16話 データ・パッド配達
「よう、ミリアにゲラルド。そっちはどんな感じ?」
「先ほどメカニックの方々と話していて、ある程度の情報は仕入れました。どうやらこの地下都市バランガードには魔晶石の鉱床があるらしく、そこで魔晶石を採掘しているそうです」
それで傭兵無しでも何とかなったって訳か。
「話だけ聞くと、ベラル国がキャラバンを組んでこちらに派遣する必要はなさそうよね」
「それがそうもいかねえって話なんだ。採掘場の魔晶石が枯渇しかけているんだってよ」
それでベラル国に支援を求めたわけか。
そんなやり取りをある程度しているとメカニックが一人こちらにやってきた。
「傭兵の兄さん方。機体OSのアップデート、終わったぞ。これで砂漠でも地に足をつけて移動することが可能になる。――ところで、物は相談なんだが、新OSが入ったデータ・パッドをベラル国まで持って行ってくれないか? 依頼はミッション窓口経由で受けるといい」
「ああ、構わないぞ。砂漠で歩ける機体が増えればこっちの国に来る傭兵も増えるだろうし」
「ありがたい! 頼んだぞ、傭兵さんよ」
俺らは一旦格納庫入り口へ向かい、ミッション窓口へ移動し受付のお姉さんと会話をする。
彼女は傭兵の俺らを見て若干テンションがあがっているらしい。それもそうか、傭兵が居ないんじゃ受付のお姉さんは棒立ちする以外やることがないだろうし。
「メカニックの人に機体OSの更新用データ入ったデータ・パッドをベラル国まで運んで欲しいと頼まれた。該当するミッションはある?」
「ええ、あります。国が各企業にそのデータ・パッド配達を要請をしていたのですが……あいにくこちらの国には傭兵が存在していませんでした。なのでどの企業からも受けることが可能となっております。もしご希望でしたら、大統領府にお繋ぎして直接依頼を――」
「いや、それはいいっす……。もうこりごりなんで」
事情を知らないミリアとゲラルドは怪訝な表情を浮かべる。
ベラル国で来賓として迎えられた件が意外にも尾を引いている。大層な待遇を受けるあんな経験はもう勘弁というのが本音。
受付のお姉さんと会話を進め、ミッション一覧からそのOSが入ったデータ・パッド配達の依頼を受ける。皆と相談の上、石丸重工経由でミッションを受けることにした。
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ミッション データ・パッドの配達
依頼主 石丸重工
貴殿には機体OSの入ったデータ・パッドをバタル国まで配達していただきたい。諸君らも知っての通り、データ・パッドの配達依頼というものは本来であれば地下都市内で完結するものだ。それが国を跨いでの配達となれば、ある程度の危険は予想される。可能性として憂慮されるのは武装盗賊団の襲撃である。OSのアップデートにより改修された傭兵の流入を防ごうと、奴らも躍起になっているものと推察される。国の威信と企業の威信をかけたこの依頼、貴殿が達成されることを我々は願っている。健闘を祈る。
※このミッションはユニークミッションです。本当に受けますか?
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ユニークミッションという一文を見た俺らは若干躊躇するが、ゲラルドが勝手に受注ボタンをタップしたものだからミリアに怒られていた。何やってんの、お前ら。
『ユニークミッション、【データ・パッドをベラル国へ配達せよ】を受注しました』
* * *
一番生存確率が高いであろう俺がデータ・パッドを受け取り、それをインベントリにつっこむ。
皆して格納庫へ向かい、それぞれ自機の元へ移動して機体に乗り込む。
『System All Green』
機体のシステムが立ち上がったことを知らせる合成音声を聞きながら、昇降機へ向かい地上へと出る。
外はじりじりと強い日差しが照り付けており、地表付近では陽炎が立ち上がっている。まあ、機体内は冷房が利いているから涼しいんだけどな。
機体のOSをアップデートしたとのことなので、試しに砂地を歩いてみる。すると機体は問題なくその砂地を歩行してみせた。
砂丘が近くにあったのでそこへ向かってみるが、若干機体が傾いても勝手にバランスを取ってくれる。
皆してその新OSの効果を試したところで、巡航速度に移行しベラル国へ移動を開始した。
飛行する必要が無くなったので、ホリーら3人の負担は相当減ったとみていいだろう。
移動中辺りを見回すとEVACポイントとタレットが地表に出ていた。武装盗賊団が侵入するというリスクがあるというのにも関わらず、それらを地表に展開したということは俺らのミッションが成功することの期待の表れでもあるのだろう。
一刻も早くこのOSがベラル国でも普及するといいな。
【BtHO】Beyond the Horizon Online part598
121 : 名無しの傭兵
大型アップデートキター!
124 : 名無しの傭兵
なおアップデート内容はアナウンスされていない
運営やる気あんの?
128 : 名無しの傭兵
ほんとそれ
自力で探せってことなんだけど
136 : 名無しの傭兵
パッチの容量的に絶対に何か大きなものが追加されたよな
まさかパッチのせいで数十分待たされるとは思わんかった
149 : 名無しの傭兵
報告
A10地点の先に新マップが追加されてる
お前ら急げ!
【リンクを省略しました】
152 : 名無しの傭兵
>>149
おー、砂漠じゃん
みんなのりこめードドドド
179 : 名無しの傭兵
皆、その新マップの砂漠に行くなよ……
あそこ、まともに歩けんぞ
俺は忠告したからな、あとは知らん(機体ロスト
181 : 名無しの傭兵
>>179
マ?
186 : 名無しの傭兵
>>181
マ
俺も砂地に足を取られて転倒して、デクストにボコボコにされた
なお機体はロストした模様。サルベージくらいさせてくれ
192 : 名無しの傭兵
運営のバランス調整ミスだろ
そのうち修正パッチが来る
とりあえずクランメンバーやフレンドに伝えて情報共有しとこうぜ
* * *
戦闘速度に移行し、スロットルレバーを押し込んで加速する。接近してくるデクストらに向け俺らは射撃を行い、それらをポリゴンの粒子へと変換させる。
そんな小規模な戦闘が数回起こったが、あとは何事もなく事は運んだ。
マップを確認すると、そろそろベラル国へ繋がるJ1地点に着きそうだった。
その時である。オープンチャンネルで傭兵の声が伝わってきたのは。
『誰か、おたすけー』
レーダーを見ると北東に緑のアイコンが一つ光っていた。とりあえずそこへ向かう。
すると砂地に横たわるパーソナルトルーパーが1体。
『無様な格好の私をそんな目で見ないでくれい』
とはいうものの、彼女の機体は中々立ち上がれず、立ち上がろうとしてはバランスを崩して転倒していた。
「仕方ないか。ベラル国まで引きずるからそのままの体勢でいてくれ。機体がボロボロになっても文句は言わないでくれよ?」
『あーい、おっけー』
砂漠の犠牲になったやつ、他に居ないだろうな。そう思いレーダーを見る。
するとそこには――赤い点が複数。
その敵がいる地点を確認すると、砂丘の上にはパーソナルトルーパーが数機立っていた。武装盗賊団か、俺らが持つデータ・パッドを回収しに来たのだろう。
奴らの中央にいた機体が次の瞬間――飛翔した。
NPCのパーソナルトルーパーが飛行している。その機体はフォトンブレードを起動して転倒している傭兵に狙いをつける。
彼女の機体は倒れながらもPPMGで反撃するが、敵機は華麗にそのビーム弾を空中で回避し、フォトンブレードを振りかぶる。
その刃が彼女の機体に接触する前に、俺は奴らの間に入り、起動したフォトンブレードで敵の刃を受け止める。
フォトンブレード同士の接点が光をまき散らす。
こいつ、本当に武装盗賊団か? そう思えるほど奴の機体は機敏に動いていた。




