20話 邂逅
地下都市バランガードは中心部付近の区画は開発が進んでおり、それはベラル国の地下都市ファリアに酷似している。
しかし外周の区画はまだ開発途中であるらしく、砂の流入が止まらないのだとか。
何故こんなことを考えているのかというと、理由があるからだ。
俺ら4人はミッション受付窓口でミッション内容が表示されたウィンドウと睨めっこしていた。
「なあ。これ、どう思う?」
「どうっていわれてもなあ……。非公開ミッションだろ? これ。まあ、受けるかどうかはユウに任せる」
って言われてもな……。
ウィンドウにはこう表示されている。
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ミッション 第6区画の開発
依頼主 石丸重工
我々と縁がある貴殿らに頼みたいことがある。それは地下都市の拡張工事の支援である。現在、第6区画の開発計画が現実のものとなり、現在進行形でそこでは開発が行われている。しかしその拡張工事には難点がある。貴殿らも耳にしたことがあるかもしれないが、外からの砂の流入が止まらないのだ。その砂の搬出と、それと並行して都市開発の方にも手を貸していただきたい。我々としては貴殿らに協力を仰ぎたいと考えている。是非検討していただきたい。
※このミッションは非公開ミッションです。本当に受注しますか?
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「ユウ。良かったら受けてみない? このミッション。地下都市の住人も喜ぶでしょうし、何より使える施設が増えるから傭兵にも利はあると思うの」
「私もホリーさんの意見に賛成です。何より、楽しそうじゃないですか!」
この言葉にゲラルドも感化されたらしく、彼も『仕方ねえな』と呟いた。
ここで一応リーダーとなっている俺が否定の意見を出したところで意味はないし、それはパーティ内に軋轢を生むこととなるだろう。まあ、とりあえず受けるか。
「んじゃ受注ボタンを押すぞ? マジで押すぞ? いいんだな? 今更止めに入っても遅いぞ?」
「バカやってないで早く押しなさいよ……」
ホリーに腕を掴まれて引っ張られ、無理やり受注ボタンを押すこととなった。
俺の渾身の芸が通じないだと……?
ミッションを受託したところでミッション受付窓口の受付嬢から説明を受ける。
パーソナルトルーパーに乗って第6区画まで赴いて欲しいとのこと。どうやら傭兵が持つ機体のマニュピレーターがお目当てらしい。何か手作業でもするのかな。
格納庫の奥へ向かい、それぞれのパーソナルトルーパーに乗り込む。
『System All Green』
システムが立ち上がり機体は稼働状態になるが、俺らは機体搬入口から動かない。
しばらくすると、機体搬入口のエレベーターが動き出す。四隅にある警告灯が赤い光を発しながらくるくると回転していた。
そして、そのエレベーターは下にさがっていった。
辺りは暗闇の黒一色。エレベーターが停止したかと思えば、エスカレーターで機体はX軸とY軸を縦横無尽に駆け回った。
少しした後、エスカレーターで動かされていた機体は目的地に着いたらしい。再びエレベーターが上に向かって動き出す。
ようやく視界が開けた。その目の前には大量の砂で埋め尽くされた土地と、若干の建造物、重機、トラック、作業員の姿。
重機はショベルで砂を掬い、トラックの荷台にそれを下ろす。
「あー、なるほど。それでインベントリにスコップをつっこまれたわけだ」
ミッション受注時にミッション遂行用アイテムとして、パーソナルトルーパー用のスコップを手に入れた。計4機分。
ミッション内容は砂の排出だろう。ホリー機が先にインベントリからスコップを取り出し、砂を掘り起こしてトラックに流し込む。俺らもそれに倣って作業を開始した。
この砂ってインベントリにつっこめないのかな? それが出来れば作業が楽になるだろうし。
俺は試しに砂をマニュピレーターで掬い上げてインベントリに格納してみる。しかし手のひらの上に乗っている砂は一向に減らない。
しかし視界の隅でインベントリのアイコンの隅っこに赤い点がついている。
そして俺はインベントリを開いた。
New 砂粒×999
ああ……。まさかの砂粒一つで一アイテム扱いである。そしてその砂粒はインベントリ上限に達した。
これはインベントリにいれて運び出す作戦は無理だな。俺はインベントリから砂粒を全部取り出し、地面にばら撒く。そしてホリーらと同じように地道にスコップで砂を掬い上げる。
しばらくしてから、後方でエレベーターが稼働する音が聞こえた。どうやら誰かのパーソナルトルーパーが地上に向かって上がってきているようだ。
もしかして機体OSの更新データが適用され始めたのかな? だからバランガードに傭兵が来れるようになったとか。
その新しく現れたパーソナルトルーパーは、俺らと同じようにスコップをインベントリから取り出して作業をし始めた。トラックが慌ただしく行き交う。
『……PTトレーナー改修機にダリルLか。お前ら、シミュレーターを使った経験はあるか?』
急にその傭兵に話しかけられた。
「何度かあるぞ」
『あの時は羽はなかったが……こんなところに来る物好きだ。十中八九間違いないだろう』
彼は何かに納得したようで、しばらく動きを止めていたが作業を再開した。
「俺はユウ。ドランガに乗っているのがホリーで、ダリルLに乗っているのはミリア。ビゼンに乗ってる野郎はゲラルドっていう」
『俺だけ扱い酷くねえか?』
「リア充に慈悲はない」
ゲラルドはそんな反論をしながらも、ホリーらと同じように砂をトラックに積み込み続ける。
『――ジキルだ』
その傭兵はそう名乗った。
「同じミッションを受けた者同士、よろしく頼む」
『ああ』
あまりコミュニケーションを取るのが好きじゃない性格なのかな? もしかしたらソロ専なのかもしれない。
まあ、一期一会ってことで、相手のコミュニケーションラインを把握しつつ出来るだけフレンドリーに接しておく。
作業に熱中していると、ふとジキル機が手を止めた。
『ユウとやら、早めに機体を買い替えろ。お前ほどの腕前の持ち主では、Eランクの機体では反応についてこれない』
彼は急にそう俺に語り掛けた。




