17話 高性能AI
接触し合い、光をまき散らしていたフォトンブレードは敵機が後退したことによりそれを収める。
その機体を横目に、ホリー達の様子を確認する。彼女たちは高機動戦に移行して武装盗賊団と射撃戦を繰り広げていた。
その戦闘の様子を見るに、ホリー達は攻めあぐねているように感じた。
『私は動けないけど、援護するからさー。お兄さん、囮になってくれない?』
「囮をやるのも案外大変なんだぜ?」
『知ってるー。うちのクランメンバーがよく囮をやってくれるから』
瞬間、コックピットにアラートが鳴り響く。それと同時に左手側から誘導ミサイルが数発飛んでくる。
俺はすぐさまアサルトライフルを腰部ラックから引き抜き、視線感知ロックで飛来するミサイルに照準を合わせ、トリガーを引く。
爆風を突き抜けてミサイルが1発通り抜けてこちらに向かってくる。警告音を無視しながらビーム機動を取り、ミサイルを回避する。
2対1か。倒れている傭兵も援護してくれるみたいだし、やれないことは無いだろう。
先ほどミサイルを撃ってきた機体がアサルトライフルで横槍を入れてくるのと同時に、フォトンブレードを持った敵機が接近してきたものだから俺は咄嗟にフォトンブレード持ちにシールドをぶん投げ、スラスターを吹かす。そしてアサルトライフルの弾丸を回避した。
その飛んで行ったシールドは敵のフォトンブレードによって両断され、敵機は俺の行動を警戒して空に向けて飛行を開始した。
俺もフットペダルを踏み込み、その機体を追いかける。その際に横にいるアサルトライフル持ちへ射撃を行い、ヘイトを稼いでおく。案の定敵さんは怒ったらしく、俺に向けて射撃を行ってくるが、その弾丸は機体の後方を通過するだけだった。
フォトンブレード持ちがその俺の一瞬の隙を見逃さなかった。
俺の意識が敵アサルトライフル持ちに行っているのを確認し、空中で反転してこちらへ向かってくる。斜め下方からPPMGのビーム弾が飛んでくるが、敵機は最小限の回避行動をとり、それらを躱す。
そして俺の機体とその敵機は交差する。すぐさま俺は左手にフォトンブレードを持ち、それを起動する。
一瞬の剣戟。それは光をまき散らすも、両者を傷つけることなく機体はすれ違う。
地上で青白い光と共に、爆発が起こった。ホリーらが武装盗賊団を1機倒したようだ。
『ごめん、当たらないー。なんか敵の動き変じゃない? 私、自分で言うのもあれだけど当てるの上手い方だよ?』
「すまん。説明し忘れてたけど、俺らユニークミッションを受けてるんだよ。多分こいつら、それをトリガーにして湧いた武装盗賊団だと思う」
『つまり、ユニークエネミーって訳?』
「多分な」
一見すると普通の武装盗賊団にしかみえないが、動きがチュートリアルで出てきた敵機に近い。
あのフォトンブレード持ちには高性能なAIが搭載されているのだと思う。
そんなフォトンブレード持ちは無視し、俺は急制動を掛ける。体に急激なGが掛かり、VR機器がバイタル異常を知らせる警告音を発する。
痛覚とか相当カットされてるはずなんだけどなあ……。それだけ無理な動きをしたのだろう。それでも意識はレッドアウトすることなく、機体は逆方向を向いてアサルトライフル持ちのパーソナルトルーパーの元へ向かう。
後方からフォトンブレード持ちが迫ってきているが、それでも距離は結構ある。
敵アサルトライフル持ちにけん制射撃をしながら俺は接近する。悲しいことに、銃弾は敵機の装甲を完全に貫通するところまで行かなかったが、足止めは出来た。
そこへ一筋のビームが飛来する。味方傭兵のPPMGから放たれたビーム弾がアサルトライフル持ちの右肩部に直撃した。敵の破損した右腕部のマニュピレーターが誤作動したのか、アサルトライフルはトリガーが引かれっぱなしになり、弾倉が空になるまで明後日の方向に弾を発射し続けた。
その時、レーダー照射を受けた際に鳴る警告音がコックピットに反響する。
だが遅い。この距離ではもう信管が作動しない。
俺は敵機とすれ違いざまにフォトンブレードを振るう。その刃は敵機を両断し、すれ違いざまに上昇する俺の足元では爆発が起きていた。
その上昇する俺の視界の隅からフォトンブレード持ちが接近する。そして振るわれた刃を自分のフォトンブレードで受け止める。
ここでまた距離を開けられ、敵に主導権を握られると面倒なことになる。俺は操縦桿とフットペダルを巧みに操作し、敵機に蹴りを入れた。それと同時にアサルトライフルの弾倉を交換する。
フォトンブレード持ちはバランスを崩しながら後退するが、それでも反撃の余地があると判断したらしい。フォトンブレードを腰だめにしながらスラスターを吹かせ、突きを試みてくる。
俺は視線感知ロックを使い、敵のフォトンブレードの持ち手付近にアサルトライフルの弾丸をお見舞いする。狙いは腕部のマニュピレーター。比較的装甲が脆いその部分に着弾を繰り返され、敵機の手はひしゃげてしまう。
そして奴の持っていたフォトンブレードが変な方向へ逸れ、自機の装甲に接触する。
もうフォトンブレード持ちに攻撃手段は残されていなかった。敵は急制動を掛けるが時すでに遅し、スロットルレバーを奥まで押し込んだ俺の機体から離れることは出来ない。
そして2体のパーソナルトルーパーは交差する。羽付きの俺の機体が奴の機体から離れきる頃には、後方で大規模な爆発が起きていた。
そんな強敵の撃墜を見届けながら、俺はホリーらの援護に向かうのだった。
* * *
『あっ。ちょい、ちょい待ってー。めっちゃ揺れるんだけど、これ。酔う酔う』
武装盗賊団を全滅させたところで、俺はその砂地で寝っ転がっている傭兵の機体を引きずって陸地へ上げようとした。だがまさかのNGである。
一旦引きずるのをやめてあげると、彼女はコックピットのハッチを開けて外に出てきた。
女性のアバターがワイヤーを伝い、砂地へ降り立ったかと思うと、そのアバターも転倒した。どうやら三半規管にダメージを与えてしまったらしい、すまん。
デクストに食われたら困るので、一旦俺のコックピットに彼女を招き入れる。
「いやー。助かったよー。ありがとね」
「気にすんな。むしろ謝るのはこっちの方だし。武装盗賊団との戦闘に巻き込んですまんかった」
「いいのいいの。VRMMOなんだからそこら辺は楽しんで行かないとね」
出来るだけ彼女の機体に傷を付けたくないので、その転がっている機体を担ぎ上げてフットペダルを踏み込む。
1機分のパーソナルトルーパーを担ぎ上げたが、過積載にはならずに俺のPTトレーナー改修機は緩やかに上昇した。
「君、飛べるんだねー。ジキルみたい」
「へえ、あんたのクランにも飛べるやつがいるのか。……ああ、そうか。お互い名乗ってなかったな。俺はユウ」
「ごめんねー、私はソフィー。ミリオンダラーってクランのメンバーだったりするよ」
「そうなのか。まあ、改めてよろしく」
「よろしくねー」
周りにデクストと武装盗賊団が居ないことを確認してから、俺はソフィーの機体とともにゆっくりと土の地面へと降りた。
コックピットのハッチを開けてやると、彼女は『またねー』と言いながら手を振り、ワイヤーを伝って地上へ降りる。そして自分の機体に乗り込んだ。
『またどこかで会ったらよろしくねー。一応フレンドコード交換しとく?』
『そうね、それが良いと思うわ』
ということで俺らはフレンド登録を済ませる。
フレンド一覧にソフィーが加わったことを確認していると。彼女はスラスターを点火して巡航速度で移動を開始した。バランガードを目指そうにも彼女の機体OSだと砂漠は歩けないし、地下都市ファリアへ戻るのだろう。
そうだ、データ・パッド。これをさっさと届けないとな。
俺らもベラル国に点在するEVACポイントへと向かった。




