22話 観戦
ベラル国にある地下都市ファリアに舞い戻った俺らは早速新機体の購入を……することはなかった。
何故かというと、理由は簡単。金が足りないのだ。
しかし、地下都市ファリアにあるアリーナは機体が損傷または全損しても、保険金が存在するのでその辺の問題は大丈夫らしい。しかも主催者が全額負担してくれるとか。その上ファイトマネーも支払われる。
ということは、アリーナでの主催者側への報酬は何かしらのルートで入ってきているものと思われる。
可能性が高いのは賭博とスポンサーの存在だろうか。もしかしたら、興行の一種として国が補助金を出している可能性もある。
「ほら、ユウ。ぼーっとしてないで早く行きましょう?」
「すまん、ちょっと考え事をしてた。んじゃ、目的地に向かうとしますか」
その俺とホリーの言葉に、ゲラルドとミリアも頷く。
俺らはファストトラベルを使用し、アリーナが設けられている会場へと向かった。
転送後、光の粒子が収まる頃には目の前には壁、壁――巨大な建造物が存在していた。
ここがアリーナで間違いないだろう。
「ふああああ……! おっきな建物ですね!」
「その反応を見てると上京したての頃を思い出すな」
そんなやり取りをしていると、ホリーが足を止めた。
流石に彼女を放置するわけにはいかないので、ミリアとゲラルドには先に中に入るように促して俺だけホリーの元へ駆け寄る。
「どうした? 体調が悪いならログアウトしてもいいんだぞ?」
「いえ、そうじゃなくて……。ねえ、ユウ。貴方って上京したことがあるの?」
「あるもなにも、今も東京に住んでるぞ」
「――そう。そっか」
こちらに背を向け、先に歩き出した彼女の表情は見えない。
今のやり取りに何の意味があったのだろうか。ホリーなら分かるのだろうが、そこまで踏み込むのってどうなの? という懸念がある。
俺らもアリーナに入り、4人が揃ったところで受付で手続きをして観戦席へと向かった。
ジキルが提示した条件は最大5対5のスクワッドマッチへ参加し、ミシックランクまで勝ち上がること。俺らはそれを実現させるために、まずアリーナというものがどういうシステムなのか調べに来たのだ。
観戦席にまずミリアが座ったので、俺も彼女の横に座った。しかしそれを見たミリアのやつが一つ席を隣に移動しやがった。
新手のイジメか? と最初は思ったが、どうやらそうではないらしい。何やらあとからやってきたホリーとアイコンタクトをしたらしく、それで席を一つずれて俺の隣に空席を作ったようだった。
なおその空席とは逆側にある俺の隣にはゲラルドが座っている。
そして5対5のアリーナ戦、スクワッドマッチは開始された。
モニターにはシルバーランク帯のランクマッチと表示されている。
そして、戦闘は幕を開ける――。
シルバーランクというのは丁度初心者を卒業し、中級者となった者たちが集まるランク帯らしい。
なんでもこの辺から勝率が一気に落ちて、中々ゴールドランクに上がれなくなるのだとか……というのを、近くの観客席に座っている傭兵が話していた。
ややこしくなるので西側から出てきたパーティをAチーム、東側から出てきたパーティをBチームとしよう。
Aチームにいる重量級がUAVドローンを打ち上げ、Bチームにいるパーソナルトルーパーにレーダー照射をして肩部誘導ミサイルを数発射出したのを合図に、各機体がトップスピードまで加速し出した。
そのミサイルはBチームにいる中量級に搭載されたAMSによって迎撃される。
そして両者ともに円機動を取りながら射撃戦を繰り広げるのだが……。
「なあ、ユウ。思ったことがあるからぶっちゃけても良いか?」
「ああ、いいぞ」
「……なんかレベル低くね?」
「否定はできない」
そうなのだ。両チームの射撃戦を見て俺も同じことを思った。
お互いにトップスピードのまま等速で動くものだから、偏差射撃をモロに受けて要らない被弾をしている。もっと緩急をつけて回避すればいいのに、と思ってしまう。
飛行は特殊技術であるというのはホリーらの反応を見て理解してしまったので、流石にそこまで彼らに求めるようなことはしない。
加えて、射撃の方もリコイルコントロールが不安定な節があるし、視線感知ロックが間に合っていなかったりする。つまり射撃精度も俺らのパーティと比較すると低い。
一方で、今回の観戦で得て良かったと思える情報もある。
なんか後ろにいる傭兵が熱心に解説しているから、それが耳に入るのだ。
「つまりよ、あれってランチェスター戦略ってやつを使ってるんだ。質や総合的な戦闘力で劣っていても、相手の頭数を減らせばそれだけで優位に立てることがあるのさ。だから西側のパーティは各個撃破を狙っているって訳さ」
そんな戦略があるんだな。
正直俺らのパーティは4人しかいないから、数的不利を抱えたうえでスクワッドマッチに参加しなくてはいけない。だからその傭兵の話はとても参考になった。
その会話に耳を傾けながら戦闘を眺めているとBチームが1機、また1機と撃破されていき不利になる。
Aチームも1機撃破されたが、それでも一度確保した数的優位は覆ることは無く、Aチームは最後の敵機に対して集中砲火をする。
パーソナルトルーパーが青白い光を上げながら爆発し、Bチームが全滅したところでモニターにリザルトが表示され、戦闘は終了となった。
結果は言うまでもなく、ランチェスターなんたらとやらを活用した西側パーティ――Aチームの勝利だった。




