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バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
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EP36 プレオープンのクリームソーダ〜ちょっぴり熱いバトルを添えて〜

滝坂と梅田が接触し、滝坂は母親を救うために闇バイトをすることを決断。

その一方で、義人と美浦はテコンドーアジアカップに向けて練習していた。

そして、8ビットのプレオープンイベントが幕を開ける!

朝の光が差し込む牛丼屋で、義人と美浦は熱々の湯気に包まれていた。


「やっぱ朝に牛丼って最高〜!」


「学校が食費出してくれるの、本当ありがたいよな」


 二人の手元には、学生専用のNFCカード──

スクールバスカードが光っている。


 交通、買い物、そして“生活支援”。

 2055年の若者の命綱ともいえる一枚だ。


「今日はプレオープン。気合い入れないとね」


「ああ。俺たちのシフトは10時から14時。“学生を危険に晒さない働き方”ってやつだ」


 2055年の働き方改革。

 地方創生と学生支援が組み合わさり、

 昼と夜の2部制コンカフェが主流になった。


「そういえば朝のニュース見た? いま“コンカフェ狩り”が全国で起きてるって」


 美浦の声が少しだけ沈む。


 ──コンカフェ狩り。

 雑居ビルの隙を突き、店舗を襲い、場合によってはキャストを社会的に殺す闇犯罪。


「犯人って……闇バイト上がりが多いんだろ?」


「リーくんが言ってたよ。最近は“共産主義者”と手を組んでる事件が増えてるって」


 店の存在を“性の商品化だ”と敵視する思想団体。

 その報酬を狙い、破壊行為に走る若者たち。


「でも、俺たちは前を見て働くだけだ」


「うん。着いたらメイクしなきゃ!」


 二人は会計を済ませ、開店準備の進む8ビットへ歩き出した。



---


「おはようございます!」


「やぁ、ぐっすり眠れた?」


 店前には店長の神谷。

 店内ではキャスト達が筐体の配置で大忙しだ。


「一時間後にプレオープンだ。準備急いで!」


「はい!」


 義人は90年代を代表する格闘ゲーム『爆熱ナックルファイターズ』の主人公“こうじ”の衣装に着替える。


 美浦は新品のメイド服で、愛用コスメを丁寧に塗っていた。


「みぽりん、それ新作のティント?」


「ふふ、ZAZACityの最新ツヤ持ちですよ!」


「いいな〜! 私はEIZARINのNYライン使ってるの! 今日のリップは初夏モデル!」


 コスメ談義に花が咲く一方で──


「義人君、格ゲー得意?」


 別のキャストに聞かれ、義人は笑う。


「FDVR派だからアーケードは初めて。でも……全力でやるよ」


 義人にとって90年代ゲームは“未知の宝箱”。

 初めて触るレバーも、新鮮に輝いて見える。


「みんな、今日が一番大事だからね! ミスは許されないよ!」


 神谷の声で店内に空気が張り詰める。


「「「はい!!!」」」


 キャスト達が一斉に声を張った。


 義人も、胸の奥で静かに火が灯る。


「義人君、対戦台は君に任せるよ」


「はい、店長!」


 託された。

 それだけで、全身に力がみなぎる。


「よし……やるか」


「じゃあ、行くよ! 8ビット、プレオープン──!」


 神谷の声が響き、シャッターが上がった。


「いらっしゃいませ! ピコッとお給仕、8ビット開店です!」


 客が押し寄せる。

 ゲーム筐体の電子音が、一斉に店内で息を吹き返した。



---


「義人くん!」


 声をかけてきたのは、地元のアマチュアゲーマー・まずお。


「君と対戦したかったんだ! レトロゲームの良さ、教えてやる!」


「望むところだ!」


 義人は、こうじを選択。

 まずおはメインヒロイン“帆乃香”を選んだ。


「90年代はな、レバー入力が命なんだ!」


 まずおの指が走る。

 レバーの“ゴリゴリ”という音が懐かしく、そして新鮮だ。


(昔のゲーマーは……こんな武器で戦ってたのか!)


 義人はすぐさま真似し、コンボを叩き込む。


「やるじゃねえか、若造!」


「そっちもな!」


 笑顔がぶつかり、店が沸く。


 まずおはレバーを素早く入力。


「喰らえ!──桜時雨!」


 帆乃香の必殺技が、画面を桃色に染める。


「なら……これで返す!」


 義人の指が一瞬光った。


「迎え撃つッ!──崩竜撃!!」


 こうじの回し蹴りが炸裂。

 観客から歓声が上がる。


「ラウンドワン、義人!!」


「いい戦いだ!」


「ああ!」


 義人は胸が熱くなる。

 これが……ゲームで人を繋ぐ感覚か。


 一方、美浦も大忙しだった。


「ご注文は?」


「メロンクリームソーダ2つ! ナポリタン大盛りとキーマも!」


「はい、承りました!」


 別のキャストが美浦をサポートする。


「みぽりん、無理しないで!」


「大丈夫! 今日は絶対成功させるんだから!」


 笑顔と熱気が、店に溢れていた。


 ──プレオープンはまだ始まったばかり。


 だがその裏で。


 店の外に停まったワンボックスカー。

 中では、闇バイトの少年達が無言でスマホを見つめていた。


「……合図が来たら、やるぞ」


 冷たい声が響いた。


「“文化殲滅主義者”からの報酬、逃すなよ」


 静かに、確実に──

 8ビットへ向けて、危険な影が迫っていた。


次回は、美浦が大奮闘!

そして、なにやら怪しい人たちの動きが……?

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