゃない。……分かったよ、やってやるよ。俺のPTトレーナー改修機のアサルトライフルは豆鉄砲もいいところだから射撃には期待するなよ」
「分かってるわよ。ユウは敵陣に入ってかき回してくれるだけでいいの。それだけで私たちは楽になるから。あと、可能ならフォトンブレードで敵を斬ってね」
「オーケー。んじゃ俺はその方向で。ホリーらはどう動く?」
「私はAMSの迎撃範囲を意識しながら動くわ」
「俺は長距離用ミサイルしか積んでないから、敵に詰め寄られたら援護して欲しいんだが」
「その時は私たちがカバーに入るので大丈夫ですよ。ゲラルドさんは信管が作動する距離にいる敵機を優先して攻撃してください」
これで大方の作戦は決まっただろうか。
基本はホリー機を中心とし、敵ミサイル対策をする。まあ、レーダー照射を受けたらミリアらは勝手にホリー機のそばに寄るだろうから大丈夫だと思う。
問題は俺だな。任せられた役割が多すぎる。
敵のミサイルをアサルトライフルで迎撃しながら弾幕をかいくぐり、敵機をフォトンブレードで両断しなければいけない。
一応ビーム機動というミサイル対策用の回避機動が存在するが、それでもミサイルが当たる時は当たる。だから過信せずに可能な限りアサルトライフルでミサイルを迎撃しなくてはいけない。となるとリロードするタイミングが重要になる。
つまり、射撃で敵にダメージを与えるという選択肢はなかなか取れないことになる。
さて、実戦ではどうなるかな。
とりあえずランク認定戦からか。
受付嬢の説明を聞いた俺らは、機体が搬送される地下格納庫へと向かった。




